株主・投資家向け情報

2009年1月30日(金)第3四半期決算説明会
質疑応答
| 1 2 3次のページへ
Q 1  トヨタの営業利益を3年ぐらい先に抜くかと思っていたが、今年達成したという非常にいい決算だった。欧米市場についてご説明いただいたが、韓国、中国、東南アジア、インド、ロシアなど、人口の多い国もあるが、いまのそれらの国のゲームの状況と御社の考え方を教えてほしい。
A 1

取締役社長 岩田 聡:

 当然のことながら、最後は人口で市場規模が決まると思っておりますので、中期的には人口の多い国々というのは大変有望なポテンシャルのある市場だと思っております。

 去年の頭ぐらいには、そういうところにもっと力を入れていきたいと思っていましたが、アメリカやヨーロッパでの市場拡大が急激に進むことがわかりましたので、製造できるWiiの台数のほとんどは、既存の市場に持っていかねばならないということで、新興国への展開は来期以降になると考えてきました。

 この間、経済環境の急変がございまして、新興国の経済は、より強く影響を受けているように見えます。そういう意味で、新興市場のマーケットがどれくらいのスピードで開拓できるのかという見通しは、より長い目で見なければいけないと思うようになってきています。

 韓国ではすでにDSが2年続けて暦年(カレンダーイヤー)で100万台ずつ以上売れるところまで来ました。一方で皆さんもご存じのとおり、この間の対円に対するウォン安は非常に厳しいものがあります。ですから、このマーケットでどうやって収益性を保ちながらビジネスをしていくかということのハードルは、以前よりも高くなっているというふうにも感じています。

 ただ、中期的に見ますとやはり人口が多い国々というのは、将来DSやWii、あるいは将来の製品群でも、大きなポテンシャルがあると思っていますので、中期的な課題と考えて取り組んでいきたいと思っています。

Q 2  海外ソフトメーカーの発注が保守的になっているというお話ですが、サードパーティの動向について、もう少し詳しく教えていただきたい。特に海外のソフトメーカーが大規模なリストラを行った影響で、今後のソフト販売に変更が生じる可能性も考えられる。御社のゲーム人口の拡大戦略は、サードパーティにも十分受け入れられていると考えるので、他社ハード向けソフトに比べて御社への影響は比較的少ないと考えてはいるが、今後御社のソフト販売に与える影響が深刻化する恐れがあるのかどうか教えていただきたい。
A 2

岩田:

 当然のことながら、個別に名前を挙げて状況を申しあげられませんので、一般論としてお話しさせてください。いくつもの大手のソフトメーカーさんがかなり財務的に厳しいとか、リストラをするというような発表がされているのは、皆様もご存じのとおりです。

 一方で、ほんの数年前、Wiiを発売する前とか、そのまた前の年ぐらいを思い起こしますと、Wiiがこのような販売結果になるということを予測できた人は、おそらく業界の中に一人もいないと思います。当然、任天堂は「何とか今回は一番売れるハードにしたい」と思ってはいましたが、われわれ自身、これほどの結果が予想できたかというと、正直申しあげてそんなに私はおめでたくないですから、私たちにとっても予想を超えることがいま起こっています。

 が、それはソフトメーカーの方々にとっては、もっとそうだったと思います。これまでも(取材に対する)対外的なコメントで、「間違った馬に賭けてしまった」、「路線を修正する必要がある」というようなことをおっしゃる方もおられるようです。いま全体としてどうタイトル数を絞り込みながら、インストールベースが大きく伸びたDSやWiiにどのようなソフトを出せば受け入れられるのかということを、各社さん、それぞれトライされている過程だと認識しています。

 短期的に、すぐに結果が出ることと、中期的に結果が出てくることがあると思いますが、私どもとソフトメーカーさんの関係は、以前に比べて改善の方向にあると認識していますので、中期的な考え方として、私たちはソフトメーカーさんからより多くの魅力的なタイトルを供給いただけるようになるだろうと考えています。

