最近のマリオのイメージといえば、「スポーツ万能で、何でもこなすスーパースター。そしてピーチ姫との恋も順調に進行中」なんていうイメージかもしれない。まあ、確かにマリオは、お姫様を助けるために冒険するだけでなく、カートには乗るし、ゴルフやテニスもたしなむといった、何でもこなすスーパースターなイメージで固まってきた感がある。
しかし、筆者のようなもう30歳に手が届きそうな世代、つまりファミコンの黎明期から知っているゲームファンにとって、マリオといえば”土建途中の工事現場で汗水垂らして働いているタフガイ”なイメージを持っているのも事実ではないだろうか。「ドンキーコング」(ファミコン・1983年)のマリオは建設現場をステージにし、ハンマー片手にドンキーコングへ向かって行ったし、「レッキングクルー」(ファミコン・1985年)のマリオは、ビルの解体工として肩にハンマーを担いでいる姿が、雄々しかった。そう、当時のマリオは、スポーツ万能な何でもできる男のかっこよさよりも、無骨な男の持つどことなく不器用な働く姿が格好良かったのだ。そう、どちらかと言えば、いまのワリオのような”パワフルなタフガイ”というイメージに近かったといえる。 |
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しかし、マリオは変わってしまった。別に変わったのが悪いのでなく、最初の頃にマリオの持っていたイメージが個人的好きで、変わってしまったマリオに対して、少しばかり寂しい気がするというのが本音だ。彼が、いまのようなスーパースターになるきっかけは、ハンマーをクラブに持ち替えた「ゴルフJAPANコース」(ファミコン・1987年)あたりからではないだろうか。それからは、F1レーサー(「ファミコングランプリ F1レース」(ファミコン・1987年))に、ドクター(「ドクターマリオ」ファミコン&ゲームボーイ・1990年)と、いままでマリオの持っていた”無骨な男”のイメージとは真逆の方向性に変更が加えられていったのだ。そして、出演作が増え、回りを固めるようにヨッシーやワリオが登場し、マリオの持つ世界観が固まってくると、主役であるマリオはよりいっそうスーパースターなイメージに固まっていった。そしてついには、いままで審判として参加していたテニスゲームにも、プレヤーキャラクターとしてラケットを振るまでにいたるのだ。これも、マリオがゲームのアクターとして、大きく成長しその人気とともに彼自身の持つイメージが大きく変わったいい例ではないだろうか。そのため、20歳未満のゲームファンにとってマリオとは、きっと「万能のスーパースター」として写っているのは間違いないといえる。 |
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しかし、ここにきてささやかな変化がありそうな予感がする。そう、この夏に発売されるマリオ作品最新作「スーパーマリオサンシャイン」だ。このゲームでのマリオのイメージは、どうもいままで作り上げてきたスーパースターな印象とは少し違うようだ。というのも、背負にポンプを背負い、汚れてしまった島を洗い流しながら冒険を進めていくというからだ。この情報を聞いて、「スーパーマリオサンシャイン」が、いままでのような寓話的な物語とは違い、どことなく配管工やビルの解体工のときのような、無骨なイメージが戻ってきたと思うのは早合点というものだろうか? 公開されているビジュアルでは、今までのマリオのような優しい表情とは違い、強い意志の眼力を秘め、昔のような雄々しさが感じられる。それに、半袖なところにもいままでになかった気合いのようなものが見受けられるハズだ(まあ、半袖に関しては、南国が舞台なだけに「暑い」からという脱力的な理由もあるかもしれないけど……)。まあ、とにかく、今回の「スーパーマリオサンシャイン」では、ここ数年マリオがみせなかった、無骨で不器用な、男臭い一面が見え隠れするのかもしれないと個人的に期待している。「スーパーマリオサンシャイン」発売まで、あと2月ほど。マリオよ、キミはあのころのような原点に戻るのか!?
というわけで、その「マリオサンシャイン」の詳細は「ドリマガ」とドリマガライター陣がバッチリお伝えします。毎月第2・第4金曜日発売の「ドリマガ」にご期待ください! |
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内田幸二:フリーライター。1972年生まれ。ゲーム専門誌に編集者として勤務後、フリーライターとなる。ソフトバンクパブリッシングの「ジーエム」や「ドリマガ」で任天堂タイトルのゲームを担当。マリオ以外の任天堂タイトルにも精通している。 |