
岩田
水泳関係では、とくにキャラクター設定との戦いが
いろいろあったようですが、ほかの競技でも
同じように苦労されたことはありますか?
大橋
たとえば『北京』に収録されていた
「高跳び」の競技だと、
普通の陸上選手は背面跳びになるんですが、
クッパでそれをさせようとしたら
あまりにもコウラが固すぎまして・・・。
岩田
身体を反らすことができない、ということですね(笑)。
大橋
だから、何をやっているのかわからないんです。
ただひっくり返って跳んでいるだけなので(笑)。
岩田
しかも、クッパの背面跳びは不利ですよね。
コウラのトゲトゲがバーにひっかかりますし。
大橋
岩田
ああ、わざわざ
専用の自転車を用意するわけですね(笑)。
大橋
はい。それで短い足でもこげるようになりました。
岩田
馬は足の長さは関係ないですよね。
笠原
もちろんマリオやソニックが
馬に乗るとしっくりくるんですけど、
クッパやドンキーコングのようなでかいキャラが乗ると、
なんだか馬がかわいそうに見えたんです。
一同
(笑)
笠原
なので、クッパやドンキーコングなどの
大きいキャラが乗る馬だけは足と首を太くすることで、
見た目にちょっとごっつい感じにして、
かわいそうじゃないようにしました(笑)。
でも、性能はいっしょなんです。
岩田
見た目にいろんな個性があるけれど、
どのキャラクターを使っても
競技上の有利不利はないようにつくるんですね。
大橋
そうです。
どのキャラクターでも
互角に戦えるように、というつくり方です。
岩田
だから、ソニックは100m走が速いとか、
マリオは高跳びが得意とか、
そういうふうにはなっていないわけですね。
大橋
はい。
岩田
でも、差をつけたくなったりしませんでしたか?
大橋
ええ、そうしたい気持ちもあったんですけど、
ふたり同時に同じキャラクターを使うことができない
設定ですので、たとえば100m走だと、
ソニックを最初に取った人が勝ってしまうんです。
なので、そういうことが起こらないようにしました。
岩田
なるほど、わかりました。
さて、今回の『ロンドンオリンピック』は、
夏の大会としては『北京』に続いて2作目ですが、
実際につくりはじめると、これまでとは違う
プレッシャーがあったんじゃないですか?
大橋
そうですね、ありました。
同じことを繰り返していたら
「マンネリ」と言われちゃいますから。
岩田
そのマンネリと戦うために、
どんなことを考えながらつくりはじめたんですか?
大橋
いわゆるオリンピック競技は
自分たちで勝手にルールを変えることができませんので、
『北京』で採用しなかった競技を入れつつも、
僕らが「ドリーム競技」と呼んでいる、
オリンピックの競技じゃない遊びで
新しい違いを出していこうと思いました。
岩田
「ドリーム競技」というのはどういうものなんですか?
大橋
『マリオ&ソニック』には、
大きく分けて2種類の競技が入っていまして、
メインになるオリンピック競技は、
どちらかというと記録を狙ったりすることが多いので
ストイックな遊びになりがちなんですけど、
もうひとつの「ドリーム競技」は
4人同時で遊べるパーティゲームの要素がとても強いんです。
渡辺
しかも「ドリーム競技」は
マリオやソニックらしさを出すことができるので、
ゲームらしい遊びを入れることができます。
岩田
今回の競技は全部で何種類あるんですか?
笠原
全部で31種目で、
そのうち「ドリーム競技」が10種目です。
岩田
前回の『北京』のときは?
笠原
オリンピック競技は、8競技20種目でした。
ロンドンでは13競技21種目になります。
岩田
競技数が増えて、
バリエーション豊かになったということですね。
笠原
はい。それに「ドリーム競技」も
『北京』のときは4種目でしたので、
2倍以上になっています。
岩田
新しい競技を増やすにあたって、
どんなことがテーマになったんですか?
大橋
いろいろありましたが、
たとえば振るばっかりの遊びにしないようにする、
とかを意識しました。
岩田
Wiiリモコンを速く振って遊ぶ、
ということだけになりやすいんですね。
大橋
そうなんです。
笠原
『北京』のときは
走る競技がけっこう多かったので、
実際に走るときに腕を振るのと同じように、
Wiiリモコンとヌンチャクを交互に振って
直感的に遊べるようなゲームを入れたんですけど、
発売したあとで「しんどい」という声がありまして。
岩田
ずっと振り続けると「しんどい」ということですよね。
笠原
岩田
全体のバランスを見て割り当てたので、
操作方法に多様性が生まれたんですね。
笠原
そう思います。
「この競技とこの競技は遊び方がいっしょ」
というのはできるだけなくす調整をしました。
岩田
渡辺さん、それは実ってますか?
渡辺
はい、しっかり実っていると思います。
たとえば、今回はオリンピックの通常競技として、
「シンクロナイズドスイミング
シンクロナイズドスイミング」が新規で入ったんですけど、
最初は、ひとりひとりのマーカーが画面に出て、
それを見ながらタイミングよく振る、
みたいに、ゲーム的には少しシビアな遊びだったんです。
岩田
そうすると、遊んでる間は
マーカーしか見ていない、ということになりますよね。
渡辺
そうです。そこで、わたしたちとしては、
テレビのこっち側でシンクロしたほうが楽しい、
と思ったんです。
岩田
つまり、テレビ画面のなかでシンクロするよりも、
テレビのこっち側にいるプレイヤー同士で
シンクロできるようにしたい、と思ったんですね。
渡辺
はい。プレイヤー同士で、
同じ踊りを楽しめるようにしたかったんです。
笠原
実際、渡辺さんたちからそのような提案を受けて、
それでつくりなおして、4人で遊ぶと
みんながそろって手をあげたりするんです。
それがすごく楽しそうに見えました。
渡辺
その場が楽しい、という感じになりましたよね。
笠原
海外の関係者に
プレゼンテーションをする機会がありまして、
そのときにこの「シンクロ」を実演したら
ものすごくウケがよかったんです。
プレイしている人たちだけでなく、
まわりで見ている人たちも、
うれしそうに手を叩きながら「おおっ」と(笑)。
なので、渡辺さんたちにアドバイスをいただいて
よかった、と思いました。
渡辺
あぁ・・・それは本当によかったです!