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2009年5月8日(金)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

同じように、イギリス、ドイツ、フランスの、各暦年の第1四半期、すなわち1月から3月のデータだけを取り出したグラフを作りましたのでご覧ください。2007年の第1四半期はDSが猛烈に売れ始めた時期、2008年の第1四半期はそれに加えてWiiの市場拡大が進んだ時期にあたりますが、残念ながら今年は市場全体は前年実績を割り込んでいます。


この状況の中でも、任天堂プラットフォームの市場シェアは50%以上と昨年と同じ水準を維持していますが、アメリカと異なり、任天堂プラットフォームの市場規模も前年を下回る状況となっています。


これは、今年に入ってからの各週の携帯型ハードの販売の推移を各国の調査会社のデータを元に任天堂で集計したものですが、年の頭こそ良い出足であったDSも、2月、3月は前年実績を大きく割り込んでいました。これが、今年の1〜3月の市場規模が前年実績を割り込んでいる要因のひとつです。また、4月にはDSiの発売を控えていたという事情もありました。直近では、ヨーロッパでも4月頭にDSiが発売されましたので、4月は前年を大幅に上回る状況になっており、年が明けてからの累計のハード販売数は、前年の販売ペースを上回るところまで勢いは回復しています。


しかしその一方で、Wiiについては、3月以降前年実績を割り込んだまま、今もその流れが続いています。特に昨年4月には『マリオカートWii』や『Wii Fit』を共に発売しており、このころからWiiハードの増産が軌道に乗ったこともあって、昨年の実績は非常に高い水準となっており、アメリカと同じく、今年の販売実績は、前年を下回る状況が今しばらく続くものと思われます。今年はハードを牽引するソフトの展開は夏以降に予定していますので、ヨーロッパにおいても、今年のWiiハードの販売は、より年末商戦期に集中することになると見込んでいます。

このように、年が明けてからは、海外でも一本調子の市場拡大が続くという状況にはなっていませんので、こうなると、このような分析をする方が出てきます。それは、


日本の市場は海外市場の先行指標になるのでは?という予想です。


具体的にこの論拠となっているのは、
DSの爆発的な普及は、まず日本で先行し、それが遅れてヨーロッパに波及して、最終的にアメリカに波及した。

ゲーム人口拡大で大きな役割を果たした、『nintendogs』や『脳トレ』、『Wii Fit』などのTouch! Generations系ソフトは、日本で先行してヒットした後、時間をおいてアメリカやヨーロッパに展開され、それがヒットすることで、ゲーム人口の拡大が海外市場に波及した。

最近では、『レイトン教授』のソフトが、セルスルーベースで、ヨーロッパで累計110万本以上売れ、あるいはアメリカでも販売が50万本以上に伸びているなど、同じパターンで売れている。というような現象から、「日本市場は、海外市場の将来を占う先行指標になる」という見方が強まっているということです。

そして、そのことを根拠に、


先行指標となる日本市場でDSやWiiの勢いが弱まっているのだから、近い将来、アメリカやヨーロッパでも同じことが起こるのではないか、という分析をされるアナリストの方がいらっしゃったり、そういう考え方に基づく記事が報道されたりするようになりました。確かに、日本の市場は、情報が早く伝わり、かつ、お客様の「飽き」による変化が世界でも最も早く現れる、逆に言えば勢いを維持することが世界でも最も難しい市場のひとつだと、私たちも認識していますし、私たちの日本市場への対応にいくつか課題があることも事実です。DSについては、昨年末のDSiの発売で勢いをある程度取り戻すことが出来ていますが、日本市場でWiiの勢いがいったん失われ、海外ではまだWiiの販売数は高い水準にあるものの、前年実績を下回るというような、ここしばらく見られなかった状況が現れ始める中で、このような主張は一見説得力を持っているようにも感じられます。しかし、私たちは、単純に日本を先行指標として分析することは、ミスリードにもなりかねない危うさもあると感じています。また、そうではない未来を切りひらくのが我々の使命なのだという意志も持っています。


まず、日本市場は先行指標との分析への最も単純な反証として、「Wii市場は、DS市場と異なり、世界同時に立ち上がった」ということがあります。Wiiについては、日本が先行して立ち上がったという事実はありませんし、現時点での人口対普及率も日本とアメリカでほぼ同等の6%強になっています。常に、日本が市場変化を先取りするという分析は、必ずしも正しくはないわけです。


そして、これはこれまでもお話ししてきたことですが、日本と海外の市場では、DSの人口対普及台数が大きく異なります。


これは、2009年3月末でのDSの普及台数と人口の比率を表したものです。日本は5人に一人を超えるところまで普及していますが、アメリカもヨーロッパもまだ10人に一人にも到達していないのです。人口対普及率が遙かに高い水準にある日本でも、DSの販売はまだ順調に伸びているわけですから、海外には、まだ大きな普及の余地があるということが言えると思います。



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