10 | 一部の上場会社では株主優待制度みたいなものがよくあるが、ソフトなどを購入する際に例えば2割引きで買えるとか、そういう制度を設けていただけないか。 |
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岩田: 製品をご愛用いただきありがとうございます。株主優待に関しては、個人株主の皆様からはしばしばご要望をお受けするのですが、一方で当社には個人ではない、機関投資家の株主の方もたくさんいらっしゃいます。今は、株主の方全員に、その出資に対して、あるいは株を持っていただくということに対して一番平等なのが配当で、これをなるべく多くお支払いするという考えでおります。当社は、配当性向50%を基準とした額、また、先ほど申し上げた為替の評価差損益の問題もございますので、期末の時に大きく円高になって、為替差損が出た時でも本業がちゃんと儲かっていたら配当性向50%に近い水準でちゃんと配当を出せるようにします、という考え方で、連結営業利益の33%を基準とした額というのを付け加えて、どちらか高いほうを年間の配当額にするという方針をとっておりまして、これが日本の公開企業の中で非常に高い配当性向であるということは、ご理解いただけるかと思います。 優待に関してはご要望としてもちろん承りますけれども、現状で機関投資家の方等とのバランスも含めて考えますと、実現は簡単ではないため、むしろ「配当でがんばっていきます」ということが、今日申し上げられることです。 |
11 | 息子が対戦ものなどを集中してやっており、週何日か2時間程度と決めているがなかなかうまくいかず、勉強に差し支えがあるということで妻が怒っている。任天堂にしてみれば思う壺かもしれないが、どのような利用方法が望ましいと考えるか、お聞かせ願いたい。 |
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岩田: 「任天堂にとっては思う壺かもしれないけれども」というお話ですが、これにはちょっと私は複雑な気持ちがございます。もちろん一つには、当社製品に夢中になっていただけないようでは困るわけなんですが、一方で夢中になりすぎるがために、例えば親御さんとお子さんの間でトラブルになってしまうとか、その方の生活のバランスを崩されてしまうということについては、大いに問題だと思っています。先ほど、社会受容性をどう高めるかというグラフをお見せしましたが、これ一つをとっても、我々がそれを「思う壺だ」なんて考えていたら社会受容性は高まらないんですよ。やっぱりそんなことがあって「勉強の邪魔」と思っておられる方にも「あー、ビデオゲームって意外といいものだね」と思ってもらえるように変えていくのが、私たちが長期的に目指すことですから、現状の仕組みというのは、いろんな意味でパーフェクトではないんだなと思います。実は、「社長が訊くWiiプロジェクト」というインターネット上で公開している当社のWii開発ストーリーの中でも触れたことがあるのですが、任天堂はWiiの開発の際、1日ゲームはこれだけと親御さんが決めたら、その時間になったら突然ゲームが止まってしまって、その先遊べなくするという機能を付けようかと真剣に考えたことがあります。ですが、一方で自分が、ものすごく良いところでバチッと止められた時にどう思うのかということもいろいろ考えまして、最終的にはどれだけゲームで遊んだかというのが記録に残る形にしました。「記録に残って、いつでも見られるようにしていますので、それで親御さんとお子さんの間で対話をしてください。対話をしていただくことで、親御さんとお子さんの間で共通の理解とあるべき生活リズムというのを考えてください」という意識で、最終的にWiiを仕上げました。ニンテンドーDSはそれより2年前に販売されておりましたので、そういう仕組みはございませんでしたが、ニンテンドー3DSでも何らかの仕組みは考えようかなと考えております。これがWiiと全く同じものになるのか、さらに何か発展させた要素を付け加えられるのかというのは、まだ最終確定しておりませんので、今日お話する材料は持っておりませんけれども。ただ、先ほどお話しいただいたようなことは、私どもとしては、たぶんこのゲーム業界の中でも最も真剣に、「ゲーム屋さんとしてそんな議論を社内でするのか」と世間の人が驚くほど深く考えていますし、そうしないと社会受容性はこの先高まっていかないと思っていますので、「真剣に考えています」ということだけは申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。 |
12 | 先ほど「ゲーム人口の拡大」という話が出たが、日本、アメリカ、ヨーロッパで課題が違うのではないか。それぞれの国での課題に対して、どのような戦略で取り組んでいるのか、掘り下げて教えていただきたい。 |
