デビルズサード クリエーター板垣伴信コラム

お知らせ

オンラインサービス「マルチプレイ」は、2016年12月29日13:00をもって終了いたしました。くわしくはこちら。

7月23日(木)「デビルズサードの発売に向けて」

皆さんこんにちは。ヴァルハラゲームスタジオの板垣伴信です。
ゲーマーの皆さんの応援に支えられて、ついに8月4日に『Devil’s Third(デビルズサード)』が発売を迎えます。本当にありがとうございます。
先日公開した映像の方でも色々お話ししていますので、このコラムでは、映像には盛り込めなかった情報や、開発者しか知らないことなどを、皆さんにお知らせしていこうと考えています。よろしくお願いします。

さて、さっそくですがこのゲーム、いまだかつてない代物です。
一言で言いましょう。
『Devil’s Third』は、私たちが格闘ゲームで培ったノウハウと、剣アクションゲームで培った経験・技術を全て投入して作り上げた、まったく新しいサードパーソンシューティングゲームです。

ありのままに言いましょう。
『Devil’s Third』には、私が作ってきた剣アクションゲームのストーリーモードを超える、ボリュームと品質・技術を投入した「ソロプレイモード」。
それに加えて既存のFPSやTPSの対戦モードを超えるボリュームと革新的アイデアを盛り込んだ「オンラインマルチプレイモード」を用意しました。革新的というのは、ゲーム性のお話です。このコラムで、これから詳しくお伝えしていきたいと思います。

つまりこの『Devil’s Third』には、2本分のゲームが入っているのです。
なぜ私たちヴァルハラゲームスタジオは、そんなことをしたか。

私たちは、常にそのとき主流のジャンルに挑戦し、戦い抜いてきました。そして次の戦場を「シューター」と決めた以上、このジャンルの良い点悪い点を一つずつ点検し、良い点は引き伸ばし、弱点は改良する。その上で全兵力を一挙に投入し、そのジャンルに参入する。これは格闘ゲームを作ったときや、剣アクションゲームを作ってきたときから、まったく変わらない私たちのポリシーなのです。

2本分、というよりそれ以上のボリュームを持つゲームを開発した理由はそれだけではありません。それは既存のシューターの、ある弱点を解消しなければならなかったからです。

まず何よりも私が気になったのは、シューター人口が大きく二つに分断されていることでした。つまり「キャンペーンモード」(『Devil’s Third』のソロプレイモードにあたります)しか遊ばない人たちと、オンライン対戦しか遊ばない人たちに、大きく分かれてしまっていることに気付いたのです。
余談ですが、それまでの私はキャンペーンモードしか遊ばない派でした(笑)。なぜならオンライン対戦すると「分からん殺し」されるだけで面白くなかったので。言うまでもないかもしれませんが、「分からん殺し」とは、なんで死んだか分からない。どうやって守ればいいのかすら分からない、等を指す言葉です。初心者がやる気をなくしてしまう最大の要因ですよね。これじゃあ、対戦人口の拡大も望めない。ゲーマーの皆さんにとっても、私たち開発者にとっても面白くない話です。だからこれを解消することは、シューターの未来に関わろうとする私たちの肩に大きくのしかかりました。

対戦プレイを重んじる人は、対戦スキル獲得競争に出遅れたくないため、キャンペーンモードは遊びません。そして中途半端なキャンペーンを付けるくらいなら、対戦マップを増やしてくれと願います。
かたや、キャンペーンを重要視する方は、もっとしっかり遊び応えのある一人遊びモードを作ってくれと願います。
これはけっこう根深い問題で、競合シューターの開発者たちは、どちらに比重を置いて開発するかに、相当苦労しているであろうことがわかりました。

そこで私たちヴァルハラゲームスタジオは、何をしたか。
私たちは、それまで誰も選択しなかったことを決定しました。
「そうか。ならば、ゲームを二本分作ればいいじゃないか」

その決定に基づき私たちはゲーム開発を進めましたが、ともあれ「キャンペーンモード」と言う言葉を使うのはやめました。軍事オタクである私から見て、それらが「キャンペーンモード=軍事作戦モード」であるようには、全く見えませんでしたから。
なのでモード名は素直に「ソロプレイモード」として、一人遊びしかなさらないお客様の為に、これまで私が作ってきた一人遊び用アクションゲームを超えるものを作りました。ですからソロプレイだけ遊んで頂いても、十分に楽しんで頂けると思っています。

次にオンラインマルチプレイモードです。『Devil’s Third』のマルチプレイモードを、当初私は「キャンペーンモード」と呼ぶことを主張しましたが、「それが正しいかどうかは別にして、プレイヤーが混乱するだけです!」というディレクターの江原からの強硬な反対により(笑)、こちらも素直に「マルチプレイモード」としました。

その時の議論は、今も覚えています。
江原「これミリオタにしか意味分かんないですよ?」
板垣「そう? でもこれらのゲームの一人遊びモードに作戦級のゲーム性はないじゃないか?」
江原「はい。でも混乱するだけだから、素直にマルチプレイモードにしましょう」
板垣「そこまで言うならそうするけど、要するに必要悪として認めろと言うことね? 格闘ゲームの『しゃがみパンチ』みたいなものであると。相手にするなと」
江原「そうそう、そういうことですよ(笑)」
板垣「オーケー、なら戦う場所ではないね。誤解のないシンプルな名前にしよう」
(※江原:株式会社ヴァルハラゲームスタジオ 江原克則 チーフゲームデザイナー)

さて、話が脱線しましたが、オンライン対戦を重視なさる方のためには、「革新」を用意しました。私たちは、対戦プレイにまったく新しいゲーム性を導入し、決定的に進化させることを至上命題としたのです。『Devil’s Third』のマルチプレイの革新性については、今後このコラムの中でもお伝えしていきます。作戦級の遊びもたくさん盛り込んであります。
おっと、大事な話を忘れるところでした。「分からん殺し」は極力減らしましたよ!私の作った対戦格闘ゲームがそうであったように、『Devil’s Third』の対戦はどなたでも楽しめる、エンタメあふれる物にしています。上手い人しか遊べないゲームなんてつまらない。ゲームを初めて手にした方にも、ワクワクして頂きたい。上手い人もカジュアルな人も一緒に楽しめるゲーム。そこを追求したのが、『Devil’s Third』のオンライン対戦モードなんです。

「今までと同じ遊びではつまらない! またそれでは私たちが作る意味がない!」
このような信念で、やっとでき上がったのが『Devil’s Third』なのです。

しかし実は、このような開発戦略は、普通は採用・実行できないんです。考えても見てください。7年間も一つのゲームを作らせてもらえる機会が、いまどきどこにあるでしょうか?
それは私たちのことを信じてずっと応援して下さったゲーマーの皆さん、私たちをリードしてくださった任天堂さん、そして業界の皆さんから頂いた「奇跡」だと、私は理解しています。
そのような僥倖のもとで、『Devil’s Third』は遂に完成し、発売されるのです。
このゲームは、現時点の私たちの集大成です。ぜひ、おもいっきり遊んでください。「おもしろ」は私が保証します!

追伸:
主人公アイヴァンの年齢が43歳となっております。この年齢設定をしたのは私で、理由は簡単、その時の私が43歳だったからです。でも今年、私は48歳になりました。アイヴァンの設定を書いてから、5年が経ったわけです。
『Devil’s Third』をついに発売できることを、皆様に、重ねてお礼申し上げます。

板垣伴信