遊びと向き合い、デザインする遊びと向き合い、デザインする

敵攻略のヒントが視覚的に伝わるように

私はキャラクターデザイナーとして入社し、主に敵キャラクターの制作を担当してきました。入社して最初に担当することになった『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』では、7体の敵キャラクターをデザインしました。

ゼルダのようなアクションアドベンチャーといったジャンルのゲームでは「敵」の存在が不可欠です。敵からの攻撃をどのように防ぎ、どう攻略していくかという駆け引きは、プレイヤーの緊張感を高め、より良質なゲーム体験に繋がります。敵キャラクターのデザインは遊びと密接に関わっていて、敵との戦闘を面白くする過程は、小さなゲームを作ることに似ているように感じます。 デザインを行ううえで、とくに意識したことは、敵の攻撃に対してどう攻略するのか、そのヒントが視覚的に伝わるようなデザインにすることです。

たとえば「炎の神殿」に「ボルドゴーマ」というボスが登場しますが、敵をデザインするうえでのお題は、ドーム状のステージで、「ユン坊(ゴロン族の賢者)」の転がり攻撃で攻略できるようにする、というものでした。私は戦闘がどのように展開すれば楽しい遊びになるかを考えながら、四足の甲殻類の魔物のようなデザイン案を描き起こしました。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のボスの1体

デザイナーの役割は、デザイン案をもとに3Dモデルを作ることだけではなく、遊びの手ごたえを探り、その遊びに適したデザインの検討を何度も重ねていくことでもあります。
具体的には、このデザイン案をもとに3Dモデルを制作し、実際にドーム状のステージで動かしてみることでさまざまな改良を行いました。ボルドゴーマの弱点は大きな目玉ですが、高い位置にあるため通常の攻撃では届きません。そこで、仲間であるユン坊の転がり攻撃で、まず脚を破壊する流れにしました。

しかし、実際にプレイしてみると脚が細すぎて攻撃を当てづらく、プレイヤーのストレスの原因になることがわかりました。このため、脚を破壊しやすくするために、デザイン案よりも太くし、地面に設置する時間を長くするアニメーションの調整も行いました。
見た目だけではなく、アニメーションによる動きも、遊びやすさにつながる重要な要素になります。
また、主人公のリンクは「トーレルーフ」という天井をすり抜けられる能力を持っています。その能力を活かすために、プレイヤーが乗ることのできる平らな足場のような形状を胴体にあたる部位にデザインしました。胴体の上に乗ったプレイヤーが目玉に到達できるよう、あえて、ボルドゴーマのモチーフである甲殻類の特徴から外れた形状を取り入れています。それ以外にもさまざまな部分で、実際に遊んでは修正するということを繰り返しながら細部を詰めていき、最終的にボルドゴーマを完成させることができました。このように、作ったキャラクターを実際に遊び、その都度プレイヤーの体験をイメージしながら、ブラッシュアップを続けて完成させていくことが重要だと実感しています。

大量の岩で構成された巨大な甲殻類の魔物「ボルドゴーマ」

チームで遊びを作る醍醐味

敵の制作を担当するチームは、遊びの核となる部分をデザイナーやプランナー、プログラマーで構成された最小限のスタッフで製作し、そこででき上がったものをリーダーも含めた全員で確認を行います。その場で出た違和感やアイデアをもとに何度も練り直して、ようやく完成にたどり着きます。
試行錯誤を重ね、でき上がったものをディレクターに見せた時の反応が良く、大きな方向性を保ったまま作りきれたことで、ボスキャラクターを作る達成感を得ることができました。

社員略歴

鴇田さん企画制作部/2019年入社
2019年「デザイン系」入社。
キャラクターデザイナーとして、主にNintendo Switch 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(2023)、Nintendo Switch『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』(2023)の敵キャラクターの担当を務める。
職種データ

↑

google-play-badge