16 | 以前のプラットフォームサイクルが当てはまらない、もしくはこれから当てはまらないようになっていくということと、日本のDSの数字との関係について教えてほしい。2007年3月期のピークを将来的にDSが超える可能性があると理解してもいいのか、それとも日本は違う局面に入ってしまっていると理解すべきなのか、この点について教えてほしい。 |
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岩田: 日本においてDSはピークを過ぎてしまったと断定することはできないと思います。われわれのビジネスは、たった一つのソフトプロダクトによって、がらっと変わることがあります。たとえば昔ゲームボーイというプラットフォームは「もう終わった」と思われた時期がありました。でも、「ポケモン」というたった一つのソフトがそれを変え、プラットフォームの寿命を何年も延ばしました。私たちがかつて「nintendogs」や「脳トレ」で実現したときのように、何かお客様に驚いていただけるおもしろいプロダクトが出せたら、状況はがらっと変わると思います。 先ほど「(過去の)プラットフォームサイクルは当てはまらない」と申し上げたのは、「もう二度とサイクルはないのだ」ということを言いたいわけではなく、「この前の世代は4年だったから今度も4年だ」、「この前こっちは5年だったから次も5年でこうなる」、「こういうカーブを描くから次もこうだ」というのはそれは環境が変わってお客様が変わったら、同じにはならないだろうし、サイクルの長さも違えば、パターンも変わるのではないかと思うということです。「これまでこうだったから、次もこうなる」ということが当てはまることが続きすぎたので、皆さんそう思いがちですが、それは4年前、5年前に私たちが「5歳から95歳、年齢、性別、ゲーム経験を問わず」と言い始めたころに、「それはゲーム業界の常識として無理ですよ」と言っていたときのことと重なって見えるわけです。ですから、「サイクルを固定的に考えるのをやめる時期が来たのではないでしょうか」というのが、今日のプレゼンの趣旨です。 |
17 | 結果としてプラットフォームサイクルが今までのようなかたちにならない可能性があるということか、それともそうならないように任天堂が何らかの努力をしていくということなのか、前者であれば、その長くなったサイクルにどう対応していくのか、後者であれば、どのような努力をしてサイクルを長くするのか教えてほしい。 |
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岩田: まず従来のゲームのお客様は、自ら能動的にゲームに関する情報を集めてくださるお客様が中心で、その方たちに情報をお伝えするのはスピード的には速く伝えやすいわけです。なぜならば、その人たちは自ら能動的に動いてくださるからです。それに対して私たちが今トライしていることは、「ゲームなんか興味ないよ」とおっしゃっている方に、何とかこっちに振り向いていただいて楽しんでいただくことです。そうすると時間がかかるわけです。ですから「今まで4年だったから次も4年だ、今まで5年だったから次も5年だ」というのは、本当に正しいのでしょうか、時間のサイクルは変わるのではないでしょうかというのが一つです。 それからせっかく普及してハードも買っていただいたわけですから、それで長く楽しんでいただけるのは結構なことだと思います。われわれはソフトで楽しんでいただきたくてハードを売っているわけです。これは(前社長の)山内が言ったことで私が言い出したことではないのですが、「お客様は仕方なくハードを買う」のだと任天堂は考えてハードを作っています。ですから「そのハードでお客様に新しくおもしろい驚きを感じていただける限り、次々と提案を出し続けたい」、「それによってサイクルが延びればいいのだ」とは思います。 次々とそういう提案をし続けることで、プラットフォームの活性が高い状態を維持することと、世界中にはまだまだゲームを遊んでおられない方はたくさんいらっしゃいますから、そういう方たちに届けていくことで、ビジネス全体で見たときの寿命が変わるのではないかと思います。「これまでの日本とアメリカとヨーロッパのマーケットで、ゲームをやる人を対象にやっていたビジネスはこうだったから、次もこうだ」というのは、分析や予測としては適切でない状況に入ったのではないでしょうか、というのが、今日の私のお話の趣旨です。 |
18 | DSについて、ハードの稼働を上げる努力をされていると思うがソフトの販売本数が前期と今期(2008年3月期と次期予想)で横ばいになる。ハードが(販売予想では)さらに2800万台売れるにもかかわらずソフトが横ばいになる理由は。 |
