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経営方針説明会・2008年3月期 中間決算説明会
質疑応答
Q 16  次世代のDSの投入時期はどう考えているのか。投入時期に迷いがあるのか。
宮本専務は、体重計の次はどういった物に興味を持っているのか。どういったところで新しいアイデア、浮かぶのでしょうか。これまでのご経験上、その辺で何かヒントになるものを教えてほしい。
A 16

岩田:

 ハードの開発というのはいつでもそうなんですが、「あるハードができたら次はどうする」っていう研究が会社の中で始まります。でこれまでは、プラットフォームサイクルというゲーム業界の常識がございまして、据置型なら5年とか、携帯はそれよりちょっと短いですかねとかっていうことが言われてきました。私自身は今、これまでのプラットフォームサイクルというのは今後も同じように続くんだろうかということに対しては、大いに疑問を持って見ています。今日、プレゼンの最後でお話ししましたけれど、ゲーム業界の常識とされてきたことは絶対的な真理とは限らないわけです。ですから私たちは常に次のハードの研究をするわけですが、その中で、「ああこれができたら世の中の人にすごく大きなインパクトがあって、ガラッと変えられるな」っていう時に、やはり我々はそのいわゆる次のハードというのをご提案すべきじゃないのかと思っています。あるいは、「現在の機械でやれることはもう全部やりつくしてしまった」、「これじゃ新しい提案をするための種が無い」という時が来ることがあります。まあ、最近さすがにもう現役とは言えないんですが、ソフトウェア開発をやっていた私からしてみると、実際新しいハードをもらうということは新しい武器を貰うことなんですよ。「新しい武器を貰わないと戦えない」と思った時に、どうしても新しいハードが要るんです。ですけど今新しい武器が無いと戦えないっていう感じはまだ持っていません。いわゆる次世代機っていうものを作っていくと、当然その時その時に「何年後に技術がこうなるから、この時はここがスイートスポットよね」っていうような議論をしながら物を作りますが、これまでも作った物を任天堂は外に全部出していません。作ったけど発売せずに流しましたっていう物がいくつもございます。もちろん、新しいハードを用意しておかないと、時代が変わった時、環境が変わった時に対応できませんから常に用意します。ですがそれは投入時期をむしろ最初に4年前に決めて、ここだって決めて、そこで環境がどうあってもそこに出すっていうのはむしろ頭の固いやり方だと私は思っていまして、環境に合わせて今の環境ならこうだね、こうだねっていって、また、今任天堂のハード屋さんとソフト屋さんがとても緊密にコミュニケーションしながら物を作っていますので、そこで両者が「ああ、ここだ」とか「ここで勝負だ。この特徴、このアピールで勝負だ」っていうことがはっきりすればそれが新しいハードを出す時なんですよ。ですからその意味で迷っているというよりは、「今DSはネタ切れで切迫して困ってはいません」ということだとご理解ください。世間のいろいろな見方をされる方の中には、「先日の10月10日のカンファレンスは新しい携帯型ゲーム機を発表する場じゃないのか」というようなことを予想をされた方もいらっしゃったということを後からお聞きしたんですけれども、私たちには今そういう意識は無いですね。じゃあ次は(体重を量ることを趣味にして『Wii Fit』を発案した)宮本に趣味の話をしてもらいます。


宮本:

 「きっと次の趣味を聞かれるやろな」と最近よく話してるんですが、こうなってくるともうないんですよね、新しい趣味が。で、「次は財テクかな?」って言って、今日は皆さんからいろいろとお知恵を拝借した方がいいかなと。またインタビュー行きますのでよろしくお願いします。 まあ、趣味から何かっていうこともあるんですけど、やっぱりゲームの作り方って大きく変わってきたと思うんですね。サードパーティさんも気が付かれていると思いますが、ゲームデザイナーが次どんなゲームを作るか?っていうは今遊んだゲームの次にどんなゲームが欲しいか?って所からスタートしたわけですね。それからもう一つは、ターゲットはどの辺りか?、マーケットはどれか、でユーザーリサーチをする場合もあります。ところが今それが大きく変わってきています。簡単に言えば、自分が日常の生活をする中で何があったら楽しくて便利かな?ということを考える時代になってきたと思うんですね。そこからスタートした場合に、ビデオゲームの業界というか、ビデオゲームが培ってきた技術、これには、ものすごくノウハウが溜まっています。これは日本の産業全体、コンテンツ産業を考えるという意味でも、アニメとか、ビデオゲームを作る技術にものすごくノウハウが溜まっているんですね。これは技術とアートの両方を含めたこれだけの技術を持っている人たちがいれば、新しい物を作る無限の可能性があると思っています。だから、本当にテーマ選びが重要で、これが今までのビデオゲームの上に則って考えるんじゃなくて、自分の普段の生活の中で物を考えるということ、これが日本全体のディベロッパーができれば、まだまだ世界に日本は大きな可能性を持っていると思っています。


