4 | Wi-Fiスポットの増加に熱心に取り組んでいるが、この辺の日本の展開および海外はどうしていくのかを教えてほしい。 |
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岩田: 「ニンテンドーゾーン」という名称で、昨年6月にマクドナルドさんの全国の店舗にDSをお持ちいただくと、特別な設定をしなくてもDSが(Wi-Fiに)つながるようになりました。無線の設定というのは、ご自宅にワイヤレスルーターがあっても難しい場合が多く、特にご自身でワイヤレスルーターを設定されておられずにパソコンを買ったりインターネットを導入された時に「業者さんにお願いをしてつないでもらった」という場合には「SSIDって何?」とか、「パスワードって何だかよく分からない」とかいうようなことで結構つながらなかったりするんですね。このように、ご自宅にある無線につないでいただくというのは実は意外と難しいんです。 ところが、携帯型のDSはどこにでも持っていけるし、持っていって使っていただければDSそのものの稼働率も上がっていって、いろいろな意味でプラスの波及効果があるということで、これはマクドナルドさんとわれわれでお互いにメリットがあるということになりましたので、マクドナルドさんとの協業で「ニンテンドーゾーン」というのをスタートしました。 ただ、「ニンテンドーゾーン」の仕組み自体はマクドナルドさん以外では一切できないということではないので、私たちはDSを持っていったら特別な設定をしなくてもインターネットに接続ができるという場所がもっと増えれば、お客様が実際にそういう体験をもっとしていただけるだろうと感じていますので、これからも展開先を増やしていきたいと思っています。現実に、非常に大規模な可能性からローカルなロケーションまで、非常にダイナミックレンジの広いお話を私どもにいただいていますので、いろいろな準備・検討・実験をしていまして、その中には恐らく、また私どもから発表ができるようなことも出てくると思います。 また、「ニンテンドーゾーン」は日本先行でスタートしましたが、「アメリカやヨーロッパはやらないのか?」ということに関して言えば、「アメリカやヨーロッパにもその可能性がある」と思っていまして、「現実に、具体的にこんなパートナーとお話をしています」ということは、現在進行中ですので、まだ今日の時点でお話できませんけれども、可能性がある複数の相手先さんと具体的にお話をするところまで来ておりますので、恐らく何らかの前進を皆さんにいずれお話できるのではないかと思います。とにかく、外にワイヤレススポットを整備することの価値は、お客様が特別な設定をしなくても「持っていけばつながる」という状況を作れることで、これが家庭におけるワイヤレスルーターの普及とまたちょっと違うところがあります。つなげたときのメリットも含めていろんな方に体験していただくことが大事ですし、ほかの人が体験しているのを周りの人に見ていただくことも大事だと思います。 |
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昨年の10月、11月は気をもんだが、12月に(商品の売れ行きに)火がついて、改めて岩田さんの読みの正しさに賛辞をお送りしたい。ただこの火がロウソクの火なのかガスバーナーの火のようになるかは、今後のラインアップ次第とも思える。年末商戦向けのソフトは「E3請うご期待」というところで、察するに年前半というのは先ほどの『New スーパーマリオブラザーズ Wii』、『Wii Fit Plus』、『Wii Sports Resort』で引っ張って年後半勝負というふうに聞こえなくもないが、暦年の前半、後半でどういう戦略を練っているのか。 それから、前回の説明会で岩田社長が「キンドルに興味がある」というお話があったと思うが、市販されている『フリー』(クリス・アンダーソン著)という本を読んでいて、恐らく御社のポリシーとしては「価格に見合った価値を提供するんだ」ということだと思うが、SNSや不正コピーの対策ということも念頭に置いた上で『フリー』のモデルのビジネスとしての可能性についてどのように考えているのか。今回新興国市場に関するご発言がなくて、むしろ先進国だというメッセージもあったので、そこも併せてお聞きしたい。 |
