株主・投資家向け情報

2011年4月26日(火)決算説明会
質疑応答
| 1 2 3 4次のページへ
Q 1

 昨今、タブレットタイプのハードがかなり出てきていて、画面もそこそこ大きく、直感的で、ゲーム機として見ても魅力的な部分があるような印象を持っているが、任天堂のハードまたはゲーム機としてタブレットを見た時の岩田社長の見解を聞かせてほしい。

A 1

岩田:

 タブレットという形ですね。画面が一定以上の大きさで、直接触ることができるというのは、「タッチスクリーンを使った遊びというものを作る」という観点で見ますと、ニンテンドーDSが流れを作った、タッチスクリーンを使ったゲームの延長線上にあるものを使うという意味では面白いデバイスだと思います。一方で、私たちが新しいゲーム機を作る時にずっと十字キーだったりボタンだったりを捨てずにきているのは、やはりゲーム機にはそういうものがあった方が、反応性のいいゲームを作る上では有利な面もあると思っているからです。そういう意味で、(任天堂には)いわゆるボタンを一切捨てたゲーム機を作るという意識がないので、今のタブレットの構造をそのまま、任天堂でもゲーム機として考えてみようとはあまり考えていません。ただ、ゲーム機として考えるからそうなので、違う意味ではタブレットというのは非常に面白い存在として、これからも普及が進む形態ではないかとは思っています。

Q 2

 ソーシャルゲームおよびスマートフォンを中心とするモバイルゲームの急拡大が続いていると思うが、これによる御社のビジネスへの影響をどう見ているか。
 また、そういったソーシャルゲームを何らかの形で収益に取り込むような展開の可能性はあるか。

A 2

岩田:

 任天堂の業績が下降線になった時期と、ソーシャルゲームやスマートフォンの伸びた時期というものが一致しておりましたので、この両者に何らかの因果があるのかということがずいぶん取りざたされ、また報道され、たくさんの記事が書かれたと思います。
 ソーシャルゲームが流行し、あるいは、iPhone、Androidなどが世の中に出てきて、スマートフォンといわれるジャンルが携帯電話の中で非常に大きな存在になって普及し、ゲームを含むいろいろなアプリケーションが非常に安い値段でたくさんの種類が手に入るようになりました。すると、「それがDSビジネスが下り坂になった原因である」という記事はこれまでたくさん書かれましたし、今朝の新聞でもそういう論調の記事がありました。これは繰り返し申し上げていることですが、「では、任天堂の業績はソーシャルゲームやスマートフォンに押されたから今の状況なのか、それとも別の要因なのか?」ということですね。すなわち、「因果があるのか、同時に起こっているだけなのか」ということです。
 これは以前から繰り返しお話ししていることなのですが、もし因果があるとしたら、DSのお客様の中でソーシャルゲームを遊んでおられる方かどうか、あるいは、スマートフォンのゲームを遊んでおられる方かどうかで、有意な違いがあるはずなんです。例えば、ソーシャルゲームを遊んでおられる方はあまりDSを遊ばれなくなっている、とか、あるいはソフトの年間購入本数が減っているといったことが事実として確認できたら、これは私がどう思おうと具体的な証拠があるわけですから、因果があると考えた方が良いと思いますし、そうでないのであれば、これを因果として考えるのは必ずしも正しくないんじゃないかと思います。
 われわれは日本あるいはアメリカでゲーム人口の調査をしているというお話をしましたが、その時に一緒に、それぞれの方がソーシャルゲームを遊んでおられるのかどうか、あるいはスマートフォンをお持ちなのかどうか、スマートフォンでゲームを遊んでおられるのかどうかということも調べてきました。それによって何か有意な差があるかどうかなのですが、まずDSの稼働状況についてですが、有意な差は認められませんでした。「スマートフォンで遊ぶようになったのでDSでは最近遊んでいない」という方が一人もいらっしゃらないとは申し上げませんが、統計的にみると有意な差はありません。
 逆に、有料でソーシャルゲームを遊んでおられる方は、DSの稼働状況がむしろ高いことがわかりました。これははっきりと、有意な差がございました。これはみなさんの印象と逆ではないでしょうか。ですから、有料でソーシャルゲームを遊んでおられる方というのは、たぶんゲームのお好きな方だと思うんです。結果、DSの稼働状況も高いわけです。
 ではソフトの年間購入本数はどうかということなんですが、これは日本のデータしかなく、かつ最近のデータですから、DSのビジネスがそんなに盛り上がっておらず年間のソフト購入本数は少し小さいのですが、やはりソーシャルゲームやスマートフォンゲームを遊ぶかどうかで有意な差はありませんでした。有料ソーシャルゲームを遊んでいる人はDSソフトの年間購入本数が平均1.5本と、DSユーザー全体の(年間平均)1.2本より多かったです。これはハード当たりの本数(いわゆるタイレシオ)ではなくて、(現在もDSを遊んでおられるお客様)一人当たりの本数なので、その点はお間違えのないようにお願いいたします。
 こういうことを見ますと、私は、ソーシャルゲームあるいはスマートフォンの普及が直接的にDSビジネスに影響しているとは言えないのではないかと思っています。
 一方で、何の影響もないのかと言いますと、スマートフォンのゲームあるいはソーシャルゲームというのは、ゲームにカテゴライズされるものの中で非常に相対的に安い値段でお客様が楽しめるという特徴を持っていると思います。かつて音楽コンテンツでも起こったことですけれども、今ゲームには価格低下に向けての圧力がかかっていると思っています。私たちが今世の中でビジネスをさせていただいているゲームソフトのビジネスというものの価値を正しくお伝えし、数千円の値段を払って楽しんでいただく価値があるということを多くのお客様に認めていただくハードルは上がっていると思います。ですから、そのハードルを乗り越えていけなければ、任天堂のビジネスはやがて今よりもスケールが小さくなってしまうし、逆にそれを乗り越えていければ拡大していくこともできるというのが私の見方です。
 ちなみにこれも繰り返しお話ししていることですが、かつて、昔の携帯電話でゲームが遊べるようになり始めた頃に、「携帯電話というみんなが持って歩いて当たり前のものでゲームが遊べるようになれば、携帯ゲーム機というジャンルはなくなってしまうだろう」と予想される方がたくさんおられましたし、私もたくさんそういう取材を受けたりレポートを読んだりしました。もし私たちがゲームボーイアドバンスの時代にやっていたことと同じことを漫然と繰り返していたら、きっとそのような未来が起きていたと思います。しかし、私たちはそこで足を止めませんでした。止めなかったのでニンテンドーDSという大きな新しいマーケットができたわけです。私たちはニンテンドー3DSで同じように、また大きなマーケットを作りたいと思っていますし、当然、ニンテンドー3DSの先にまたもっと長いレンジではいろいろなチャレンジが必要だと思います。他のハードではできない、われわれがハードとソフトを一体で提供するからこそ可能な価値のある、そういった新しい体験をお客様にお届けできるかどうかが任天堂の生命線ですし、それを今後とも続けていきたいと思います。