岩田:

 そうですね。「本当に多くの人が興味を持つテーマは何だろう」、「それはなぜみんなが興味を持つんだろう」ということを考えるのが開発者の仕事になったと思います。そう考えれば考えるほど、市場を狭く狭くセグメントしていく従来の市場調査をして、そこに商品を作り出すというアプローチと真逆になるんですね。これまでは「こういうゲームはこういう人が受け入れるんだから、その人たちに今のゲームはどこが不満か聞いて、そこをもっと良くしてこうすれば受け入れられるんじゃないか」というアプローチばかりを繰り返してきたわけですが、それをやると どんどんお客様が細かく細分化されていって、どんどん一つ一つのマーケットが先鋭化して小さくなるんですね。それだけだとマーケットのバランスが崩れてしまいます。ですから、「熱狂的なニーズはないかもしれないけれども、みんなが確かに興味あるよねということは何か」というようなことをよく会社では話していますね。

Q 17  第3四半期、年末商戦の手ごたえ、意気込み、DS、Wiiそれぞれでどういったような感触、意気込みを持っているのか。期待のソフトなども含めて教えてほしい。
A 17

岩田:

 そのことに関して言えば、それは業績予想を見てご判断いただくしかないとしか申しあげられないんですが、重点となるソフトは何なのということで言いますと、Wiiに関してはやはり世界中で宮本が作った新作の『マリオギャラクシー』というソフトが出ます。3Dマリオ、しかも3Dのアクションゲームというのは、どうも「お客さんを選ぶ」とか、「3D酔いする」とか、「道に迷うから遊べない」とか、 「2Dのマリオは誰でも遊べるけど、3Dは難しい」とかいろんなことを言われておりますが、いろんな方に遊んでいただけるように、それはそれは丁寧に作り込んであるので、いろんな方に触っていただきたいと思っています。そして同時に、ゲーム熟練者の方の中には、「最近の任天堂はカジュアルゲーマーの方ばっかり向いて、俺たちの方を向いてない」というご不満をお持ちの方がいらっしゃるということを時々読んだり、聞いたりするんですが、そんなことは全然ありませんで、『マリオギャラクシー』を全部遊んでから是非言っていただきたいと思うくらい、そういう部分をしっかり作ってありますので、まずこのマリオの正統派、正統後継の商品としてどのように受け入れられるかということに期待しています。そして『Wii Fit』を年内に投入するのは世界中で日本国内だけですけれども、日本で『Wii Fit』が受け入れられれば、おそらく世界に勢いが繋がっていってご期待いただけるし、来年度の当社の展望も大きく開けるでしょうし、非常にその点、重要なのでよく波多野と「日本市場での『Wii Fit』の販売は、責任重大ですよね」というような話をしているんですけれども、Wiiに関しては、この二つが特に大きなポイントになるんじゃないですかね。一方でDSは、発売してこれだけ経ちますと、任天堂の商品だけが突出するという状況じゃドンドンなくなってきていると思います。確かに先日、ある流通さんから「何か今年は年末のラインナップ、任天堂は寂しいね」とかっていうふうなお話をいただいたりするんですが、ソフトメーカーさんのラインナップまで含めてみるとDSのソフトはものすごく充実してるわけです。それともう一つは、どうも流通さんというのは新しい商品以外は数に入ってないっていうか、頭の中に置いておられないケースが多くて、実はDSっていうのは定番商品がとにかくよく売れ続けるっていうことが特徴のプラットフォームなんですね。定番というのはその発売から1ヶ月、2ヶ月経ってからずっと売れ続ける物のことで、例えば今年の売れ行きのチャートを作りますとね、実は去年や一昨年に発売した商品がいっぱいチャートに入ってるわけです。『New スーパーマリオ』とか『もっと脳』を鍛えるソフトとか『えいご漬け』の最初のものとかそういうものが全部チャートに残っているわけです。でそれらがまた売れていく。そしてソフトメーカーさんのソフトもDSが普及してから、DSの特徴をしっかり生かされて作られた充実したソフトがいくつもありますので、それらが売れていくことになると思います。その意味で今まで以上に、「ああバランスよく売れたね」って言っていただけるようにしたいと思います。まあ今世界中の任天堂の営業体は、これは非常に任天堂にとっては幸運なことだと思うんですが、その本体の製造量が限られておりますので年末だからといって急に増えませんので、その取り合い合戦をやってまして、私はその行司役をやるわけなんですけども、割り当てた分は全部売っていただけるようにがんばりたいなと思ってます。

