人類は世界共和構想に基づき、 地球規模事業で「軌道エレベーター」という超巨大建造物の着工に入った。 軌道エレベーターの全長は地球の静止軌道にまで達し、 シャトルの類をごくわずかなエネルギーで発着させるためのプラットフォーム、 また太陽エネルギー集積衛星からの一時的な蓄電システム(エネルギーダム)、 さらには特殊高分子素材の生成プラントとして機能するものである。 着工から約12年間、この建造計画は順調に進み、 軌道エレベーターは世界の協調と平和のシンボルとして位置づけられた。 この巨大建造物の高効率化を計って、二足歩行型の作業機が実用化された……。 |
ところが、2036年も半ばを過ぎると、重水素による常温核融合技術の応用が具現化し、 「軌道エレベーター」の建造意義が希薄となってしまう。 さらに建造に参画していた一部の国が、計画からの離脱を表明。 計画の続行と中止をめぐり見解は分かれ、 この地球規模の大事業は一時中断を余儀なくされた。 |
2038年に入り、中東で極めて小規模な紛争が起こった。 そして、これに呼応するかのごとく、 各地で国家間をゆるがす事件が頻発し、国際関係は不安定な状況となる。 慌ただしくなった国連の平和維持活動には、 ヴァンツァーと呼ばれる二足歩行型の戦闘兵器が、序々に投入されていく。 |
もっとも治安体制の整う平和の地、 北大西洋に面したベルゲン共和国の首都「エミンゲン」に、新たな戦火が立ちのぼった……。 |