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杉森建のときどき更新されるれろ
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第4回「ギアシステムはこうして作られた」
その1「最初はギアを1つから」
2005.10.28
 いきなりですが耳寄りなお知らせです。本日、小学館さんより『スクリューブレイカー公式ガイドブック』が発売になりました。各種キャラクター紹介に、全マップの公開、おまけステージも含めた完全攻略、そしてすべてのお宝の入手方法など、盛り沢山の内容です。いろいろ行き詰まってくじけそうになっている人は、これを読んでみれば、きっと突破口がひらけることでしょう。全国書店で発売中ですので、どうぞ1冊お買い求めください。宣伝、おわり。
表紙
 さて、『スクリューブレイカー』をゲームデザインするにあたって、いちばんのキモとなった部分のことをお話ししましょう。
 それは“ギア”です。
 最初の企画では、ラセンダーには始めからギアが3つ装着されており、スタートしてすぐに3速までドリアップできるようになっていました。でも、最初から3つのギアが揃っていたのでは、1速と2速は、単に3速へ上げるための過程、つまり“作業”になってしまうんですね。
 敵の強さやマップの仕掛けも含めて、やはり1速には1速なりに、2速には2速なりのおもしろさがなければいけません。そのうえで、3速にはそれ以上の快感を用意しておくべきです。それが実現できれば、『スクリューブレイカー』はおもしろいゲームになるはずだと信じていました。
 そのために、ギアは1つの状態からスタートさせることにしました。そして、いくつかのストッパー(シャッターや固いブロック)でエリアを区切ってやり、その中ならば1速だけでも十分に楽しめる環境を作るのです。やがて、2つめのギアを発見して2速にドリアップすれば、エリアを区切っていたストッパーが破壊できるようになり、次のエリアへの入口が開く。そうして、また3つめのギアを手に入れれば、さらにその先のエリアへ進めるようになる。
 こうすることで、段階を追ってギアを手に入れていく楽しさや、ラセンダーが強くなっていくよろこびを、ゲームに盛り込んでいったのです。

その2「3速になったよろこび」
2005.11.2
 各ステージをクリアするごとに、せっかく手に入れたギアがリセットされ、また最初からギアを探すことになるというシステムは、ゲームデザイン的にはかなりの冒険でした。なにしろ、いちど3速の快感を味わったプレイヤーに、また最初からやり直せ、と言うようなもんですからね。
 だけど、ギアがリセットされるようにしたことで、大きな利点も生まれました。それは「リミッターの解除」です。1速または2速では、ドリルボタンを押しても一定時間で回転は止まってしまいます。しかし、3速ではリミッターが解除されて、ボタンを押しているあいだは、いつまでもドリルを回転させることができるのです。
 これがもし、最初からギアを3つ持っているゲームシステムだったら、リミッターを解除させるわけにはいかなかったでしょう。3速の状態があまりにも便利になりすぎて、ゲームバランスが崩れてしまいますから。でも、そのステージが終わればまた1速に戻るのであれば、3速のときぐらいは派手に強くしてあげてもいいじゃないですか。豪快にドリルを回転させて、各ステージのボスと戦うのです。その方が断然おもしろいでしょう?
 3速になったときのよろこびは、BGMでも表現されています。サウンド担当の一之瀬には「ノリノリのやつを頼むよ!」と発注したんですが、そうしたらあの曲があがってきたわけです。もう、聴いた瞬間に「このゲームはこれでイケる!」と確信しましたね。

その3「見逃せないドリルゲージ」
2005.11.4
 このゲームのもうひとつの特徴に、画面全体を覆うように表示される「ドリルゲージ」があります。いちばん最初のバージョンでは、あのドリルゲージは体力ゲージの横に小さく表示しているだけでした。でも、それだとゲームをしている最中に、プレイヤーは常に画面の上を気にしなければいけなくなってしまいます。プレイに集中できなくなるので、あまりいいアイデアではありませんよね。なんとかしてプレイヤーの視線を画面中央に向けさせられないだろうか? と、しばらく悩みました。
ドリアップのゆめ
トップギアは ゆめのごとくなり
 そこで考えたのは、自機(くるりのことですよ)の頭上にドリルゲージを表示させる、というアイデアでした。野球やサッカーなどのように、操作するキャラクターがひんぱんに入れ替わるタイプのゲームでよく使われる手法ですね。これなら、プレイ中に主人公から目を離すことなく、いつでもドリルゲージを確認できます。
 しかし、この方法はシステムとしては問題ないけれど、個性に欠ける気がしました。『スクリューブレイカー』は、2Dタイプのアクションゲームということで、ただでさえ古臭く思われがちです。このままではゲーム雑誌などに画面写真が掲載されても、読者の印象に残らないでしょう。それを避けるためにも、見た瞬間に「変わったゲームだ」と伝わるような特徴が必要でした。
 そうして、いろいろと試行錯誤の末に、あの画面ができあがったというわけです。あれなら画面のどこを見ていても、ドリルゲージを見逃すことはありませんからね。

 ではでは、第5回のコラムでお会いしましょう。ドリュラア〜〜ップ!