Q 18  ここまで普及したゲーム機をインフラとして使わないともったいないと言っていたが、それはDSとWii両方についてなのか、またゲーム以外の新しい使い方っていうのは自社開発を考えているのか、それとも『テレビ番組チャンネル』のように他社との提携が増えるのか、もしくはノウハウを持っている会社の買収などの可能性もあるのか。また、『ショッピングチャンネル』のプレゼント機能と『テレビ番組チャンネル』の海外配信のタイミングはいつか。
A 18

岩田:

 市場の変化はDSとWiiで起こっているわけなんですが、DSの方がやはり普及の台数が遥かに先行しています。ですから普及台数が先行している分、それだけマーケットの変化も大きいと思います。ただ日本ではそう言えるかも知れませんが、例えばアメリカに行ってWiiの売れ方を見たり話題の広がり方を見たり、あるいはイギリスに行ってWiiの話題の広がり方を見ますと、これはなんかちょっと全く異質なことが起こっているなっていう印象を感じたり、そういうエピソードがあります。とにかく現地の社員たちも、ビデオゲームのことを1度も話題にしなかった親戚や友だちがWiiのことを話題にしてくれる、そして面白かったと言われると口々に言っています。それは非常にありがたいことだと思うんですが、マーケットがガラッと今、変わりつつあるんだと思います。ですから 、必ずしも片方だけというふうには捉えておりません。チャンネルの今後の展開ですが、自社だけで全てを作りこみにいきますと、当然限界がございますので、いろいろな提携というのは今後も増えると思います。その提携の程度も距離間はいろいろありえると思っていますので、あまりこういう方法じゃなきゃいけないというふうに固定的に考えずに、どうすればお客さんはチャンネル機能があって良かったと思っていただけるかなということを重点に考えたいと思います。あと、買収についての考え方ですが、当然潤沢なキャッシュを何に使うのかのところでよく聞かれる質問なんですけど、買収というのはいくつかの前提条件が揃わないと、必ずしも良い結果にならないというふうに私たちは考えていますので、その条件が揃えばもちろん躊躇なく考えますけれども、極端な話、お金で相手に言うことを聞かすというようなやり方の買収で未来にプラスがあるとは私は全く思っていませんので、その意味からすると、世間の人は任天堂は慎重だねっておっしゃるのかもしれません。ただ私は、それが最終的に将来の企業価値にプラスになるような形なら躊躇はしないつもりです。それから海外展開の話ですが、プレゼント機能については世界同時をイメージしていますが、テレビ番組表の配信となりますと、これは世界各国で全く事情が異なります。例えばアメリカに行きますと、デジタルのケーブルテレビのセットトップボックスが非常に普及していて、ほとんどの家庭の中にそのデジタル番組表というのは既に存在しているんです。ですから、そこに意味のあるテレビ番組表の形というのは、日本とおそらく違うんです。ですから、仕様そのものも変えないといけませんので、同時の展開というのはできないなと思っています。また私どもが今回の提携先にしたIPGさんも日本の会社ですので、日本で展開するためのパートナーと考えていただいたらいいと思います。

Q 19  任天堂にとって中国市場はどのような存在か。もし本格的に進出していくという計画をお持ちなら、どの時期か。また結構高いハードルとして指摘されているパイラシー(海賊行為)の問題に対して、どのような対策をお持ちか。
A 19

岩田:

 中国市場への取り組みは、iQueという会社を作りまして、3年ほどビジネスをしております。当然いろいろなビジネスの習慣の違い、それから先ほどおっしゃったパイラシーの問題等も含めまして、中国のマーケットに向いているハードとは何かということをいろいろ考えますと、当社の持っているハードの中では、Wiiが一番有利だと思っています。じゃあ、Wiiはいつ売るのかということなんですけれども、今年は世界中で数が足りませんし、一台でも多く、今のマーケットにお届けすることが我々の責任だと思っていますので、来年になってしまいますが、来年には持っていけるんじゃないかなというふうに思っています。ただ、残念ながら今の時点でどれ位のスピードでどれ位の市場が作れるかということを正確に申しあげる段階ではないと思っています。一応、iQueという会社もそのビジネスの中で何とか利益を上げられるところまではきたんですけれども、ただその収益貢献が任天堂本体に対してものすごく大きいというところまでには至っておりません。その意味で、長いレンジで取り組みたいんですが、先ほどからずっと申しあげています通り、結局最後はビデオゲームに触れてくださる人の数をいかに増やすかということで、当然中国にはたくさんの人がいらっしゃって、そして経済的に物凄い勢いで発展をしているわけですから、将来のポテンシャルが大きいということは紛れも無い事実というふうに考えています。ただ単に日本で作った物を持っていくというだけではなくて、現地でソフト産業はどうやったら育つのかということを一緒に考えませんと、上手くいかないと思っています。実は波多野が今、当社の韓国事業をずっとやっているんですけれども、韓国に出て行くときに一番最初に重要だというふうに断言していたことは、「現地のソフトメーカーさんが育つような環境を作れたらマーケットとして立ち上がるし、それができなかったら厳しいだろう」ということでしたし、私も全くその通りとだと思っています。

