岩田: |
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ソフトの低価格化には反対であるということを私が申しあげたにもかかわらず、任天堂は脳トレを2,800円で売っていることへのご質問じゃないかと思うんですけど、私が、ソフトの低価格化に危惧を持っておりましたのは、本来、ボリュームをたっぷり作り、ものすごくコストをかけて作って、最初は非常に高い値段で売られたソフトが、非常に短い時間の間に、どんどん値段が下がるという流れがですね、非常に悪い循環を生んでいるのではないか、というポイントにございます。ソフトというのは表面上のハード的な原価ではなくて、その上に載った無形のものの価値で、実際に光ディスクそのものを作るには、そんなにお金がかからないのに、それ以上の値段を認めて買っていただいている、ということが成立しているわけですから、その意味で、イタズラに値段を下げたり、あるいは高かったものをあっという間に値下げしていったりすれば、それは価値がどんどん下がって不健全じゃないですか、と言えると思います。私どもは、一方で、ソフトには、ソフトによってボリューム感に応じた、テーマや内容に応じた、あるいは場合によっては、それは開発に要したエネルギーや時間や、最終的には開発コストと言えるかもしれませんが、そういうものに応じた、適正な価格帯というのはあるのではないかと思っています。あらゆるものが、例えば、今でしたら携帯型のゲーム機は4,800円というのを私どもは一つの標準価格帯においていますが、「全部4,800円です」としたときと、その全く新しい方に興味を持っていただくために、非常にシンプルでコンパクトに作ったものを違う値段帯、安い値段帯で興味を持っていただくというのとでは、広がり方が全く違うと思うんですね。逆に言えば、かつてゲーム機を普及させようと思えば、ハードの値段を下げるか、ソフトのおまけをつけるかしかないっていうのが業界の常識であったのに、今回DSでは、2,800円のソフトで遊びたいために、15,000円または16,800円のハードを次々買っていただけたという新しい流れができたというところに価値があると思っています。で、テーマごとにあるいはボリュームごとに、適切な価格帯を選びたい、そして一度つけたものは、未来永劫変えないという必要はないでしょうけども、例えば5年前、10年前のものであれば、当時と同じ値段である必要がないのですが、半年たったら値段が下がっちゃう、9ヶ月たったら値段が下がっちゃうでは、「早く買ったら損だ」、ということをお客様がどんどん学習しますので、ますます新作が売れにくい流れを作ってしまう、ということで、そこに一線をおきたいということですね。 |
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