営業戦略室の業務は多岐にわたり、任天堂が発売する商品の販売戦略の立案や、キャラクターライセンス業務、Nintendo TOKYO/OSAKA/KYOTOに関わる業務、My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)やニンテンドーeショップの運営業務、Nintendo Switch Onlineのサービス運営業務、販売に関するデータ分析などがあります。その中でも私は、タイトルの発売時期や販売価格、販売形態、販売方法、販売戦略などをグローバルの観点でプランニングする業務を担当しています。
私は大学で工学系の学問を専攻していましたが、任天堂のビジネスに直接関わる業務に興味を持ち、管理・営業系で入社しました。販売戦略に関する知識や経験がほとんどない状態からのスタートだったため、少し不安もありましたが、周囲の先輩方にサポートしていただきながら経験を積んでいくことで、複数のソフトに携わることができるようになっていきました。各ソフトの販売戦略を練るうえでは、海外子会社とのやり取りはもちろん、開発チームとの密な連携も必要不可欠になります。私は理系のバックグラウンドを持っていることで、開発の状況をより深く理解できたり、分析ツールを活用してグローバルにお客様にソフトの魅力を正しくお伝えするための取り組みができたりと、学生の頃の経験が活きる場面がありました。
そんな中、イカのキャラクターを操作してインクを塗りあうアクションシューティングゲーム「スプラトゥーン」シリーズの最新作『スプラトゥーン3』が発売されるということで、その販売戦略担当を任されました。このシリーズは個人的にも好きでよく遊んでいましたし、遊ばれているお客様も多いシリーズなので、担当を任せてもらえることになり、嬉しさとともに大きな責任を感じたことを今でも覚えています。担当になってからは、『スプラトゥーン3』を今までよりもさらに多くのお客様に楽しんでいただくためにどうすれば良いか?ということを常に考えて、さまざまな取り組みを提案していくことになりました。
『スプラトゥーン3』は発売から2年間アップデートをしていくことが決まっていました。長期的にお客様に本作を楽しんでいただくためにも、販売戦略を考えるにあたっては、長期スパンでの取り組みの検討および提案が必要でした。
例えば、発売前には、まだ「スプラトゥーン」シリーズを遊んだことがないお客様にその世界を深く体験いただけるよう、前作である『スプラトゥーン2』と追加コンテンツの『オクト・エキスパンション』をセットにしたパッケージ商品を提案しました。いよいよ『スプラトゥーン3』の発売が近づいたタイミングでは、「ついに新作が発売される!」ということをより多くのお客様に知っていただき、発売までの期間でも楽しみにしていただくことを目指して、さまざまな場所で目にしてもらうことによって、シリーズファンのお客様に留まらず、そのご友人やご家族などにもその熱量を感じていただきたいと考えました。そのための一つの取り組みとして、『スプラトゥーン3』の新しいデザインをあしらったNintendo Switch本体、Nintendo Switch Proコントローラー、キャリングケースを計画しました。
また、お客様に本作を長く楽しんでいただくべく、ゲーム内の大型イベントとなるグランドフェスティバル前に、シリーズタイトルの『スプラトゥーン』、『スプラトゥーン2』に登場するキャラクターの完全新規となるamiiboを用意するということにも挑戦しました。
新しい商品の発売は、これまでに経験してきたこと以上に大きなプロジェクトであり、発売までの道のりは非常に長かったです。
今まで以上に、ハードウェアやソフトウェアの開発部門を含め、国内外の子会社、デザイン、プロモーション部門、製造部門とさまざまな部門からの協力が必要になりました。スプラトゥーンの魅力が最大限に引き出されるようなデザイン設計を開発部門に依頼しつつも発売日には間に合うように、製造部門に掛け合って製造スケジュールを調整してもらうなど、多くの関係者が携わるうえでの調整が必要でした。すべてをうまく噛み合わせることは難しく、良いバランスで着地させるのに苦労しましたが、各所と根気よくコミュニケーションをし続けることで、無事乗り越えることができました。
こうして、『スプラトゥーン3』発売前年には『スプラトゥーン2 + オクト・エキスパンション』、発売直前にはスプラトゥーン3エディションの本体、Proコントローラー、キャリングケース、グランドフェスティバル前には新しいamiiboを発売することができました。
これらの実現に向けて進めていくことは大変ではありましたが、私自身も好きなタイトルだからこそ、どうしたらお客様に喜んでいただけるかを考え抜き、その実現に向けて関係者を巻き込んで取り組むのはとても楽しい仕事でした。社内・社外問わず、幅広い方たちとの繋がりを形成することができたほか、自身の業務領域を広げることもでき、得るものが多くありました。
他にもさまざまな取り組みを提案・実施してきましたが、自分自身が1プレイヤーとして、お客様に楽しんでいただけるものになるかという観点で懸命に考えてきましたので、それぞれがお客様によって話題に挙げていただいている様子を確認したときは、とても嬉しかったです。
任天堂が発売する製品をいかにお客様に喜んでいただくかを、販売戦略の観点でプランニングし、さまざまな部門と協力して実現していくことは、この仕事の最大の魅力だと感じています。