はじめまして、シナリオライターの葉月陽と申します。
初報より長らくおまたせしてきました『幻影異聞録♯FE』、いよいよ来週発売となります。
思えば企画の立ち上げ時はこんな話になるとは考えもしませんでした。
そこで今回はどのような経緯で現在のスタイルになったのかをシナリオの立場から……
忘れていることも多いですが、お話できればと思います。
まず、キャラクターの活かしかたですが、
当然「マルスやシーダがこちらの世界に転生した」というアイデアが出ます。
ですが、それではただの「現代版ファイアーエムブレム」でしかないから却下。
次に出るのは「こちらの世界にやってきたマルスやシーダと戦う」というアイデア。
これについては「マルスたちは正義側なので敵対は任天堂的にNG」というもっともな回答が……
そして何よりアトラスとしてはバトル以外の日常生活も描きたい。
ならば「敵の侵略は一般人には見えない」ことにすれば、基本的な日常は守られます。
このようにして、枝葉のように存在する可能性から、世界観の要素となるものを剪定していきます。
またこちらも当然なことですが、アトラス的な神話オカルトの解釈も入れたい。
色々な方面からアイデアを持ち寄った結果、
シャーマニズムから「神降ろし」を使うことにしました。
ファイアーエムブレムの英雄たちの力を、その身に宿し、戦う力とする……
と考えればこの設定が使えます。
すると、神楽→能→芸能、と連鎖的につながり、
主人公たちには芸能の力が必要であるという結論に至りました。
特にRPGとは「役割を演じる遊び」なので、自分が普段はできないことを、
代わって演じられるという楽しみがあります。
役者など、演じることで人々を魅了するお仕事の芸能界に触れてみるというのは、
RPGというジャンルと親和性が高いと言えます。
しかし「今日から君はアイドルです」と言われても感情移入できないので
「君はそのままだけど、知り合いは全員芸能人」という設定にしました。
自分がそうでなくても、仲間が芸能界で悩み成長する姿を手助けすれば、
違和感なく芸能界に触れることができると考え、主人公である「蒼井樹」君が生まれました。
このようにさまざまな条件を加味して、シナリオは作られていきます。
ゲームのシナリオはシナリオの都合だけでできあがることは、まずありません。
バトルや成長など複数のシステムを繋ぐ接着剤のようなものなので、
システム間の隙間を違和感なく埋める必要があります。
ですので、バトルや成長システム、マップギミックに変更がかかるとその差を埋めるために
シナリオにも修正が入ったりします。
このようにシステムがシナリオへ影響するものなのです。
それをどのような物語に昇華させるかがライターの腕の見せどころ。
その成果は来週発売の本作をプレイしていただければと思います。
そういえば、逆にシナリオ側から生まれたシステムもあります。
それがゲームパッドの液晶画面にSNSのような機能をもたせた“TOPIC”です。
今の社会にはスマートフォンがあり、離れていても情報共有ができて当たり前です。
現代を描くためのツールとして生み出しましたが、これの存在は結構お気に入りです。
別の場所にいる仲間から事件を知らされたりとなかなかリアルな使いかたをしています。
ほかに難しかったのがミラージュの選定です。
数あるファイアーエムブレムシリーズのキャラクターのうち
“誰を登場させるか”は最後まで検討に検討を重ねました。
バトルの関係から求められる兵種、過去の人気投票、
今回のキャラクタードラマなどを総合して選ぶことになるのだから当然です。
候補にはたくさんの英雄の名前があがりましたが
「彼らをパートナーとした芸能人とのドラマを描く」という観点から今回の人選となっています。
彼らがどう活きるのかは……キャラクタードラマの話に譲りたいと思います。
ではどうぞ!
(ここで葉月から宮内へバトンタッチ!)
譲られました!
はじめまして、宮内誠と申します。
『幻影異聞録♯FE』では主にキャラクタードラマ、
つまりサイドストーリーのシナリオを担当させていただきました。
自分がチームに参加した頃には、前半で葉月が書いているような
「土台」の部分はできあがりつつありました。
その時、自分に課せられた役割は主に
「そこに生きる魅力的なキャラクターたちを創造すること」でした。
意気込んで事にあたったのは良かったのですが、今回の登場人物はみんな芸能人。
当然、一筋縄ではいきませんでした。
サイドストーリーを設計するにあたって、
まずはキャラクターが抱く悩みや、欠落した部分を設定するところから始まりました。
しかし設定作業は難航し、芸能人が抱く悩みとは一体なんだ?