Q 3  今回の下方修正というのは外部要因に負うところが大きくて、御社のゲーム人口の拡大を中心にした戦略というのは、非常に正しかったというのが明らかになってきている。海外のサードパーティさんは、他社のHD対応据置型ゲーム機向けにかなり開発投資を突っ込んだ挙げ句、いま縮小の方に動かれていて、もともと「そういう路線での(市場)拡大は難しい」と御社がいわれていたとおりになっている。
 そういう状況でも、御社にも課題が出てきていると考えている。『Wii Music』は相当期待されていたかと思うが、実際には国内で40万本ちょっとで、期待ほど伸びていない。カンファレンスで触らせてもらったときに、『Wii Fit』とか『Wii Sports』では、触った瞬間におもしろいと感じたが、『Wii Music』にはそれがなかった。いま主流のゲームは、たぶん触った瞬間におもしろいと感じるもののように思うが、『Wii Music』の結果をどのように分析されているかを教えていただきたい。
 それに絡めて、国内だけ据置型の市場は縮小が続いている。ファーストベンダーである御社は、責任を持って市場の拡大も図らないといけないが、そのあたりの戦略を教えていただきたい。
A 3

岩田:

 『Wii Music』が本来果たすべき役割を、現時点までにおいては果たしきれていないというのは、ご指摘のとおりだと認識しています。一方で、『Wii Music』というのは、評価が実は非常に大きく二分しているソフトだというふうにも感じます。とても高く評価してくださる方とまったく評価してくださらない方に、非常にきれいに分かれているようです。普通は、高い評価をしてくださる方がある程度いらっしゃったら、もう少し(全体が)高い方向に寄っていくし、逆に高く評価されないなら、全部の人から「これはダメ」といわれるものなんですが、人によって受け止め方に差が大きく出ています。すぐに面白さが伝わらなかったのは大変残念なんですが、相性がよくなかったのかもしれません。

 一方で、皆さん最初の『脳トレ』のソフトのことを思い出していただきたいのですが、『脳トレ』のソフトが爆発的に売れだしたのは、『脳トレ』のソフトが出てからどれくらいあとかといいますと、それは『脳トレ』のソフトが5月に出て、年末に『もっと脳を鍛える』ソフトが出たそのときから爆発しているんです。

 で、おそらくいまはまだ『Wii Music』を受け入れてくださるポテンシャルがある人のところに、『Wii Music』の魅力が伝わりきっていないと思います。われわれは、いま「『Wii Music』は失敗したからもうあきらめた」というふうには考えたくありません。そういう考えでいたら、きっと『脳トレ』もこうならなかったと思っています。『脳トレ』の初週は4万5000本ぐらいしか売れていないですから、「初週に売れなかったから、もうダメだ」という考え方、「最初の1ヵ月で何本しか売れなかったのでもうダメだ」という考え方で、考えるべきではないと思います。

 一方で、先ほどご指摘のあった、「わかりやすさがないと広がるのが難しいのではないか」というのは、とても的を射たご指摘であると感じています。すなわち実際に体験した人がすぐに理解し、容易に人に説明し、そしてそれがまた人に伝わりという循環が生まれることで、モノというのは広がっていくわけです。それが非常にうまくいった商品にいくつか恵まれたことが、任天堂の今日の状況をつくりました。ですから、その意味で、(『Wii Music』が)そのハードルを乗り越えられていないという点は、われわれが反省しなければならない点かなというふうに思っています。

 もう一つ、据置型のマーケットの件です。おそらくいま日本は、世界一据置型のマーケットに元気がありません。アメリカは(据置型が)ものすごく元気です。市場規模が倍とか3倍ならまだ我慢できなくもないんですが、週に売れる量が日本とアメリカで10倍違うと、「やはり何かが間違っている」というふうに私も感じます。ですから、現状に甘んじるべきだとはまったく思いませんし、もっと方法があるはずだと思います。

 ただ、かつて据置型がよく売れた時代に比べますと、あらゆる人々がいろいろ忙しくなり、あらゆる娯楽が移動中であったり、すき間の時間であったりに楽しむような方向にライフスタイル全体がシフトしているので、据置型だからできる、据置型ならではの楽しみを提案できないといけない(時代である)ということです。

 われわれは昨年の暮れに『どうぶつの森』というソフトと『Wii Music』というソフトの2つで、それを日本のお客様に理解いただいて、そのことで日本のWiiの市場を再活性化させようというふうに考えたわけですが、その試みは思惑どおりの結果を生みませんでした。海外のマーケットでWiiの勢いが非常に強かったのに対して、日本のWiiの市場は(年末商戦の)立ち上がりが遅く、山が低く、そして早く通常の低い水準に下がってしまいました。

 われわれは常にいろいろなトライをします。次から次へと新しい提案をして、その提案がわれわれの思惑どおりに受け入れられること、われわれの思惑より下回ること、われわれの思惑を超えて大きく爆発することがありますが、結局ゲームマーケットというのは、たった一つの大きく爆発するものを生みだしたものが制するのだと思います。

