花といきもの立体図鑑

2012年 7月号

梅雨があけると陽射しがまぶしさを増してきます。もうすぐ夏休み、今年はどんな計画をたてていますか? 家の近くや旅行先で見つかる花やいきものをじっくり調べて、自分だけの「いきものノート」をつくるのもいいですね。

今月のおいしい話題

キュウリ

※ニンテンドー3DSでご覧の方は、上記写真をタッチペンで長押すると、立体写真をご覧いただけます。

今月の写真、何かわかりますか? つるっとした緑色の表面に真珠色のオタマジャクシ? じつはこれ、キュウリのとげです。とげはもともと、中の種子が完熟するまで食べられないように身を守る役目を果たしていたといいます。とげはさわるとぽろっと取れるので、鮮度を知る目安にもなります。けれども、とげが落ちたあとから腐敗菌が入っていたみやすくなるので、近年はとげのない品種も栽培されるようになりました。

インド北西部原産のキュウリは、平安時代にはすでに日本でも栽培されていました。今でこそ完熟する前の青い実を食べますが、織田信長の時代に日本を訪れたポルトガル人宣教師ルイス・フロイスによると、そのころの日本人は黄色く熟したキュウリを食べていたそうです。昔と今とでは食べごろが異なっていたのですね。

輪切りにした切り口の模様が、徳川将軍家の家紋、葵(あおい)に似ていることから、江戸時代の武士は畏(おそ)れおおいとキュウリを食べるのを避けたといいます。また、祗園祭などで有名な八坂神社の社紋は、木瓜(キュウリ)そのもの。このため、京都の祗園祭や博多の祗園山笠のあいだ、地元ではキュウリを食べないという風習が残っています。

さて、伝統的に親しまれてきたキュウリには、宇宙開発にかかわる新しい一面もあります。ぜひコラム「宇宙の生物」で確かめてください。

さがしてみよう(花編)

ベニバナ

「花といきもの立体図鑑」の中で、日本全国を旅してみましょう。「バラエティ検索」の「ご当地」を選ぶと、各都道府県にゆかりのある花やいきものを探すことができます。

たとえば、山形県の特産品のひとつは県花でもあるベニバナ。飛鳥時代に日本にもたらされた有用植物で、花を赤色の染料として使うため、江戸時代にはさかんに栽培されました。平安時代の『源氏物語』に出てくる「末摘花(すえつむはな)」とは、このベニバナのこと。鼻の先が赤い姫君に、光源氏が「花が紅(あか)い」にかけてあだ名をつけました。

さがしてみよう(いきもの編)

ヤママユ

暑さが日に日に厳しくなるころ、クヌギやコナラなどブナ科の雑木林では、青葉の上で、長さ5cmほどのイモムシがせっせと糸を紡(つむ)いでいます。ヤママユというガの幼虫です。ヤママユは美しい黄緑色の繭(まゆ)をつくり、その中でさなぎとなって夏の猛暑をしのぐのです。ヤママユの繭からは、貴重な緑色の絹糸がとれます。同じように繭をつくるガの仲間には、ウスタビガや、カイコの先祖といわれるクワコがいます。詳しくはコラム「絹糸がとれる昆虫」をご覧ください。

季節のことば

半夏生

7月1日は季節の暦である七十二候の「半夏生(はんげしょう)」です。ここでいう「はんげ」とは、カラスビシャクの別名。この花が咲けば夏も半ばの折り返し、「半夏」の時期というわけです。カラスビシャクの根茎からとれる生薬も「はんげ」と呼ばれ、胃腸などに効く漢方薬に用いられます。

ところで、カラスビシャクはサトイモ科ですが、ドクダミ科にもハンゲショウという名の植物があります。このハンゲショウもまた、半夏生のころに花を咲かせることから名づけられたといわれています。

今月の情報はいかがでしたか? 来月も、日本で古来食されてきた旬の野菜が登場します。ヒントは「牛馬」です。どうぞお楽しみに!

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