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今回のプレゼンでも国内で据置型のゲームソフトが売れなくなっているという話があった。また、いろいろ聞いてみると「PS3やXbox360で開発しようとすると、開発費が10億円を軽く超えてしまって日本の市場規模では全くペイしなくなってきた」し、「Wiiも、ソフトが売れなくなってきているので、Wiiの開発コストでもなかなかペイしない」という話で、開発にゴーサインが出なくなってきている。 今後さらに性能を上げていった時に恐らくHD(ハイデフィニション)対応も考えていかないといけないと思うが、思い切ってSD(スタンダードデフィニション)のままグラフィック能力を固定してしまい、アップスケーリングの機能をハードウェアに付けてしまってはどうかと思う。 現時点で竹田さんがグラフィックの性能に関してアップスケーリングの評価を含めて今後をどのように見ているかを教えてほしい。 また、半導体の進歩に限界が見えてきていて、従来であれば単純にクロックを上げるといった方策だったが、並列処理などが増えてきている関係で、開発者の負荷が今後大きく増えてくる可能性が高い。恐らく御社でも最先端の技術というのは当然研究されていて、それがプログラムの負荷になっていることは考えていると思うが、宮本さん、あるいはプログラムの経験のある岩田さんから見て、負荷を軽減しながら安くあげていくことは可能なのかどうかを教えてほしい。 |
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岩田: では、まず竹田から、ハードについて。 取締役専務・総合開発本部長 竹田 玄洋: 私たちのディビジョンはいろいろハードを研究しているわけですから、いろいろな可能性を、HDのことだとか、SDだとか、いろいろなことを研究しています。ですから予算、リソースが限られる中で、どうすれば簡単にゲームが作られるかということも、いろいろシステム的に研究はしております。ただ、落としどころとして何が一番いいかということについては、まだ決定はしておりません。ただ、世の中テレビがHDになっていくわけですから、HDでの見慣れている絵が出るのが自然と思います。普通の放送が全部HDになるわけですから、HDが自然な流れかなというふうに、個人的には今思っています。 |
6-2 | 実際にグラフィック素材を最初からHD用に作る方式がいいのか、それともSDで素材で作って、アップスケーリングをかけてHDにする方がいいのかというのは、現時点ではどちらの方が(品質と開発コストのバランスが)いいと考えていらっしゃいますか?他社のHD機の現行ソフトを見ていると、(HD対応と言いながら)実際にはSDをアップスケーリングして、HDにしたソフトが多過ぎるように思うんですけれども。 |
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竹田: ほどほどの、いいバランス感覚のところで答えを出すのが一番いいと思っています。我々は別に「最先端だからどうか」とか、「遅れているからどうか」というのではなく、ゲームの内容に応じて、HDとSDを使い分けていくのが一番いいなと思ったりしております。 宮本: 僕の作り方からすると、流れに逆らうわけにはいかないなという程度の認識です。というのは、基本的にはお客さんはどんどん目が肥えていきますし、今でもHDを1度見てしまうと戻れないという人もたくさんいる。一方で、5.1チャンネルといっても、5.1チャンネルではないものを5.1チャンネルとか、HDではないものをHDとして見せても、納得するお客さんも実はたくさんおられるわけですね。だから、周りの人達がそうだと言ってるから良いと言っているだけで、すべての人に重要な機能か、僕はちょっと疑問です。確かにグラフィックの方は比較的お分かりになる方が多いと思います。再生環境もテレビで決まりますから、わりと分かってしまいます。だから、そこを強化しようとするとどうしても、SDのものをHDにとハード的に強化しても、ばれてしまいます。だからHD相応のグラフィックを作る開発コストはこれから、さらに高騰すると思います。 ただ、もう一度問題の原点に戻ると、やはり日本のマーケット専用のWiiのソフトを作って、開発費をペイするのは大変です。僕らもそんな怖いことはとてもできません。先ほどのマリオのソフトも日本で500万本売ると世界で2,000万本売れるという実績があります。ゼルダのソフトも、日本ではあまり注目していただけないんですけれども、だいたい海外では日本の5倍、いや、もっと売れるケースがあり、たとえば日本で50万本のゼルダが海外で500万本ぐらい売れた例があります。