CSR情報

任天堂に関わるすべての人を笑顔にする

2018年に実施したCSR工場確認の様子

サプライチェーン

サプライチェーン全体で
CSR活動を進めます。

さまざまな取引先と良好な関係を築き、
よりよい商品をお客様に提供できる環境づくりに努めています。

2018年に実施したCSR工場確認の様子

任天堂のCSR調達

任天堂は、ゲーム機や周辺機器などの主要製品について、自社で生産工場を持たない「ファブレス型」の生産体制をとっており、国内外の多くの生産パートナー※1とともに製品の品質や技術力の向上、安全性の確保、生産効率の追求などを行っています。

また、法令・社会規範を遵守し、人権・地球環境に配慮した生産活動を行い、取引先との信頼関係を構築して共に企業の社会的責任を果たすために、購買基本方針・取引先の選定方針を定めています。

サプライチェーン全体でCSR活動を進めていくことで、生産現場の労働環境が改善し、労働者の定着や生産性の向上につながります。それが高品質な製品の生産を支え、環境配慮にもつながり、結果的にお客様をはじめとする任天堂に関わるすべての人を笑顔にすると考えています。これからもコミュニケーションと相互理解を重視し、生産パートナーと協働してCSR活動を推進していきます。

※1 生産パートナー
直接契約をしている一次取引先とその先の製品の組み立てを委託している協力工場や部材の調達先を含んだ任天堂の生産に関わる取引先。

購買活動に関する基本的な考え方

任天堂は、購買活動に関する基準を明確にし、製品の品質向上などを図るために「購買規程」を策定しており、その中で購買基本方針と取引先の選定方針を以下のとおり定めています。

購買基本方針
  • 購買は、国内外すべての取引先に対し公平な機会を設けるとともに、公正な評価のもとこれを行う。
  • 購買に係るすべての活動において、法令・社会規範を遵守すると共に、人権や地球環境への配慮に努める。
  • 適切な物品を適切な取引先より、適切な価格と納期で購入する。
  • 取引先との相互協力、信頼関係の構築に努め、購買を通じて取引先と共に企業の社会的責任を果たす。
  • 製品の調達およびその部材調達においては、「責任ある鉱物調達対応方針」を遵守する。
取引先の選定方針

製品の調達およびその部材調達においては、以下の条件を満たしている企業を優先的に選定し、継続取引の際も優先する。

  • 法令、社会規範等を遵守し、人権や環境への配慮を重視していること。
  • 経営状態が健全であること。
  • 品質、価格、納期が適正水準にあること。
  • 安定供給能力および需給変動に対する柔軟な対応力があること。
  • 任天堂製品に貢献できる高度な技術力を有していること。
  • 情報管理における適切な体制が整っていること。
  • 災害等不測の事態においても、できるだけ速やかに供給を再開できる対応能力を有していること。

CSR調達の仕組み

任天堂では、CSR調達の方針を定め、対応組織を設けて、サプライチェーン・デューデリジェンスを実施しています。

CSR調達の方針

任天堂は、購買基本方針に基づき、購買に関わるすべての活動において法令・社会規範を遵守し、人権や地球環境への配慮を進めることとしています。取引先に対しても、任天堂の方針への理解・協力を求めることとし、「任天堂CSR調達ガイドライン」を定めてCSR調達活動を推進しています。

「任天堂CSR調達ガイドライン」(日本語版・英語版・中国語版)は、生産パートナーとの相互理解の深化と信頼関係構築に主眼を置き、サプライチェーン全体で社会的責任をより確実に果たしていくために、調達活動の責任本部が作成しています。

このガイドラインは、外部専門家からのアドバイスを受けながらRBA(Responsible Business Alliance)※2の基準を取り入れ、人権や持続可能性、倫理的調達といった課題に関連した強制労働の禁止、労働者の人権尊重、労働安全衛生などについて、国際的な関連法令や基準に基づいた具体的な指針を示しています。

任天堂は、ガイドラインの最初の項目として「人権の尊重」を盛り込むなど、人権を重要視しており、サプライチェーン全体において、強制労働や児童労働、囚人労働、奴隷労働、人身取引などを禁止しています。