どうすれば彼ら芸能人に共感できるのか?
そもそも彼らはどんな芸能人なんだ? と考えることは山積みで、
シナリオチーム一同、毎日会議室に詰め、頭を抱えているという有様でした。
そこで、芸能界や芸能人についてのインスピレーションを得るために、
avexさんによるリアル芸能界取材ツアーに連れて行っていただいたり(仕事です)、
たくさんの音楽を聴き込んだり(仕事です)、
古今東西の名作映画や舞台のDVDを鑑賞したり(仕事です)、と
多くのエンターテイメントに接したことを覚えています。
最終的には、芸能に一家言持つ平田ディレクターの熱いアイデアや、デザイン側からの
アプローチもあって、「サイド」とは名ばかりの、「笑いあり、涙あり、遊びあり」な、
かなり盛りだくさんな仕上がりになったと思います。
もう1つ、キャラクタードラマを完成させるにあたって、忘れてはならない存在があります。
それはシナリオに、文字通り命を「吹き込む」声優さんたちです。
自分はスタジオでの収録にも立ち会ったのですが、
膨大な量のシナリオに次々と、しかも高いクォリティで声を吹き込んでいく、
その職人技にただただ圧倒されました。
収録の過程で、「想定していた演技とは違うが、これもアリ…いやむしろこっちのほうがいい!」
そう思うことが何度もありました。
このような体験ができるのも、多くの人が関わるゲーム製作現場ならではの醍醐味だと思います。
声優さんたちのパフォーマが光り輝く、魅力的で個性的なキャラクターボイスにもご期待ください。
このように、『幻影異聞録♯FE』のシナリオは、スタッフ一同の熱意や愛、
その他煮詰められた濃厚な何かで作られています。
是非ソフトをお手にとって、それらをご堪能いただければ幸いです。
年末年始は、華やかな芸能界に生きる若者(一部除く)たちとの
キャッキャでウフフな芸能ライフを……!
最後にこのゲームの中での個人的イチオシセリフを貼って、お別れさせていただきたいと思います。
※温厚な彼女がどうしてキレッキレなのかは、本編をプレイして確かめてみてください。
マイユニの結婚相手はいつもノノ…宮内でした。
初報より長らくおまたせしてきました『幻影異聞録♯FE』、いよいよ来週発売となります。
思えば企画の立ち上げ時はこんな話になるとは考えもしませんでした。
そこで今回はどのような経緯で現在のスタイルになったのかをシナリオの立場から……
忘れていることも多いですが、お話できればと思います。
まず、キャラクターの活かしかたですが、
当然「マルスやシーダがこちらの世界に転生した」というアイデアが出ます。
ですが、それではただの「現代版ファイアーエムブレム」でしかないから却下。
次に出るのは「こちらの世界にやってきたマルスやシーダと戦う」というアイデア。
これについては「マルスたちは正義側なので敵対は任天堂的にNG」というもっともな回答が……
そして何よりアトラスとしてはバトル以外の日常生活も描きたい。
ならば「敵の侵略は一般人には見えない」ことにすれば、基本的な日常は守られます。
このようにして、枝葉のように存在する可能性から、世界観の要素となるものを剪定していきます。
またこちらも当然なことですが、アトラス的な神話オカルトの解釈も入れたい。
色々な方面からアイデアを持ち寄った結果、
シャーマニズムから「神降ろし」を使うことにしました。
ファイアーエムブレムの英雄たちの力を、その身に宿し、戦う力とする……
と考えればこの設定が使えます。
すると、神楽→能→芸能、と連鎖的につながり、
主人公たちには芸能の力が必要であるという結論に至りました。
特にRPGとは「役割を演じる遊び」なので、自分が普段はできないことを、
代わって演じられるという楽しみがあります。
役者など、演じることで人々を魅了するお仕事の芸能界に触れてみるというのは、
RPGというジャンルと親和性が高いと言えます。
しかし「今日から君はアイドルです」と言われても感情移入できないので
「君はそのままだけど、知り合いは全員芸能人」という設定にしました。
自分がそうでなくても、仲間が芸能界で悩み成長する姿を手助けすれば、
違和感なく芸能界に触れることができると考え、主人公である「蒼井樹」君が生まれました。
このようにさまざまな条件を加味して、シナリオは作られていきます。
ゲームのシナリオはシナリオの都合だけでできあがることは、まずありません。
バトルや成長など複数のシステムを繋ぐ接着剤のようなものなので、