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岩田: 実際のところ、10月、11月は私も気をもみました。(気を)もまない社長がいたらおかしいです。といいますのは、やはり「11月も中旬になればもっと反応があるはずだ」という期待があったわけです。われわれはやるべきことをやり、商品のお客様の満足度も決して低くないことも分かっていました。それなのに、週販が例年のパターンで上がらないということで、これは率直に申し上げて、「すべてが計算どおりだった」なんてごう慢なことを申し上げるつもりは全くなくて、気をもみました。結果から言いますと、「お客様は急ぐ理由がない時はこう行動されるのか」ということを改めて学んだという感じがします。具体的に言いますと、2007年、2008年、恐らくアメリカ、ヨーロッパの市場で起こっていたことというのは、「早いうちに買わないとDSやWiiは肝心な時に品切れしてしまう」と多くの方が思われ、また経済のムードも今ほど悪くない状況の中で、お客様が買うという判断をしやすかったと思うんです。それが2009年の場合は、「(品切れの心配はないから)お得なディール(取引条件)が出るまで待とう」ということになりました。結果的には、幸運にも任天堂の商品を選んでいただけた方が非常に多かったと思います。それは、「選んでいただけるように準備をしていたからこそできた」とも言えますし、一方で「紙一重のところで私たちに追い風が吹いたにすぎない」とも思います。 ただ一方で、「ロウソクの最後の火」というような意識は全く持っておりませんで、われわれ自身、どういう条件がそろうとお客様が「買おう」という判断をされるのか、決断ができるのかということを改めて今回学びましたので、そのことに対して温度が冷えないように努力したいと思います。また、先ほども申し上げましたが、昨年の頭の時点でのWiiソフト市場のムードと、今年の頭の時点でのWiiソフト市場のムードというのは全く違いますし、『New スーパーマリオブラザーズ Wii』は短期間に1,000万本以上売れましたが、年が明けてからガクっと失速しているわけではなくて非常にいいペースで今も売れております。これは日本、アメリカ、ヨーロッパ共通の傾向ですから、まずこのポテンシャルをしっかり引き出すことができれば、まだまだ多くのお客様に受け入れていただけるはずだと思っています。例えば、日本は1,000万台弱のWiiに対して300万本以上の『Newマリオ』が売れているわけです。一方で、12月末時点でアメリカの『Newマリオ』の販売数というのは、NPDの発表で420万本だったと記憶しているんですが、Wii本体の販売数は日本の3倍近くあって2,700万台くらいあるわけです。アメリカの420万本は素晴らしい結果ですが、日本の(ハードに対する販売)比率で比べたら「まだ全然じゃないか」とも言えるわけで、するとまだ相当上積みの余地があるわけです。そしてそういうことが社会の話題になって常に周りで『Newマリオ』を楽しんでいるという声が聞こえていれば、Wiiにちょっと興味があった人に「やっぱり買おうかな」という気持ちになっていただきやすいわけで、そういう状況をどう冷やさず作るか、ということなんだと思います。 ちなみに今日お話ししたラインアップの中には、年の後半に出るものと年の前半に出るものが混ざっていて、「発売月は何月です」と申し上げられればいいんですが、現在最終調整中です。今日お話ししたものが全部年の後半にならないと出てこないというわけではありません。当然私たちも市場を冷やさないように、去年のように年の後半になってから(主軸タイトルを)3つ出して、それで再加速するというようなやり方が本来スマートだとは全く思いません。むしろ、バランスよく配置してバランスよく勢いを維持していくことが必要だと思っています。 それから、「(アマゾンさんの)キンドルに興味がある」と申し上げたのは、「キンドルという機械が3G携帯電話のネットワークを使っていながら、お客様が直接(携帯電話の)通信キャリアさんにお金を払うモデルではないことを実現しているというところに興味がある」という意味で申し上げました。確かに、携帯電話のネットワークを使えば、お客様に常に(インターネットに)接続した状態のデバイスをお渡しできるわけで、今では3Gのモジュールというのはそれほど高くなく買えますから、製造原価そのものは、それはあまり大きな問題ではなくなってきているんですね。ところが、今のところ3Gのネットワークというのは、世界中の通信キャリアさんがものすごい巨額の設備投資をされていて、それを使わせていただかない限りは使えないわけです。すると、お客様は恐らく毎月何千円かのお金を払わないとたくさんのパケット通信を使えないのですが、「このゲーム機を買ったら向こう2年間毎月5,000円払ってください」というようなゲーム機の売り方は、私は成立するとは思えません。だから、アマゾンさんがうまくビジネスモデルを組み立てたように、やり方の発明がないと無理があります。現実には、キンドルは(電子書籍という)比較的コンパクトなサイズのものをダウンロードするということに特化しているのであのモデルが成立しているのですが、例えばWi-Fi通信の対戦ゲームを延々とパケットを使って通信してもお客様がお金を払わないですむ方法は、今のところ何がしかの大きなイノベーションが生まれない限りは実現不可能なわけです。その意味で、今日明日に実現できることではないんですけれども、そういう意味でキンドルに興味があると申し上げました。 それから『フリー』という本についてです。『フリー』は私も読みました。