ものすごく「脳を鍛える」とは? 東北大学加齢医学研究所教授 川島隆太

はじめに

人間の「知能」は、「結晶性知能」と「流動性知能」に分類することができます。

結晶性知能は、知識の正確さ豊かさと、その知識を運用する能力を示しており、
勉強や経験などの努力によって身につけることができます。

一方、流動性知能は、新しい場面に適応したり、これまで経験したことがない問題を解決したりするときに働く知能で、生まれつきの能力であるといわれています。

一般によくいわれる「頭が良い」というのは、流動性知能が高いことだと考えられます。

この流動性知能の本質となるものが「ワーキングメモリー(作動記憶)」であると考えられており、
最近の研究ではワーキングメモリーを鍛えることによって、流動性知能が高くなる可能性が示されています。

流動性知能が高くなると、新しい局面に直面した時でも適切な行動が取れるようになります。

例えば、瞬時の判断を求められるビジネスパーソンやスポーツマンの皆さんの能力が上がったり、
また主婦の方の家事の効率アップなどが期待できます。

今まさに受験を控えている学生の方であれば、点数が伸びる可能性があります。

個人差はありますが、いかなる世代・いかなる生活環境の方でも、ワーキングメモリーを鍛えるトレーニングを実践することで、効率的・効果的に自分の能力を伸ばすことができると考えています。

「ワーキングメモリー」とは

ワーキングメモリー(作動記憶)とは、1960年代に発表された記憶に関する概念で、
情報を一時的に脳内に保ちながら、その情報を操作し利用することを含む、

一連の記憶の過程を表します。

日常生活を健全に営むためにはワーキングメモリーは必須の能力です。

例えば、会話するときに相手の言葉を聞いて
理解しながら受け答えをするときや、
料理の手順を考えて調理するときにワーキングメモリーが必要です。

スポーツでも、相手の動きを予測し自分の次の行動を考えるときに
ワーキングメモリーが必要
になります。

ワーキングメモリーの能力が高い人は、複数のことを同時にこなしたり、
頭の中に記憶しておいて順番に処理することができるのです。

ワーキングメモリーが必要

最新脳科学から生み出された「鬼トレ」

「鬼トレ」とは最新脳科学に基づく新しい手法のトレーニングです。「鬼トレ」では、常にワーキングメモリーの能力ギリギリを突く難しさにすることで、効率よくトレーニングを行える仕組みになっています。

トレーニングは一定時間行う必要があるので、1日5分以上集中して行うようにしました。

ただし、トレーニングをしすぎても逆効果になるので、同じトレーニングは1日1回しかできないように制限を設けています。

ワーキングメモリートレーニングは継続して行うことが重要です。

鬼トレは1日5分でも効果が期待できます。少しの時間を利用して、毎日トレーニングを行いましょう。

トレーニングの前と、トレーニングを2ヵ月間継続した後で、MRI(脳の活動状況を調べる医療機器)による脳形態の撮影を行い、背外側前頭前野の大脳皮質の体積を比較しました。

トレーニングによって大脳皮質体積が増した領域

私たちはワーキングメモリートレーニングで
大脳皮質の体積(主に前頭前野部)が増加することを検証しました。

大脳皮質の体積は知能と関連があるといわれています。

本ソフトには、この実験に用いたトレーニングを元にして
生み出した「鬼トレ」を多数収録しています。