Q 20  先ほど、DSの将来性について、何かの役に立ついろいろな可能性があり、来年にはいくつか実例をお見せできたらいいと思うという話をされたが、それは現在のDSの使い方の延長上にある話なのか、ハードとして新しいものを出してのことなのかの確認と、Wii、DS共に国内に限って見れば、ファーストクォーターよりセカンドクォーターの方が台数としては下がっているが、これは年間の全体の販売量は上方修正されているので、季節的な要因によるものと見ているのか、あるいはその国内に関してみれば何か小さな踊り場のようなものが来ていると考えているのか。
A 20

岩田:

 一つ目の話は私から答えます。二つ目は波多野に話してもらいます。DSの将来の展開という形でお話したのはもちろん新ハードを意味してはおりません。現行のDSハードが使えないと、私は先ほど「DSというハードの価値は、ひとつのアーキテクチャーでこんなに普及してこういう特徴を持ったハードはこれまでなかったことにもある」ということを申しあげたわけで、新しいハードを前提にしましたら、「ご破算で願いましては」になるわけで、これまでの積み上げの台数が無に帰してしまいますので、あくまで今のDSがちゃんとサービスの範囲に入らないと、これはもう全然お話にならないわけで、あくまで前提としては現行ハードでできるサービス、新しいサービスです。その上で、「あ、なるほど、DSを持って歩くとこういういいことがあるのか」というような状況を作りたい、ということです。それが、DSがずっとマーケットをアクティブにするうえでも、そして一家に一台から一人一台の流れを作るためにも意味があるのではないのかというふうに思っています。


波多野:

 国内市場のファーストクォーターよりセカンドクォーターの期間で、セカンドクォーターが落ちているということについて、まずDSに関して申しあげるならば、先ほどからソフトをいろいろ説明させていただいてると思うんですが、定番というか、『脳トレ』、『もっと脳トレ』もですね、一昨年発売したソフトですが今日も売れ続けている。そして、昨年発売したマリオも売れている。そういう定番ソフトが主軸になっているという構造で、新しいものがこのセカンドクォーターにどれだけあったか、市場で受け入れられたか。ソフトにはその時、その時の強さっていうか、ユーザーの支持の高さという要因も一方ではあります。それから、幅広い世代にお客様が広がっているんですが、一つ、これは私たちも努力しなければいけないテーマの一つとして、この時期が云々というわけではありませんけれども、やはり構造的には13、14歳から20歳前後の方、いわゆる熱心なゲームユーザーといったほうがいいですかね、こういう人たちの支持するソフトというのが若干ここでは足りていない。だけど、年末にはそういうタイトルが出てきますので、必ずしもファーストクォーター、セカンドクォーターだけの比較で論じられるより、もうちょっと長い目で見ていただきたいというふうに思います。それからWiiに関しては、これも昨年12月に発売した『Wii Sports』が中心になっております。で、これも定番化しているということがいえると思っているんですが、過去の事例でもハードを発売してその一年間の間に連続的にユーザーを引っ張っていけるソフトが出続けるというのはなかなか大変なことでございまして、もちろんそういうことができればこれはもう加速度的にどんどんいきます。けれども、DSの時もそうならない時期がありましたし、過去の事例でもそのようなことはありますので、必ずしもファーストクォーター、セカンドクォーターあるいはその時期の中でどうだったかっていうことの比較を厳密にされるより、もうちょっと長い目で、ソフト開発にも時間がかかるものもありますので、もう少し長い目で見ていただければと思います。当社のソフトで言うならば、『スーパーマリオギャラクシー』が11月1日に発売してどうなるのかとか、あるいは『Wii Fit』ももちろんその中にありますし、こういうことで1年のレンジで、せめて、そういう感覚で見ていただいてどうだったんだろう、ということの方が私としては説明できるし 、クォーター単位ではなかなかこのビジネスは論じられないところもありますのでご理解いただければと思います。


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