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2009年3月期 決算説明会
質疑応答
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Q 1  ゲーム市場の縮小が懸念されている状況で、御社の製品は健闘されているが金融危機以降、御社を取り巻く外部環境は激変していると考えている。そういった中、サードパーティ、小売りの戦略や行動に変化は出てきているか、御社への影響や対策などを含めて教えてほしい。
A 1

取締役社長 岩田 聡:

 今年1月に、業績予想を見直したとき、任天堂は特にソフトの販売数やハードの販売数について、「実態よりも弱気ではないのか」というご指摘をずいぶん受けました。

 そのときに外部環境において一番影響があったと私が感じたことは、世界中の流通の皆さんが在庫を持つことに非常に慎重になられて、いろいろなものの発注がコンサバティブになったなということでした。発注がコンサバティブになると、ソフトメーカーさんの出荷見通しが下がり、製造予定の数量が悲観的になっていくという循環があったことは事実です。

 一方で、ゲームマーケットはご覧いただいたように、世の中のほかの産業に比べますと、景気の影響を相対的にはあまり受けておりません。ですから実際には流通さんに納められたさまざまな製品は、個体差はありますが、売れるものはきちんと売れているわけです。そういう売れるものはきちんとリピートオーダーが入ってきて、さらに売れるという循環ができています。

 ただしソフトの中にはいろいろな種類があって、短期間に大きなピークの山をつくって、短期間で勝負をするタイプのソフトと、長い間売れ続けていくことによって数を積み上げていくタイプの製品があります。流通さんが弱気になられると、短期間で勝負をするタイプの商品は、どうしても影響を受けるということが起こってくる。そういうことがソフトメーカーさんのビジネスに影響を与えていると感じています。

 これが外部環境で私が一番感じていることです。しかし、昨年の年末から今年の頭にかけては、流通さんの間にもパニックのような状況が感じられましたが、それがだいぶ落ち着いてきましたので、これからはそのような影響はだんだん弱まっていくのではないかと思っています。

 一方で、ビジネスというのは基本的に前年対比、前年同月比で見ていきますね。すると昨年の4、5、6月は非常に強力なソフトが次々と出た時期で、海外のマーケットはこの時期としては季節外れなぐらいに調子がよかった。その非常によかった実績と、今年われわれはもう一回勝負をしなければいけない。ところが今年はわれわれの重点商品は夏以降に配置されてしまっているわけです。

 ですから当然、第1四半期の業績だけを見れば、前年のクリアは容易ではないと考えています。今年度の上期下期の業績予想の配分を見ていただくと、昨年と違う(配分で予想をしている)と感じていただけるのではないかと思います。これは重点商品の時期によって、売れ方のパターンが変わります。むしろ今年度は、(年末商戦期に集中する)例年のゲーム機の売れ方により近づくのではないのかという分析をして、業績予想しました。

 私は特別楽観もしておりませんし、また特別悲観もしておりませんが、この経済状況が刻々と変わる中で、われわれのビジネスが最大化できるように、着実に進めたいと思います。

Q 2  価格について伺いたい。以前、値下げは早く買った人が損をするからしないという話をされていたが、国内テコ入れというより伸ばす施策の一つとして、DS Liteの値下げがあるのではないかと思う。私もそうだが、Liteを最初に買った人は、いまDSiも買っていると思うので、いまLiteを値下げしても、別に悔しいとは思わないのではないか。値下げについて、いまどんなふうにお考えになっているか伺いたい。
A 2

岩田:


 まず何台もお買い求めいただいて、ありがとうございます。「値下げがパターン化していくのは好ましくない」という意味で、前回あのように申し上げましたが、もちろん、価格政策が未来永劫、禁じ手であると申し上げるつもりはありません。しかし、値下げは必ず世界に影響を与える話です。たとえば日本のマーケットがこういう状態だから日本だけ値下げしようとしても、もし仮に日本で値下げをすれば、世界中でもうすぐ値下げじゃないかという気持ちに皆さんがなられるわけです。

 10年前、15年前のゲームマーケットは、各国が独自の価格政策を自由にできていましたが、皆さんもご存じかと思いますが、この数年価格政策は完全に世界共通の問題になりました。ですから世界のビジネスを最大化するうえで考えなければいけないと思っています。その意味で、いま日本がちょっと思ったようにいっていないから、日本で値下げだというような発想を私たちはしておりません。