マリオは(全世界で日本の)4倍くらいですね。ですから、日本の開発会社でも世界中に通用するゲームは実は作れるんですけれども、その辺りはマネージャと開発者の姿勢の問題という面もあるかもしれません。 それから、SDかHDかという問題も、たとえばWii Fitを作るのに本当にHDは必要なのか、ピクミンのようなソフトを作るなら、HDの方がいいかもしれない、というふうに、ソフトによってやはり相性というのがありますね。ですから、それ相応に合わせた開発をされたらいいし、任天堂としてはその辺りのSDKライブラリーを準備して、いかに簡単に作れる環境を提供していくかということが課題かと思って動いています。 岩田: 次に私から技術屋として少し話をさせていただいて、その後ビジネスのことを少し波多野から話してもらおうと思います。私はもともとソフト技術屋ですので、コンピュータでソフトを作るというのはどういうことかというのを、たぶん、こちら側に座っている6人の中では一番経験してきた人間なんですが、一言で言いますと、コンピュータのプログラムの中には、「こんなこと本当は機械がすればいいのに、なぜか人間が苦労してるよな」というタイプのプログラムの努力と、それから、「これは人間が頑張るしかないよな」という部分の努力があるんです。ハードがうまく設計できた時というのは、ハードの都合のために制作者が無駄な汗をかくことが少ないというふうに作れるわけです。その逆も起こり得ます。 隣に竹田がいるので話すのが怖いのですが、ニンテンドウ64の時は、無駄な努力をたくさんしないと思ったように動かなかったですし、ゲームキューブとWiiは、あまり工夫しなくても、無駄な汗はかかなくても、それは機械が勝手にやるからというような作りになっていて、すごく楽をさせてもらったという感じがありました。逆に、竹田自身もニンテンドウ64の経験の後、どうしたら無駄なことでソフト技術者が汗をかかずに済むかということに、すごく「ハード屋がエネルギーを注ぐべきだ」という意識を持つようになりました。ですから当然、竹田が将来何かを作ったら、その思想は反映されると私は信じたいと思っています。 最後に、ビジネス面の話ですが、さきほどレイトン教授のソフトの事例を見ていただきましたが、日本でヒットした後、海外でああいう結果が出ると事前に予測できた人はどれくらいいらっしゃっただろうかと思いますし、あるいは、かつて「ニンテンドッグス」や「脳トレ」を、日本で売れた後に海外で売ろうとした時に、最初からああなると皆さんお感じだっただろうかと思います。このように、どう作るかというだけでなく、どう売るかという側面があるわけで、やはりソフトメーカーさんとの向き合いという意味では、その辺りが以前よりもずっと重要になってきていると感じています。最近よく社内で、波多野とこのことを話すことが増えていますので、(ソフトメーカーさんとの向き合いを長年担当してきた)波多野の方から(ビジネス面で)最近どんなことを考えているか、話してもらおうと思います。 取締役専務・営業本部長 波多野 信治: 開発の志向(取り組み)は、開発者、各ソフトメーカーさんのお考えということと、それから「ビジネスをどのように」という考えとが、たぶん、それぞれの会社さんには考えがおありだと思います。そこが1つの方向に向かっている場合と、それから先ほども話題になりました、いわゆるHD、非常に高精細なグラフィックや、その手法を駆使して作ることが開発者、技術者の1つの見せどころ、見せ場で、それが差別化であり新規性であるという考えの会社さんも当然おありになるわけで、そうすると当然、開発費は上がっていきます。 ちなみに、たとえばの話で、ファミリーコンピュータの時代を今うんぬんしようとは思ってないんですが、ファミコンの初期の頃のメモリが大体24キロバイト。それが現在どうなっているかと言うと、ブルーレイ、ソニーさんのPS3ですが、これをフルに使った場合、54ギガバイト。これを別の例で比較いたしますと、このファミコンの24キロバイトはコップ1杯、200ccだとします。そうすると、フルに使ったPS3のブルーレイは、25メートルプール1杯分に相当します。すなわち、外部メモリが225万倍になっているんですよ。これは単純な比較、たとえばの比較です。これに、チャレンジするということは、非常に意味のあることだと思います。意味はあるんですけれども、これを全部使う人はもちろんいないと思いますが、やはり、今の傾向としては皆さんそういう方向に行っている。では実際に、1本当たり(1タイトル当たり)の売上の数字がどうなっているか。確かに増えてはいますが、200万倍はおろか100万倍も増えてはいないと思います。すなわち、「収益性は非常に厳しい状況になってきている」ということになるわけです。 