糸井
この3Dへの流れっていうのは、
これからもふつうに続くんですかね?
その、ぜんぶが3Dになっていくのかしら?
岩田
ぜんぶそうなるかどうかは疑問です。
娯楽屋さんの立場から言わせてもらうと、
私たちは人に驚いてもらうのが仕事ですから、
将来、飛び出すものを誰も驚かなくなってから、
あらゆるものを飛び出すようにするかどうかは
わからないです。
宮本
いまも、ぜんぶが飛び出さなきゃダメだ、
というふうには思ってませんからね。
確信できていることでいえば、
いまのゲームの中には、
「飛び出してたほうが圧倒的にいい」
という場面がけっこうある、ということで。
だから、飛び出しているからおもしろい、
というわけじゃなくて・・・。
岩田
飛び出すことと、とても相性がいいものがある。
宮本
そうそうそう(笑)。
糸井
なるほど。
宮本
だから、
「飛び出す機能ありにしますか、なしにしますか?」
って言われたら、
「飛び出すほうにしてください」と言う感じ。
糸井
娯楽屋さんとしての姿勢はよくわかりました。
じゃ、マリオ屋さんとしては、どうですか?
宮本
マリオ屋さんとしては(笑)。
『マリオ』としても、同じですね。
状況によっては、絶対に飛び出したほうがいい、
というときがある。
たとえば、ある景色の中で、マリオがこう、
むこう向きにぴょんぴょんぴょんっと
段を飛び降りて行くときの段差って、
平面で見てるとぜんぜんわからないんですよ。
岩田
二次元に投影したとき、
床が高いのか低いのか、
それとも奥行きがついているのか、
といったことは区別のつきようがないんです。
糸井
ああ、なるほど。
宮本
それが、飛び出して見えると、
手に取るようにわかりますから。
岩田
だからあれですね。
「空中のブロックをたたく」みたいなことは
いままでよりずっと、
直感的にわかるようになるはずなんですよ。
宮本
うん。
そういう、新しい遊びがいろいろできますよ。
糸井
飛び出すっていうのは、
見栄えだけの話じゃないんだね。
宮本
そうですね。
立体パズルなんかもわかりやすいですよ。
岩田
あと、質感がものすごく違って見えるんです。
それは、『ニンテンドッグス』(※22)を見てもらうと
すぐに実感できると思います。
ちょっと見てみますか?
糸井
あ、見たい、見たい。
宮本
まだ、つくってる最中なんですが・・・。
糸井
はい、はい。
ああーー、なるほど、これは、たしかに。
宮本
ちょっと驚きますよね。
糸井
うん、質感が。
宮本
やってるうちに慣れるかなと思ったら、
やっぱり、3Dボリュームをオフにすると、
すごく物足りないんですよ。
糸井
わかる(笑)。
岩田
質感が変わると印象が変わるんですよね。
糸井
また、これは、飛び出すだけじゃなくて、
前より全体の品質が上がってますね。
岩田
あ、そうですね。
そのあたりは、担当の紺野さんから、ぜひ。
紺野
はい。
まず、表現の面でいうと、
前作と大きく違うのは毛並みです。
実際に毛が生えているように仕上げてあります。
あとは、眼球の表現ですね。
じつは、前作では、目をテクスチャーで
表面的に見せていただけだったんですが、
3DS版では眼球がきちんとありますから、
目の動きや表情が圧倒的に違います。
糸井
ああーー、そうですね。
キョロキョロ動く。
紺野
アップになると、対象を目で追う様子が
さらによくわかると思います。
あと、今回、猫も登場するんですけど、
猫の瞳は、明るいところと暗いところで
きちんと変わるんです。
糸井
あー、すごいですね。
紺野
あとは、同じ犬種であっても、
スケールというか、プロポーションに変化がありますので、
遊ぶ人によって子犬にも個性が出ると思います。
糸井
実際に犬を飼っている人はうれしいですね。
絶対、自分の犬に近づけたくなるから。
紺野
それは「すれちがい通信」(※23)でも
活きてくる要素なんですよ。
今回の散歩モードはMiiが子犬を連れて、
