株主・投資家向け情報

2007年3月期 決算説明会
質疑応答
Q 16  久夛良木さんがソニーの経営の一線を退いても、ゲーム業界における活動はこれで終わるとはなかなか思えないが、久多良木さんをヘッドハントする可能性はないのか。
A 16

岩田:

 それはないんではないでしょうか。

Q 17  最近、果たしてゲームと呼んでいいのかどうか分からない、セカンドライフというものが急速に普及しているように思うが、セカンドライフをどのように評価しているのか。ゲーム業界になんらかの影響を及ぼしてくると考えているのか。そもそもゲームとはなにか、ゲームの定義とはどういったものと考えておられるか。また、今後ゲームはどういう方向に向かっていくかについて、整理もかねてもう一度説明していただきたい。
A 17

岩田:

 セカンドライフには、私個人はほとんど興味を持っておりません。また将来、ものすごい存在になるというふうにもあまり思っておりません。それが、今私が申しあげられることです。もっと言いますと、現代を生きる人々はどんどん時間やエネルギーが限られてくるんですね。いろんなことがものすごいペースで変化しますし、娯楽に使えるエネルギーというのはそんなに大きくありません。その中で、先ほどのゲームとは何かという定義にもかかわりますが、私の定義するゲームと言うのは、「人間が何かをインプットする。そうしたら、そこに必要だった労力よりも価値のあるものが、何か返ってくる」、これが、ゲームというよりもインタラクティブエンターテインメントといったらいいんですかね。「何か触る。触ったら何かが返ってくる。その返ってきたものは、自分が注ぎ込んだものよりも何か大きなものが返ってくる」。そういうときに、人はやめずに続けてくれるのだと思います。もし自分が注ぎこんだエネルギーに対して返ってくるご褒美が小さかったら、多くの人はそれを続けません。どんなご褒美かっていうのはゲームによっていろいろあるわけです。

 例えば極端な話、料理を作るゲーム、『しゃべる!DSお料理ナビ』というゲームがあって、これは私も愛用していて、休みの日に料理を作ったりするんですが、ゲームの中にご褒美がないんですね。ですが、リアルに料理ができて、食べたらおいしいわけです。それがご褒美なんですね。ですから「自分が労力を注いだ結果、ご褒美が得られた」ということが成立するので、私は飽きずに、モニターをして「こういうとこを良くした方がいいよ」って言ってた時期から今もずっと変わらず、時々触っています。

 こういう長期にわたってお付き合いいただける、やめないものをどうやって作れるかが重要だと思っています。そしてまた人にはいろんなタイプがありますから、短期間にたくさんのエネルギーを注ぎ込んで、どんどんやりこみ要素を求めておられる方もいらっしゃいますし、時間が限られているのでちょっとだけ触ってちょっとだけ楽しむという方々もいらっしゃいます。そういう意味でいえば、いろんな方法があり、ご褒美をお客様に感じていただく方法は一つではありません。ただ、そのご褒美があるのがゲームだと思っています。

Q 18  「生活を豊かにする」「笑顔にする」という話は、今一つ抽象的である。次に起きるであろう市場の変化や、引き起こそうとしている仕掛けをネタバレにならない範囲で教えていただきたい。
 もう一つはその延長線上に(年間ソフト販売数が)3億本というものがあるが、先ほど開発者の数や販売チャンネルの話があったが、加えて国について、具体的にはアジアについてもコメントをほしい。
A 18

岩田:

 具体的に申しあげるということは即ネタバレになりますので、それは即競争上の問題が生じるんですね、私たちは過去に、早く具体的に申しあげすぎて、痛い目を何度も見ましたから。Wiiのときも、「なんでコントローラのことはいつまでも言わないんだ」といろいろな方々にご指摘を受けましたが、私は引っ張って正解だったと今でも思っています。ですから、当然イメージしていることがあってお話をしているんですが、具体的に申しあげてしまうと、こういうものが(当社から)次々と出るまでに半年1年とかかるものが多い中で、他社から先に出てしまうということは競争上どうしても避けたいので、具体的な内容はご容赦ください。

 また、もちろん実際にソフトマーケットを3億本売れるような、そういう市場を作ろうと思いましたら、日米欧のゲーム人口を増やすだけではなくて、他のチャレンジもするべきだと思います。例えば韓国に子会社を作ってビジネスを始めたり、あるいは台湾では今Wiiを大変話題にしていただいているというようなことを聞いておりますし、他にもアジアの国々に限らず、経済成長がこれから著しい国々がどんどんございますので、短期という意味で今年できるのかといわれたら今年できることは限られていますけれど、それは今の市場の需要をどう満たすのかということの方が当然先です。中期的に申しますと、そういうところの市場の開拓も合わせて、そういうところでもソフトが売れるマーケットをいかに作っていくかということは重要な課題です。ただそのやり方が国ごとに少しずつ違ってくるだろうこと、あるいは受け入れられる内容が少しずつ違うだろうと思っています。

