13 | 今年のE3でマイクロソフトがスマートグラスを発表したが、これによって、手元にある画面とテレビ画面の2画面でゲームや娯楽コンテンツを楽しむという、Wii Uの重要な差別化要因の一つが失われるか、小さくなってしまうのではないかと思う。スマートグラスについてどう考えているか。任天堂はどのように差別化していくつもりか。 |
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岩田: まず、(Wiiの)モーションコントロールのときは、発売して3年経過するまで、他社さんは動かれなかったのですが、今回、非常に短期間で動いてこられたということは、それだけ任天堂の提案に対して可能性を見いだされたのだろうと思います。誰も追随しないようなやり方というのは魅力がないということだと思いますので、その意味ではWii Uの提案に魅力があると感じている人がおられるということの一つの証明だと思います。 一方で、では、本当に同じことができるのでしょうか? 彼らが提案しているのは私の知る限り、Wii Uが提案していることの一部だと思います。私たちは、ゲームを熱心に遊んでおられるコアゲーマーのみなさんが、両手で握って遊ぶコントローラーをとても愛しておられることを知っています。でも、スマートフォンやタブレットには、ゲームを操作するためのスティックやボタンはありません。両手でコントローラーを握って、そのうえでもう一つの手でスマートフォンやタブレットを持てばいいのですが、それは人間にはできませんから、実際にはWii Uと同じことはできません。あともう一つの問題は、Wii U GamePadはそれを使って満足のいくゲーム体験をするために専用に作られているということです。これはレイテンシ(Wii U本体とWii U GamePadの間の無線通信にかかる時間)について特別な配慮をしているということです。それがどういうことかと申し上げますと、例えば、「Wii U GamePad上のボタンを押しました。押した信号はWii Uの本体に伝わります。そこで絵が作られてWii UからWii U GamePadに送信されてきて絵が出ます。」このプロセスに遅れがあっては上質なゲームは実現できません。そのプロセスを実現するために専用に作っているものと、目的の異なる汎用のテクノロジーを、それぞれの目的のために購入したデバイス同士を組み合わせて画像を転送するのでは、当然レイテンシが変わります。ムービーのストリーミングをするだけなら、インタラクティブではありませんので何の問題もありません。ただ、それをインタラクティブな遊びにしようとした瞬間に、レイテンシの問題に対して人は非常に敏感になるのです。ですから、私たちは専用にWii U GamePadを作ることに意味があると思いましたし、それを標準で同梱することの優位性は、全員に同じ体験を保証できるということですから、スマートグラスが出てこようと、それから、ソニーさんも二つのゲーム機をつなぐというお話をされましたけれども、それによってWii U GamePadの優位性が失われるということはないと私は思っています。 |
14-1 | Wii Uは現行のビジネスモデルとどのように異なるか教えてほしい。デジタル販売によって収益性が高まり、利幅が大きくなるのか。どのようなことが期待できるのかヒントを教えてほしい。 |
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岩田: まず、デジタル販売というのは、製品原価、すなわち、メディアを作ったり、物理的なものを輸送したりするためのコスト、あるいは在庫リスクを抑えることができますから、収益性は向上できると私は思います。 それからもう一つは私たちが『Miiverse』の説明のところで申し上げましたが、任天堂は今まで歴史的に見て、お客様の層がどちらかというとカジュアル寄りだと言われており、「(他社に比べて)タイ・レシオが低い」と言われてきました。しかし、何もしないとタイ・レシオが低くなってしまいやすい、能動的には当社からのご提案に接触いただけないお客様に、特別に新しいご提案(そのお客様に適した次のゲームのおすすめ)をホームメニュー画面で自然な形で差し上げることで、タイ・レシオを上昇させたいと思っていますので、これも収益性を向上させるための私たちのチャレンジだと考えています。 またWii U自体が家の中で稼働率が高くなり、リビングエンターテインメントの中心として稼働率が高くなれば、他の場所でも収益が生まれるチャンスが増えると思います。当然、無策でいますと、私たちの世界は、「だんだんソフトウェアの価格は下がるんじゃないか、ソフトは売れなくなるんじゃないか」という課題にさらされる訳ですが、それに向き合って、今申し上げたようなことをいくつか積み重ねていくことで、従来以上の収益性を目指していきたいというのが私の考えです。 |
14-2 | 現在、Apple社がリビングルーム用のTVを発売するのではというかなり大きな観測がある。任天堂やソニーが、またある程度はマイクロソフトも、(ゲーム機を通して)リビングルームを支配してきたが、実際にApple社がそのようなことをしたとすれば、任天堂はどのように考えるか。 |
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岩田: 私たちが提案するWii Uは、いろいろなデバイスの中で唯一、セカンドスクリーンと大きなTVのスクリーンとの両方が、完全に統合された状態での提案であり、すべてのお客様が同じデバイスの組み合わせを必ず持てるというところに、大きな特徴があると考えています。ですから、私は十分に任天堂にその差別化のチャンスがあって、独自のブルーオーシャンを作れると思って提案しています。 また、携帯電話は2年程度で買い換えサイクルが来ますので、スマートフォンなど新しい製品が早く普及しますが、テレビは2年では決して買い換えサイクルが来ません。短くても5年、長ければ7年、10年というようになりますから、どんなに素晴らしいテレビができても一瞬でテレビが全部置き換わるということはないと考えます。 |