また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を参考に2018年9月に制定した任天堂人権方針は、任天堂に雇用されているすべての人に対し適用するとともに、サプライチェーンで社会的責任のある行動を実施するよう、取引先へも継続的に働きかけを行っていくことを定めています。

※2 RBA
労働環境の安全、労働者への敬意・尊厳ある処遇など、電子機器業界などのサステナビリティ向上に向けて取り組む業界団体。
任天堂CSR調達ガイドライン
ガイドラインの項目 各項目に含まれる内容例
1.人権の尊重とコンプライアンスの推進
  • 人権の尊重
  • 差別の禁止
  • 児童労働/強制労働の禁止
  • 法規制の遵守(適切な賃金、労働時間、従業員の団結権)
2.労働安全衛生の確保
  • 労働安全衛生に関する法規制の遵守
  • 労働災害の未然防止
  • 安全かつ清潔な職場環境の構築
  • 若年労働者の保護
3.企業倫理と公正取引の実践
  • 賄賂、不適切な利益供与および受領の禁止
  • 優越的地位の乱用の禁止
  • 競争制限的行為の禁止
  • 適切な輸出管理
  • 責任ある鉱物調達への対応
  • マネジメントシステムの構築
  • 不正行為の予防と早期発見
  • 知的財産権の保護
4.地球環境の保全
  • 環境マネジメントシステムの構築
  • 環境影響の最小化
  • グリーン調達の推進
5.製品安全性確保と品質保証
  • 品質マネジメントシステムの構築
  • 製品安全性の確保
6.情報管理の徹底
  • 情報管理体制の構築
  • 顧客/第三者の機密情報の漏えい防止
7.危機管理体制の確立
  • リスクマネジメント体制の構築
  • BCP(事業継続計画)の策定
8.社会への貢献
  • 地域社会への貢献

「任天堂CSR調達ガイドライン」(全文/PDF)(325KB)

CSR調達に関する対応組織

任天堂では、CSR推進部門および調達部門が協働して、外部動向の把握やステークホルダーとのコミュニケーションを行いながらCSR調達に取り組んでいます。CSR推進部門および調達部門は、活動の進捗を経営層にも報告し、CSR調達にかかわるリスクを低減するために取り組むべき対応を協議しています。

また、調達部門の社員はCSR調達に関する教育を受けており、生産パートナーと協力してCSR調達活動を推進しています。

CSR調達検討会における連携

任天堂では、任天堂(日本)のCSR推進部門のほか、海外子会社のCSR担当者、各国の調達部門の担当者などが参加するCSR調達検討会を設けています。この検討会では、CSR調達に関する活動の各国における情報を共有するとともに、活動の方向性を協議しています。

任天堂のサプライチェーン・デューデリジェンス

任天堂は、サプライチェーンにおける環境や人権に関するリスクを評価し、低減することを目的にサプライチェーン・デューデリジェンスを実施しています。その一環として、生産パートナーにおけるCSRの推進状況を把握するために、任天堂CSR調達ガイドラインの周知、書面調査による確認、ヒアリングや現地訪問による現状確認、改善に向けたフォローアップを行っています。

製品安全保証の仕組み図
生産パートナーである取引先の評価・選定フロー
取引先を評価・選定するフロー図
生産パートナーへのガイドラインの周知

任天堂は、任天堂CSR調達ガイドラインをすべての一次取引先に配付し、このガイドラインの遵守についての項目を含んだ取引基本契約を締結しています。一次取引先には、二次取引先以降に対しても当ガイドラインを周知し遵守を求めるよう要請しています。

書面調査による確認

任天堂は年に一度、生産パートナーにおけるCSRの推進状況を確認するため、「取引先実態調査表」「工場実態調査表」という書面調査を実施しています。

「取引先実態調査表」では、経営状況のほか以下のような項目を確認しており、すべての一次取引先から回答をいただいています。

  • 一次取引先における任天堂CSR調達ガイドラインの遵守状況
  • 二次以降の取引先における、任天堂CSR調達ガイドラインまたは同等の基準の遵守状況を確認しているか。

「工場実態調査表」は、生産パートナーの工場レベルでの状況について、強制労働や児童労働・差別が発生しないよう管理・確認しているかという人権に関する事項のほか、労働時間や賃金、妊産婦労働者や若年労働者の保護を含む安全衛生などについて、また、労働者が苦情を申し立てるための内部通報の仕組みについても確認しています。

