株主・投資家向け情報

2015年5月8日(金) 2015年3月期 決算説明会
質疑応答
Q 7

6か月前の決算説明会の時に、「リージョンロックを外すか」という質問に対して、「検討します」という答えだったが、これに関して現在の検討内容の進捗を教えてほしい。

A 7

岩田:

 現行のゲーム機では、途中からリージョンロックを外すというのはさまざまな課題がありますので、そのことについては現実味がないだろうという理解をしています。一方で、NXに関しては、「そのようなお客様の声がある」または「市場からの提案がある」という前提で、まだ決定はしていませんが、「それを実現しようとするとどういう問題があるか」ということを社内で検討しています。それが現在の状況とお考えください。ご希望は認識していますので、私としては前向きに考えたいと思っています。

Q 8

今回DeNAさん、Universal Parks & Resortsさんとの協業が立て続けに発表され、外から見ていると、「あの保守的な任天堂が変わったな」と感じる。何がきっかけでこんなに変わったのか、そして今後どうなっていくのかというところを聞きたい。山内相談役が亡くなられたということが影響しているかもしれないし、昨年、岩田社長が病気になられたことも何らかの大きなきっかけになったのかと考えているが、どういったことがきっかけで、御社および岩田社長の経営判断の基準が変わったのか、差し支えない範囲で教えてほしい。また、今後さらにアグレッシブな、攻撃的な経営スタンスに変わる可能性もあるのか。

A 8

岩田:

 まず、外部の方から見ると、DeNAさんとの協業を発表し、その1か月半後にUniversal Parks & Resortsさんとの協業を発表したのですから、何か急に任天堂が今年に入って変わったように見えるかと思います。一方で、先ほども少しお話ししましたが、DeNAさんにしてもUniversal Parks & Resortsさんにしても、実際に発表するまでに年単位のさまざまなやり取りを行い、最初にその話を始めた時点から「あり得る選択肢」として考えていたことが、最終的にお互いの思惑がうまく合致して、発表できるような前提が整って初めて世の中に出てきたわけです。

 ですから、変わったように見えるのは今年に入ってからであると感じられるのは当然理解できるのですが、現実に「こういうことに対して変えていこう」というのは、去年の1月の時点で新しく「任天堂IPの積極活用をしますよ」とか、「スマートデバイスの活用を考えますよ」といったことをお話ししたタイミングからいろいろな話が始まり、その話がまとまって外部の皆様にお伝えできるようになったのが最近であると捉えていただくとよいと思います。

 そのことと、山内が亡くなったこと、あるいは私が病気をしたことに直接関係があるかというと、ないと思いますが、2014年3月期に、任天堂が従来のビジネスの構造で目標を掲げてそれが達成できないということがはっきりしたタイミングにおいて、任天堂自身が「これまで通りでいいこと」と、それから「これまで通りではなく変えていくべきこと」を再整理いたしましたので、そのタイミングで任天堂自身が進むやり方が少し変わったということはあると思います。

 それからもう一つは、きっかけというのは、提携の場合は相手様があってのご縁ですから、例えばDeNAさんとの協業について言えば、DeNAさんが自社の看板や、あるいは仮に「モバゲー」というブランドにこだわっておられる状態の時であれば、このような話は恐らく成立していなかったと思います。これは3月17日の時にもお話ししたことですが、DeNAさんの守安CEOは「自分たちは黒衣でもいいんだ」「一緒にやれることに意味を感じる」ということを踏み込んでお話しされましたし、先ほどのUniversal Parks & Resortsさんの件で言えば、最初にお会いした時に非常に具体的なご提案をいただけました。

 あるいは、DeNAさんに関して言えば、「モバゲーに任天堂のIPを貸してくれませんか」という話はずっと前にあり、その時はその話は成立していないわけですけれども、その後も何度もアプローチをくださいました。そういう意味で、相手あってのことですので、「相手様も任天堂との協業に対して情熱を持ってくださっている」ということがあり、「任天堂と強み弱みのうまい補完関係ができ」、「企業文化的に一緒にやれるという確信が持てる」という、いくつかの条件が揃うから(提携が)できるわけです。

 ですから「任天堂は2014年1月に方針を変えたので、どんな相手ともどんどん組んでいく」ということではなくて、任天堂が「今までやらなかったようなこともやっていこう」と決め、そこにご縁があって、いくつかの会社さんとのお話が進み、その中で(外部に)お話しできるようになったものが最近複数できたので、それが立て続けに発表されたように外部からは見えている、というような流れであると考えていただくといいと思います。