これは単純な推定ですけれども、傾向がそのようになってきますと、任天堂はどのようにソフトメーカーさんとやっていかなければならないのかという課題が出てきます。 先ほどレイトン教授について岩田が説明しましたが、現状は日本だけではペイしないソフトが増えており、なかなか厳しい状況ですし、海外でも日本のメーカーの存在というのは、かつてのような状況ではないんです。そういう意味では、国内でのご協力はもちろんですけれども、(国内はむしろ独自でやっていただき)海外で私たちが協力する。それは販売も、プロモーションも我々が一緒にやらせていただくという取り組み方や、その方法について考えており、一部そういうのを具体的にやっています。 一昨年からやりましたし、今年もやりますが、セガさんの「マリオ&ソニック」のオリンピックゲームシリーズがあります。これはDSとWiiで昨年1,100万本以上出ていますし、今年はバンクーバーの冬季オリンピックのタイトルが出ます。国内は任天堂、海外はセガさんが発売しておりますが、海外では側面的なプロモーションを私たちがやっています。 こういう取り組みもやりながら、日本のメーカーさんとどのように新しい分野を開くかという、いわゆるグラフィックだけではなくて、先ほど宮本が言いましたけれども、どのようなソフトを皆さん開発されるのかは、ある段階にならないと私たちも分からないのですが、協力できることはさせていただこうと思っておりますし、また、そういう取り組みも徐々に進めています。ご質問の通り、ペイしないということに対して、私たちがそのような取り組みをソフトメーカーさんとしなければいけない段階でもあり、これからもそういうことをしっかりやっていかなければならないと思っています。もう1つはおっしゃる通り、開発費はいやでも上がっていっています。1つの例として、ファミコンとブルーレイのメモリのサイズの比較を簡単にさせていただきました。そういう中で、私たちはできるだけご協力をしながら、いいものを作っていただこうという考えでおります。 岩田: そういう意味では、ソフトメーカーさんとプラットフォームホルダー任天堂の関係というのも、これから変質していくんだろうなと思います。「今までのやり方がこうだったから今後も未来永劫こうだ」では、「お互いに成り立たない状況になってきている」という話を波多野と最近よくしていまして、新しいやり方を発明するべき段階にきていると思っています。 |
6-3 | 時間軸でいえば、いつ頃という考えか? |
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岩田: そういうものの実例がそう遠くないうちに始まらないと、今の状況を大変不健全に感じておられるソフトメーカーさんは多いわけですから、そんなに遠い時間軸ではないと思っています。 波多野: 今ここで、まだ具体的にはお話できないんですが、お話が決まっておりますタイトルを1つ申しあげます。今年7月に発売しました、スクウェア・エニックスさんのDS用ソフト「ドラゴンクエストIX」については、海外では、私どもがスクウェア・エニックスさんと協力していきます。アメリカ、ヨーロッパでの販売は、全面的に協力しようと思っています。 過去のドラゴンクエストシリーズの成果を踏まえた上で、「海外でももっと売れるように」、あるいは「こういうソフトが海外で売れるべきだ」という前提に立って、スクウェア・エニックスさんと協力し、任天堂が中心になってアメリカ、ヨーロッパの展開をさせていただくということに、今、話としては決定しております。詳細はこれから詰めます。 |
7 | 今回Wiiの上半期の販売台数が予想通りいかなかったことや、値下げをしたにもかかわらず通期の販売台数を下方修正された要因として、有力タイトルがそろわなかったことを挙げられているが、発売タイトル自体は当初のプラン通りだったと思う。それにもかかわらず、販売台数が伸びなかったことに対する現状分析、有力タイトルを出すことの重要性を常々認識し、それを大きなテーマにしていたにもかかわらずそれが実行できなかったことの現状分析とそれに対して今後何をしていくべきなのか、今までと変わらないのか、何か違うことを考えているのかを教えほしい。 |
