4-1 | 今回のE3で御社がゲーム(の発表・体験)に集中されたということは理解するが、オンラインに関して一つ大きな質問がある。任天堂は、既存のベンダーやiOSやAndroidのようなオープンなプラットフォームに対して、どのように差別化し、追いつき、おそらくは凌駕し、競争していくのか。特に、マルチプレイヤー、市場、コネクティビティということについてもっと伺いたい。 |
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岩田: 任天堂の強みは何かと考えたときに、それは「世界中に任天堂のソフトウェアの価値を知るたくさんのお客様がいらっしゃること」だと思います。そして、ご両親あるいは祖父母の皆様の視点からご覧いただいた際に、「自分の子供や孫に安心して買って大丈夫なものだ」と考えていただけているということがあると思います。また、ゲームが上手な人もそうでない人も一緒に楽しんで、結果、その人たちの間に笑顔が生まれるということを評価していただいていると思っています。 一方で今、ゲーム専用機のオンラインネットワークの世界というのは、必ずしも任天堂がやってきたアプローチと相性が良くないと思っています。ですから、単純に同じようなものを作って追い越そうと思っても、何年も前からはじめておられて、かつ毎年改良されている人に簡単に追いつくことはできませんし、それがスマートな戦略だとも思いません。私が今回、E3の直前にニンテンドーダイレクトという場を通じて『Miiverse』についてお話ししましたが、『Miiverse』はそのような考え方に基づいて、任天堂は次に何をしようかと検討した結果としての一つの新しい方向性です。「ゲームの中身だけが楽しいのではなくて、ゲームに関する話題を語り合うことが面白い」という場を、今のオンラインネットワークを使って実現したら、「たとえ場所が離れていても、たとえ同じ時間に一緒に遊べないとしても、お互いにゲームを通じて『共感』しあえる」ということが可能だと考えたからです。Wiiで生まれたMiiという存在が、その中の一つの非常に大きな資産になると思います。 そして同時に『Miiverse』というのは「自分が持っていない、自分が遊んでいないゲームについても知るチャンスを増やす存在」でもあります。『Miiverse』の画面としてお見せした、あのMiiがいっぱい出てきて、私は「わらわら」という言葉を使い、その画面をお見せしましたが、あそこに出てくるゲームのアイコンはすべて自分が持っているものとは限りません。「自分がこういうゲームを遊んで満足しているときに、他の人がこういうゲームでも満足している割合が高い」というものをそこに出そうとしています。いわばゲームのホームメニュー画面とおすすめ機能を統合した形と思ってください。ゲームへの関与が少ないカジュアルユーザーといわれるお客様ほど、ゲームに対する情報収集を積極的にはされませんので、次におすすめできるゲームをご提案する方法が必要です。今、ご説明したことも含めて『Miiverse』というのは「ゲームをより楽しめるようにする」、「オンライン対応でないゲームもネットワーク対応になる」、そして「平均的なプラットフォームにおけるソフトウェアのタイ・レシオ(ハード1台あたりのソフト購入本数の割合)を上げる存在にする」ことを目指して考えました。 |
4-2 | フレンドコードが不要という話を聞いたが、それでユーザーが今より簡単につながることができるのか? |
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岩田: フレンドコードという存在を一切廃止するということではありませんが、『Miiverse』の機能を使うと、今までよりも飛躍的に簡単に(フレンドコードをいちいち打ち込むことなく)私たちのプラットフォームの中でフレンド関係を成立させることができます。 |
5-1 | Wii Uについて、少し技術的なことをお話しいただきたい。少額課金や会員サービスのような新しいビジネスモデルにも対応できる機能があるのか。また、プラットフォームをまたいでの観点で、Miiverseのような機能は考えられるか。例えばiPad、iPhone、Android携帯端末から接続できるようなオープンなプラットフォームになるのか? |
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岩田: 最初のご質問についてです。Wii Uを作るときに、発売時にさまざまな課金のオプションが選べるようにDRM (Digital Rights Management)システムを設計しました。ですから、技術的にはフリー・トゥ・プレイも少額課金も自由に行えるように作ってあります。 次に『Miiverse』はマルチプラットフォーム、クロスプラットフォームでどのように広がっていくのかという話についてです。私たちが『Miiverse』という名前を出す前に、『Nintendo Network(ニンテンドーネットワーク)』という言葉を発表して、「これから、この『ニンテンドーネットワーク』の元に複数の任天堂プラットフォームを組み入れていきます」ということを申し上げました。その『ニンテンドーネットワーク』という考え方の中で、人と人とをつなぐソーシャルサービスを実現する役割を担うのが『Miiverse』ですから、今あるニンテンドープラットフォームをサポートし、そして将来のニンテンドープラットフォームもサポートしていこうとしています。『Miiverse』のコンセプトを説明するためのビデオの中でご紹介したように、『Miiverse』というのは基本的にゲーム機の中で遊ぶゲームのためのコミュニケーションサービスですが、一方でウェブサービスとしての側面を持っているので、『Miiverse』でどのようなやりとりが発生しているかは、ウェブブラウザがあればどんなデバイスからもアクセスできるように作っています。例えば、スマートフォンやタブレットの上で『Miiverse』のお客様同士のやりとりを自分がゲーム機の前にいないときに確認して、それが新しいゲームを知るきっかけになるかもしれませんし、自分が家に帰ったらこのゲームを遊ぼうと思うきっかけになるかもしれませんし、将来はさらにもう一歩進めて、『Miiverse』で見つけたゲームをスマートフォンやタブレットの上で買うことができて、買って家に帰ったらそのソフトはすでに(いつの間に通信の機能を活用して)ダウンロードされているようにすることを実現したいという、そういうことまでが私たちが考えていることです。 一方で、プレミアムな価値を持ったインタラクティブ・エンターテインメントとしてのゲームというものを私たちはどう作り、そして世の中にその価値を認めてもらうかというところに軸足を置いていますので、任天堂製のゲームコンテンツを直接、タブレットやスマートフォンの上で遊んでいただくという考えは持っていません。 |
5-2 | Wii Uの発売時に、いくつのタイトルが自社タイトルおよびサードパーティータイトルとしてデジタル販売で提供されるのか? |
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岩田: これはすでにお伝えしたことですが、Wii Uに関しては、Wii Uの発売時から物理的な光ディスクで売るソフトウェアは同時にデジタル販売できるような準備を最初からしておりますので、発売時からそのようなオプションを選んでいただけると思います。 ソフトメーカーさんには「こういうビジネス条件でどうですか」という提案をしていますので、それを妥当だと感じてくだされば、発売時からそれが始まると思います。技術的な制約は何らありません。 |