株主・投資家向け情報

2007年3月期 決算説明会
質疑応答
Q 11  Wii本体の年間販売台数見込みの1400万台の根拠を教えてほしい。増産をしているという話だが、その1400万台はサプライ(供給)の問題なのか、各地域のディマンド(需要)の見込みについて教えてほしい。
A 11

岩田:

 業績の予想を作りますときは、色々な可能性を検討いたします。当然、このゲームビジネスの世界では、誰もが自分の会社が一番成功したいと思って皆さん努力をされるわけです。任天堂ももちろんその努力をしていますが、他社さんもそういう努力をされるわけです。

 皆さんがそういう努力をされる中で、どこのマシン、どこのソフトがどうアピールしてお客様の心に届くかということでやっているわけですけども、そのシナリオには当然ある幅がございます。それは当社にとって良くない流れが起こったり、頼りにしているキーのソフトの開発が遅れて、ひょっとしたら台数は減る方向にいくかもしれません。あるいは逆に私たちの想定以上に多くのお客様が、私たちの提案を受け入れてくださって、販売が伸びるかもしれません。これは両方のシナリオがあります。

 ですからもの凄くコンサバティブなシナリオから、もの凄くアグレッシブなシナリオまで、両方書いてみるんですね。書いた上でこのぐらいなら私たちがマーケット、投資家の方々に対して、任天堂の目標として妥当であろうというのを出しているわけです。ですから、これが即、サプライサイドの(供給側の製造能力の)上限であるということではございません。私たちとして、これぐらいであれば目標として妥当であろうというさまざまなシナリオの中で選んだ数値です。

Q 12  ニンテンドーDSの昨年の出荷数量実績に対して、今年の出荷数量目標を落としているが、アメリカでもしゲームボーイアドバンスをリプレイスできるのであれば、数字は落ちないのではないか。今ニンテンドーDSはプラットフォームの寿命としてどのあたりにいるという認識なのか。次世代ということも含めてどういった中期的なビジョンを持っているのか教えてほしい。
A 12

岩田:

 この2007年3月期のDSの販売、国内で900万台を超えるというのは、やはりいささか異常であると思います。社会現象のようなことが起きないと、こういうことは起きないわけで、かつて日本では単年度で600万台を超えて売れたハードは確かないはずですから、そういう中でいきなりそういう台数が出てしまったわけです。そういう状況を前提に計画を立ててしまいますと、アグレッシブに過ぎるということになりますから、「今年は日本はこれだけ売れたんだから、そろそろ限界台数もそんなにものすごい先ではないだろう」ということも含めてですね、少し控えめな予想をしましたので、これが妥当な線ではないかなというふうに考えました。

 プラットフォームの寿命についてですが、これまでは、例えば据え置き型は5年サイクル、携帯型はもうちょっと短いサイクルと今まではそうやってまわってきたわけです。ですから、次はそうならないという保証はないし、任天堂も当然、「次はどんな提案をしたら、お客様にいい意味で驚いていただけるのか?」ということを常に考えるわけです。

 一方で、プラットフォームの寿命というのは最初に決まっているものではなくて、ソフトとハードの組み合わさった提案の中で、長くも短くもなるものだと思うんです。もし任天堂が同じようなことを単純に繰り返して、チャレンジは終わったからあとは楽をして、保守的に流していこうというふうにすれば、DSのプラットフォームの寿命は急速に短くなるでしょうし、逆に新しいチャレンジをしっかりやって、その中のいくつかを実らせることができたら、プラットフォームの寿命は逆に過去のプラットフォームサイクルより伸びるかもしれません。

 一つのプラットフォーム、シングルアーキテクチャのプラットフォームが長く栄えていろんなものが揃って、それが社会のインフラのように役に立つことができたら、例えば、携帯電話って世の中に9千数百万人の方が契約をされていて、そういう台数の端末が動いているわけですけども、残念ながら、アーキテクチャは1個じゃないんですね。例えば携帯電話用のゲームをJAVAで作っても、何とか社用のゲームと、何とか社用のゲームと何とか社用のゲームは全部バラバラに作らないといけません。