一緒に散歩するんです。
糸井
あーー、それはうれしいね。
紺野
で、今回の『ニンテンドッグス』は
「すれちがい通信」で誰かのデータを交換したときは
散歩モードのときに、その人のMiiと子犬が散歩中に登場して
出会うことになるんです。
そして会話したりプレゼントをもらったりと。
糸井
たぶん、宮本さんも経験あると思うけど、
犬を連れていると、みんなまず犬を見るんですよね。
だから、こう、犬と散歩してると、道行く人が、
「あ、ブイヨン(糸井さんの愛犬の名前)」
って言うんですよ(笑)。
岩田
順序がそっちなんですか(笑)。
糸井
そう。
宮本
うちも、ぼく個人のことよりも犬のほうが
近所で圧倒的に知られている。
岩田
へぇー(笑)。
糸井
ゲームの中でもそうなるんだね。
宮本
だから、犬を飼っている人どうしで
データをやり取りすると
妙にリアルなことになると思うんですよ。
岩田
あと、ニンテンドー3DSでは
「すれちがい通信」そのものを
大きく進化させようとしているんです。
紺野
はい。前作の『ニンテンドッグス』は、
DSの「すれちがい通信」というのを
はじめて搭載したソフトなんですけど、
新作ではその通信機能がさらに
うれしい機能に進化しています。
簡単にいうと、「すれちがい通信」というものを
ニンテンドー3DSの標準機能にしたんです。
糸井
・・・うん?
岩田
要するに、ソフトをセットしていなくても、
「すれちがい通信」が成立するようにしたんです。
というのは、これまでの「すれちがい通信」は、
特定のソフトを遊んでる人どうしが
物理的に近づかないと成立しませんでしたから、
「すれちがい通信」を多くの人に経験してもらうには
同じゲームを遊んでいる人が
たくさんいるという状況が必要だったわけです。
そうすると、発売直後はまだいいにしても、
時間が空くと、どんどん、すれちがいが起きにくくなるんですね。
糸井
そうですね。
岩田
そこで、
「昔、そのゲームをやってたけど、
最近、ちょっとほかのゲームを遊んでるんです」
っていう人とも、
すれちがいが起きるようにしたかったんです。
そうすると、そのときプレイしている人が
うれしいのはもちろん、
ちょっとお休みしている人にとっても、
再開するきっかけになるじゃないですか。
糸井
ああー、はい、はい。
紺野
そこで、今回、特定のソフトの中ではなくて、
ニンテンドー3DS本体のシステムの中に
「すれちがい通信」ができるような
仕組みを入れてしまったんですよ。
ですから、たとえば、『ニンテンドッグス』や
『どうぶつの森』や、『ポケモン』といった
ゲームを遊ぶとき、最初の簡単な設定で、
本体の中にすれちがい通信をセットしておけば、
そのあと、ソフトがささってなくても、
「すれちがい通信」が起きるようにしたんです。
つまり、ニンテンドー3DSを持ち歩いてるだけで、
5個、6個、7個といろんなゲームのすれちがいデータが、
勝手にどんどん交換できるんです。
糸井
じゃあ、自分がプレイしたゲームごとの、
すれちがいの情報が本体に入っていて、
誰かとすれちがうごとに、
そのいくつものゲームのすれちがい情報が
ひとりでに、やり取りされるってこと?
岩田
そうです。
糸井
ほんとですか。
紺野
たとえば、新しい『ニンテンドッグス』を
1カ月ぐらい遊んでいなかったとします。
でも、すれちがい通信したデータは
ニンテンドー3DS本体に溜まっています。
ですから、その人が、久しぶりに
『ニンテンドッグス』で遊んでみたら、
すれちがいしたMiiと子犬がやってきていて、
しかもプレゼントをもらえるかも、
みたいなことが、起こるわけです。
糸井
うわー、そうですか。
なんていうんだろう、
単なるリアリズムじゃなくって、
ちょっとファンタジーみたいなエッセンスが
微妙にプラスされますね。
岩田
そうそう、驚きと喜びが増すんですよ。
糸井
うーーん、そのへんのさじ加減はさすがだなぁ。