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岩田: まず、任天堂の基本的なビジネスの構造ですが、比較的少ない種類のタイトルで、それを世界中で非常に長い間、非常に大きな量を売ることによってハード、ソフトを牽引し、結果、市場を活性化させていくものと思っています。 Wiiについて申しあげますと、もし昨年末に出した「Wiiミュージック」や「どうぶつの森」が売れ続け、流れが作れていたら、「今年前半はソフト不足」とは言われなかったかもしれません。逆に去年、「Wii Fit」が売れ続けたり、あるいは「マリオカート」が売れ続けたりしましたが、それが起こらなかったら、その時点で「Wiiはソフト不足だ」と言われたと思います。言い換えますと、数があるかどうかではなくて、売れ続けているもの、そしてそれがどんどんお客様の中で広がっていく状態を作り出せるかどうか、ということなんです。 当然、任天堂はそこで打率10割を目指したいわけですし、その意味では、開発側からは、いろいろ面白いネタを自分たちなりに練りこんでご提案しているつもりなのですが、人間がやっていますので、打率10割にはなりません。そのことと、ほかの歯車も含めてうまく合わなかったということで、いったん、私たちの想定以上にゲームに対するムードは冷えました。ムードが冷えることは、今年の春の時点で覚悟はいたしましたが、正直、夏の時点で、「これほど冷えてしまうとは」と思ったことは事実です。そこに見込み違いはございました。ですから、いったん過剰に冷えてしまいますと、先ほどお見せした通り、「Wiiスポーツ リゾート」は勢いを取り戻すことに向けて機能しておりますし、またこれからも売れ続けそうな手ごたえはあるんですが、いったんある程度熱が下がってしまうと、また熱が高まるまでに時間がかかると思っています。ましてや今、世の中のムードは先を争ってWiiを買おうというムードにはなりにくいという状況ですので、これは少し時間がいると考えています。そう考えると、今年度中に販売できるハードの台数、ソフトの本数というのは、やはり、当初期待していた水準に届かないとみるのが妥当であろうと判断しまして、今回下方修正をした次第です。 それから、有力タイトルがそろわない状況を今後どう防ぐのかということですが、当然、来年の準備は今ちょうどやっているわけで、ある程度、自分たちなりに勝算はあるつもりです。どちらかというと今は来年の準備というよりは再来年の仕込みをどうするかということを考えている段階です。 売る側の立場としては「Wii Fit Plus」を世界中でしっかり売る、「NewスーパーマリオブラザーズWii」をしっかり売る、ということにフォーカスしております。作る側として言えば、来年中に売れそうなものの仕込みはもうある程度できていますし、逆に、今めどが立っていないものは来年売れるようになりません。むしろ、再来年しっかりビジネスができるように今何を準備するのかということを考えているところです。当然、昨年末に出したタイトルがロングセラー化できなかったというのは大きな反省点ですので、そういうことが繰り返されないように努力したいと思っています。 |
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プレゼンテーションも含めて、失敗の教訓を生かして何をどのように変えていくのかというのがいまひとつ、すっと入ってこない。当然、百発百中というのはあり得ないでしょうし、決して致命傷だとは思っていない。1つは、たとえばFaceBookアプリだとか、iPhoneの躍進、それからE3で発表になったソニーとマイクロソフトのモーションセンサー、言葉を選ばず言わせていただければWiiハードの追随値下げといったような競争条件の変化への対応が、何となく後手に回っているという印象がある。 もう1つは、売れるソフトと売れないソフトの二極化、小売量販店における仕入れの慎重姿勢、ソフトの違法コピー問題とかの業界構造の変化への取り組みについては、なおさらという感がある。従来から説明いただいている新興国を含めたゲーム人口の潜在的な拡大余地というのは十分理解しているつもりだが、拡大、再拡大のきっかけとなる製品やサービスというのはやはり見えていない。 この場で驚きのある新しい提案の中身を聞くのは野暮だと思うが、今日のいくつかの決算記事の中で、御社について曲がり角という表現をいくつか目にしている。そこで今期の業績の落ち込みというのは一時的な要素が強いのか、はたまたメガヒットソフトを出すことによってもう一度成長軌道に戻せるとお考えなのかを聞かせてほしい。 |
