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任天堂の業績を見ると、Wiiは、もっと攻撃的なプライスにもできたのではないかと思うが、2万5千円というプライスにした考え方を教えてほしい。また、ハード自体の採算は。
発売時にワールドワイドでどれくらいの数量が用意できるのか。その後の供給体制は。
DSは、発売の時にはそれほど勢いはなかったのが、翌年から一気に跳ね上がるという、今までにない普及の曲線を描いたと思うが、Wiiに関してはどのような曲線をイメージしているのか。 |
岩田 |
値段については、ま、いろんなことを考えています。そして、また自分たちが作りあげて最終的に総合的にできあがった魅力であったり、かかったコストであったり、様々なことを考えて、そして付けるわけです。2万5千円は当然大赤字ではありません。が、2万5千円だと、ものすごく儲かるのかといわれると、いや、やっぱり新しいゲーム機のハードというのは、ソフトを入れれば採算は取れますが、ソフトを入れないと最初は結構厳しいものですよ、というのが、現実です。もちろん、ハード単体が赤字なのか、赤字じゃないのか、赤字の幅はいくらなのか、というような話になっていくと、それは競争上の理由で申しあげられませんとしか言えないんですが、私たちがこの値段でかつ、私たち自身がソフトメーカーでもあるということを加えて考えると、これで十分収益に寄与できるだろうということで、この値段づけをいたしました。ちなみに、「ハードは最初は赤字で出すのが当たり前」というのはなんか変な議論ではありまして、そういうことを繰り返している業界は本当に健全でありうるのかというようにも思いますので、そのハードが赤字であるかどうかよりも、それは、あるべきペースでちゃんと普及するのかどうかということが重要だと思うんですね。ですから、私たちはあるべきペースで、普及するのに自分たちとしてベストだと思う値段、そしてプロモーションにものすごくコストが恐らくかかるであろう、それはだってゲームに興味のない人に最終的に届かなくてはいけないプロモーションをこれから任天堂はやらないといけないわけですね。無関心と闘うために。それを考えると、その予算も多く取らなくてはならない。いろんなことを考えて、この値段にいたしました。
ローンチの際の数量ですが、マーケットで極端な混乱があるようなことがあってもいけませんし、Wiiは今日現在、量産製造を始めておりますから、出す気になれば(発売日を)繰り上げることもできました。ただ、そのときに「ものすごく少ない数量で、ご迷惑をおかけしたのでは問題だろう」ということで、私たちは、むしろ、商戦期を逃さずしっかり出そうということで決めています。ただ、今日現在で輸送の段取りの問題も含めて、発売日に何台出すということを申しあげるのは早すぎますので、何かまた改めてそういうことを申しあげられる機会が来ればお話ししたいと思います。
最後に、DSの勢いが出てくるまでに一年くらいかかったということ、それはある意味ご指摘の通りかと思います。最初からDSは飛ぶように売れていたかと言われるとそうではなかったかも知れません。史上最速ペースだといって、あのグラフがいろんな過去のプラットフォームを突き抜けたのも1年近く経ってからのことでございます。何でこうなったかというと、それはゲーム人口拡大の私たちの努力が少しずつ実ってきてお客様にだんだん伝わってきたということではないかと思います。そもそも、ゲームに興味のない人は、ゲーム機のことを日ごろ考えていませんから、任天堂が鐘や太鼓をたたいてですね、笛を吹いて騒いでも、全く目に入んないんですね。私、男性なんでよく思いますけども、女性用化粧品の宣伝はどんなにされても、お姉さんがきれいかどうかは見ますけど、そこのブランドが何で、どういうベネフィットがあって、何と何のブランドはどういう関係なのか、ちっとも認識できません。で、ゲームをしない人にとってのゲームの広告も同じなので、恐らくものすごく時間が要るんですよ。で、今のDSが過去にない状況を作り出したのは、今までもともとゲームに興味があってゲームをされていた方が買ってくださるペースの上に、今までいなかったはずのお客さんが上乗せされているから、季節はずれの時期に、毎週15万台出しても全然足りませんというですね、これはご迷惑もおかけしているので、喜んでばかりもいられずに、反省もたくさんしているんですけれど、ただそういうことが起こるのは、そういうことがあったからです。ですから、そういう状況が作り出されて、広がるまでに時間が要るわけです。で、Wiiに関してはできることなら、それが一年後じゃなくて、発売直後からそうなって欲しいんですけれども、同じように恐らくちょっと時間は要るかも知れません。ただ、DSがそういうことを既に一回やりましたので、「前よりは短い時間でできるといいな」という、願望は持っております。 |
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宮本 |
ソフト次第って言われているみたいで。やっぱり、本当にWiiを使いこなしたソフトが出てくるのに、確かに1年くらいかかるのかもわかりませんけど。今回のDSもシンプルなアイデアで作れますし、それから、ベテランの、あのスタッフがやれば、ゲームボーイアドバンスよりも早く作れます。ポリゴン能力とかがあるので、わりとゲームキューブで使っていたノウハウをそのまま使える、とかあったんですね。で、そういう意味では、今回も、非常にパワーは実はあるんですよ。ゲームキューブよりも。ですから、ゲームキューブベースの技術を使うとすごく、早くものが作れます。だから、アイデア一発でかなり決定的なソフトが出てくる可能性があります。その一つのソフトが市場をガラッと変えるということ、早く今日以外のソフトでも起こせるようにしたいと思います。ヘルスパックは一つの可能性かな、と思っています。 |
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岩田 |
いやー、ヘルスパックは、すごい楽しみにしているんですよ。やっぱり、ゲーム機と、毎日体重を量ることが関係があるということは、なんかすごい今までと全く別のことで、ちょうど「脳を鍛えることはゲームじゃなかった。」、「犬を飼うことはゲームじゃなかった。」、「英語の勉強をすることはゲームじゃなかった。」って、かつては言われてきたのですけれども、全部今DSが、「それはゲームの一種かも知れないね。」、と言ってもらえるようにできたんですね。宮本が今度は、体重を量ることもゲームにしてくれると私は信じていますので。 |