話題は変わりますが、ニンテンドー3DSには、「すれちがい通信」という機能があります。
これは、すれちがい通信対応のソフトを遊んでいると、3DS本体をスリープ状態にして持って歩いたときに、他の同じソフトを遊んでいる人とすれちがう際に自動的にデータをやりとりする仕組みです。
人口密度が高い日本において、このニンテンドー3DSの機能は、非常に多くのみなさんに楽しんでいただいているのですが、アメリカやヨーロッパでは、日本と比べると、すれちがう相手と出会う頻度が少なく、その結果、3DS本体をスリープ状態にして持って歩いていただける方もなかなか増えないので、日本と比べるとすれちがい通信を日常的に経験しておられる方は多くないようです。
今年は、『とびだせ どうぶつの森』のようなすれちがい通信で大きく遊びが広がるソフトも登場しますので、世界でより多くの方にすれちがい通信の魅力を体験していただきたいと思います。
これは、ニンテンドー3DSが自動接続するWi-Fiアクセスポイントを通じて、すれちがい通信の中継機能を新たに本体システムに実装することにより対応します。
アメリカには、スターバックスさんやマクドナルドさんをはじめとして、28,000か所の自動接続するアクセスポイントが、ヨーロッパには24,000か所の自動接続アクセスポイントがありますが、このアクセスポイントをすれちがい通信の中継に利用する仕組みを秋までに本体更新を通じてご提供する予定です。
これは、スリープ状態の3DSがアクセスポイントのある場所に行くと、アクセスポイントと自動接続してすれちがい通信のデータをサーバー上に送信し、同時に、サーバー上にある別の3DSのすれちがい通信データを3DSが受け取るというものです。この仕組みだと、直接の交換ではなく、中継を通じた交換になりますので、AさんとBさんがデータを交換するというのではなく、AさんのデータがBさんにわたり、BさんのデータがCさんにわたり、というように順番にデータが中継される仕組みになりますが、他の人と場所を共有したことをキッカケにデータが交換される不思議な感覚は、同じように実現されます。
これまで、すれちがい通信は、同じ時間、同じ場所に、スリープ状態の3DSが複数台存在して初めて起こるものでしたが、この仕組みでは、同じ場所に、別の時間に訪れても、すれちがい通信が起こるようになりますので、すれちがい通信の稼働率が大幅に向上することが期待できます。
一方、発売後、新作ソフトの発売間隔が大きく空いてしまい、一度勢いを失ってしまったWii Uについてですが、3DSがソフトの連続投入で勢いを取り戻しつつあるように、「ソフトウェアがハードウェアを売る」という構造は、ゲームビジネスの基本原理です。
とくに『ピクミン3』以降、今年後半から来年にかけては、自社の有力タイトルを集中的に展開することによって、ハードを牽引することを目指しています。
昨日、今後の展開についてお伝えしましたが、現時点でお知らせしている自社タイトルはご覧のとおりです。
新しいハードを購入いただけるかどうかは、そのハードでしか遊べない有力タイトルがあるかどうかで決まると私たちは信じています。その意味で、任天堂は、自社タイトルがすべてプラットフォーム独占タイトルとなる特殊な構造のプラットフォームホルダーであると言えます。
これだけの有力タイトルをこれから来年にかけて順次発売していきますので、この展開を通じて、来月以降、Wii Uの状況を大きく改善していくことができると確信しております。
また、他社さんのタイトルについても、
現時点で、ご覧のようなタイトルが発表されています。
サードパーティ・ソフトメーカーさんが、今後どのようなソフトを展開されるかは、私がお話しするべきことではないのですが、このほかにも未発表の開発中タイトルがありますし、先ほど申し上げた自社ラインナップでプラットフォームの勢いを取り戻すことで、ソフトラインナップのさらなる拡充につなげてまいります。
次に、任天堂がこれからの環境変化に対応し、今後の収益機会を拡大するために大変重要なデジタルビジネスについてお話しします。
これは、これまでのダウンロード売上高の推移です。ご覧のように、前期はダウンロード売上は過去最高を記録しました。
これは、日本の『とびだせ どうぶつの森』のデジタル販売が貢献したのですが、このソフトは毎日少しずつ楽しむという特性から本体に内蔵できるダウンロード版との相性が良く、これからアメリカやヨーロッパでもダウンロード版を楽しんでいただく機会にしたいと思います。
ちなみに、4月の決算説明会でもお伝えしたとおり、一度ダウンロード版を経験していただいたお客様は、次にソフトを購入される際にもダウンロード版を選択される比率が高まっているという傾向もはっきり確認されていますので、今後、さらに広がっていくことが期待できます。
前期の伸びは、パッケージソフトをダウンロード版でも購入できるようにしたことが伸びの大きな要因でしたが、今期は、Wii U向けの『New スーパーマリオブラザーズ U』の80以上のコースをすべて変更して新しいゲームに生まれ変わらせる『New スーパールイージ U』のような新しい形態の追加コンテンツ、あるいは、任天堂としては初めてご提案するFree to Play型のソフトなど、デジタルビジネスを拡大するためのいくつかの取り組みを順次ご提案していく予定です。
また、3月のGame Developers Conferenceで公開した、HTML5/JavaScript等のOpen系のWeb技術を活用して、Wii U向けのソフトを開発できるようにするNintendo Web Framework、ならびにWii U版のUnityの提供などの取り組みに対しては、大変良い反響があり、1,000件を超える開発者からコンタクトがありました。
高度で複雑化したゲーム専用機のソフトですが、プラットフォームとして開発者人口の拡大に取り組むための新しいアプローチとして取り組んできました。デジタルビジネスの拡大とともに、小規模な独立的開発者の皆様にもソフトウェア開発に参加いただき、ビジネスを展開する機会をご提供できると思います。