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ニンテンドー3DSとWii Uのソフトにはパッケージ版とダウンロード版があるが、現在ダウンロード版の実売価格のほうが高くなっているように感じる。パッケージ版のほうが(小売店の値引き等により)実際は安くなっており、ダウンロード版との価格差が生じているが、この点をどのように思うか。 |
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取締役社長 岩田 聡: ゲームを遊ばれない株主様もいらっしゃると思いますので、今のご質問について少し補足をさせていただきます。ニンテンドー3DSやWii U向けのソフトには、「パッケージ版」というROMカードや光ディスクの形で(パッケージと呼ばれる箱に入れて)販売しているものと、「ダウンロード版」というインターネットを介してソフトの中身を送信する方法で販売しているものの2つの販売形態があります。これらに関して「(自社で直接ダウンロード販売を行っている)『ニンテンドーeショップ』では通常値引きはしていませんし、小売店さんではダウンロード版よりもパッケージ版のほうに対して(より大きな)値引きをされていることが多いため、実売価格はダウンロード版のほうが高いのではないか」ということがご質問の主旨かと思います。 パッケージ版とダウンロード版の価格に関しては、当社としてはソフトの価値を大事にしたいと思いますので、「(ソフトとしては)両者の価値は同じなのだから、同じ価格で売るべきだ」と考えています。しかし、これにはいろいろな考え方があり、例えば「ダウンロード版は中古に売れない」「ダウンロード版は店頭での値引きがあまりないし、メーカーが直売する場合はそもそも値引き自体がない場合もある」といったことを重要視されて、ダウンロード版の価格を下げておられるソフトメーカーさんも存在します。このように、パッケージ版とダウンロード版の価格差はソフト販売元の会社さんの考え方が反映されますが、当社としては、「ソフトとしての価値が同じである以上、同じ価格でお客様にご提案したい」と考えています。 では、なぜ実際には価格差が生じるかについてですが、パッケージ版とダウンロード版は小売店さんのビジネスリスクが違います。パッケージ版は、小売店さんが箱に入ったソフトを注文された時点で在庫リスクがそのまま発生するのですが、ダウンロード版は、「ダウンロードカード」が店頭のレジを通って、お客様がお金を支払われた時点で、小売店さんの仕入れと支払いが同時に起こるというシステムになっており、在庫リスクが発生しません。このように、パッケージ版とダウンロード版は小売店さんにとって在庫リスクが違いますので、それを考慮して当社は両者の卸価格に差を設けています。しかし、最終的な小売価格は当社が決めるものではなく、各小売店さんが決定された結果としてパッケージ版とダウンロード版の小売価格に差が見られるとご理解ください。 なお、ダウンロード版をたくさん買っていただくお客様にとっては、すべてがパッケージ版より割高だと、何となくすっきりしないお気持ちがあると思います。当社は「クラブニンテンドー」に代わる新しいメンバーシップサービスを今開発しており、その中で、お客様一人一人に任天堂が(個別の)ご提案ができるような仕組みも用意しようと考えています。今年の秋以降、新しいメンバーシップサービスが始まりますので、具体的にはそのときに詳しくご説明したいと思います。 |
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当社の単位取得株は現在100株だが、これを少なくして、10株、20株単位にはならないか。100株だとちょっと高いように感じる。前々から意見があったと思うし、社長も株券の電子化後に考えたいと言っていたが、一般投資家にとって魅力のある株式取得単位まで下げる考えはないか。 |
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岩田: 「任天堂は最低投資単位の金額がちょっと高すぎないか」、「分割あるいは投資単位の引き下げをすれば、株主数が増え、結果、株価にもプラスではないのか」というようなご質問が過去の株主総会で何度か出たことがありましたが、これはもちろん検討すべき課題です。当社株式の投資単位は100株単位で、東京証券取引所の上場規則上、昔は1株単位とか10株単位というのもできましたが、今はいわゆる単元株式数を100株から変えることはできません。これはかつて、誤発注問題などいろいろなことがあって、「この方が(株式の売買単位を100株に統一した方が)混乱がないだろう」ということから決まった規則だと認識しています。 ですから、投資単位を引き下げるためには株式分割を行う必要があります。株式分割が投資家の皆様の拡大、あるいは株式の流動性を高めるための有効な施策であることを主張される方がおられるのも事実ですし、そのようにして結果を出されている会社もあります。一方で、過去の株主総会や会社のIR窓口に対する株主様からのご提案やご意見等でもあったことですが、株式分割をすると、「任天堂株にいわゆるプレミアム感がなくなるので反対である」というご意見をいただいたこともありますので、実態としては、株式分割に関しては賛否両論があると理解しています。そのような前提を踏まえますと、株式分割については慎重に検討した上で結論を出したいと考えています。 |