ヒアリングや現地訪問による現状確認

任天堂の調達部門は、書面調査の結果や取引の重要性、環境の変化などを考慮し選定した生産パートナーに対して、「CSR工場確認」を実施しています。また、CSR調達のさらなる透明性の向上のため、取引状況等をもとに選定した主要生産パートナーを対象に、第三者機関による「第三者監査」も実施しています。

CSR工場確認や第三者監査においては、人権の尊重、労働契約、差別や児童労働および強制労働の禁止、法定賃金の遵守、労働時間の管理、職場の安全衛生など、任天堂CSR調達ガイドラインに定めている項目について生産現場の実情を確認しています。CSR工場確認では、生産パートナーのCSRに関するさまざまな情報について事前に質問票で確認したうえで、リモート会議を行います。その後原則として現地へ直接赴いて確認を実施しています。リモート会議や現地確認においては、生産現場や寮の状況、賃金・労働時間等をサンプリングにより確認することで、生産現場の実情の把握に努めています。

またCSR工場確認は実情把握にとどまらず、生産パートナーとの対話を通じてCSRについての相互理解を深める重要な機会でもあります。

第三者監査では、関係資料を閲覧して、賃金・労働時間などをサンプリングにより確認しています。また、管理者および生産現場で働く労働者への母国語でのインタビュー、生産現場や寮の視察を通じて、労働者の人権が尊重されているかを確認しています。

改善に向けたフォローアップ

CSR工場確認や第三者監査にて把握した課題は生産パートナーと共有し、改善が必要な事項についてはフォローアップ基準に基づき是正を依頼しています。是正された内容は現地訪問またはリモート会議にて確認しています。

CSR工場確認や第三者監査の指摘事項には例えば、非常口表示や避難誘導表示・非常灯の不備、消火器の不備や火災報知器ボタンの押しにくい設置場所など安全衛生面の事項のほか、長時間の時間外労働のような労働面の事項があります。現地に赴いて実施するフォローアップ確認では、消火器や非常灯といった設備が想定通りに改善されたことを確認します。労働時間の状況については、フォローアップ確認に加えその他のコミュニケーションの場において、適切に改善がなされるように継続的に確認します。また、サプライチェーン・デューデリジェンスの一環で実施した各種書面調査、リモート会議、CSR工場確認、第三者監査などの結果を踏まえ、調達部門の責任者が生産パートナーとの取引継続についての最終判定をしています。人権や環境などCSRに関して重大な問題が発覚した際は、改善を求め、改善されなければ責任者による最終判定の結果取引を停止する場合があります。サプライチェーン・デューデリジェンスにおいて、2023年度は取引の停止に至るような重大な指摘事項は確認していません。

CSR調達の仕組みの改善

以下のような取り組みを通じてCSR調達の仕組みを継続的に改善しています。

  • 取引先評価手順の見直し(「工場実態調査表」の改訂によるリスク把握の強化を含む)
  • CSR工場確認や第三者監査の手法の継続的な改善
  • CSR工場確認の実施メンバーの継続的な育成(担当者の認定制度の整備を含む)
  • フォローアップの強化(フォローアップ基準の改訂を含む)
  • サプライチェーンの再評価
  • 任天堂CSR調達ガイドラインの改訂

責任ある鉱物調達

任天堂は、人権侵害や環境破壊、非人道的な武力行為に関わる組織の資金源となっている鉱物や、人権侵害・環境破壊を伴って採掘された問題のある鉱物を、社会的責任の観点から製品に使用しないために、以下の取り組みを行っています。

任天堂の責任ある鉱物調達方針

任天堂は、責任ある原材料調達を実現するため、スズ・タンタル・タングステン・金・コバルト等の鉱物※1のうち、児童労働などの人権侵害、環境破壊、非人道的な武力行為等に関わる組織の資金源となっているものについては、社会的責任の観点から、当社製品に使用しないことを基本方針とし、「任天堂CSR調達ガイドライン」に記載の上、生産パートナーの皆様ご協力のもと、次の取り組みを行っていきます。

