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2010年1月29日(金)第3四半期決算説明会
質疑応答
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Q 1  昨日発表された(アップル社の)iPadにどんな感想を持ったか。今後のビジネスの方向性について、「枯れた技術の水平思考」という言葉で展開されてきたように思うが、今後積極的に新しいテクノロジーを取り込んでいく可能性は社内的にあるのか。
 また、今後は軸足をゲームに置きながらも音楽、動画、電子ブック、SNSなどの広い意味でのエンターテインメント分野に進出して積極的にやっていく可能性はあるのか。SNSについて興味は。
A 1

取締役社長 岩田 聡:

 iPadの感想からですが、「大きいiPod touchが出た」と思いました。「私にとって意外なことはありませんでした」というのが感想です。

 それから、「任天堂は今後どうするのか」、「新しい技術を取り入れる気はないのか」、「任天堂は枯れた技術しか使わないのではないか」ということについてですが、「枯れた技術の水平思考」という言葉が一人歩きし過ぎているのかもしれませんが、先端テクノロジーと無縁でビデオゲームのビジネスはできません。先端技術のことが分からずにわれわれのビジネスもできません。当然、いろいろな可能性を考えて取り入れるわけです。これまでも、任天堂が世界で最初に活用した技術というのはいろいろあったと思います。

 一方で、ハードで使う技術というのは、お客様がインタラクティブなエンターテインメントを味わう上で「黒子であるべきだ」と思っているので、そこをそれほど主張してはおりませんので、主張しないことが「任天堂というのは高度な技術には興味がないらしい」というような解釈になっているのかもしれません。「要はバランスの問題だ」と思うんですね。新しい技術というのは当然まだ値段がこなれていなかったり、解決を要する問題があったり、使いこなしが難しかったりします。「その技術がいつ、お客様にいい意味で驚いていただく上で役に立つのか」、「値段のバランスとして、一定以下の原価でハードを作ってお客様にお届けしないといけない時に、(その技術が)どう使えるのか」、といったことを考えた時、われわれとして現実的に行ってきた判断が、「任天堂は高度な技術には興味ないらしい」という解釈につながっているのかもしれません。決して技術に興味がないわけではないですし、私も技術者の端くれとして高度な技術はどちらかというと好きな方で、新しい技術が出てくると「分からずにはいられない」と思っている方です。きっとハードを見ている竹田(専務取締役総合開発本部長)も同じ思いだと思います。ただ、一方でそれだけではお客様にご支持いただける製品はできませんので、バランスを大事にして(製品を)作ってきた結果、今のような解釈があるということではないでしょうか。また、「任天堂はあの時こういう新しい技術を取り入れていたんだね」ということが、将来分かっていただける時が来るかもしれません。

 それから、任天堂はビデオゲーム以外(の音楽、動画、電子ブック、SNSなどの分野)に興味はないのかということについてですが、私はビデオゲームというものの定義が広がっていく形で任天堂の事業領域が広がっていくと考えています。具体的に、任天堂が過去に実現してきたビデオゲームの定義の拡張というのは、(最初のうちは)「こんなのはビデオゲームじゃない」と多くの方が感じていたようなテーマまで、ビデオゲームとして(の展開を)進めてきたわけで、それが結果的に「これもビデオゲームなんだよね」と言っていただけるようにだんだん変わってきたんです。そもそも任天堂の強みは、インタラクティブにお客様が何かを入力されたら何かをお返しするということでお客様に驚いていただくということにポイントがあると思います。そこで「気持ちよく快適に使える」、「自然に分かる」、「マニュアルを読まなくてもいい」といったことを実現できるところに任天堂の強みがあると思います。ですので、そういうインタラクティブなエンターテインメントの拡張の結果として、例えば音楽や、動画、SNSと接点ができるということはあり得るかもしれませんが、「他社さんがやっているこういうビジネスがあって、任天堂もそれをやった方がいいからそこに出て行く」というアプローチにはあまり興味がありません。それでは、任天堂の強みが活きないからです。任天堂の強みはインタラクティブ・エンターテインメントにありますので、そこに集中していきたいということでご理解ください。