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ニンテンドー3DS、Wii Uと2機種続けて立ち上がりに失敗したという印象がある。3DSは、値段を下げてサードパーティーのソフトを大量に取り込むことで立て直したようだが、Wii Uではそれがうまくいっていない気がする。新しく発売されるNXにおいてもそのような心配があるが、同じ過ちを犯さないためにどのような取り組みをしているのか。支援が手薄なサードパーティーとの協力関係についても教えてほしい。 |
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岩田: ニンテンドー3DSもWii Uもご質問にありましたとおりで、特にWii Uに関しては、立ち上がりがうまくいったとは言えない状況だと思います。3DSに関しては、国内では一時期確かに失速しましたが、いくつかの施策をまとめてご提案することで、なんとか立て直すことができました。しかし、Wii Uはその立て直しが今のところうまくいっているとは言えません。そのため、どうしてもプラットフォームとしての普及規模がニンテンドーDS時代あるいはWii時代に比べて見劣りして見えると思います。それは実際、会社の収益性にも影響しています。ただ、振り返ってみますと、DSが最初からものすごい勢いで売れたのかと言いますとそうではなく、最初に失速しかかったタイミングで『nintendogs』や『脳トレ』に代表されるような新しいジャンルのソフトをいくつかご提案し、それまでゲームを遊ばれなかったような方まで含めてたくさんの方にご支持いただいたことによって結果的に立て直すことができ、非常に大きなビジネスになったという経緯があります。プラットフォームのビジネスには「勢いのビジネス」という側面がありますから、「スタートダッシュができて、すぐ勢いに乗れる」というのが理想ですが、任天堂の過去いくつかのプラットフォームを振り返ってみますと、そういうことが100パーセントできたと言えたのはWiiのときぐらいで、DSでも出足には反省点がありました。その中でWii Uは最もうまくいっていないというご指摘はそのとおりかと思います。 また、NXという言葉が出ましたので、少し補足させていただきます。本年3月17日に任天堂がDeNAさんとの協業を発表したときに、「任天堂はNXという名前の新しいゲーム専用機を今開発しています」ということを申しあげました。これは、その時点で世の中に「任天堂はゲーム専用機ビジネスをあきらめて、スマートデバイスのソフトの開発に専念するのではないか」、あるいは「そうあるべきではないのか」というような意見をお持ちの方が一定数以上いらっしゃり、また、メディアにもそういう論調が頻繁に出ていましたので、「任天堂がゲーム専用機ビジネスの未来に決して悲観をしているわけではなく、むしろこれからもますますやる気なんだ」ということをお伝えする必要があると考えて、お話をしました。しかし、通常新しいプラットフォームについて具体的な情報をお話しするのは、本来もっと後にしたいと考えています。と言いますのは、娯楽のビジネスというのは、「お客様に驚いていただくことに価値がある」という側面があるため、手品の種をあらかじめお客様にご説明して、実際に手品を演じてみせて「さあ驚いてください」、「喜んでください」と言っても、あまり説得力がないからです。ある種のサプライズがあったり、意外性があったりして初めて、新しい提案というものは世の中に驚きをもって迎えられるわけです。ですから、「NXについて次に情報を発信するのは2015年中ではなく、2016年になってからです」ということは繰り返し申しあげているのですが、いろいろな場所で取材を受けますと、私が何か発言すればニュースバリューがあるからだと思いますが、必ずと言っていいぐらい(NXについて)聞かれます。このようなこともあり、今日はNXがどういうものなのかは具体的には申しあげませんが、ニンテンドー3DSやWii Uの立ち上げが必ずしも順調でなく、ソフトメーカーさんのサポートを十分に得られなかったということに関して、「任天堂らしい答えの出し方でNXというものを提案しよう」という意志は持っております。前世代の反省を活かすため、さまざまな検討と準備をしているとご理解ください。 ちなみに、ソフトメーカーさんがハード選択の基準にされるのは、やはり普及台数だと思います。普及台数が多い、あるいは多くなりそうだとたくさんの方が信じれば、より多くのソフトメーカーさんに協力していただけるという側面があります。もう一方で、任天堂はいろいろなソフトメーカーさんとコラボレーションをしています。E3という今月アメリカで行われたゲーム業界最大のゲームの見本市では、いろいろなソフトメーカーさんから一緒に何かやれないかというお話をさまざまな形でご提案いただきました。また、日本のソフトメーカーさんとは普段から当社の業務部が密接に関係を持っています。ソフトメーカーさんのタイトルやソフトメーカーさんとのコラボレーションについては、いろいろ水面下で進行しているとお考えください。 |