 まだDSは2000万台にも達していませんけれども、国内でこういう台数が、もし一つのアーキテクチャでソフトが動くならば、それはまったく違う価値を生み出すというふうに私は思っています。ですから、できうることならば、プラットフォームの寿命を長くできるように任天堂として様々なチャレンジのある提案をしていきたいと思います。その結果、「いや〜こんなことにもDSが使えるようになったね」「こんな時にはDSを持っていくのが圧倒的にいいから、みんなそうしたほうがいいよ」というようなことを、いろんな方々が言ってくださるような状況を作れたら、(寿命が)伸びるんじゃないかなと思いますし、そうできるようにがんばりたいです。

 逆にどんなことで世の中がガラッと変わってしまうかもわかりませんので、任天堂はいつでも次の提案を準備しなきゃいけません。当然、ハードチームはいろんなことを考え研究しています。

Q 13  任天堂は比較的ゲームから出ることについてはずっと慎重な姿勢であり、特に今年はWiiを拡大する時期にあたるため派手に新しいことを発表する時期ではないとは思うが、こういった(ゲーム以外の)取り組みについてスケジュールや規模について、岩田社長はどういうイメージを持っているのか教えてほしい。
A 13

岩田:

 ゲームから出ることには慎重というのは、「任天堂は娯楽の会社だから、娯楽に徹するべきだ」という考え方の部分が確かにご指摘の通りなんですけども、娯楽というものの枠組みって広がっていると思うんですね。昔、脳を鍛えることや、英語を勉強することは、誰もビデオゲームとは言ってなかったわけですから、それが今こうやってビデオゲームになって、料理をすることまでゲームになったわけですから。こうなってきますと、過去の、5年前、10年前の任天堂が「これがゲームだ」と定義していたものよりも、今、はるかに広い分野に携わっているんですね。

 そういう意味では、「たくさんの端末が普及していて、その端末を持って歩くと色々便利なことがある」ということが、さらに広がっていけば、それは一つのアーキテクチャのものがたくさん世の中にあるということで、できることが増えていくと思うんです。

 これが適切な例かどうかわかりませんが、昨年末に日本テレビさんの主催で「スーパーエッシャー展」という美術展が行われたんですね。このエッシャー展は、エッシャーというだまし絵で有名なアーティストの方の展覧会で、エッシャー展に行くと、これは任天堂が協力を差しあげたんですが、DSを貸してくれるんです。その中には、ガイダンスが入っていて、よく美術館に行くとイヤホンセットを貸してくれて、作品の説明をしてくれますが、そのインタラクティブ版だとお考えください。そして、それでエッシャーの作品がわかるようになっています。あるいはそこにエッシャーのノートというのがそこに飾ってあったんですけど、エッシャーのノートは貴重なものなので、ガラスケースの中に入っていて触ることはできないのですが、エッシャーのノート(の内容)がDSの中に入っていてパラパラめくってみることができるようになっているものを作りました。日本テレビさんが、「大変好評で良かったんですけど、お客様の滞留時間が長くなったのが誤算でした」ということを仰ってましたけども。

 ただ、そういうようなことが一つの例だと思うんですが、周りも実はできることがたくさんあって、最近ですと色々なところから、「こんなことにDS使いたいんだけどどうしたらいいんでしょう」というお問い合わせを当社のライセンス部門がたくさん受けるようになりました。その中でゲームの既存のビジネスのモデルを壊してしまうようなものはお受けできないですけれど、ビジネスモデルを壊さないものであれば、色々前向きに考えたらどうかと思っています。今日具体的な事例は挙げられませんが、決してそういうことに消極的ではないし、一つのアーキテクチャのプラットフォームがたくさん普及するということはいろんな形で社会にお役に立てるのではないかと思いますし、そしてそれが私が先ほど申しあげた、「所有者の生活を豊かにするマシン」となるための一つのステップではないかと思っております。