 ちなみに、最後にあった「さらにアグレッシブに」ということですが、「アグレッシブに」ということをどう捉えるかによって、その答えは変わります。例えば、相手様と企業文化が合わなくても、強み弱みの補完関係がうまくマッチングしなくても、世の中で話題になって、例えば「短期に株価にポジティブなインパクトがあるようなことであればどんどんやる」という意味でのアグレッシブであれば、任天堂はそういう考え方を持っていません。あくまで私は、提携をするのであれば、「中長期的に企業価値を向上できるかどうか」「それが結果につながるかどうか」が一番大事だと思います。結果につながるという確信がなければやる意味がないと思いますし、お互いにマイナスだと思います。

 一方で、「そういう相手をアグレッシブに探さないのか」「そういう可能性をアグレッシブに追い求めないのか」ということで言えば、環境変化がこれほど劇的なわけですから、これからも任天堂単独でやるよりもどこかと組んだ方がいい(という選択肢があれば)、その組み方に関しても、パートナーシップもあれば、アライアンスもあれば、さらには踏み込んで資本提携やM&Aも含めて、あらゆる選択肢を排除すべきではないと思っています。その意味では、よりアグレッシブな考え方を持っていて、任天堂も組織全体がそういう方向にどんどん進みつつあるという意味で、アグレッシブと言えると思います。ですので、「アグレッシブ」という言葉が変に一人歩きしなければ、答えは「イエス」です。

Q 9

いま一度、中期的なスマートデバイスのソフト戦略について整理させてほしい。ここから1、2年の私なりのイメージは何となくできてきたが、スマートデバイスゲームは(ゲーム専用機のパッケージ版ソフトのような売り切り型ではなく、配信開始後に継続的に更新される)「サービス」とは言うものの、リリースから1週間でランキング上位に駆け上がって瞬間的に結果が出るケースも散見されるが、岩田社長の話を聞いていると、どちらかというと徐々に長期的に売上を伸ばしていくようなイメージなのかと思っている。そうすると、例えば今後、年間3本、4本の新作タイトルをコンスタントにリリースしていくような戦略になるのか、それとも合計5本程度にいったんとどめて、その運営を5年、10年と長く丁寧に継続することで収益を伸ばしていくような戦略になるのかを確認したい。

A 9

岩田:

 スマートデバイスゲームの中には新しくリリースされた瞬間にランキングを駆け上がるものがあるというお話が今ございました。これはユーザーとしての皆様も共感されるのではないかと思うのですが、スマートデバイスゲームは、ランキングの上位に載るものしかなかなかダウンロードしていただけないという現実があります。非常にたくさんの選択肢があることは、お客様にとってとてもよいことなのですが、同時に選択肢が多過ぎて選べないので、ランキングの上位にあるものにしかお客様のアテンションはほとんど集まらないという現実があり、その観点からはリリース直後の短期間に一定以上の数をまずダウンロードしていただくことは絶対に必要になります。ただ一方で、スマートデバイスのアプリの大半は、ダウンロードされても1回だけ15分程度遊ばれたあとは二度と起動されないという現実もあり、お客様が「また起動しようと思い、毎日遊ぼうと思い、遊ぶのが習慣になり、お金を払ってでも遊ぼう」と思っていただけるところにまで達しようとすると、それなりのハードルがあることも事実です。私が「サービス」ということを強調したのは、「最初に無料でダウンロードをして、そこでいかにアテンションを得て、短期にまずたくさんの人にダウンロードしていただく」ということを決して軽視しているわけではないのですが、本質はそこではなく、「どうすれば起動し続けていただけるのか」、「最終的にお金を払ってでも続けたいと思っていただけるところまでいくのか」、その時に、「どういうお金の払い方であればお客様は納得され、継続的なビジネスができるのか」という、そういったところに肝があると考えているからで、それが「サービス」としての本質だと思っています。

