株主・投資家向け情報

2014年1月30日(木) 経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
質疑応答
本文の一部を引用される場合は、必ず、本ページのURLを明記、または本ページへのリンクをしていただくようお願いいたします。
Q 1

 スマートデバイス向けの新しいサービスアプリについて、くわしく教えてほしい。このサービスアプリ自体、そもそもお金がかかるものになっていくのかどうか。ハードを買うとかソフトを買うという以外に、ここの部分でお金になるのか。このサービスアプリがもたらす効果というのは、例えばハードやソフトを今まで以上に買ってもらえるという話になっていくのか。また、サードパーティーの会社は、このサービスアプリにどういう立ち位置で入って来るのか。加えて、研究開発費について、第4四半期(2014年1月〜3月期)だけを見ると8割ぐらい前年同期比で増える計画になっているが、これは来期も同じ規模の費用が発生するとみておいた方がいいのか、それとも一時的に増えるだけなのか、イメージを教えてほしい。

A 1

取締役社長 岩田 聡:

 スマートデバイスで考えているアプリケーションについて、これは少なくとも短期的な収益を目指してつくるものではありません。「お客様にご注目いただいて、任天堂の情報をより知っていただくためのきっかけにする」ということが一番大きなポイントです。プレゼンテーションで、「人々のライフスタイルが変化した」と申し上げましたが、例えば、世代によって、「テレビをどう視聴されているか」、あるいは「テレビのコマーシャルにどれぐらい触れておられるか」というのは、非常に大きな差が出てきていると思います。以前であれば、テレビという媒体、あるいは他のマスメディアを通じて情報を入手していた消費者のみなさんが、今はスマートデバイス、インターネットを通じて情報を得られるようになってきました。インターネットが普及したことによって、PCやスマートデバイスは、「ほかの人はどう言っているの?」という(ことを容易に知ることのできる)、ソーシャルメディアの存在も含めて、お客様の判断と情報収集にとって、非常に重要な手段になっています。「任天堂はそこ(スマートデバイス上)にしっかりと(お客様とつながる)チャンネルをつくりたい」ということが一番のポイントです。そのことによって、自社だけでなく他社さんの製品も含めて、任天堂プラットフォーム上にある面白いコンテンツをご紹介する場にしていきたいと思っています。ただ、「任天堂が宣伝のための媒体をスマートデバイスにつくったから、それをみなさんが毎日起動していただけるか」といいますとそのような虫のよい話はあり得ませんので、お客様にとって「楽しい、気持ちがいい、うれしい」ということが起きませんと頻繁に起動してはいただけないと思っています。スマートデバイスのアプリは大変激戦で、起動され続けるというのは特に大変だと言われています。ダウンロードして1回遊んでいただくだけであれば、それほど困難ではないのかもしれませんが、「遊び続けていただく」、「起動し続けていただく」というのは大変なことだと思っています。「そういう覚悟でやります」という決意を申し上げており、「そういう環境が一度できれば、お客様と任天堂のつながりを大きく変えていける」あるいは、「テレビ広告しかなかった情報伝達手段に、新たな伝達手段が加えられて、全体としてのコスト効率が上げられるのではないか」といったことも含めて、総合的に考えています。

 今期の予想研究開発費については、突然の増額でもありましたし、規模も大きく大変驚かれたようで、IR担当者からも、「アナリストの皆様からこの領域について非常にたくさんご質問をいただいた」という報告を受けました。昨日、私は大阪証券取引所の決算発表会見で、この点をご質問いただきまして、「任天堂が不得意と考えている部分について、今期しっかりと取り込んでいきたいので増額をしました。未来に向けての投資と考えてください。」と申し上げましたが、この不得意な領域がどこなのかをお話しすることは、当社にとってメリットがありませんし、株主の皆様の利益にもなりませんので、具体的にはお話ししません。ちなみに、これは今期特有の事情で、来期以降のベースラインが上がっていくということを意図したものではありませんので、その点はご理解ください。

Q 2

 中長期の話もあったが、まずは新年度にきっちり黒字化していかないと、投資家の皆様も待てないと思う。来年度、黒字化を目指すということだが、現状のWii Uの普及台数ペースを見ると、かなり厳しいのではないか。売上高を伸ばしていきたいという話だったが、あわせてコスト面でもきっちり利益が出るような体制にしていけるのか。もう一度、売上を拡大する施策とコスト面で利益を改善する施策について、説明してほしい。

A 2

岩田:

 今期の収益が営業赤字になってしまうということについて、これは完全に出と入りが合っておらず、「経費を以前の売上規模の時のように使っているのに、特に海外での売上が振るわない」ということが影響しています。決算説明会参考資料に「外貨建取引情報」というページがあり、アメリカドルとユーロのそれぞれの売上高が出ておりますが、第3四半期までで、ドル建売上高は前年度23億ドルであったのが今年度は17億ドルになり、ユーロは14億ユーロだったものが10億ユーロになっています。これは、ニンテンドーDSやWiiの定番ソフトやハードのように「(既に過去に償却が済んでいるので)あまり研究開発費がかからない、(新規に宣伝していないので)マーケティングコストもかからない、それでもある程度売れていく」というような商品が減っていく一方で、新しいプラットフォームの売上が十分増えていないということがこの構造を生んでいます。(そのような状況でありながら)マーケティング費は以前と同じぐらい使っていますので、結果として何が起こるかといいますと、売上高に対するマーケティング費用の比率がどんどん上がってしまいます。そのような意味で言いますと、マーケティング費のより効率的な使い方、これは先ほどのスマートデバイスでお客様とのつながりをつくりたいということも、非常に密接に関係するのですが、「今までとは費用の使い方を変えて、もっと効率の良いところに集中する」ということが、一番短期で効く方法だと思っています。一方で、単純にマーケティング費を削減して何の工夫もしませんと先ほど(プレゼンテーションの)冒頭で申し上げましたとおり、縮小均衡になりますので、「今までこういう配分できたが、使うところにはもっと使い、費用対効果の低いところは徹底的に見直す」というようなことがポイントになります。

