社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第11回:『BIOHAZARD REVELATIONS』

目次

4. “バイオリアル”

岩田

少し切り口を変えてお訊きしますが、
みなさんにとっての“バイオらしさ”とは何ですか?

中西

うーん・・・シリーズを15年もつくっていると、
いろんな意味で難しいんですよね・・・。
いくつものタイトルをいろんな人がつくっていて、
それぞれの方向性がまた認められている部分がありますので・・・。

岩田

任天堂で言えば、
マリオらしさやゼルダらしさを
ひとことではなかなか言えないのと同じですよね。
でもチームの中で共有されている
“何か”があるからこそ、少しでも外れると
「マリオらしくない」「ゼルダらしくない」
と言えると思うんです。

中西

そうですね。
あえて挙げれば2点ありまして、
『バイオハザード』は“サバイバルホラーのゲーム”という点。
これこそ、僕がプレイヤーとして『バイオハザード』を体験したときに、
エポックメイキングに感じたことで、
根底にある“バイオらしさ”だと思っています。
今回、過去のシリーズを振り返って、
サバイバルホラーとして必要な要素を洗いなおしています。
もうひとつは、社内で民間伝承的に
言われている言葉があるんですけど。

岩田

民間伝承、ですか(笑)。

中西

はい。“バイオリアル”って言葉があって、
“バイオとしてのリアル”という意味です。
たとえるなら、なんでしょうね?

竹中

ウイルスですね。
何か起きたときに、
「ウイルスによって変異したからこうなるんだ」
というのはバイオリアルですが、
「心霊」が出てきたらNGになるんです。

岩田

ああ、ではゾンビ化するのはウイルスのせいであって、
呪いや魔法など、別の方法で死者が蘇るわけではない、
ということですか?

竹中

そうです。

中西

毎度、いろんなシナリオやステージのネタを決めるたびに
「これはバイオリアル的にNO!」みたいな話になるんです。
でも明確な基準って、誰か言えるんですかね?

竹中

徐々にウソへと持っていく過程でしょうか。
最初はウイルスがあって、ちょっとした変化があって、
だんだんすごいクリーチャーが出てきて・・・と、
ストーリーをきれいに積み上げていって
“ウソっぽくないウソ”をつくるところが
バイオリアルかなと僕は感じています。

岩田

なだらかに話がつながっているから、
最後にあり得ないことがたくさん起こっても、
遊んでいる方たちが不自然に思わないんですよね。

中西

とはいえ、バイオリアルの線引きも
開発のノリで変わっていく部分はあります。
はじめはちゃんと会議をするんですが、
開発終盤になってくると
「ありあり、これもあり!」
みたいな感じで取り入れられる部分もありますし。
だからリアリティの線引きは、結果としては、
感覚的なところでやってますね。

鈴木

・・・でも「バイオっぽくないね」と言われて
制作物がボツになることがあるので、
きっと“何か”はあると思いますね。

川田

といっても、バイオらしさにこだわりすぎて、
結果マンネリ化するのも怖いんです。
いろんな方向性に拡散しても、ゲーム性が変わったとしても、
多分「これはバイオだ」と言える“軸”となるものが
15年のあいだで培われたのかなと感じています。
長く続けたことで、各々のバイオ像が拡散していますけど、
やっぱりウイルスがあって、怖いところに入っていって、
ゾンビやクリーチャーと戦って・・・というところは
バイオらしさとして変わらないと思うんです。
そういう意味では、『バイオハザード』は我々の手を離れて
お客さんの手に広がっているのかなと感じます。
僕らが違ったことを思い切りやりたくても、
お客さんが考える「バイオ像」というハードルもありますし、
そういうお客さんとの“対話”が面白いところでもあります。

岩田

お客さんには“いい裏切り”を提供したいので、
大切なポイントは“加減”ですよね。
「そう来るとは思わなかった、これ嫌い」ではなく、
「そう来るとは思わなかった、でも・・・いい!」
にしなければいけない。

川田

そうですね。
今回は原点回帰のホラーを目標にしましたが、
ゲームシステムは最新のものにして、
いままでの不満を全部解消してつくったつもりです。
その積み重ねの結果、今回のゲームができあがりましたが、
そういうところに我々が感覚でしかつかんでいない
“バイオらしさ”の根本があるのかなと思っています。

岩田

堀さんはどうですか?

そうですね・・・。
僕も10年ぐらい、ここで悩み続けています。
まあ、線を引くとすれば、
“心霊とスプラッターを除外したホラーの中で成立させる”
というところでしょうか。

岩田

そこは自分たちに課している縛りなんですね。

川田

ただ今回、レイチェルって女性だけ、
ほかのキャラに比べて存在感が違っています。
心霊っぽいというか、
『バイオハザード』らしくないキャラクターなんですけど、
新鮮なキャラクターに仕上がったので
よかったかな、と思いました。

中西

そう。あれは逆に、バイオらしさからは
ちょっとはみ出る位置を狙ってみました。

ただやっぱり、つくっている人たちの中に
それぞれ『バイオハザード』に対する想いがあるんです。

岩田

共通点はあるにしても、みんながきれいに
同じ“バイオらしさ”ではないに決まっていますからね。

中西

そう・・・バイオリアルの話にしても、
みんな好き勝手なこと言いますから(笑)。

たとえば、僕の中ではホラーはそれほどこだわりがなくて、
“お化け屋敷”ってノリでつくっていますね。

岩田

ああ、レベルデザインの構成で
そういう発想があるんですね。

そうです。
なので鈴木も、サウンドもサウンドなりに、
想いがあってつくっていると思います。

川田

だから今回、彼の中でピアノっていう
発想が出たんだと思うんですよ。
さっきも話に出ましたけど、
最初は僕もびっくりしましたから。

鈴木

直感で最初に感じたんですけど(笑)。
やっぱり美しすぎるとホラーから外れてしまうんで、
それこそバランスが肝心なんですよね。
昔の匂いを感じつつも、ちょっと新しいことをする、
というところを音楽も心がけました。