システム間の隙間を違和感なく埋める必要があります。
ですので、バトルや成長システム、マップギミックに変更がかかるとその差を埋めるために
シナリオにも修正が入ったりします。
このようにシステムがシナリオへ影響するものなのです。
それをどのような物語に昇華させるかがライターの腕の見せどころ。
その成果は来週発売の本作をプレイしていただければと思います。
そういえば、逆にシナリオ側から生まれたシステムもあります。
それがゲームパッドの液晶画面にSNSのような機能をもたせた“TOPIC”です。
今の社会にはスマートフォンがあり、離れていても情報共有ができて当たり前です。
現代を描くためのツールとして生み出しましたが、これの存在は結構お気に入りです。
別の場所にいる仲間から事件を知らされたりとなかなかリアルな使いかたをしています。
ほかに難しかったのがミラージュの選定です。
数あるファイアーエムブレムシリーズのキャラクターのうち
“誰を登場させるか”は最後まで検討に検討を重ねました。
バトルの関係から求められる兵種、過去の人気投票、
今回のキャラクタードラマなどを総合して選ぶことになるのだから当然です。
候補にはたくさんの英雄の名前があがりましたが
「彼らをパートナーとした芸能人とのドラマを描く」という観点から今回の人選となっています。
彼らがどう活きるのかは……キャラクタードラマの話に譲りたいと思います。
ではどうぞ!
(ここで葉月から宮内へバトンタッチ!)
譲られました!
はじめまして、宮内誠と申します。
『幻影異聞録♯FE』では主にキャラクタードラマ、
つまりサイドストーリーのシナリオを担当させていただきました。
自分がチームに参加した頃には、前半で葉月が書いているような
「土台」の部分はできあがりつつありました。
その時、自分に課せられた役割は主に
「そこに生きる魅力的なキャラクターたちを創造すること」でした。
意気込んで事にあたったのは良かったのですが、今回の登場人物はみんな芸能人。
当然、一筋縄ではいきませんでした。
サイドストーリーを設計するにあたって、
まずはキャラクターが抱く悩みや、欠落した部分を設定するところから始まりました。
しかし設定作業は難航し、芸能人が抱く悩みとは一体なんだ?
どうすれば彼ら芸能人に共感できるのか?
そもそも彼らはどんな芸能人なんだ? と考えることは山積みで、
シナリオチーム一同、毎日会議室に詰め、頭を抱えているという有様でした。
そこで、芸能界や芸能人についてのインスピレーションを得るために、
avexさんによるリアル芸能界取材ツアーに連れて行っていただいたり(仕事です)、
たくさんの音楽を聴き込んだり(仕事です)、
古今東西の名作映画や舞台のDVDを鑑賞したり(仕事です)、と
多くのエンターテイメントに接したことを覚えています。
最終的には、芸能に一家言持つ平田ディレクターの熱いアイデアや、デザイン側からの
アプローチもあって、「サイド」とは名ばかりの、「笑いあり、涙あり、遊びあり」な、
かなり盛りだくさんな仕上がりになったと思います。
もう1つ、キャラクタードラマを完成させるにあたって、忘れてはならない存在があります。
それはシナリオに、文字通り命を「吹き込む」声優さんたちです。
自分はスタジオでの収録にも立ち会ったのですが、
膨大な量のシナリオに次々と、しかも高いクォリティで声を吹き込んでいく、
その職人技にただただ圧倒されました。
収録の過程で、「想定していた演技とは違うが、これもアリ…いやむしろこっちのほうがいい!」
そう思うことが何度もありました。
このような体験ができるのも、多くの人が関わるゲーム製作現場ならではの醍醐味だと思います。
声優さんたちのパフォーマが光り輝く、魅力的で個性的なキャラクターボイスにもご期待ください。
このように、『幻影異聞録♯FE』のシナリオは、スタッフ一同の熱意や愛、
その他煮詰められた濃厚な何かで作られています。
是非ソフトをお手にとって、それらをご堪能いただければ幸いです。
年末年始は、華やかな芸能界に生きる若者(一部除く)たちとの
キャッキャでウフフな芸能ライフを……!
最後にこのゲームの中での個人的イチオシセリフを貼って、お別れさせていただきたいと思います。
※温厚な彼女がどうしてキレッキレなのかは、本編をプレイして確かめてみてください。
マイユニの結婚相手はいつもノノ…宮内でした。