いろんなものがデジタルの世界ではタダに近づいていくのだということで、『フリー』に書いてあることについてはいろいろな賛否両論があって、『ティッピング・ポイント』という本を書いたマルコム・グラッドウェルさんが『フリー』に対する反論をインターネット上に自身で発表されたように、「本当にこの通りいくのか、そうは思えない」という意見もある一方で、「デジタル世界のものというのは、気をつけないと価値が下がっていく」ということは事実だと認識しています。確かに値段を下げたら売りやすいと考える人は多いので、目先の販売を考えると「値段を下げたらどうか」という話はすぐ出てくるのですが、われわれはむやみに値段を下げてしまうとソフトの価値がなくなってしまい、結局、いろんな人が、そこでビジネスを継続していけなくなるのではないかということを非常に強く危惧していますので、単純に『フリー』に書いてあるようなことをやろうとは思いません。一方で、『フリー』という考え方を上手に使うと、今まで試していただけなかったお客様がその価値を実感するというチャンスは生まれる可能性があるので、どんな使い方が良いのか考えるべきなんだろうなと思います。 ちなみに今日、新興国市場の話をあまりしなかったんですけれども、日本の内需の状態があまりいい状態ではなく、日本の人口はこれからも減少していくんだという状況がある中で、私は年頭に何社かの新聞社さんからインタビューを受けました。その時に皆さんが一様に「新興国市場は?」と聞かれるので、なぜ皆さんが新興国市場と聞かれるのかなと思って逆にこちらからお聞きしたんです。「新興国、新興国って皆さんお聞きになるんですけど、どうしてなんですか?」とお聞きしたら、「どこの社長さんも(年頭のインタビューで)『これからは新興国だ』と言うからだ」とおっしゃるんですね。私も「新興国は大事だ」と思います。ビジネスの規模は、最後は人の数で決まるのですから、5年、10年というレンジで見た時には、新興国でビジネスが拡大できるかどうかというのは未来のわれわれの成長を決めると思うんですね。一方で、「これからは新興国だ」という、いろいろな話の中で、どれほどの割合の人が本当にその新興国で製品を受け入れていただくためのツボを見つけた上でおっしゃっているんだろうと思うんです。当然、国ごとにライフスタイルが違い、情報の伝搬の構造が違い、興味の持ち方も、人によって、社会によって、人が興味を持ちやすいテーマが違います。任天堂は1つの製品を世界中に売ることで今のような結果を出すことができた会社で、それは人間の本質に共有されている、ある種の人種や文化に依存しないものであると信じてはいるんですが、一方で、じゃあ伝え方も日本のやり方を全部そのままアメリカ、ヨーロッパに展開すればうまくいくかというと、そんなことは当然ないわけで、現地の方にご理解いただけるように工夫をするわけです。そこは、「どうしたら伝わるのか」、「どうしたら興味を持っていただけるのか」、「どうしたらお客様の側に動機が生まれるのか」ということのツボをすごく考え、調べているつもりなんですね。そのことが分かったら、例えばですけど、「インドのお客様に受け入れていただくためにはここがツボなんです」とか、「ブラジルのお客様、ロシアのお客様に受け入れていただくためにはここがツボなんです」、「中国ではこうなんです」と分かったら、私は、「今年はここのマーケットで頑張ります」って、たぶんここで申し上げていたと思うんです。今も、そういうことは調べてはいますけど、自分の中で「これだ」、「これを解決すれば絶対いける」とまでの確信はまだありません。 そしてまた同時に、日本やアメリカやヨーロッパの市場がもう拡大できないと私は思っていません。まだまだ黄色やピンクの人がいっぱいいらっしゃるわけです。まだゲームをされていない方がいっぱいいて、あるいは先ほどの「社会受容性」の部分を見ていただくと分かるように、まだまだゲームのことが「好きでない」、明確に「分からない」「嫌いだ」と答えられる方がいっぱいいらっしゃいます。そういう世の中(の社会受容性)を変えていければ、もっともっと(先進国市場を良い方向に)変えられるのに、それを放棄して「これからは新興国市場だ」というのは逆に無責任じゃないのかな、というような意識もございまして、今日はそこを強調しませんでした。ただ、3年、5年、10年というレンジで見た時に、新興国市場というものの重要性を軽視しているわけではございませんし、その時に「『フリー』というモデルとの組み合わせは考えられませんか」ということも当然1つの選択肢なんだろうなと思います。 |