 ニンテンドー3DSに関しては、(昨年の年末商戦期に)私たちの期待通りに十分に普及させることができませんでした。「年末商戦時に爆発的に売上が伸びる」ということを期待し、その予兆を昨年の10月末の時点では感じていましたので、第2四半期の決算説明会の場で「年末商戦に勝負を懸けます」と申し上げましたが、それが達成できなかったことについて反省しています。一方で、先ほど申し上げましたように、(ニンテンドー3DSは)世界で4000万台以上普及したプラットフォームのベースができましたので、「ここでソフトビジネスをして、そもそも利益が出せないはずはない」というところまでもう来ています。今年も有力タイトルがたくさんありますので、そこでしっかり利益を出していきます。その意味では、来期の利益のドライバーはニンテンドー3DSになると思います。Wii Uは、今の普及台数ですと、大きな利益を出すことは容易ではないと思います。今期の場合は、海外でのハードの値下げで非常に大きなコストを使いましたが、そのようなことを前提としなければ、今期のような大きなマイナスが出ないような運営は可能だと思います。また、今年は『マリオカート8』と『大乱闘スマッシュブラザーズ』という、私たちにとって非常に得意な分野である、お客様同士が誘い合って遊んでいただけるタイプのゲームが二つありますので、この二つを軸にしながら、これまで発売したソフトも含めて、総合的にWii Uの魅力を認めていただけるようにしたいと思います。また、プレゼンテーションで申し上げた、「Wii U GamePadの存在意義をしっかりご理解いただくようにすること」ともあわせてWii Uの立て直しを図りたいと思います。Wii Uに関しては、「Wiiと同じようなライフサイクルで1億台を超える普及をする」というような前提は、もはやリアリティーがありません。一方で、今からでもプラットフォームとして一定レベルの普及を達成し、一定レベルの成果を収めることは、シナリオの書き方によって十分可能だと思っていますので、そういう現実的なシナリオを書いて、少しでも利益を生み出せるプラットフォームにしていきたいと思っています。

Q 3

 キャラクターIPのライセンスビジネスについて。今回、デジタル分野への活用も考えるということで、大きな方針転換のような印象を受けたが、デジタル分野へのライセンスアウトをするに当たっての方針を教えてほしい。例えば、高額課金になるモバイルゲームなどがたくさん出ている中で、岩田社長は従来から高額課金に対する抵抗について話していたと思うが、どのような方針でライセンスアウトしていくのか。また、来期、再来期の営業黒字化を目指す中で、このライセンスビジネスというのは重要な事業になっていくのかについても、あわせて教えてほしい。

A 3

岩田:

 キャラクターIPのライセンスにつきましては、もちろん、「これまで例外を設けていたものを例外と考えずに柔軟に(対応)します」と申し上げましたが、「お申し出をいただいたらすべてライセンスする」と申し上げているわけではありません。例えば、その商品が最終的に、中長期で考えたときに、「お客様を笑顔にできる商品であるのかどうか」ということを私たちなりに判断させていただくということと、それから、私たちのコアビジネスと直接の競合関係にならないかどうか(を判断させていただきます)。といっても、あらゆる娯楽ビジネスは、ある意味お客様のアテンションを取り合うという意味では競合関係にあるのですが、そういう意味での競合ではなくて、本当に直接競合して、例えば私たちのハード・ソフト一体型のプラットフォームビジネスの勢いを大きく削いでしまうとか、任天堂のキャラクターが使われて、結果、そのイメージが非常に悪くなってしまうとか、そういうものには当然ライセンスをしないわけです。世の中でいろいろなキャラクターIPをお持ちのところはいろいろなライセンスを考えられると思いますが、それと大きくは変わらないと思います。その意味では、今までは絶対なかったということが、おそらくこれから1年以内にいろいろ起こると思いますし、既にお話をいただいて進めていることもありますので、ご期待いただきたいと思います。

 収益については、ある意味、ライセンスビジネスというのは他力で動くものですので、初めに予算を決めて動いてしまいますと、本当はライセンスしない方がいいものにまで踏み入れてしまうおそれもありますので、これだけ稼ぐということを具体的な数字の目標にはいたしません。一方で、皆様が認めてくださっている任天堂のキャラクターIPの総合力を考えますと、「任天堂の年間の営業利益の中で一定割合はこのキャラクターIPが稼ぎ出すという時代が来ることは、そう遠くない将来に考えられるのではないか」と思っています。


このページの一番上へ