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杉森建のときどき更新されるれろ
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第5回「メカ感、ロボ感、操縦感」
その1「くるりとラセンダーの二人三脚」
2005.11.11
 このゲームでは、ラセンダーを“操縦している感覚”の表現に力を注いでいます。そのため、ラセンダーが歩いているアニメーションを描く際には、なるべく一体感を出さないようにしました。ガシャンガシャンと音を立て、小刻みに上下動して、停止すると少しだけ操縦者がつんのめる。そんな風にあえて乗り心地が悪そうに描くことで、ラセンダーの操縦感を表現してみたのです。
「一体感」というのは、普通はいい意味の言葉として使われますが、このゲームの場合、一体感を出してしまうと、くるりが乗り物を操縦しているのではなく、きぐるみでも着ているように見えてしまうんですね。くるりがラセンダーを上手に操縦するのは、自分と機械が一体となっているからではなく、二人三脚の関係だからなのです。
 また、そうすることで、今度は逆に「操縦者がいなくなったラセンダーはどうなるのか?」という発想も出てきます。ワールド5のランドヘル刑務所で、主のいないラセンダーだけが動き回るのは、そういうところから生まれたアイデアでした。

その2「Bボタンのくるりアクション」
2005.11.15
 LRボタンでのドリル回転とはべつに、Bボタンでのサブアクションを取り入れたのも、くるりはあくまでも操縦者であるということを感じてほしかったからです。「ドアを開ける」「絵を運ぶ」「上下を見渡す」「スイッチを下げる」などのアイデアが採用になっていますが、せっかくの機会なので、ここでボツになったアイデアをいくつかご紹介しましょう。

マボロシのBボタンアクション?
マボロシのBボタンアクション?
「バケツをかぶる」
 通路に落ちているバケツの前でBボタンを押すと、ラセンダーに乗ったくるりが、頭にバケツをかぶるのです。それでロボットのフリをして、やってきた敵をやり過ごす、というアイデアですね。このアイデアは形を変えて、ランドヘル刑務所での「にがしまセンサー」とそれを避けるアクションになりました。

「ヘビをふりはらう」
 ジャングルの中を歩いていると、突然、樹の上からたくさんのヘビが落ちてきます。ヘビはくるりの頭にまとわりつくので、Bボタンで手をバタバタしてふりはらう、というアイデアです。会議の席ではみんな「わっはっはー」とひとしきり笑いましたが、そのままボツ直行です。

「ドリルのゴミ取り」
 遺跡でクモの巣なんかがドリルにからまって回転が鈍くなったら、Bボタンでくるりが身を乗り出し、からまったクモの巣やゴミを取り除く、というものです。でも、こういう特定の場所でしか使えないアクションよりも、なるべく汎用性のあるアクションを入れたかったので、このアイデアもボツになりました。

その3「ロボットアニメから受けた影響」
2005.11.18
 どうして操縦感にこだわっているかというと、それは昔からぼくがロボット・アニメが好きだったからです。ロボットそのものが好きというよりも、そのロボットを“操縦している感じ”が好きだったんですね。だから、ロボットがいかにかっこよく描かれているかということよりも、ロボットを操縦することのむずかしさやおもしろさをキチンと描いている作品の方に、より魅力を感じていました。
 たとえば、小学生の頃に見た『マジンガーZ』では、はじめてマジンガーに乗った主人公が操縦の仕方がわからず、マジンガーをめちゃくちゃな方向へ走らせてしまうコミカルな場面があります。主役ロボらしく、見得を切るようなかっこいい動きをするばかりではなく、あくまでも操縦されている“乗り物感”にロボットと操縦者の関係を感じて、ずいぶん夢中になりましたね。いまでも大好きな作品です。
 他にも『ガンダム』シリーズなどでは、ハッチの開いたコクピット越しに会話をする場面があって、そういうところにもグッときたりします。ラセンダーから半身を乗り出すくるりの姿などに、そういうところからの影響があるのかもしれません。

 ではまた、第6回のコラムでお会いしましょう。ドリャルリラ〜〜ップ!