Q 19  例えば最近拡大しているモバイル(携帯電話)でのゲームなど、任天堂が参入していないプラットフォームにソフトを供給していく考えはないのか。
A 19

岩田:

 「モバイルのゲームがいずれ携帯型ゲーム機を喰ってしまうだろう」というお話は、恐らく5年以上も前からいろいろな方が予想として仰っておられたし、その方たちの予想がもし当たっているのであれば、今こんなことにはなっていないわけですよね。

 一方で、私たちは、ハードソフト一体のビジネスをするからお客様に驚いていただけるし、良い意味で驚いていただけるネタをたくさん仕込めるというところが会社の長所であり強みであると思っているんですね。他社さんが決めたハードの上で、我々のソフトのノウハウだけでビジネスをすると、もちろんそれで成立しないとは思いませんが、それでするということは、わざわざ我々の強みの一つを捨てるということになります。ですから今若干の収入増のために、私たちの商品を他のプラットフォームに持っていくよりも、いかに他のプラットフォームではできないことを、その中で新しく驚いていただけるようなテーマを、ハードソフト一体になって生み出すことの方が重要だと信じています。

 任天堂はせっかくハードとソフトのエンジニアが同じ建物にいて、密接に交流しながら商品を作れるわけで、このあたりの経緯はWiiの開発物語のことが当社ホームページに私が聞き役になって載っていますので、お読みいただくとよく分かっていただけると思いますが、それが当社の長所ですから、この強みを捨てないようにしたいんです。

 また逆に我々がDSで、少しお客様に認めていただいたからといって、もうこれでいいやと思って足を止めたら、かならずDSでやったことWiiで既にやったことは他のプラットフォームの方々が取り入れてこられるわけです。これは別に我々にしかできない魔法ではありませんので。ですから他のプラットフォームのできないこと、例えば携帯電話のできないことを僕らはやり続ける努力をしないといけません。当然携帯電話も進歩しますし、どんどん良くなるでしょう。それ以上のことを、任天堂はどこまでやり続けていけるかが重要で、それをやり続けられる限りは自社ハードソフト一体のビジネスにこだわりたいというのが基本方針です。

Q 20  DSソフトを見ると、ミリオンセラーがたくさん出て400万本とか500万本とか考えられないようなビッグヒットがあったが、今年も出し続けられるか。Wiiはミリオンセラーになったタイトルというのがあまりなく、小粒でインパクトがあまりないが、Wiiのソフトは進捗が遅れているのか。その辺の見通しと今後どのように改善するのか、できるのかを教えてほしい。
A 20

岩田:

 本体の普及が200万台で、(ソフトが)ミリオンセラーになるということは、お2人に1人が買っていただくという、極めて異常なことで、今Wiiには(ミリオンセラーが)2本あるわけですよ。ですから私はミリオンセラーの数が、Wiiに今十分でないとは思いません。ただ当然このあと年末に向けて普及が進んでいったときに、第3第4のミリオンセラーを出せるように努力をしたいと思います。それから300万本、400万本のヒットをDSで確かにいくつも出すことができたのですが、これを狙ってできるという人がいたら、私はうそつきだと思いますよ。やはり「何とか1人でも多く、幅広い人に受け入れていただきたい」と思ってやっている中に、社会現象のような追い風が吹いたときだけ到達できる数で、普通には、これ狙ってできることではないと思っています。

 前期の実績に比べて、今期来年3月期の予想で、「プラットフォームとしてさらにハードの普及が進むのに、ソフトの予測をあまり増やしてないじゃないか」、というご指摘があるかと思うんですが、それはもちろん強気に見てですね、今年のようなヒットが次々でれば、当然もっといけると思います。それは、ハードの台数が増えていくわけですから。ただ、現実には、300万本、400万本がぽんぽん出るようなことは、毎年起こって当たり前なのかというと、これはそんなわけはないのです。もちろん我々は、なんとかそういうことが実現できるよう努力はするんですけれども、それを前提に経営計画は立てられないので、ああいう本数にしているわけです。ですが、今後ますますハードの普及が進みますので、例えばDSは(現時点で日本で普及している)1650万台に対して16.5人に1人が買えばミリオンセラーなわけですよ。ですからミリオンセラーのハードルはそういう意味では(普及が進むとともに)下がっていくわけです。そういう中でまた複数のミリオンセラーを出せるように努力をしたいと思っています。

 一方でミリオンセラーって、世の中、日本で考えても、「たった120人に1人しか買っていただいていない」っていう話もあるわけです。これは全然違う見方をすればそういう言い方もできるわけですが、やはりミリオンセラーはものすごく貴重なことです。それだけのものを理解いただいて、欲しいと思っていただいて、買っていただくハードルがいかに高いかっていうことは、私の長年の経験で分かっていることで、今年も1本でも多く出るように頑張りたいと思います。


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