 また値段を下げることによって、確かに需要は増えると言われていますが、一方で、その効果は非常に短期間しか持続しないことも、これまでのいろいろな分析で明らかだと思っています。ですからもしやるとすれば、それは本当にビジネスが最大化できるときに考えるべきことと思います。少なくとも当面、値下げについて具体的にイメージしているということはありません。

Q 3  サードパーティソフトの今期の見方について教えてほしい。Wiiのハードとソフトが、去年好調だったことで米国、欧州でこの1月−3月が少し前年割れの水準が続いている中、下期に回復するソフト計画について、これは自社ソフトと考えていいのか、それともサードパーティで大型のものを計画されているのか、われわれがまだ知らないようなものを御社は計画されているのか。
あとDSのソフトの販売は、今期はマイナスで計画されているが、日本での第4四半期は少し前の水準に戻ってしまった。先ほど見せていただいた欧州の英独仏の数字を見ても、来月はDSiのハードの販売は前年と同じ水準ぐらいまで戻ってしまうのか。DS関連の牽引するソフトは下期では見ていらっしゃらないのか。DSiの需要を喚起するソフトを、御社はどのタイミングで出す計画なのかということを教えてほしい。
A 3

岩田:

 まず私はソフトメーカーさんのタイトルについて、特にそれが未発表であれば、具体的にここでコメントするわけにはまいりませんので、それはご容赦ください。

 先ほどWiiのマーケットについては、4、5、6月は前年の水準に届かないだろうけど、夏以降、変わっていくでしょうというお話をしたのは、私たちが今年、市場を牽引できるようなタイトルを複数用意し、年末に向けて展開しようと考えているからです。

 もちろんソフトメーカーさん、特に欧米のソフトメーカーさんはほとんどがWiiに力を入れるとおっしゃっていますので、私のいまの予想に含まれていないプラスアルファが出てくることを当然期待したいわけです。一方で私はマーケットの皆さんに対して、任天堂はこれだけやりますということを表明して、業績予想を出すわけです。うまくいけばヒットするかもしれないものをあてにして、予想数を上げるわけにはいきませんので、そのことは自分の考慮の中に入れておりません。ただそういうものが出てくる可能性はあると思いますし、またそれを期待したいとは思います。

 DSに関しては、いっときDSのソフトは、つくって出せば何でも売れるというような、やや過熱した状況があったと感じています。当然のことながら、そういう状況は永遠には続きません。売れるものと売れないものの差がはっきり分かれてきます。また売れなかったものは流通さんの中で在庫になったりもするわけです。

 そういうことを考えると、DSのマーケットについても、ソフトメーカーさんから、私が認識していない新鮮なご提案が出てきて、それがヒットすればシナリオは変わりますが、現在、確実に読める範囲で予想数をつくりました。なので、マーケットの状況が変わってきている中、ある程度慎重に見ているという見方は当たっているかもしれません。

 またDSiについては、DSiとDS Liteがどのような比率で売れていくかは、もう少し時間を立てて見極めないと、その判断は難しいと思っています。アメリカもヨーロッパも、携帯機は6月、7月前半あたりはわりとよく売れるシーズンになります。前年も高い水準にあったわけですが、そういう水準で売っていけるという見通しを持っています。

 ソフトの展開については、当然、任天堂自身も展開しますし、ソフトメーカーさんもいろいろな提案をされると思います。当然その中に新たなお客様を獲得できるようなソフトも出てくると思います。

Q 4  確認ですが、Wiiソフトの今期の4,000万本の増加は、基本的には御社のソフト関連で見ているということか。
A 4

岩田:

 販売予定本数について、どの分が任天堂で、どの分がソフトメーカーさんのものであるということを、私たちはこれまでもお話ししてきておりません。4,000万本がすべて任天堂だというのは、ちょっと間違いかと思います。ただマーケット全体が成長できると見ているのは、任天堂がソフトを用意しているからですということは申し上げられると思います。