  • OECD(経済協力開発機構)の「OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンスガイダンス」等を参考に、当社製品に含まれる鉱物のサプライチェーンの把握に努めます。
  • 取引基本契約書に「任天堂CSR調達ガイドラインの遵守」を盛り込むと共に、そのほかの機会を通じて、生産パートナーの皆様には任天堂の対応方針について周知を図り、これに従った取引を行います。また、このような鉱物を使用しないという方針を策定するよう求めていきます。
  • 今後、RMI(Responsible Minerals Initiative)※2が取り組んでいるRMAP(Responsible Minerals Assurance Process)やそのほかのプログラムにより、紛争地域および高リスク地域で採掘された問題のある鉱物を排除するよりよい調達方法が確立された場合には、生産パートナーの協力のもと、積極的に採用していきます。
※1
「OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンスガイダンス」で紛争地域および高リスク地域であると特定された地域からの鉱物および社会的責任の観点から任天堂にとってリスクが高いと判断した鉱物。
※2 RMI: Responsible Minerals Initiative
責任ある鉱物調達に関する調査ツールの開発などコンフリクトフリー(紛争フリー)に向けた取り組みを推進するイニシアチブ。
https://www.responsiblemineralsinitiative.org/

責任ある鉱物調達に関する対応組織

「責任ある鉱物調達対応方針」のもと、CSR推進部門に加え、調達部門などが横断的な調査体制で取り組んでいます。担当部門は、責任ある鉱物調達に関する書面調査およびヒアリングを行い、その結果を責任者である総務本部長に報告し、責任ある鉱物調達に対応するために任天堂として取り組むべき対応を協議しています。また、直接生産パートナーに赴き、責任ある鉱物調達調査について双方向のコミュニケーションをとることで理解を深めて継続的に改善しています。

責任ある鉱物調達に関する調査に関して

任天堂の製品には、多数の電子部品や電子回路が使われており、これらにはスズ・タンタル・タングステン・金が使用されています。任天堂は、これらの鉱物が含まれる部材を調達しているすべての取引先に調査を行っています。

国際標準のテンプレート(Conflict Minerals Reporting Template)を使用して、一次取引先からサプライチェーンをさかのぼって調査をしています。2023年度の書面の回収率は100%で、受領したすべての回答についてリスクの分析と評価を実施しフィードバックを行うなどのデューデリジェンスを行っています。

またコバルトについても、RMIが作成しているコバルトテンプレートを使用してサプライチェーンにおける流通過程の調査を行い、現状の把握に努めています。

今回の調査では、サプライチェーンにおいてこれらの鉱物の使用が報告された製錬業者は257社ありました。それらについてRMIの製錬業者リストなどと突合せを行った結果、RMI標準製錬業者が256社で、これらはConformant Smelter(RMIの監査等に合格している製錬業者)※3であることがわかりました。

任天堂は、調査の結果Conformant Smelterではない製錬業者を利用している取引先があった場合は、その取引先に対してサプライチェーンをさかのぼって該当の製錬業者へRMAP(Responsible Minerals Assurance Process)監査プログラムへの参加を要請するよう働きかけていきます。仮に問題のある鉱物が見つかった場合には、調達先の変更をするなど、問題のある鉱物の不使用に向けたデューデリジェンスを継続して行います。

※3 Conformant Smelter(RMIの監査等に合格している製錬業者)
RMIが主導する紛争フリー製錬所プログラム評価プロトコルに準拠しコンゴ民主共和国および周辺諸国における紛争に無関係であると認められた製錬業者、もしくはその他の独立第三者の監査プログラムにより紛争に無関係であると認められた製錬業者。

調査結果

RMIの標準製錬業者リストにおいて特定されている製錬業者数(2023年度調査)
タンタル スズ タングステン コバルト 合計
標準製錬業者 97 34 71 35 19 256
Conformant Smelter
(RMIの監査等に合格している製錬業者)
(Activeリスト※4標準製錬業者を含む)
97 34 71 35 19 256

任天堂のサプライチェーンにおいて特定した標準製錬業者リスト

※4 Activeリスト
RMIの監査もしくはほかの認証プログラムの監査を受ける手続きを行っている製錬業者のリスト。