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岩田: 予想を立てる前提では、私どもが自社で作っているものとソフトメーカーさんからすでにお知らせいただいている「今期こんなものが出せると思いますよ」ということ以上にはわかりません。たとえば2005年に任天堂は「脳トレ」を出しましたが、「脳トレ」を出したときに、「これは1000万本売れるのだ」と社内で言っても、それは誰も信じられないわけですので、ずっと控えめな数字で計画しました。 私たちがこれから出すものの中で、大化けして世界中ですごくたくさんの数を受け入れていただけるようなソフトができれば、当然アップサイドはありうるわけです。ではそのアップサイドが起こることを前提に経営ができるかというと、それは無理です。ですから、これまでの流れから考えられるかたちで予測を出すしかないわけです。当然その中で願わくば私たちの想定以上の結果になるものが出て売れてくれれば、それはマーケットの拡大につながると思います。でも、私たちがこれから提案するどれが化けるのか、どれぐらい化けるのか、これはわかりません。それを少しでも打率が高まるようにするのが私の仕事ですが、それを前提に予測を立てて下方修正というわけにはまいりませんので、それがこのような前提になっている理由です。 |
19 | Wiiウェアとバーチャルコンソールを合わせたダウンロード販売のビジネスの状況を教えてほしい。また、ダウンロード販売と従来のパッケージ販売は収益性とかビジネスの構造が変わってくると思うが、ビジネスモデルを簡単に説明してほしい。 |
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岩田: まずバーチャルコンソールとWiiウェアの売上規模は、Wiiウェアが日本で前期末のスタートでごくわずかしか含まれていませんが、両方で前期(2008年3月期)は78億円です。この規模がこれからどのように推移するかは、まだわかりません。私はあるところで急激に大きくなる可能性があると思っていますが、臨界点にいつ到達するかはちょっと予測が難しいからです。Wiiウェアならびにバーチャルコンソールは、ビジネスとして在庫リスクがないという特徴がありますので、ビジネスの効率は動き始めればよくなると思います。 ちなみにバーチャルコンソールとWiiウェアでは、ソフトメーカーさんとのビジネスの構造は全然違っています。バーチャルコンソールに関しては、任天堂のほうでソフトの開発その他の準備をして、任天堂がビジネスリスクを取っています。これはこのようなダウンロード販売がWiiでどれだけの規模になるのか、全くわからない時点でスタートしたからです。任天堂がビジネスリスクを大きく取るので、その分、任天堂の取り分を多くしていただくというかたちでお付き合いをしています。 それに対してWiiウェアの場合は、開発のリスクをすべてソフトメーカーさんが取られます。ソフトメーカーさんは、開発のリスクをすべて取り、自分自身でレーティングを取り、自分自身でサポートをするのだということを前提に許諾をいたしますので、ソフトメーカーさんの取り分は大きくなります。具体的に何パーセントなのかということは、ビジネス上の問題ですので、ここではお話しできませんが、バーチャルコンソールとWiiウェアはそういう点が全く違うということだけは申し上げておきます。 |
20 | バーチャルコンソールとWiiウェアは今後も両立するのか、それともWiiウェアが中心で、バーチャルコンソールはダウンロードビジネスが伸びるまでの一過性のものと考えてよいのか。 |
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岩田: バーチャルコンソールは、新作をつくるのに限界があるのです。過去のものが一通りなくなったらなくなってしまいます。ですからいつかバーチャルコンソールの新しいラインアップを投入できなくなる時期が来てしまうかもしれません。段階的にはWiiウェアのビジネスの割合が高まっていくのではないかと思います。 その一方で、Wiiが新しく売れていく、あるいはWiiが新しくインターネットにつながり、「ダウンロードでものを買ってみようか」というお客様が増えていけば、その人たちにとっては25年前のゲームも新しいゲームと感じていただけるので、その方たちには継続して売れるでしょうから、バーチャルコンソールのビジネスの伸びよりもWiiウェアの伸びのほうが大きくなるということは予想していますが、バーチャルコンソールが急激になくなってしまうとは思っていません。むしろ私は長く継続するのではないかと思っています。 事実、普通のパッケージソフトは発売した週に何個売れて、次の週に何個売れて、次の週に何個売れてと急激に減衰していきやすいのです。もっとも任天堂の「Touch! Generations」のような例外はあります。これに対して、バーチャルコンソール型でものを売ると減衰が緩やかだと聞いています。これはWiiウェアについても当てはまるのではないかと見ていますが、これを具体的に申し上げるにはまだ日が浅すぎます。将来、私がまた何か皆さんの前でビジネスについてご説明できる機会があったときに、電子型配信のビジネスはこんなになるみたいですという分析をお話しできればいいなと思います。 |