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2015年2月17日(火)第3四半期決算説明会
質疑応答
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Q 1

『amiibo』についてもう少しくわしく教えてほしい。日本と欧米ではそもそもWii Uハードの普及台数が異なるという環境の違いもあるかと思うが、対応ソフトの販売数に対する比率が大きく異なる等の地域格差はなぜ出ているのか。また、ニンテンドー3DSも『amiibo』に対応して行くことでそのポテンシャルは今後どのように変わっていくのか。収益性についても簡単にコメントしてほしい。

A 1

取締役社長 岩田 聡:

 『amiibo』の、販売数量や対応ソフト1本当たりの装着率、あるいはお客様1人当たりにお買い求めいただいている個数が地域ごとに異なるのではないかということについては、ご指摘の通りです。

 フィギュアとビデオゲームを組み合わせる遊びとしましては、4年前にアクティビジョンさんが『スカイランダーズ』というゲームを、それから2年前にディズニーさんが『ディズニーインフィニティ』というゲームを出されており、それら2タイトルが先行事例として存在しています。『amiibo』はこれら先行事例とは異なり、特定ソフトだけに対応するフィギュアではなく、複数のソフトに対応するフィギュアという位置づけで、開発中は社内でNFP(Nintendo Figurine Platform)と呼んでいました。つまり、「『amiibo』をプラットフォームにするんだ」というメッセージを社内に向けて出していたわけです。『amiibo』では「1つのフィギュアを持っているとさまざまなソフトでさまざまな楽しみがあります」ということを当社はご提案しているわけですが、実際のところ『amiibo』発売前にこのようなカテゴリーの商品の概念を、すなわち「ビデオゲーム売り場にフィギュアがあって、そのフィギュアを買って、ゲーム内でかざすと楽しいことが起こる」というようなことを認知されていたお客様の絶対数が日本と海外では大きく異なっていたと思います。海外ではこのジャンルの商品は、「Toys to Life」と、これは「おもちゃに命を吹き込む」とでも訳せば良いのでしょうか、そういうふうに呼ばれているそうですが、この「Toys to Life」カテゴリーが既に巨大市場として存在していたアメリカ、そしてアメリカほどではないにしろ、ある程度認知されていたヨーロッパ、それに対して、「Toys to Life」は日本の市場にも輸入はされましたが、大きな結果を生み出すには至っていませんでした。あるいは日本では、「フィギュア」というのはもう少し小型で、1個当たりの単価が安いものが一般的には主流とされており、事実、日本の流通関係者の方々に当初『amiibo』についてご説明したときも「これは日本向けのサイズとしてはちょっと大きくて値段も高めですね」というご指摘をいただいたことがあります。ただ、世界に巨大な市場があることが分かっていましたので、グローバルに考えるとこのサイズと値段が一番良いだろうと判断しました。今、アメリカやオーストラリアやヨーロッパで実際に『amiibo』が売れているのを手ごたえとして実感し、この判断で正しかったのではないかと思っています。従いまして、まずはこの「Toys to Life」カテゴリーの製品群の認知やそれらを使った遊びの習慣という面で日本と海外の間には非常に大きな差があり、これを解決するには一定の時間が必要ではないかと思っています。

 それからもう一つ、「『amiibo』って、何をするものなの?」ということについて、当社はまだ「お客様に十分にご理解がいただけている」とは思っていません。と申しますのも、これまでのアクティビジョンさんの『スカイランダーズ』やディズニーさんの『ディズニーインフィニティ』でのフィギュアの使い方と、『amiibo』の使い方というのは決して同一ではなく、もう少し複雑なことに、ゲームによって『amiibo』を使うことでできることが異なるのです。例えば『スマッシュブラザーズ』の場合は、プレイヤーは『amiibo』を使って「フィギュアプレイヤー(FP)」と呼ばれるキャラクターを育て、成長させたパラメーターは『amiibo』に内蔵されたNFCチップの中にどんどん蓄積され、自分独自のプレイヤーを、これは自分のライバルとしても、自分の相棒としても育てることができるのですが、『amiibo』を使って育成できます。こういった使い方は『amiibo』のユニークな使用例の一つで、これが『マリオカート8』の場合ですと特定の『amiibo』をNFCリーダーにかざすとそのキャラクターに合ったライダースーツがもらえますし、(先ほどのプレゼンテーションでご紹介しました)当社が新たに提案するファミコンやスーパーファミコンのゲームを楽しめるダウンロードソフトでは、いわばファミコンやスーパーファミコンの「ロムカセット」の代わりのように『amiibo』を使って、ソフトを切り替えていただくことになります。当社は今後もさらに違うさまざまな遊び方を提案してまいりますが、まずは、お客様に一定のご理解をいただけるように、「『amiibo』って何をするものなのかまだよく分からない」という状況を変える努力をしなければならないと考えています。そして最終的に当社は、『amiibo』を1つ持っていれば「これにかざしたらどうなるんだろう」とお客様に思っていただいて、ワクワクしながらいろいろなソフトで実際に『amiibo』をお試しいただけるような、そんなレベルまで『amiibo』の周知努力をしたいと思っています。それができれば、『amiibo』はお客様にとって所有価値のあるものに変わっていくと思いますので、是非そのように変えていきたいと思うのですが、そうできるには一定の時間を要すると考えています。アメリカで良く売れていると申しましても、『amiibo』は実際にはアメリカではほとんど無名の、全く認知されていないところから始めて、それが発売後クリスマスまでの短期間である程度まとまった量がお客様の手元に渡って認知が広がり、結果として「複数のソフトで使えるのはいいね」とみなさまに言っていただけるようになりましたので、これから対応ソフトが増えていけば『amiibo』を取り巻く環境はさらに変わっていくだろうと考えています。