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岩田: 我々のビジネスというのは、皆さんが、「そんなことやって常識としてうまくいくんだろうか」と思うようなものが、何かのきっかけでポンっと化けた時に大きく成長する、大きく伸びる余地のあるビジネスなんです。 ちょっと昔の話ですが、「ポケモン」が世界中で売れると誰が思ったでしょうか。「脳トレ」が世界中で売れると誰が最初から感じたでしょうか。「Wii Fit」がこんな商品に化けると、最初から見通せていた人はいったい世の中にどれだけいらっしゃったでしょうか。「トモダチコレクション」が初回受注10万本であったということは、「10万本あればしばらく大丈夫だ」と日本中の専門家の皆さんがそう考えられたということなので、「そういうことを打ち破るものをどう作るか」なんですが、すべて計算して作ることはできません。 一方で私は公開企業の経営者ですので、一定以上の打率でそれを実現し、増収増益を目指していく責任があるわけです。私自身は、いろいろなところで「任天堂は後手に回っているんじゃないか」というご批判があるのは当然理解しているんですが、一方で、あらゆるところに先手を打つほど任天堂にリソースはあるのかと思うわけです。任天堂は自分の得意なことに集中してやっていませんと、人数の多い会社ではありませんので、あっちもこっちも、こういうことがはやりそうだからここに手を打ち、あそこでこれからはこうだ、という人がいたからそのための準備をし、なんてことをやっていると、あっという間にパワーが分散してしまいます。むしろ、「そんなことうまくいくの」と人が思うかもしれないことに、実はひそかに、しっかりとエネルギーをかけて、気がついたらそれが化けていたという状況を作るのが私の仕事です。それを一定以上の打率で成し遂げられていれば任天堂を認めていただけるし、成し遂げられなければ、「あの時が曲がり角だった」と言われると思うんです。 当然、私たちは次々と作っている商品それぞれに、「どうせ作るなら化ける可能性があるものを作ろうよ」と考えて進めています。そうでなければ、「トモダチコレクション」を3年以上開発し続けるなんてことをするわけがないのです。でも、では3年以上かけてゆっくり、じっくりと開発したら全部「トモダチコレクション」のようになるかというと、ならないわけで、その目利きをするのが私や宮本のすごく重要な仕事で、その目利きの打率が今のところある程度良いので、今の任天堂の結果があるんだと思っています。ですから、過去何年かの私たちの目利き力を信用していただいて、任天堂はこれからも化ける可能性のあるソフトを提案していくんだということについて信頼していただく以外にマーケットの皆さんにメッセージを出せないわけです。 マーケットの皆さんに「来年についてはこう、再来年についてはこういうことを考えています」と、手品の種を全部しゃべって驚いていただけるほど、我々は力ずくの勝負はしていないものですから、(具体的に何を作っているという)メッセージって出せないんです。また、私たち自身も、走りながら種を見つけていくんです。「これってなんか筋が良さそうだな」という話をしながら、それがあるところでポンと化ける瞬間に「よし、これで勝負」というところの判断をするわけです。その判断から「8カ月とか10カ月あると商品になるよね」というのが私と宮本がいつも話していることなので、そういう時間スケールでものを考えています。 ですから、そういう意味でいうと先ほどの、もう来期の準備はもうある程度済んでいて、実はもう今は「再来年のことを考えなきゃいけないんですよ」というのが本音でございまして、その意味では、決して、これから再浮上するきっかけを我々は持っていないということではないことは、ご理解いただければと思います。 それから、たとえば他社さんがモーションセンシングテクノロジーに対応してくると、それで即座に、「これで任天堂の優位性はなくなった」という議論にどうしてなるのか、さっぱり理解できません。もし、そんなに簡単にそれに対応した面白いソフトができるなら、「Wiiスポーツ」より面白いソフトがWiiに山ほどあるはずですが、それが、そんなにないのはどうしてなのでしょうか。それを上手にバランスして作る総合力こそ、任天堂がご評価いただいている市場での力ではないのかなと思っていますので、まだモノがないのに、そのないモノに対して「任天堂がもう優位性を失った」と言われますと、少し違和感があるのは事実です。 同じことは、iPhone、iPod touchとの話についても言えまして、報道等を読みますと、「DSはiPhoneや他社さんのゲーム機に押されているからてこ入れするんだ」と書いてあるんですが、今日実際に資料を見ていただいて、確かに、日本の市場全体にDSの最盛期の「どこまでいっちゃうんだ」というような勢いがないことは事実ですが、DSが市場の中で存在感を減らしているということは全くないし、世界中で存在感が増している中で、なぜそう言われるのか分かりません。それはどちらかというと先に、「任天堂はアップルと戦ってることにしたい」というお考えの方がいて、その考えに基づいて断片的な情報をつなぎ合わせてストーリーを書かれるからああなると感じますので、そういう流れについては、私は違和感があります。それは、今日実際に説明を聞いていただいた皆様の中には十分ご理解いただけた方もいらっしゃると信じたいです。 |