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岩田: ゲーム人口がどのようにこれまで推移してきたのかというスライドがございますので、ご覧いただこうと思います。これは、日本のゲーム人口の推移なんですけれども、一番左の棒グラフ、これが2005年5月ですから、ちょうどDSの脳トレが出たころです。一番右側の棒グラフが2010年1月で比較的最近です。これをどうやって調べているかといいますと、東京と大阪で3,000人くらいの方に面接調査をいたしまして、ゲームをされる方、されない方、されるとしたらどんな機械で遊んでおられるかということをずっと継続的に調べているんです。これは、我々は「ゲーム人口の拡大」と言っているけど実際どうなんだというのは、定量化しないといけないんですが、世の中にはゲーム機が何台売れたかというデータはあっても、何%の方がゲームで遊んでおられるのかというデータはないものですから、自分で調べるしかないということで5年前からやっているものです。 青い部分が、この1年間に家庭用のゲーム機で遊んだという方です。これは任天堂の機械に限りません。あらゆるテレビゲーム機、携帯型ゲーム機で遊んでいるという人たち、ただし携帯電話等は含みません。それから、黄色は昔ゲームで遊んだことがある、ファミコンやゲームボーイで遊んだよ、でも今はやっていない、この1年間はやっていませんよ、という人たちです。そしてピンク色は生まれてこのかたゲームをしたことがないという方々です。ですから、我々のゲーム人口拡大というのは、黄色い方に青く戻っていただく。またはピンク色の方に青くなっていただくということが「ゲーム人口の拡大」の目指すところになります。 最初、この7歳から64歳、日本全体の中で、ゲームを遊ばれていた方は35%しかおられませんでした。それが急速に変わっていったのがわかると思います。これには脳トレの普及やWiiの発売等が非常に大きな役割を果たしたと思っています。 ただ、日本ではこの57%で1回ピークを打って、少し減りかけていたんですね。それが、去年の年末に「NewスーパーマリオブラザーズWii」が非常に社会現象的な形になってたくさんの方に遊んでいただいたんで、もう一度少し元気になったなという印象があるんですが、こういう推移でした。次にアメリカのデータは、これです。アメリカで高い精度でデータを集める方法を開拓するのに実はかなり苦労しました。といいますのは、日本ですと東京と大阪でゲーム人口の調査をするとだいたい日本を代表するデータがとれるのですが、アメリカというのは地域格差も大きいですし、日本に比べるとやはりどうしても所得格差の大きい国ですので、調査の方法を確立するのにかなり時間がかかりまして、まともな精度のデータがとれたのは2007年の暮れからなのですが、これがその推移です。 まず、先ほどと比べて一目でわかるのが、アメリカの人は黄色いスリープユーザーが非常に少ないんですね。言い換えますと、日本の人のほうが一度ゲームを遊ばれてもすぐにやめてしまいやすいんですよ。アメリカの方は一度遊ばれると簡単にはやめません。それから、最初は日本のほうがゲーム人口比率が高かったんですが、ここ何年かの間に追い越されてしまいまして、今はアメリカのほうがゲーム人口比率62%と、非常に高くなっています。ちなみに、この中でニンテンドーDSとWiiのお客様の割合を色分けしますと、こんな感じになるんですね。ニンテンドーDSとWiiがアメリカでゲーム人口を拡大してきたんだということを一目で語る、貴重なデータではないかなと思います。 ヨーロッパについては、実は国ごとに相当違いがございます。イギリスはゲーム人口比率が比較的高く、アメリカに似た水準なんですね。それに対して、ドイツは非常にゲーム人口比率が低いんです。さらに調べますと、ドイツではビデオゲームの社会受容性が極めて低いんですね。すなわち、ビデオゲームを社会の中でまだ敵視しておられる方がたくさんいらっしゃるんです。これは特に、(西洋では)戦争をテーマにして銃を撃つようなゲームが非常に多いということもあって、ドイツという国が歴史的な背景もあってそういうものに対して社会が非常に強い拒絶反応を持つということとも関連しているのかもしれません。 フランスは、そのドイツとイギリスの中間的な位置づけにあります。また、ものが広がるスピードも日本やイギリスは非常に速いんですが、アメリカは非常にゆっくりで、ドイツにいたってはもっとゆっくりです。新しい機械を出してからお客様が広く受け入れていただけるまでのスピードも違います。ですから、我々は、ヨーロッパをひとからげにするのではなく、いろいろな国ごとの特性を理解してものを売っていかないと、なかなかビジネスは拡大しませんし、そういうことをやってきたのでヨーロッパのビジネスが拡大したのかなと思います。 |