 ちなみに先週、ニンテンドー3DS版の『スマッシュブラザーズ』が『amiibo』に対応するようになりましたので、そのことで『amiibo』の売れ行きが変わるかどうか、大変興味深く日本の販売状況を見ていたのですが、定番キャラクターの『amiibo』販売が少し伸びたということが確認できました。一方で、人気があるために既に品切れになってしまっているキャラクターの『amiibo』も少なからず存在していますので、前週に比べて販売数が増えたかと言いますと、これら一部キャラクターの品切れの影響も大きいため、単純に結論付けることができません。ただ、New ニンテンドー3DSが『amiibo』に対応したことで、『amiibo』対応のハードウェアの数が例えば日本ではいきなり倍近くまでに増えたのですから、影響がないはずはなく、今後ニンテンドー3DSにNFCリーダー/ライターが周辺機器として付けられるようになりますと、さらに対応ハードの普及台数が数倍へと一気に増えていきますので、そういうことを繰り返すことによって、『amiibo』を持っていることに価値があるという状況を作っていきたいと思います。

 それから『amiibo』の収益性に関するご質問についてですが、今までのところ『amiibo』はお客様にお分かりいただきやすいように同じ希望小売価格で販売させていただいていますが、現物をご覧いただくとお分かりいただけるように、製造コストは同一ではありません。造形が複雑であったり、塗り色が多かったりしますと、その分コストがかかるわけですが、「『amiibo』ごとに販売価格が違いますとまるでそのキャラクターごとに価値が違うと任天堂が考えているような誤解を与えかねない」と考え、全体として適切な収益を上げさせていただけるような価格設定にさせていただきました。先ほどカード型の『amiibo』も今後販売するというお話をしましたが、これはカード型にすることで納期を短くしたり、コストを下げたりすることによって、「『amiibo』の遊びというのをまた違う方向に広げられないか」と考えてのことで、「今のプラスチックの人形という形以外で、どんな形状のものが『amiibo』になり得るだろうか」ということについて当社開発チームは試行錯誤していますので、『amiibo』は今後さまざまな形の商品として提案されていくとお考えいただけたらと思います。

Q 2

開発組織体制の現状と、社長が理想と考えている体制にするための今後の方向性について教えてほしい。ハードウェアの開発部門を統合させたという話は以前聞いた。他のソフトメーカーさんにお聞きすると、ソフト開発はスタジオ制、プロジェクト制、ディビジョン制の3つがあるそうだが、当社は現状どういう開発組織体制となっているのか。社長が変えようと考えている方向性も差し支えない範囲で教えてほしい。

A 2

岩田:

 当社には開発本部が現在4つあります。1つはハードウェアの開発本部で、以前は携帯ゲーム機の開発チームと、ホームコンソールゲーム機の開発チームの2つに分かれて別の本部にあり、組織的な交流もそれほど多くなかったと思います。事実、かつてはそれぞれで使える技術が全然違いましたし、ホームコンソールゲーム機において最適な技術と、携帯ゲーム機において最適な技術というのは非常に距離があって、それぞれを専用にやる意味が十分に存在していました。ただ、最近は技術の変化によって、両者の技術はどんどん近づいています。また、今の世の中の環境が求める事情からしますと、「ホームコンソールゲーム機だから電気をいくらでも使ってもよい」ということにはなりませんので、私たちはWiiの頃から「どうやって消費電力を下げるか」ということに熱心に取り組んできました。また、Wii U GamePadには、画面があって、電池があって、操作系があって、無線(モジュール)が埋まっていて、という点で、技術的に言いますと携帯ゲーム機をつくるノウハウに非常に近いものがあります。そのようなことから、ハード開発部門の一体化には以前から取り組んでいて、2年前から動き出していました。「同じ組織にしただけですぐに融合するか」といいますとそうではありませんので、時間をかけて融合を進めており、最近はその融合がかなり進んだ手ごたえがあります。ハードウェアの開発本部は当社専務の竹田が担当しています。

