▼▲▼ |
後の世に「混迷の時代」とよばれたユグドラル統一戦争の初期トラキア半島の小国レンスターに一人の英雄がいた。 聖戦士ノヴァの血を受け継ぐ王子、その名をキュアンという。 グラン暦761年、グランベル王国シアルフィの公子シグルドは宮廷内における勢力争いと、これを利用するロプト教団の策謀によって反逆者の汚名をきせられ、イード砂漠に孤立していた。 キュアン王子は苦境に立つ友を救うべく一軍を率いてイードに向うが、その途上、背後よりトラキア軍の奇襲を受け配下のランスリッターとともに全滅する。 後に「イードの虐殺」と呼ばれるこの戦いでレンスター王国の希望であったキュアン王子は愛する妻とともに、その短い生涯を終えた。 王子夫妻の戦死によるレンスターの弱体化と皇帝アルヴィスによるグランベルの統一はトラキア地方の勢力図を激変させた。 半島統一を悲願とするトラキア王トラバントはこの機を逃さじと侵攻を開始、またたくまに北部諸国を制圧する。 だが、ときを移さずグランベル帝国軍がトラキアに侵攻、メルゲン谷の戦いで大敗北を喫したトラバント王は野望むなしく南へと敗退した。 一方、レンスター王家の生き残りキュアン王子の遺児リーフは、レンスター落城の際、騎士フィンに抱えられ、数少ない仲間とともに辛くも脱出に成功する。 その後、リーフたちは、アルスター、ターラといったトラキア各地をめぐる逃避行の末、東海岸の小さな開拓村、フィアナにたどりつく。 フィアナの女城主エーヴェルは、彼らを快く迎え入れ、リーフは、彼女の元で、彼女を慕って集う若者たちと交流を重ねながら、次第に大人へと成長を重ねていった。 時おりしも、大陸東方イザークの隠れ里ティルナノグでは、シグルドの遺児セリスを中心とする勢力が着実に力をつけつつあり、ゆるやかにではあったが、着実に新たな時代への胎動は始まっていた。 そしてグラン暦776年、リーフ15歳。 彼にとっての「聖戦」が、今始まろうとしている… |