 それから、任天堂はソーシャルゲームに参入する気はないのか、ということですが、今のソーシャルゲームといわれている仕組みの中にそのまま入る気は全くありません。任天堂のソフトは任天堂のハードでのみ提供するというのが私たちの基本方針です。 一方で、ソーシャル性を持つゲームという意味でいうと、(任天堂は)ソーシャルゲームという言葉ができるずっと前からそういうことをやってきました。人と人とがつながっていくことで価値が高まるような遊びは、ずっと前からやってきました。
 それは、最初のゲーム機にコントローラが二つあって、2人で遊び、NINTENDO64時代にコントローラが四つになり、『ポケモン』で最初はケーブルで人と人とがつながり、無線通信ができるようになり、と進歩してきた遊び、あるいは『マリオカート』や『スマブラ』のような遊びは、すべてソーシャル性以外の何物でもなく、それによって価値が高まっていると私は思っています。また、『どうぶつの森』というソフトが、今のいろいろなソーシャルゲームといわれているものに影響を与えているということも、逆にわれわれは自負しているといってもいいぐらいです。ですから、われわれ自身が今の環境だから、例えばニンテンドー3DSだからこそできる、Wiiだからこそできる、Wiiの後継機だからこそできる、そういうソーシャル性を持った遊びをまた世の中に提案していくことで、任天堂はいわゆるソーシャル時代に対応するのだと思っています。

Q 3

 Wiiの現状分析について。2006年9月の「Wii Preview」の時に、Wiiのコンセプトとして「家族とゲーム機の関係を変える」、「テレビとゲーム機の関係を変える」、「インターネットとテレビの関係を変える」という三つのコンセプトが発表されたと思うが、このうち2番目と3番目については、あまり実現されていないように感じている。この三つのうち、なかなか実現できていないと思われている点に関して、その理由などを教えてほしい。そもそもコンセプト自体が間違っていたのか、方法論が間違っていたのか。
 この三つ以外にも、今現在Wiiの課題と認識している点について教えてほしい。

A 3

岩田:

世帯あたりユーザー数日米比較

 (スライドを示して)これは時々この場でお示ししている一覧表ですが、われわれがゲーム人口調査の中で毎回必ず重要な指標としている「世帯当たり、そのゲーム機のお客様は何人いるか」という平均値です。繰り返し申し上げてきましたが、この値が3を超えるというのは非常に特異なことです。といいますのは、これは1人住まいの方も含めた平均なので、大抵の家で家族全員が参加しているという状況が作れませんと、3を超えることというのはまず起きないんです。その意味で、多くの家族が「Wiiは自分に関係のないものではない」という状況を作ることができたという意味では、Wiiはコンセプトどおりの結果が出ていると思います。
 ちなみに、DSが一番元気だった頃は、日本ではこの数字がDSでさえ3に到達していましたから、これは携帯用ゲーム機としては非常に特殊なことだと思うのですが、現状はWiiでもピーク時よりは少し下がり気味なわけで、これは一つの課題です。すなわち、一度Wiiを触っていただいたけれども、継続的に触っていただけていない。アメリカではお客様は増えているけれども、日本ではお客様はちょっと減ってしまいました。お客様はWiiではずっと増えてきていたのですが、減少に転じてしまいました。すなわち、一度触った人が触り続けるという状況を作り出せていないと。これは大きな課題です。
 それから、「テレビとの関係を変えよう」とか「インターネットとの関係を変えよう」という点で、われわれはいろいろトライしてきましたが、これについては現時点で、決定的な手ごたえが得られた、というところには来ていないと思います。もちろん、「かつてこういうことはしたことがなかった」、「こういうことを味わったことはなかった」と言ってくださっているお客様もたくさんおられますので、すべてが失敗だったと申し上げるつもりは全くありません。むしろ、誰もやったことがないことをいくつもやったと思いますし、流れも作ったと思いますが、ただ、われわれのシナリオというのは、それがもっともっと普及して、もっともっと多くの方に使っていただけて、かつ継続的に使っていただけるようにすることを目指していましたが、そうなりきれませんでした。特にWiiの場合では、例えばチャンネルを切り替えた時の起動時間の問題であったり、あるいは新しいメッセージが届いても、Wiiの電源を入れてテレビの電源を入れてテレビの入力を切り替えて、という操作が自動化できていない現状においては、なかなかわれわれの意図どおり使っていただけないといったことが課題としてあったと思います。私は、コンセプトが間違っていたとは思いませんが、そこまでWiiでは到達できていないということかと思います。

| 1 2 3 4次のページへ

このページの一番上へ