ゲーム機が何台売れたのか、ということについては、世界中にさまざまな市場調査データがあります。しかし、ゲーム機のお客様の年齢や性別の構成は、販売データだけではわかりません。また、1台のゲーム機は複数のお客様により共有されていますので、購入したお客様の年齢や性別を調べるだけでは、実際のユーザー人口の推移がわかりません。そこで、私たちは、まず日本の市場で2005年5月より年に2回、東京と大阪で3,000人規模の面接調査を行い、ゲームをプレイしているお客様の数、以前は遊んでおられたけれど今は遊んでおられないお客様の数、ゲームに触れたことのないお客様の数を推定したり、ゲーム機毎のユーザー人口を調べることで、私たちの「ゲーム人口拡大(戦略)」の進捗を確認してきました。
海外市場については、このような取り組みは少し遅れましたが、アメリカでは業界を代表する調査会社である Mediamark Research & Intelligence 社に依頼をすることで、2007年より合計3回の調査を行ってきました。ここでは、全米の生活者の方を無作為にサンプリングして電話で調査へのご協力をお願いし、承諾いただいた方に調査票を郵送でお送りし、最終的に4,500人以上の方から回答をいただくことで調査を行っています。
このゲーム人口調査において、任天堂は、お客様を3種類に分類しています。まず、過去1年以内に家庭用ゲーム機、これは、任天堂のゲーム機だけでなく、他社さんのゲーム機も含みますが、何かでプレイされた経験のある人を、アクティブユーザーと定義しています。このようなお客様をこれからのグラフでは青色で表します。次に、かつて家庭用ゲーム機で遊んだ経験をお持ちでも、過去1年間は遊んでおられないお客様を、スリープユーザーと定義しています。これらのお客様が増えてしまったことが、いわゆる「ゲーム離れ」現象を生み出していたと考えられます。このようなお客様をこれからのグラフでは黄色で表します。最後に、これまで家庭用ゲーム機で遊んだ経験を全くお持ちでないお客様を、ノンユーザーと定義し、ピンク色で表します。
任天堂が目指す「ゲーム人口拡大」は、この青いアクティブユーザーを増えるようにする取り組みと言い替えることもできます。
これは、今年1月の日本の調査で、日本のゲーム人口構成を表したものです。上が男性、下が女性、一番左が7歳、一番右が74歳です。当初2回の調査では、7歳から64歳で行っていたのですが、「5歳から95歳まで」というスローガンを掲げる会社が、64歳までしか調べないのでは十分ではないだろう、という判断で、2006年の5月からは、74歳までの方に調査にご協力いただいています。
年齢が低いほどゲーム参加率が高く、年齢が高いほどゲームで遊ぶことから離れたり、全くゲームで遊ばれたことのない方が増えていくことが一目でおわかりいただけると思います。
では、時系列で見てみましょう。最初の調査は2005年5月、ちょうど『脳トレ』が発売された頃でした。翌年の頭には、スリープユーザーが少し減り、ゲームから離れておられたお客様が再びゲームに参加していただけるような流れができたことがわかります。2006年5月のタイミングで一度ノンユーザーが増えていますが、これは、ここから調査対象の範囲を74歳にまで広げたためです。このタイミングはDS Lite発売の少し後で、実際にはこの時期には64歳までのところだけで比較するとゲーム人口は約600万人ほど大きく増えています。そして、2007年1月、これはWiiの発売直後にあたりますが、劇的にアクティブユーザー比率、すなわちゲーム人口比率が高まっています。実数としては、ゲーム人口はこの時期、半年で一気に900万人ほど増えています。この頃に、ノンユーザーが大きく減り、ゲームに全くご縁のなかったお客様がビデオゲームを遊んで下さる流れができました。そして、その後一度少しゲーム人口比率が下がってしまうのですが、直近の3回は、ほぼ同レベルのゲーム人口比率を維持しています。ちなみに、一番最初の調査と同じ64歳までの範囲で集計すると、直近のゲーム人口比率は56%となり、最初の35%と比較すると20%以上高まっています。この調査結果は、おそらく、みなさんの周囲でいろいろな方がどのようにゲームに触れられるようになったかという実感と噛み合うのではないでしょうか?
では、アメリカはどうでしょうか?
これは、今年1月〜3月にかけてアメリカで調べた、アメリカのゲーム人口構成を表したものです。調査票を郵送しますので、日本の面接調査と違って時間を要しますので、期間が3ヶ月にわたっています。日本と同じく、上が男性、下が女性で、左から右にいくほど高い年齢のデータになります。一番左が日本と違い6歳から、一番右が日本と同じく74歳です。まず、一目で感じることですが、アメリカでは黄色いスリープユーザーが非常に少ない、すなわちゲームから離れてしまうお客様が少ないということが挙げられます。
これが過去3回の調査によるゲーム人口比率の推移です。調査対象となっている6歳から74歳まで全年齢を対象にしています。
アメリカは調査開始が遅かったことや、もともと、ゲーム離れ現象が表面化していなかったことなどから、最初からゲーム人口比率が高かったのですが、まず最初にスリープユーザーがアクティブユーザーに戻る流れがあり、そして、最終的にノンユーザーがアクティブユーザーに変わるという、日本で起きたのと同じような推移がこの1年半ほどの間に起こっています。ゲーム人口は約3,000万人増えて、ゲーム人口比率は短期間で急激に高まっていることがおわかりいただけることと思います。この青色のアクティブユーザーの部分を、DSやWiiを遊ばれているお客様と、そうでない部分に分離すると、
このようになります。ご覧のように、DSやWiiを楽しんでいただいているお客様の割合は、急激に拡大しており、先ほどお見せしたアメリカの市場規模の推移は、ここで示されるゲーム人口の拡大に支えられていることがはっきりと読み取れます。
また、ゲーム人口拡大に伴い、ゲームを楽しまれる方の年齢層が広がりましたが、調査対象の中から35歳以上のお客様だけを選んで集計するとこのようになります。35歳以上でビデオゲームで遊ばれる方はこの期間に約50%増えたことになります。同じ期間に6歳から74歳のゲーム人口の増加は、約26%ほどですから、35歳以上の年齢層のお客様のゲーム参加率は、市場全体以上に高まっているわけです。
そして、これは過去3回の調査によるアクティブユーザーに占める女性比率の推移です。ゲーム人口が拡大するにしたがい、女性比率が向上していることもおわかりいただけると思います。
ビデオゲームはかつて、「子供さんと若い男性中心の娯楽」という認識が主流でしたが、ゲーム人口拡大の前進と共に、これは過去のものになりつつあります。ちなみに、DSやWiiのお客様だけを取り出すと、アメリカでも女性比率は49%となり、ほぼ男女比が1:1という状況に到達しています。
そしてこの3回の調査の間に、ニンテンドーDSやWiiのお客様の数が劇的に拡大しました。日本では、ニンテンドーDSの普及の過程でゲーム人口が大きく拡大しましたが、アメリカではWiiのお客様の数が短期間で一気にDSのお客様の数を追い抜き、このWiiの普及でゲーム人口が大きく拡大していると言えます。