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杉森建のときどき更新されるれろ
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第8回「ディレクターとしてのやりがい」
その1「自分にはないセンスが楽しい」
2007.04.25
 と、このような苦労を経て出来あがった北米版『スクリューブレイカー』すなわち『DRILL DOZER』が、2006 Nintendo Power Awards(米国『ニンテンドウパワー』誌が選ぶ2006年度のベストゲーム)で、GBA部門の“Game of the Year”を受賞しました! アメリカではああいったアクションゲームの人気が高いので、ウケるといいなーとは思っていましたが、まさか賞がいただけるとは! ギアが8速にドリアップしたぐらいうれしいですね〜。
DRILL DOZER
“Game of the Year”を受賞

 さて。ぼくは『スクリューブレイカー』ではディレクター業に専念したわけですが、そのときにまず考えたのは、キャラクターデザインをうちの吉田(宏信)に任せた以上は、彼からあがってくるデザインを可能な限り受け入れよう、ということでした。
 自分も絵描きですから、他人が描いた絵を見れば、どうしても「ここはああしたら、こうしたら」という思いが湧いてしまうものです。でも、自分以外の人間にデザインを任せたということは、それは“自分にないものを期待した”ということですから、できるだけいいところを見つけてOKを出すようにしたんです。
 くるりは「眉毛がヘンだ」と言われることが多いんですけど、あれはあれでいいのです。いや、最初はもっと太かったほどですよ。それをちょっとだけ細く修正はしてもらいましたけど、基本的には元のデザインが活きています。最低限の造形として眉毛にすら見えないようでは困るけど、ヘンな形の眉毛は『スクリューブレイカー』においては全然アリだったのです。
 他にも、キャリー警部やプロフェッサー・アイゼンなど、ぼくのセンスでは絶対に出てこないデザインのキャラクターがゾロゾロ出てくるので、作っている最中からして非常に楽しかったのを覚えています。
 というわけで、この話の続きは次回の更新で。ギュイ〜〜ン!

その2「描くおもしろさ、まとめるおもしろさ」
2007.05.08
 おそらくこれが10年前の仕事だったら、自分がディレクターに徹してデザインにはタッチしない、という仕事のやり方をするのは難しかったでしょう。でも、『スクリューブレイカー』では、ちゃんと形にすることが出来ました。それはもちろん、吉田をはじめとするゲームフリークのグラフィックスタッフが皆いい仕事をしてくれたからですが、それ以外にも、自分自身がこの10年間で少しずつ変わってきたことが影響しています。
 ご存知のように、ぼくの主な仕事は『ポケモン』のアートディレクションです。自分でポケモンのデザインを考えるだけでなく、各スタッフから出てくるデザインをチェックし、ときには修正の指示を出し、全体のイメージを統一してやらなければなりません。
 それこそ、最初の頃は自分の考えるデザインと違ったものが出てくると、直したくて直したくて仕方なかったりしたものです。でも、最近は「自分のセンスとは違うデザインにこそ価値がある」と思えるようになってきたんです。なぜなら、様々なセンスを持ったグラフィックデザイナーが集まって、様々な形態のポケモンをデザインする。そうすることで種族に多様性が生まれ、そこにポケモンの価値生まれるんだ、ということがわかってきたからです。
 この10年間、そうした仕事の仕方を無意識に続けてきたせいで、今回の『スクリューブレイカー』でも、安心してひとにデザインを任せることが出来ました。
 ぼくは、ゲームで遊ぶのと同じくらい絵を描くことが好きですから、絵の仕事は今後もずーっと続けていくつもりですが、『スクリューブレイカー』のように、ディレクションに徹する仕事もまたいつかやってみたいなと思っています。

 では皆さん、ごきげんよう。ドリャ〜〜ッ!