Q 2  新しいハードウェアの方向性、中身、発売のタイミングについてお聞きしたい。年初に、高精細で人の動きを感知するセンサーを搭載したようなハンドヘルドの新しいハードについての報道があったが、現状どういう考え方を持っているのか。もう1つは据置型で、Wii HDというような、新しい次世代のテレビに対応したようなものも出てくるのではないかという話もあるようだが、その方向性についてお聞きしたい。
A 2

岩田:

 新しいハードは当然、常に研究しております。新しいハードが出たら次のハードについてどんな可能性があるだろうかということについて、ハード開発部門は、任天堂には据置型のハード開発部門と携帯型のハード開発部門がそれぞれ分かれて存在していますが、彼らは当然、次のハードの研究をしています。今日、次にどんなものを出すということで具体的にお話できることはありません。

 先ほどお話のあった報道については、背景をご説明しておいた方が、誤解が解けていいと思いますのでお話ししておきます。記者の方から、「次のDSは高精細のグラフィックスになってモーションセンサーとか入るんですよね」と聞かれました。「そういうことは当然必要とされるんでしょうね。でもそれだけで売れると思いますか?」というのが私が答えたことなんです。紙面の制約があったと思うのですが、「それだけで売れると思いますか?」ということは書いていただけなかったので、少し意味が変わってしまったと思っています。確かに私は「そういうことは必要とされるでしょう」と申し上げましたので、決して間違いではないんですが、文脈というのは難しく、間接的にお伝えいただいた時に、時として誤解が生じてしまうので、気をつけないといけないなあと思いました。当然私たちは、技術が進歩すれば当たり前にできることは変わっていくという自覚は持っていますので、別に性能が高くなってはいけないと思っているわけではなくて、要はバランスの問題ですから。一方で、それだけでお客様に新しいものを買っていただけるとは基本的には思っていないです。

 同じことはWii HDといわれるものについても言えまして、私は言ったことがないので、一体どこが出元なのか私は疑問なのですが、ただ、Wiiをハイデフィニション対応、高解像度対応にしただけで、新たに世界中のお客様に買っていただけるのかということについて、やっぱり私は、そのことを聞かれたら、「それだけで売れますかね?何か新しいことがいりますよ」と答えると思います。

 世の中に競争というものがなければ、あるいは、世の中にライバルメーカーというのがなければ、私はここで「例えばこんなことも考えていましてね」ということも言えるんですが、競争上の理由もありますので、具体的にどんなことを考えていて、いつ、ということは今日は申し上げられません。

Q 3  オンラインの現況について岩田社長の考えをお聞きしたい。DSi導入で起こった変化、ここが良かった、もしくはここが足りないというところ。Wiiの方もいろいろサービスをオンライン系で増やされていると思うが、手ごたえ、もしくはここが足りないという課題があれば教えてほしい。
A 3

岩田:

 まず、ゲーム機というのは、一番最初に購入される方は熱心な方の割合が高くなります。当然、何の商品でもそうだと思うんですが、そういう分野に対して熱心で一番熱くて、情報を能動的に集めて、という方にまずは売れていくわけですね。そしてだんだん、それほど熱くエネルギーを持っていない人のところにもゆっくりと価値が伝わっていって、最終的にいろんな方に売れていって普及します。それは、例えばイノベーター、アーリー・アダプター、アーリー・マジョリティー、レイト・マジョリティーなんて言葉で語られるような、マーケティングでモノが売れていく時のお客様の層の順番みたいなことで語られることもありますが、このオンラインへの参加についても同じことが言えまして、もし私どもが何もしなければ、恐らく、インターネットの接続率は時間が経つほど下がっていくんですね。「時間が経つほど上がっていくはずだ、世の中はどんどんネット化しているんだから」というお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、ゆっくり買われるお客様ほど、もともとはゲーム機をインターネットにつなぐ動機を最初はお持ちでない場合が多いわけです。ですから、私どもも最初は、モノを作って、「そういう機能があればお客様に使っていただけるんじゃないか?」というところから始まるんですが、どうもお買い求めいただいたお客様は思いのほか、そういう動機をお持ちでないという現実に直面しました。