 ソフトウェアの開発本部は2つあります。専務の宮本が見ている情報開発本部と、以前は私が見ていたのですが、今は取締役の高橋伸也が見ている企画開発本部の2つです。情報開発本部は主に内作ソフトを、企画開発本部は内作ソフトもやっていますが、主にセカンドパーティーさんと一緒に開発をしています。これは1人で見るには範囲が広過ぎるため2つに分けています。「この2つの本部の連携がいかにうまくとれて、今、任天堂がつくらなければいけないソフトをどういう分担で、どれは内部でつくり、どれは外部でつくり、あるいは内部で開発できるリソースをどう融通し合うか」といったことが、この2年間、ハード開発本部の統合と一緒に進めてきたことで、これがかなり進んできたという段階にあります。また、2004年当時に企画開発本部を立ち上げたときの私の考えは、「宮本の担当からセカンドパーティーさんと一緒に開発するチームを外して、内作に集中してもらおう」というもので、それからずっと私がその本部を見ていたのですが、(任せられる人材が育ったことで)私の担当から外すことができましたので、その意味では、しっかりと跡を継いでくれる人が見つかって一歩前進したと思います。

 最後の一つがシステム開発本部で、現在私が担当している本部です。ここでは、ネットワークや本体のシステムソフト、OS、SDK(ソフト開発キット)、ライブラリーなど、ソフトウェア開発の土台をつくる部分を担当しています。私がプログラマー出身の唯一の取締役であるということもあって、今は私が見ているのですが、次のステップとして、このシステム開発本部も適任者に委ねて、自分はより社長業にエネルギーを注げるようにしたいと思います。「私が開発出身者として任天堂のものづくりに何らかの形で今後も関わり続けること」は変わらないと思いますが、そのことと「どこかの開発本部を自分が担当しなければいけない」ということはイコールだとは思っていませんので、適切な人にそれを委ねていこうと思います。

 一番重要なのは、「これらの本部がいかにうまくかみ合って連携するか」ということです。本部ごとに価値観が違ったり、目指しているものが違ったりすると、行動がチグハグになって、典型的な大企業病になってしまいます。昨年6月に、本社から歩いて5分ぐらいのところに、開発棟が竣工して、全ての開発部門を1つの建物に集約することができました。それにより、今までと比べますと、互いに打ち合わせをするとか、本部をまたいだプロジェクトをどこかに場所を作って、集まって一緒にやろうということができるようになりました。働く環境についても、投資に見合った非常に大きな改善をすることができたという手ごたえがあります。本部は4つありますが、任天堂は1つですし、お客様からご覧になると、どこの本部から出ようがアウトプットは任天堂が出したものであり、その意味では、本部というのはあくまで管理上の役割分担であって、それら本部間の連携を良くすることによって、いかにそれらの本部を一塊に動かしていくかが重要となります。そのような意味では、スタジオ制でもプロジェクト制でもディビジョン制でもないのですが、「部門を横断し、部門を越えて人が集まって、お客様に満足いただける体験をつくる」という点で言いますとプロジェクト型と言えるかもしれません。特に昨今のゲームを取り巻く環境においては、「任天堂が高くご評価いただけるものをつくったら(それだけで)売れる」という時代でもありませんので、「触っていく一連の過程でどこにもストレスが感じられなくて、自然に中身が理解できて、魅力は一目で伝わりやすい」というものを私たちはつくらなければなりません。このようにハードルが上がったと考えていますので、そのようなものをつくるためには、事情の違ういろいろな立場や役割の人がいかに1つの共通の目標を持って動くかということが大事になってくると思います。そのようなことの中に『amiibo』の生まれの成り立ちであるとか、今進行中のスマートデバイスへの取り組みであるとかも全部含まれていますので、新しい取り組みというのは基本的にそのような形で進んでいるとお考えください。

 それから、少しだけ特殊なのが、QOL(Quality of Life)のプロジェクトです。新しい事業、新しいビジネスモデルをつくることになりますので、QOL事業開発部という独立したチームを作りました。いわば恒常的なプロジェクトチームとして部門ができたと考えていただければと思います。4本部から人が集まっているのですが、それらの本部とは別に、その組織は私にダイレクトにレポートする形で進んでいます。開発組織について今お話しできるのはこれくらいかと思います。

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