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任天堂の広告戦略についてお伺いしたい。広告宣伝費を見直して黒字にしていくことに関しては評価したいと思っているが、宣伝費が減った影響で、一部のソフトではゲームが好きな人に対してしか情報が伝えられていないと思われる状況がある。これからゲームを始める方に向けても、例えば『幻影異聞録♯FE』など、いろんな隠れた面白いソフトがあると思うので、それを多く広げていくように努力してほしいと思っているが、それに関してどのように考えているか。 |
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君島: 広告宣伝費につきましては、売上高に対して適正な規模で広告宣伝費が使われているかどうか、収支のバランスという点から見直しを行ってきました。その結果、数年前よりは、一定の範囲まで広告宣伝費が抑えられ、収支バランスに寄与しています。 一方で、広告宣伝とはお客様に対して適切に情報をお届けすることが目的であり、単に費用を削れば良いということではありません。広告宣伝をするための媒体や方法は、単にテレビ宣伝だけではなく、技術が進歩しさまざまに変わってきています。初めてゲームに触れる方は、普段からそれほど関心を持っておられないので、そのような方に対して、ご指摘のように適切なタイミングやアプローチの方法を十分検討していかなければいけないと思っています。「どのようなお客様に対して、どういったメッセージを、いつお届けするのか」、きめ細かく対応するためにプランを立て、かつ、費用対効果の点もあわせて検討しながら進めていきたいと考えています。 |
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定款の変更議案(第2号議案)の第2条(目的)の第9号に、「医療機器および健康機器の開発、製造および販売」という文言が追加されているが、これについてもう少し説明してほしい。 |
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君島: これは特に、QOL事業だけを意識したわけではなく、今後、当社事業の多様化を見据えて、定款の変更と追加をさせていただきました。もちろんQOL事業については、引き続き研究開発を続けていくつもりですし、現に行っていますが、QOL事業も含めて、より多方面に私たちの資産や知恵を用いて事業を拡大できればと思い、このような変更を提案させていただいています。 |
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安全面の問題やゲーム開発上の制約の多さ等からVRがすぐに家庭に普及するとは思えないが、真剣に研究してもらいたいし、それはAR(Augmented Realityの略で、拡張現実などと訳されている)やMR(Mixed Realityの略で、複合現実などと訳されている)といった技術についても同様だが、例えばニンテンドー3DSのソフトで立体視が適切に行われていないと私が感じるソフトが存在したり、HD対応になったWii Uに十分な数のソフトがそろわなかったりというような点から考えると、製品に採用する際に新技術を効果的に活かす開発体制もあわせて整えねばならないと考える。その点と関係があるかどうかはわからないが、Wii U発売前に君島社長は不安を口にされていたという一部報道がある反面、宮本さんはかなりの自信を持ってWii Uをプッシュされてきていると私は理解しているが、Wii U発売前の状況との比較からも、今NXに感じている手ごたえを教えてほしい。 |
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君島: まず、Wii Uに関する私の発言についてお答えします。言い訳するつもりはございませんが、Wii U発売時、私はアメリカの販売拠点の責任者で、Wii Uに関して決して悲観的なことを申し上げたわけではありません。社内の販売担当者会議で、当時、Wii Uは1億台近く世界中で売れるという話があり、販売担当者から「Wiiがたくさん売れているから、Wii Uもたくさん売れる」という声がありました。私は、Wii Uを売るためには、「Wiiというたくさん売れたものがあるために、それを乗り越えて売っていくためには、きちんとWii Uの魅力を説明していかなければならず、このことが難しい。」と言いました。私はWii Uを販売する責任者ですし、そのときは何が良いものだということは知っていましたので、「お客様にきちんとWii Uの魅力をお伝えするように」ということは販売担当者たちに十分伝えていったつもりではありますが、この話が悲観的に伝わったのではないかと推察します。 VRについては先ほど「研究をし続けており関心を持っている」と申し上げましたので、ソフト開発の観点から、VRおよびWii Uについての自信のほどについて、宮本から説明させていただきます。 宮本: Wii Uについてはその価格、それに加えてタブレット状の機器が宣伝目的のために無料でも配られるようになってきたなどの事情もあり、販売面で苦戦しているのは事実ですが、「リビングの生活を変えていくメディア」としては今でも変わらぬ魅力があると思っています。NXでも同様のチャレンジを続けていますが、発売が来年3月である旨を発表いたしましたので、先日ロサンゼルスで開催された世界最大のゲームの見本市であるE3ショウでは何も発表せず、任天堂のE3ブースでは、NX版でも同じ体験をしていただけるWii U版の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』というゲームソフトにフォーカスを当てた展示を行いました。今年のE3につきましては紹介映像を用意していますので、ご覧ください。
高橋: ご紹介した映像の後半は、E3開催3日目の会場の様子です。普通E3ショウは、開催初日ではこのように勢いよく人が流れてきてブースに行列ができることは多いのですが、今年は3日目においてもこのように開場と同時にお客様が走って入場し、ブースに並んでくださって遊びに来てくださるということが起こりました。これは初日、2日目に遊んでくださったみなさんのお話が口コミで広がりまして、それを耳にした方が来てくださったおかげで、一瞬でブースに入っていただく整理券がなくなるという事態にもなりました。それぐらい今回『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に関しては、楽しみにしていただいている北米の皆様の期待に添える形でご紹介できたと思っています。また、NX版もWii U版と同じ体験ができるよう、現在鋭意制作していますので、お楽しみにお待ちいただきたいと思います。 宮本: ご存知ない方もおられるかもしれませんが、『ゼルダの伝説』は今年で発売30周年を迎える任天堂の人気ゲームシリーズの一つで、特に欧米で根強い人気があり、ニンテンドウ64向けの『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は世界中で800万本程度が売れました。最新作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』では、長い歴史を有する「ゼルダ」シリーズの「当たり前」を見直し、我々が「オープンエアー」と呼んでいる、プレイヤーがあらゆる場所を自由に動き回れる本当に広大な世界を創造し、その世界に存在するあらゆるものの動きは物理エンジンで計算されてプレイヤーがまさにそこに存在し冒険していると感じられるように設計しています。Wii Uは性能面で他社のゲームシステムに劣るということをよく聞きますが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は各社が最新のゲームを展示するE3の会場においてゲームマスコミの皆様ほかから「ゲーム オブ ザ ショウ」といった趣旨の賞を受けるなど非常に高く評価していただきました。発売は2017年になりますが、ご期待いただきたいと思います。 VRについてですが、我々はVRに限らずARやさまざまな技術について研究を続けており、3D技術を含めて基礎技術は一通り有しており、自社開発ハードウェアへの採用の可能性を含めて検討し続けていますが、ことVRに関しては、当社の現行の主力製品が比較的長時間継続してご利用いただくことを念頭に置いて開発していることに対して、短時間の利用で価値ある体験を提供できるのかどうか、あるいは、長時間継続利用いただく際の懸念点を払しょくできるのかどうか、そして、例えばリビングルームでお子様がVR機器を装着している姿を親御さんが心配せずに見守っていただけるようにできるのかどうかといったさまざまな点も踏まえて、研究を続けています。今年のE3ショウにおいても、私は会場にいて、VRがそれほど大きな話題になったとは感じませんでしたが、それは、実際に体験できた人は高評価を与えていたとしても、周りで見ている人にはそれが理解できず、また、その体験がどのような商品として実現できるのかがわかりにくかったからではないかと推論しています。 |