 今の時点で、私たちが当初リリースするアプリの寿命が一体何年あって、何年間お客様に飽きずに遊び続けていただけるかということは誰にもわかりません。なるべく長寿命にしたいと考えていますし、次から次へとコンテンツを消費するよりは、コンテンツとしての寿命が長くて、ずっと世の中に存在し続け、今までゲームを触ったことがないお客様にとってのエントリーソフトにもなり、まず遊ぶべきものとして認知していただけるという状況がつくれれば、私たちのスマートデバイスのビジネスにとってもメリットがあります。さらに、スマートデバイスソフトを通じて任天堂のキャラクターのいずれかが非常に多くの皆様に認知され親しみを持っていただければ、今度はそのIPを活用したほかの活動で、それは私たちの本業の専用機のゲームがそうですし、それ以外にも、例えばUniversal Parks & Resortsさんと行うテーマパーク展開もそうでしょうし、もしかしたら映画や映像ビジネスになるのかもしれませんが、任天堂IPを活用した活動全体のためになりますので、そうあった方が望ましいと思っています。ただ一方で、お客様がいらっしゃらないのにサービスを永遠に、コストを出して続けることはビジネス上できません。長い寿命にしたいとは考えていますが、5年、10年になるかどうかは、私たちのサービスをお客様がどうご評価いただけるかで決まることですので、今日「5年、10年にします」と言うのは、まだ始めてもいないのに発言すべきことではないと思います。一方で、新作を一切出さなくてよいかと言いますと、そうではないと思いますので、定期的に新作を出していくことになるとは思います。ですが、それがどういうペースになるのかは、逆に言えば私たちのコンテンツの寿命をどの程度長くできるかにも関わってきますので、今日の時点で年間何本と申し上げるよりは、最初に世に問う4本、5本が実際にお客様にどの程度評価されるのかを実際に確かめたいと思います。スマートデバイスのアプリで成功されている会社さんも、1本目のヒット作の次の2本目を出すのにみなさん苦労されており、もし任天堂が私たちのIPの認知度や知名度をうまく活用して、比較的早いタイミングで複数のヒットと呼んでいただけるものをつくり出せたら、それは世の中にご評価していただけるポイントになると思っています。それを実現した上で、その寿命に応じて新作の投入ペースを調整していくというような考え方になると思います。

 それから、今のことに関連して、「多くの方が任天堂のIP活用戦略について誤解されているようだ」と当社のIR担当から聞いていますので、一つお話ししておきたいことがあります。任天堂は(2014年1月の経営方針説明会で)今後は、「任天堂IPを積極活用します」と申し上げました。この「任天堂IPの積極活用」というのはつまり、任天堂が数多くのライセンス活動を行い、任天堂IPがさまざまな場所に進出していって、そのライセンス収入を最大化させることが任天堂のIP活用戦略なのではないかとお考えになり、その結果、例えば「他社さんのIP活用とどこが同じで、どこが違うのですか?」というような疑問をお持ちの方がおられるようです。

 任天堂にとっての「IPの積極活用」というのは、最終的に任天堂のゲームビジネス、それはゲーム専用機はもちろん、これからはスマートデバイスビジネスもそうなっていくわけですが、自らが手掛けるこういうゲームソフトビジネスのための戦略です。ゲームソフトのビジネスというのは、うまくいった時には収益性が非常に高くなります。開発のために一度お金をかけて、マーケティングに1回お金をかけると、200万本売れても1,000万本売れても、任天堂のコストはあまり変わらないのに、収入は劇的に変わるため、結果、うまくいった時は任天堂の業績が大きく向上します。WiiやニンテンドーDSの時に任天堂が非常に大きく業績を伸ばすことができたのは、まさにそういった状況になったわけですが、幅広いお客様に任天堂のゲームで遊んでいただくきっかけをつくるために任天堂IPをさまざまな場所に出していくということを考えているわけです。もしもライセンス収入の最大化を目指すということであれば、ライセンスのアイテム数をいかに増やすかということに重点が置かれるわけですが、ポイントはそこにあるわけではなくて、私たちにとって一番収益性の高いビジネスは自社のゲームソフトビジネスですので、そこに、お客様のアテンションが集まったり、認知をしていただいたり、親しみを感じていただけるようにするために、「ニンテンドーIPがどういう場所に出て行くと任天堂にとってプラスになるのか」、それも、「短期でなくて中長期、また、キャラクターやIPが消耗され・消費されるのではなく、価値が積み上がっていく方向にどうすればなるのか」、ということを重視しています。

 先ほどスマートデバイスゲームに関して、長寿命の方がよいというふうに申し上げましたのは、短命で終わってしまいますと、そのコンテンツは古びて終わってしまったものになってしまうからです。例えば『スーパーマリオ』は今年でちょうど30周年ですが、一つのIPが30年間寿命を持って、決してピーク時から価値が極端に減っているわけではなく、むしろ、知っている人の数で言えば今が一番多いかもしれないというような状況がつくれているのが私たちのIPの価値だと思っていますので、そういうことが実現できるような任天堂IPの活用でなければならないと考えます。世の中の多くのライセンスビジネスにあるような「ライセンス収入の最大化を狙うIP活用」ではなく、「任天堂のゲームで遊んでいただける人の数を最大化し、任天堂IPの価値が中長期的に積み上がっていくための任天堂IPの積極活用」だとご理解いただくと、任天堂がこれから行うことや、一見やればよさそうに思えるのにやらないことの理由が正しくご理解いただけるのではないかと思います。スマートデバイスゲームも同じように位置付けられていくと考えていただくと、先ほどお話ししたこととつながるのではないかと思い、補足させていただきました。

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