 もしニンテンドーDSに『脳トレ』がなかったら、『ニンテンドッグス』がなかったら、Wiiに『Wii Sports』がなかったら、『Wii Fit』がなかったらと思うと、私はぞっとします。それぞれの製品を一つひとつ、「何とか大爆発をさせたい」と思ってつくっていますが、百発百中はありません。

 昨年の暮れはわれわれが狙ったとおりのシナリオにならなかったということだと思います。ですから、爆発するために、われわれの何が届かなかったのかを考えなければなりません。『Wii Music』も『どうぶつの森』も売れていないとか、ヒットしていないとはいいがたい数字だともちろん思います。でも、大爆発するものがあるから、ハードを買ってまで遊びたいと考えていただけるお客様が次々と現れて、その人が周りの人を次々と誘いながら、モノというのは広がっていくわけです。それが起きたから、DS現象、Wii現象がこの間、あったわけですから、そういうものを次にも生みだす努力をしなければならないと思います。

 ですから、これは据置型だから起こる構造的な問題というよりも、そういう製品やサービスを定期的に提案できるかどうかということにかかっていると思っています。当然今年も新たな提案をいたしますので、ご期待に応えられるように頑張ります。

Q 4  昨今のインターネットを使ったユーザージェネレーテッドコンテンツの展開、はてなさんとの(『うごくメモ帳』に関する)協業も含めて非常に強化されていると思うのですが、年末商戦を見ますと、DSの『わがままファッション ガールズモード』の方が非常によく売れている。おそらくDSの活性化ということでは、このソフトが果たした役割は非常に大きいと思うが、その評価と今後の海外展開の方針についてお聞かせ願いたい。
A 4

岩田:

 まずわれわれがなぜインターネットを使ったユーザージェネレーテッドコンテンツ(UGC)に可能性を感じているのかということですが、これはお客様の中に、このことによって生みだされるおもしろさが、新鮮に感じていただける割合が高い、ということがあります。

 かつてゲームの黎明期には、つくり手が仕込んだことに必ず反応していただけた手応えがあったんですが、だんだんお客様もそういう刺激に慣れてこられます。すると、「どうせ仕込んであったんでしょう」ということが、どんどんお客様に感じられるようになって、だんだん驚いていただけなくなる。さらに驚けなくなるどころか、ひと通り中に入っているものを味わったら、「ああ、底が割れた」と思うわけです。底が割れるとお客さんは何をするかというと、たとえば「もう遊ばない」とか、「中古屋さんに売ってしまおう」というふうになりやすくなるわけです。

 われわれは、できることなら、お客さんに製品の「底が割れた」とは感じてもらいたくないわけです。そうすれば長く遊んでいただけるし、長く遊べたということは、それだけ満足度も高く感じていただけるわけです。何よりも(製品に)驚き続けてもらえるというのは、次に向かって非常によいことだと思っています。

 そういうことについていろいろ考えるわけですが、その中に「つくり手がすべてを用意して遊んでもらう」というかたちではない遊び、それがネットワークを使ったゲームの魅力とされてきたんですが、どちらかというと、UGCが出てくるまでのネットワークゲームというのは、たくさんの人がそこで競うというスタイルのものが多くて、競うというものの場合、その中でものすごく熱中していただける方が出る一方で、強者と弱者の格差がどんどん開いていって、初心者がどんどん入りにくくなっていくという課題を感じていたんです。

 「ゲーム人口拡大」を目指している任天堂としては、そっちに行けば行くほど、ゲームに関して慣れていらっしゃらない方に入ってきていただく敷居が上がってしまうという点で、「これでは問題の解決にはならない」と感じていました。つくり手がすべてを用意しないといけないという問題は解決できるのですが、幅広い人に楽しんでもらえるということが解決できないわけです。

 そこでUGCの話になるのですが、おそらく全体の中では少数の、自分が何かクリエイティブなものをつくって、それを投稿して、ほかの人が喜んだり、反応したりしてくれることにやりがいを感じるというタイプの方と、大多数の受け身で、他人がつくってくれたクリエイティブに拍手喝采を送りながら、そのベネフィットを享受するというタイプの方の2通りのパターンができるんですが、ゲームスキルの差を問わず、どちらの側でも楽しんでいただける要素を持っているという特徴があります。