 そもそも、インターネットにつなぐとどう良いのかをお分かりでない方が多いことが分かりました。「じゃあどうしよう」ということで、Wiiには、「インターネットにつなぐとできること」という動画が、最初から本体に内蔵されているんですね。DSiも途中からそのようにしました。すなわち、最初に買ってきた状態で、「インターネットにつなぐとこんなことができるようになるんですよ」という動画を見ていただくWiiのチャンネルや、DSiの内蔵ソフトが含まれるようになっているんです。これは実際にインターネットにつないでいただいた後はもういらないので、後で消していただけるような仕組みになっているんですが、まず、動画で伝えるということをしました。あるいは、NTT東日本さん、NTT西日本さんと一緒にインターネットのつなぎ方が分からない人のサポートをする電話サービスや、さまざまな販促活動を行ったりもしました。

 また、せっかくWiiにいろいろなインターネットを通じてダウンロード可能な新しいチャンネルがあっても、そのチャンネルのことを全くご存知ない方が多くおられるし、ご存知だとしても、「Wiiショッピングチャンネル」に行ってそれを探し出してダウンロードするというのは、すごくハードルが高いということも分かってきました。そこで、昨年末くらいからですが、最初からWiiのチャンネルの中に、小さな(サイズの「種」となる)チャンネルをプリインストール(出荷時に最初からチャンネルを組み込むこと)してあります。このチャンネルをクリックすると、例えば「Wiiの間」のチャンネルというのはどんなものであるかを説明し、「それをダウンロードしたい」と選ぶとショッピングチャンネルの「Wiiの間」をダウンロードするページに直接ジャンプして、お客様に新しいチャンネルをダウンロードしていただきやすくするようなことも始めました。

 そういう積み重ねによって、少しずつ普通の流れとは逆行して、日本におけるインターネット接続率は高まっています。しかし、われわれが期待するほど高まったのかというと、まだそこには至っていないというのが現状です。当然、そういう部分をうまく使いこなし、「DSiやWiiがインターネットにつながったらこんなことができるんですよ」という任天堂の提案を100パーセント、場合によっては120パーセント受け止めていただいて、ものすごく楽しんでいただいているお客様もいらっしゃる一方で、全くご存知ないという方がいらっしゃるのもまた事実です。今は新しく売っているWiiハードでしかこういうことができていないのですが、例えば将来、新しくWiiのソフトを買っていただいた時に、もしまだインターネットにつないでおられないWiiがあったら、「インターネットにつなぐとこんなことができますよ」だったり、「このチャンネルをダウンロードするにはこうするといいですよ」ってことをお知らせできるように、ソフト側から敷居を下げるようなシステムのアップデートができたら、もっと接続率というのは上がっていくのかなということも今考えていまして、そういうことの可能性も検討しています。

 結局、今WiiにしてもDSiにしても、つないで価値を実感していただけている皆さまにご評価いただいている良い面が、まだつないでおられない方には全く伝わっていないのが現状です。それどころか、先ほどご紹介した「はじめてパンフ」でお伝えしているように、「DSというのはこうやって遊ぶんですよ、ここにソフトを差します」とか、「Wiiというのはこうやって遊ぶんですよ、リモコンがあってソフトがあって、本体にはこんなものが入っていてこうやって遊びます」というところからお伝えしなければご理解いただけないお客様がいっぱいいらっしゃる中で、これは簡単なことではないと思っています。ただ、地道にやっていけば、いつかインターネットの世界と全く遠く離れたところにいらっしゃるお客様であっても、恐らくほかのデバイスよりは、いわゆる「デジタルデバイド」を解消するために任天堂がお役に立てそうなことはありそうな気がしていますので、これは地道にやろうと思っています。そういう意味では、オンラインの現況について「ずいぶん初歩的なことやっているな」と思われるかもしれませんが、初歩的なことを徹底してやって、ほかのどのデバイスも連れてくることのできなかったお客様をインターネットにもし連れてくることができた時の価値というのは、私は非常に大きいと思っていますので、粘り強く取り組みたいと思っています。

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