衣替えの季節です。厚くて重たい服を脱いで、軽やかな夏服へと着替えるのはヒトだけではありません。木々の緑は濃さをまし、昆虫は幼虫やさなぎから成虫へ。身近な花やいきものたちも、夏の装いをはじめています。
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ソラマメの大きなさやが店先に並びはじめる頃です。ゆでたり、さやごと焼いて食べたりするとおいしいですが、この緑色の豆は、じつはまだ若い未熟なものです。熟して乾燥させた豆は料理やお菓子に利用されます。「お多福(たふく)豆」と呼ばれるものもソラマメの仲間です。豆の太くて黒い筋は「お歯黒(はぐろ)」と呼ばれ、ここから根が出てくるので、畑にまくときにはお歯黒が下になるようにします。
漢字では「蚕豆」と書きます。蚕(かいこ)の字がついているのは、豆の形がカイコガのまゆに似ているから、あるいは養蚕のシーズンに実が熟すからともいわれます。「空豆」とも書き、これは豆のさやが初夏の青空に向かってつくからとか。南西アジア・北アフリカ原産の、世界最古の農産物ともいわれ、人類とのつきあいは古代ギリシア、エジプト時代にまでさかのぼるそうです。日本には奈良時代のころに伝わりました。
ところで、ソラマメの花を見たことがありますか?
夏に豆がみのるソラマメの花は、春に咲きます。黒い斑点が特徴的な花の形を覚えたら、「ビジュアル目次」で姿の似ている花を選んでみてください。その多くが、ソラマメと同じマメ科の花だということがわかるはずです。コラム「チョウ型の花」を見れば、ソラマメをはじめとするマメ科の花の秘密がわかりますよ。ビジュアル目次には同じ科の植物をまとめてのせてありますので特徴がわかりやすいと思います。
ホオノキって知っていますか? ヒントは、6月ごろにとても大きな白い花がたくさん咲く木です。花は直径15cmほどにもなり、日本の花木では最大級。山や雑木林にはえています。このヒントをもとに、「バラエティ検索」の「植物」から探してみてください。
じつはこの木は、庭木としても植えられたり、その木材は食器や下駄、鉛筆やマッチの軸などにも使われたりする身近なもの。幅が広くて大きな葉も、よい香りがして薬効があるといわれ、古来ご飯や餅(もち)などを包むのに使われてきました。また、厚みがあって火にも強いので、味噌をのせて焼いたりもします。「朴葉味噌(ほおばみそ)」は、岐阜県の飛彈高山地方の郷土料理として有名です。飛彈地方にはホオノキが多かったのと、冬場の寒さが厳しかったため、囲炉裏(いろり)などの火にかけて暖めるという工夫がなされたのだと思います。
潮干狩りにいくと、甲羅の幅1cmほどの小さなカニが、泥の上ではさみを上げ下げしている姿を見ることがあります。チゴガニです。干潟のカニは、そこをおとずれる渡り鳥たちにとっては貴重な食糧。「いきものリンク」をたどれば、どんな鳥たちがチゴガニをつかまえてエサとしているのかがわかります。「海辺のカニ」のコラムには、同じ海辺でも、干潟や河口近くや砂地や泥地など、環境によっていろいろな種類のカニが登場します。知っているカニは見つかるでしょうか?
6月10日は雑節(季節を表す暦のことば)で「入梅(にゅうばい)」にあたります。初夏の長雨の季節・梅雨のはじまりです。梅雨があるのは日本だけでしょうか?いいえ、韓国や中国にも梅雨があります。中国語でも「梅雨(メイユー)」といいます。また、昔の日本では梅雨のことを「五月雨(さみだれ)」とも呼んでいました。梅雨の季節は旧暦では5月にあたるからです。だらだらといつまでも続くことを「五月雨式」というのはここからくるのですね。
来月には梅雨空も明け、いよいよ夏も盛りとなります。次回は、夏の食卓にいろいろな形で姿を見せる身近な野菜をテーマにします。「緑のカーテン」といえばこれも……。予想がつきますか?
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