10 | 2009年の前半に、Wiiのソフト不足が深刻化した。今後ニンテンドー3DS、Wii Uでソフトのリソースはどうなっているか。また、ソフトメーカーの協力は得られているのか。 |
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岩田: ちょっと系統立ててお話をさせていただきたいのですが、まず2009年の前半にWiiの勢いがなくなった時に、ある時期、新作がしばらく出せない時期がありました。そのことについては、私たち自身反省しなければならないと思います。すなわち、ソフトというのは常に、次にこれ、次にこれ、次にこれといろいろ計画を立てて準備をするのですが、開発は全部が予定通りにはいきません。例えば、このまま作って仕上げてもつまらないという時に、それをそのまま作って出してもよくないので、その時は磨かなければいけませんし、場合によっては内容を大幅に変えるので、日程は大きく変わってしまうということが起きることがあります。 そして、今後そういうことがないようにするためには、やはり二つのポイントがありまして、一つは、「自社のソフトをどう切れ目なく作れるようにするか」というポイント、もう一つが、「他社さんの協力をどう仰ぐか」というポイントです。 実は任天堂がニンテンドーDSを出した頃、あるいはWiiを出した頃というのは、最初からソフトメーカーさんに高く評価していただき、期待をしていただくという流れは作れませんでした。当時は、任天堂は土俵際まで追い込まれていて、「任天堂がハードメーカーであとどれだけいられるのか」と(業界内で)言われていました。まず据え置き型については、Wiiというのは当時開発コード名でレボリューションと呼ばれていたんですが、「レボリューションは任天堂にとって最後のテレビゲーム機になる」というようなことを公然と書かれたり、そういうことを目の前の記者の方やアナリストの方に言われたりもしていましたし、そういう状況の中では、「それに賭けてやろう」という社外の開発者の方が当時どうしても少なかったのは事実です。ニンテンドーDSもWiiも、序盤はそういう状態で、任天堂のソフト中心でハードの普及が進みました。任天堂のソフト中心でハードの普及が進んだ後、ニンテンドーDSの時には、ソフトメーカーさんが「ニンテンドーDSが売れてきたぞ」と、「これは自分たちも乗ろう」と言って動き始められた中、比較的早い段階でヒット作がいくつか出たんです。それによって、「自分たちもビジネスができる」と確信されて、各社さんのいいチームをどんどんニンテンドーDSのソフトに当てていただけるようになったので、ニンテンドーDSのソフトというのはソフトメーカーさんのソフトも非常に充実いたしました。 Wiiに関してですが、ソフト不足は日本国内で極端に起こってしまったことで、海外ではちょっと事情が違うんですが、ニンテンドーDSと同じようにWiiでも、「時間が解決する」と当初私たちは考えていたんですが、これはその通りになりませんでした。結果として、ソフトメーカーさんが力を入れていくつかのソフトを作られましたが、期待していたほどWiiでは売れず、「Wiiでのビジネスは期待できない」と思われてしまいました。その頃ちょうどソニーさんのプレイステーションポータブルという携帯型のゲーム機で「モンスターハンターポータブル」というゲームがヒットして、そのソフト1本でプラットフォームの勢いがガラッと変わった時期と重なったことで、「Wiiのソフトを作ろうかな」と考えておられたソフトメーカーさんが、そちらに動いてしまったという面があります。そのために、任天堂がソフトを切れ目なく出せなくなると、空いてしまった穴に埋まるものがうまく作れないということが生じました。 その意味では、ニンテンドー3DSにおいてもWii Uにおいても共通するんですが、プラットフォームの序盤のうちに、いかにソフトメーカーさんたちに「これは自分たちが商売できるプラットフォームだ」と感じていただけるかどうかが大切だというふうに思っていまして、自社が切れ目なくソフトを出すことのほかに、プラットフォームの発売から1年以内にソフトメーカーさんのヒットを複数出せるような流れを作ろうということで、そのあたりを大変重要視しています。そのための取り組みとしては、今までよりも早い段階でハードに関する情報をソフトメーカーさんにお出しして協力体制を築いたり、なにがしかのソフトを共同で作ったりというようなことをいくつか進めておりますので、今日は具体的にこのタイトルで、このメーカーさんと取り組んでいますということは、まだ発表前ですので具体的には申し上げられませんが、ニンテンドー3DSやWii Uの目指そうとしている姿は、今までのDSやWii以上に幅広い、いろんなゲームが集まるプラットフォームにしたいと思っているわけですから、他社さんのソフトがヒットできる土壌をちゃんと作るということを考えています。そこに任天堂もしっかり投資するという覚悟でやっているということでご理解いただければと思います。 |