Q 5  まず、去年のこの場で、Wiiのメモリの容量が足りないということを申し上げて、ようやく対応していただいたが、私はWiiのチャンネルとか、バーチャルコンソールを40本以上ダウンロードしていて、かなり容量が足りなかったので、本当にありがたい措置で、まずはお礼を申し上げたい。そのうえで質問させてほしいが、先日「Wiiの間」会見をニンテンドーチャンネルで見たが、岩田社長が、「今年の春ソフトが遅れて申し訳ございません」とひたすら謝っているような動画が流れていた。 謝られる姿勢は非常によかったと思うが、その一方で、前回質問したときに、「Wii Music」があまり売れなかったという問題が出てきた。1−3月はWiiが国内であまり売れなかった。しかもゲームソフトも遅延が出てきている。それ以前にはバグを出してしまったということもあって、任天堂の戦略自体は間違っていなくても、細かいミスが目立ってきているのではないかなという気がする。
こういうミスはどうして出るのか。任天堂の組織の問題なのか、組織の末端でのリソース不足の問題なのか、その解説と対応策について教えてほしい。
A 5

岩田:

 まず任天堂にとって大変ありがたいことで、製品をご愛用いただいて、ありがとうございます。

 まず先日「Wiiの間」会見というかたちで、動画を使って、皆さんに「Wiiの間」のコンセプトについてお話ししたときに、今年の前半(のWiiの展開)について申し上げました。私は「謝っている」というよりは、「任天堂は『現状には問題はない』と強弁する姿勢は持っていません、『現状は問題だ』と思っています」ということを、ああいう動画を能動的に見にきていただける方にちゃんとお伝えすべきだと考えたんです。

 当然次々と新しい提案が出てくるというふうに期待して、Wiiを買っていただいたわけですから、その方たちの期待に応えられていないのに、「Wiiは世界で一番売れているのだから問題ない」という姿勢ではいけないということが、私をあの話をせずにはいられない気持ちにさせたとご理解ください。ただ反社会的なことをしたということではないので、「ひたすら謝罪」と言われると、いや、それはちょっと違うということとご理解いただければと思います。

 ちなみに細かいミスということについてですが、少なくともミスは家庭用ゲーム機ではあってはならないものとされていますが、一方でそのハードルが年々高くなっていることもまた事実です。任天堂が何か組織に緩みがあるとか、末端で人手が足りないから、あるいは昔のようにテストやデバッグに手間がかけられていないからという見方があるとすれば、それは誤解だと思います。われわれが実際に製品を出すときにテストに費やしているパワーは、1製品あたり何ら変わっておりません。製品が増えたことで、以前よりもそこに多大なエネルギーをかけて展開しています。

 むしろ製品の複雑度の向上に対して、われわれの対応やノウハウが十分追いつききっていない面があるということで、何か一つこういうことが起こるたびに、われわれは「それはなぜ起こったのか」「どうすれば防げたのか」「どこでそれを防ぐチャンスがあったのか」ということを、社内でいろいろなかたちで未来に活かすような流れをつくっております。今後そのようなことがなるべく起こらないようにしたいと思います。

 一方で、その細かいミスという中には、今年前半タイムリーにソフトの新しい提案ができなかったということも、ご質問の趣旨には含まれているかと思います。これはミスと言うのが妥当かどうかはちょっとわからないなと思います。といいますのは、率直に申し上げて、エンターテイメントのソフトは、ある程度つくってみなければ、本当におもしろいかどうかはわからないわけです。当社の宮本がつくっているソフトでも、最初のコンセプトのとおりにつくったら、すっと最初からおもしろかったときと、おもしろいと思ってつくったけど、もう一つだなというときが必ずあるわけです。

 宮本が世間でご評価いただけている理由は、もう一つだなと思ったときに、立ち止まって考えて、自分が最初に魅力を感じたはずのところの魅力をちゃんと伝わるように直して出す打率が非常に高いことにあると思います。でも、神様ではありませんので、百発百中ということはありませんし、かかる時間も読めません。かかる時間をある程度読めるようにするのが私の仕事であり、またそのことを考慮したうえで、それでも隙間がないようなラインナップでものを出していくのが、任天堂の経営の仕事だと思って取り組んでいますが、これもなかなかパーフェクトというわけにはいきません。

 われわれはなるべくチャンスを逃さないように、いつでも新しいおもしろさの可能性を目を皿のようにして探し、もし目の前をそういうものが通り過ぎようとするとき、それは幸運によって目の前に現れるわけでしょうが、それを取り込めるような準備はしていようと思いますが、いつそれが目の前を通り過ぎるかはわからないわけです。ですからどうしても多少の波は出てまいります。

 任天堂がお客様に驚いていただける製品づくりが隙間なく続けられるようにというのは、常に私の目標ではありますが、なかなか理想どおりにはいかないというのが現実です。一方で、いくつかおもしろい種も見つかっていますので、また将来お話しできるときが来ると思います。

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