Q 14  昨年Wiiを買って楽しんでいるが、自分は、DSのソフトが沢山積みあがっていて、なかなかWiiのソフトを遊べない。またバーチャルコンソールもおもしろくて、Wiiのソフトをなかなか買う機会がない。それが日本のタイレシオが下がっている原因ではないかと危惧するが、そのあたり岩田社長はどう考えているのか。
また、DSを持っている友人から、「DSが手軽でおもしろいので、時間のかかるWiiを買うというところまで意欲がわかない」っていう話をよく聞く。このあたりの人たちに、今年アプローチしていく方策を教えてほしい。
A 14

岩田:

 当社の製品をたくさんご愛用いただいて大変感謝しております。ありがとうございます。

 お客様には様々なニーズがございまして、プラットフォームというのが、成功するためには、やはり様々なニーズにお応えしなければならないと思うんですね、ですから、ある方にとってはバーチャルコンソールというのはものすごくいい仕組みで、もう、48個あるチャンネルの枠をほとんど全部埋めてしまいましたという人を、私も何人か知っているんですけども、そういう方にとっては、もう夢のような機械で、「それだけ遊んだら十分だ」「5000円のWiiポイントプリペイドカードを何枚も持っておられる」というような方も当然いらっしゃるわけなんですが、一方で、それには何の興味もない方もいらっしゃいます。あるいは、みんなで投票チャンネルには参加するけれど、ゲームはしない人、『Wii Sports』だけする人、天気予報だけ見る人、まあいろんな方がいらっしゃるわけですね。

 どんな方にとっても、任天堂は今まず、とにかくリモコンを触る人を増やさなきゃと思っているんです。リモコンを触る人を増やしておくことが後で、大きな動きのある社会現象になるような何か大きなソフトが出たとき、まあこれはDSでいえば、脳トレのようなソフトでしょうけれども、そういうときにその普及を大きく加速させる後押しになってくれるからです。やはり、リモコンを触ったことのない人にとって、テレビの前でゲーム機でなにかやるというのはものすごいハードルなんですけども、「毎日天気予報は見ているよ」という人にとっては、その隣にあるものを触ってみることははるかに敷居は下がるんですね。ですから、今はまずそういう段階なんじゃないかと思っています。

 私は「DSが国内で普及に成功した」と言っていただけるようになってからも、いくらコンセプトがWiiとDSで共通点があっても、「DSの普及はWiiの普及をなんら保証しない」、「やはりまったく新しいものを、それもテレビの前だけでしか遊べないものをお客様に触って満足していただくのはもの凄く高いハードルなんだ」、「だからまず、触ってもらうようにするんだ」と言い続けてきました。それを、たぶん今年の前半にやっておくということなのかなというふうに思っております。

 当然、今年の後半には、先ほど申しあげたような、やり込み型のゲーム以外にも以前からお話ししています「健康をテーマにしたソフト」ですね、そういったものも用意していますので、そのときはもうリモコンを触っておられる方であれば、割と入りやすく入っていただけるのではないかと思っています。

Q 15  今、触ってもらえるという話があったが、現状、ショップではWiiを実体験できるようなところが少ない。そのあたりはどのように解決しようと考えているのか。
A 15

岩田:

 ワイヤレスのコントローラというものと店頭試遊というのは、(コントローラの管理面で)ちょっとハードルがあります。それから、『Wii Sports』が主力の商品ですと、『Wii Sports』をするためにはまわりにしっかりと場所をとりませんと、万が一周りで見てらっしゃる方とぶつかってしまうということがあるといけませんから。そういうこともあって、今は店頭試遊はしていないんですが、当然ソフトの種類が変わってきて、線の付いたコントローラでも楽しめる状況になり、そしてまた、周囲の方に特別な注意をしていただかなくても問題なく遊んでいただけるという状況がくれば、そういうことを積極的にやっていけばいいかなと思っております。


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