|
E3(5月に開催された米国のゲーム展示会)で、年度末に600万、年内に400万台という全世界での目標を示したが、その計画はそのまま変えられていないのか。ゲームキューブが出た時に、5000万台というコミットメントを立てたと思うが、今回もまたそのような計画を立てるのか。
ニンテンドウ64やゲームキューブの発売時と比べて社内や開発スタイルなどは変わったか。
|
岩田 |
販売の計画についてですが、発表している内容を現時点では変えてはおりません。(全世界合計で)年度内に600万台、年内に400万台を目指したいという気持ちは今も変わっておりません。
価格や発売日については、今日お話ししたばかりで、まだ流通の方々ともお話しておりませんし、マーケットの方々に実際にこの商品を体感していただいて、その結果、反響があって、それが広がり伝わっていって、そして、最終的にどう反応いただけるのかということによって、当然結果は左右されるとは思っておりますけれど、現時点で、違う目標を申しあげるというのは時期尚早かと思います。
それから、5000万台発言については、誤解もございますようなので、少しこの機会に申しあげておきたいんですが、これは私が確か就任した直後の経営方針説明会で、「任天堂は何か経営指標を持っているのか」というご質問に対して、「経営指標というのを固定的に決めて運営する考えは持っていません」、と当時申しあげました。そのときに、「ゲームキューブが5000万台売れるというのを一つの自分の目標にしたい」という事は申しあげました。で、それが、コミットメント(必達公約)と報道されてしまったというのが現実だと、私は理解しております。
一方、今、その経営指標についてお話しするとすれば、今日実は一つ新たに、任天堂は「ゲーム人口拡大」ということ以外に、「一世帯あたりのユーザー数」を増やす努力をしますと、「一世帯あたりのユーザー数が増えるということは、ゲーム人口拡大が実現するうえでの、非常に大きなポイントになるのではないか」ということを申しあげました。したがって、今後そのことは一つの自分達の目安にしたいと思います。
Wiiとニンテンドウ64・ゲームキューブとの手ごたえの違いですね。あるいは、開発スタイルの違い。
後で、宮本にも少し語ってもらおうと思いますが、私自身の手ごたえの違いは、ニンテンドウ64・ゲームキューブは「ゲーム人口拡大」という現在の任天堂の基本戦略が設定される前に設計されたマシンでしたし、当時は「より豪華でよりすごいゲームを作ればゲームマーケットは拡大していくんだ。」という過去の成功法則がまだ通用していた段階で、それに基づき、考えられ、設計され、作られたマシンだという風に思います。その意味では、今回は明確に私が3年前に申しあげてから繰り返しお話してきたとおり、「それはもはや答えではない。市場拡大の為にその方向をいくら極めても、結果は伴わないだろう。」という風に、これは任天堂の考えですけれども、そのように考えておりますので、任天堂はもうそこを目指すのは止めようと決めました。まあ、そうはいいながらゼルダみたいなゲームを一生懸命作るわけです。それは、それを求めてらっしゃるファンの方が世界中にいらっしゃるし、それはそれで徹底してやろうというわけです。それは、(豪華なゲームを作るということを)「できないからしない」というわけではなく、ただ、それだけをやっていてもマーケットは拡大しないので、「DSでは例えば脳を鍛えるソフトがこのような結果を生み出した。じゃあ、Wiiでどうするの?」という時に、今までのニンテンドウ64やゲームキューブとは明らかに違う方向を向いて作りました。
「どうすれば、今ゲームをされていない方がするようになるのか?」、「やめちゃった人が戻ってくるようになるのか?」、「全く興味の無かった人がどうしたら触ってくれるのか?」、「家の中にあるゲームをする人としない人にあるものすごく厚い壁がどうやったら壊れるのか?」、そういうことを考えて作りました。そういう意味で大きく違うと思いますし、その為に開発チームにもそのことをずっと話をして作ってきたつもりです。あとは宮本のほうから。 |
|
宮本 |
そうですね、今岩田の話したとおり、ゲームキューブまでっていうのは一つの目標に向かって皆がゲーム開発しているという、その中でこう、ラジカルな意見とか色々あるわけなんですけど、どうしてもそれが通っていかないとか、どっちかっていうとどんどん最先端を追い求めているはずなのに、新しいことがやらしてもらえないというスタッフが意識を持っていたりしました。で、それはやっぱり競争の中にあったと思うんですね。ひとつの方向に対しての競争で、それをやってると他の人たちに負けると。何が負けるのか分からないんですけど、何か負けるっていう一つのベクトルに対してやっていたと。これは遊びっていうのは多彩なアイデアが必要で、いろんなユーザーがいて、っていう事がDSをやっていく中でかなり社内に浸透してですね、それに結構社内でラジカルな人たちとかが、飛びついて、割と積極的に新しいことをやろうという人たちが、まあ、主流になりつつある。そんな中で以前は、性能が低いと負けるんじゃないかとか色々悲観論が社内にもあったんですけど、最近ほとんどもう一色になってきて、気持ち悪いくらいですね、何か、皆が新しいことをどんどんやっていくことがこんなに楽しいっていう実感を持っていてですね。それから、例えばゼルダを3年かかって、4年かかって作っている人の横で半年くらい(の開発)でミリオンなんかを出されるとすっごい悔しがるわけですよね。で、じゃあ、終わったら自分はちょっと軽いの作りたいですとか、で、逆にゼルダはゼルダで見ると、いや、やっぱり時間を掛けたものはすごいですねって、ゲームキューブベースでもこんな絵が出るんですねっていう非常に多彩なものが社内で認められて、クリエイターそのものに色んなチャンスがあるっていう手ごたえをスタッフが感じていると思います。 |
|
岩田 |
私は、多彩さ、ソフトの種類とかボリュームによって、そのダイナミックレンジの広い価格設定みたいな話を今日もしましたけど、あの多彩さっていうのはすごい大きな我々にとってのテーマで、やっぱり会社の中で色んなものを生み出せるようにならないといけないなと思ってます。これはすごく強く意識しています。 |