 任天堂の例ですと、昨年の6月に発売しました『大合奏!バンドブラザーズDX』というゲームが、作曲モードがあって、作曲モードでつくった曲を投稿して、それを別のお客様がダウンロードして楽しめるという仕組みなのですが、おそらく投稿した人の10倍とか30倍の人がダウンロードを楽しむというかたちで、両方がハッピーになれる姿ができたと思います。『うごくメモ帳』で実現したいこともまったく同じです。

 次に、先ほどお話があった『わがままファッション ガールズモード』がこういう結果を出せたというのは、もちろんわれわれにいくばくかの幸運があり、そしてわれわれが狙ったところにちゃんとお客様がいて、反応してくださって、そこにメッセージが届いたということなのですが、その中に先ほどの件とちょっと関係します「インターネット上に自分のお店を出し、自分が出したお店に別の人がそこを訪ねてきて、ものを買っていってくれる」という、多くの方がビデオゲームでは体験したことのない、独特の感覚を感じることができる仕組みがあったというのが、プラスアルファのお客様が感動してくださった、驚いてくださった、仕掛けになっているというふうに思います。

 ちなみにいつもそうだし、これは当たり前のことなのですが、『マリオ』のソフト、『ポケモン』のソフトの新作ができましたというと、まったくその内容がわからないうちから、世界中の任天堂の商品を売る人たちは期待してくれるわけですが、何の実績もない、名前も知らないものを最初に提示したときは、だいたい反応は悪いです。別にこれは海外の販社の人たちを侮辱したいわけではなくて、当たり前のことだと思います。売れると保証されている商品と、マーケットにものすごいエネルギーをかけて伝えないと売れない商品の2つがあったら、売れると保証されて楽に伝えられる商品に期待が集まるのは当たり前のことです。

 例を挙げますと、『ニンテンドッグス』や『脳トレ』にしても、最初から海外の人たちに期待されて出ていったわけではなくて、当然最初は「本当にこんなものが(自分たちの国の市場で)売れるのかな」というところから、それを信じる人が海外に現れて、その人たちが一生懸命やって、いまの状況があるわけです。『リズム天国ゴールド』であるとか『わがままファッション ガールズモード』にも、そういうところがありまして、つくっている過程で、日本で結果が出る前は、いってはなんですけど、わりと冷たいわけです。ですけど、日本で結果が出てきますと、「何かがあるから売れるはずだ」ということがわかるわけですね。すると、真剣にそのことを分析し始めて、反応してくれる人が(現地に)出始めるんですね。反応してくれる人が、今度は周りに「こうおもしろい」と説明してくれるようになり、気がついたらたくさんのサポーターが海外の人たちの中に出てくるようになります。

 ただ、こういうものは、最初から理解されるわけではないのは当たり前のことなので、「(現地の人たちの)見る目に問題がある」というふうにはまったく思っていません。むしろ「まず日本で結果を出し、それによって期待してもらって海外で売っていく」という流れで、何ら問題がないと思っています。来期に向けて『わがままファッション ガールズモード』や『リズム天国ゴールド』は重要な役割を果たす商品として、現地で期待されています。

Q 5  今年度の予測と来年以降の思いを伺いたい。今年度については、年明け以降もWiiあるいはDSとも台数が伸びているとのことだが、第4四半期の出荷台数を通期予想から逆算すると、DSもWiiも、伸び率が鈍化する予想になっているし、ソフトは、両方とも前年同期比で20%内外減少するという予想になっている。このへんの相違点と、年明け以降のソフトの販売状況について教えていただきたい。
 加えて、今年でピークアウトではないということについて、正式な予想はこれからだと思うが、現在の思いとして来年ハードウェアをどのぐらい売りたいと考えられているかをお聞きしたい。
A 5

岩田:

 まずWiiとDSに関してですが、伸びをどう見るかなんですけれども、1月の状況がよいのは、一つには昨年と比べますと、昨年は(その前年の)12月のわりと早い時期にモノがなくなってしまって、1月もわりと在庫不足の状態が少し長く続きましたので、その要素もありますから、いま1月に去年と比べて、たとえば2倍売れているから、このまま2倍のペースで、2月も3月も売れ続けると一概に申しあげられるかというと、そんなことはないというふうに思っています。

 現実に、年間に非常に大きな台数を売ったときの、(季節的に)売れる時期と売れない時期というのを考えたときに、各週にどれぐらいずつ売れていくだろうということを考え、そしていまの日本の市場の現状をとらえたときに、現実的な数が発表した数字ぐらいではないだろうかということで、予想をいたしました。

 ソフトについては、個別に申しあげだすとキリがないんですが、任天堂の自社ソフトに関しては、アメリカではたくさんの種類のソフトがわりと安定して売れています。ただ一つご理解いただきたいのは、任天堂の出しているソフトの販売数というのは、あくまで任天堂から任天堂の外に出たものです。ですから任天堂ブランドのものでしたら、任天堂から流通さんに出て、流通さんからお客様の手に渡ります。

 それからソフトメーカーさんのものですと、任天堂がソフトメーカーさんからディスクやROMカードの受注を受けて、それをソフトメーカーさんにお渡しした時点で任天堂の売上げになります。ではそれがどうやって最終的にお客様の手に渡るかというと、ソフトメーカーさんから流通さんにいって、流通さんからお客様の手に渡るわけです。

 ですから、もしわれわれが12月末の数字ですといって申しあげている数字が、すべてお客様の手にすでに渡っているのであれば、私たちが出している数字というのは保守的に過ぎるのではないかという見方になるわけですが、現実には流通さんにも、場合によってはソフトメーカーさんにも在庫があるかもしれません。特にソフトメーカーさんのソフトについては、正確には把握できておりません。

 私は以前から繰り返し、「ゲームは景気変動に比較的強いのですが、(景気が悪くなると)売れるものと売れないものとの差ははっきり出ていくようになります」ということを申しあげてきました。お客様のウィッシュリストの1番にあるものは、不景気になっても、景気がよいときと同じように売れますが、ウィッシュリストの5番にあるもの、10番にあるものの売れ行きはやはり景気の影響は受けます。すると、ある程度売りたいと思って仕込んだけれども、そのように売れなかったというものは、たぶん必ずあると思います。(流通さんの状況と意向をふまえて計画を立てておられる)ソフトメーカーさんからヒアリングする数字が保守的になるというのは、そういうことの現れなのではないかなと私は思っています。

 それから日本のマーケットを見ても、たとえば昨年1年間に売れた1位から100位までのソフトを見ますと、上位のトップ5とかは、売れている本数は一昨年に比べて去年のほうが多いぐらいなんです。ところが中位のソフトというのが、やっぱりぐっと数が下がっています。ですからやはりここでも売れるものと売れないものの差が強く出ていると感じます。すると全体的にいろいろなかたちで、流通さんが在庫を持っておられるというようなことの影響が及ぶ可能性があると思います。

 そういうことを総合的に勘案した結果、今回の予想を出していますが、これは年末に向けて、すごく大きな量を皆さんが期待されて出したあとの反動が一時的に出ているという側面もありますので、構造的にソフトが売れなくなったということではないと思います。現実にビデオゲームマーケットは、たとえばアメリカでは(この経済の逆風の中で)、一昨年に比べて昨年は約2割成長しているわけですから、何ら悲観するものではないと思っています。

 次に来期の話ですが、さすがにこれだけ状況がどんどん変わっていく中で、軽々しく来期のことをいいたくありません。なので、具体的な数字を申しあげるつもりはないんですが、ただ黙っていれば、任天堂は今期に比べれば来期は売上げが厳しくなるわけです。なぜならば期初から円高になるからです。今期は、期初は比較的円安で、期の途中で急激な円高が来て、平均レートがグググッと円高の方向に寄ったわけですが、来期はもしこのまま(の為替レートで)ずっと突っ走ったら、できうることなら、そうでなくあってほしいですが、そうなったときには、当然、(円建て換算の売上額には)減収方向の力が働くわけです。

 一方で、今年は年の頭から、去年よりもハードの生産できる台数は多いです。一部のアナリストの方から、「もし十分な台数があったら、Wiiはアメリカで12月に300万台売れたはずだし、400万台だって可能だったかもしれない」というようなことをいっていただいたりしましたが、それは私どもがそれだけの量のハードを送り込めなかったので実現できませんでした。

 来年、Wiiがどの程度の勢いを年末時点で持っているかということを申しあげるのは早急過ぎますが、このような円高であっても売上げが減らないように、いや、できうることならば増収ができるようになるにはどうすればいいのかを考えるのが私の仕事だと思っています。今日は来期の業績予想を申しあげる日ではないので、具体的に申しあげませんが、そういうことが可能になるような数を世界中で売るにはどうすればいいか、そのために年の頭からどういう準備をすればそういうことが可能になるのか考えたいということを私の意気込みとさせてください。

| 1 2 3次のページへ

このページの一番上へ