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いつも「社長が訊く」を楽しみに読んでいるが認知が非常に低いように思う。認知をあげるためにも、このような公開の場で、もっと積極的に紹介されるお考えはないか。 第3四半期が終わったところで課題というのが分かってきた気がする。特に数字的に一番問題なのがDSの欧州のソフトウェアのところで、「その他地域」の販売本数を見ると、10〜12月期は対前年同期比57%減になっていたのはともかく、実売でも落ちているというのは変わりがない。これに対してどういう対応を早急にする必要があると考えているのかを教えてほしい。ゲーム人口の拡大を目指してパーティーゲームをムーブメント化することに成功してしまったことに対して、サードパーティーがついてこられなくなってきているのではないか。それに対して技術的なこと、あるいはマーケティングも含めて何かこう任天堂さんサイドから展開できることはないか。 |
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岩田: まず、「社長が訊く」をもっと宣伝すべきだと、いうお話については、「自分で宣伝するのはいかがなものか」という気もいたしますので、皆さまにご協力いただければと思います。 それから課題ですね。おっしゃるとおり、DSのヨーロッパのソフトを含む、「その他地域のDSソフト」が、(先ほどのプレゼンでもお話ししたように)任天堂の出荷ベースの減少よりは実売ベースの減少というのは少ないですけれども、実売ベースでも2割くらい減っているわけですから、これは由々しき事態だと思っています。一部には、「これはマジコン等による海賊行為が原因ではないか」と言われていたりもするんですが、それだけですべてが説明できるとは思いません。DSが普及し、ソフトがよく売れていく過程では、社会の話題にしていただけるような出来事が起きていたと思うんです。それは、日本でも『脳トレ』がそうでしたが、ヨーロッパでも『ニンテンドッグス』や『脳トレ』というのはそういう状態でした。昨年も『脳トレ』はそれなりにヨーロッパで売れていまして、まだ百数十万本売れているんですが、その前の年に何本売れたかと調べますと、300万本以上売れていたりします。すると、社会の話題として『脳トレ』は以前ほど目立たなくなります。また、社会の話題として『ニンテンドッグス』は以前ほど目立たなくなっています。その代わりのものを任天堂が提案できていて、社会の話題である状況を維持できていれば、その結果、DSプラットフォームの活性が高まり、活性が高まればいろんなソフトが裾野で売れていくと、いうことが起こりやすくなるわけですが、そういう流れにできていないということなんです。ですから、われわれにとって最も重要なのは、社会の話題になるようなDSソフトを作り出すことではないかと思います。 『レイトン教授と不思議な町』(株式会社レベルファイブが開発し海外では任天堂が発売)はヨーロッパで状況が良くて、これは2週間前までの(販売推移の)グラフですが、先週現地から「(累計販売数が)200万本になりました」という報告が来ていましたから、こういう例も出ているんです。この200万本という数字は確かに素晴らしいんですが、「社会の話題になっているのか」というと、『ニンテンドッグス』やあるいは『脳トレ』の売れた本数に比べると、やはりまだ小さいんです。また、このソフトで遊びたいからハードごと買ってくださるとか、このソフトによって稼動していなかったDSが大量に稼動するようになり、社会の話題になって新聞等で扱っていただく、というところまでは到達していません。『レイトン』は2作目(『レイトン教授と悪魔の箱』)もよく売れていまして、これまでの累計でヨーロッパで130万本強ぐらいですかね、順調にいけばまだまだ伸びる推移だと思います。このほかに、『リズム天国』というソフトを昨年アメリカやヨーロッパで売れないかということで試みたんですが、これは残念ながら良い結果が出せませんでした。 もう1つ、昨年、『ガールズモード』というソフトを売ったんですね。これはまだ、「よく売れました」とは言い難い段階なのですが、大体売れている量ってこれくらいなんですね。まだ、(累計販売本数も)日本には及びませんが、一方で、出足をご覧いただくと、(日本と比べて)ものすごく悪いんですね。普通はこんなに出足の悪いソフトはまず売れないです。実は、ヨーロッパの最初の報告で初週の売れた量が5,000本だというのを聞いた時、目の前が真っ暗になるくらいショックだったんです。逆に言うと、初週5,000本だったソフトをここまで持ってこられたというのは、「現地の人たちは、(このソフトの拡販に向けて)本当に頑張った」と思います。販売推移が、今は伸び悩んでいるようにも見えるかもしれませんが、実はこれは品薄によるものなんです。すなわち、最初はあまり出足が良くなかったので、(小売店さんからのリピート)注文をあまりいただけなかったんですが、年末にガガガガっと売れて品切れになってしまったということが起きています。実際に、『ガールズモード』を遊んだ海外のお客様たちからは、「これはすごく熱中できて面白い」というようなことを言っていただけています。海外のDSマーケットは、女の子向けの一見よく似たタイトルが山ほど出ましたので、そのおかげで女の子タイトルと言うだけで小売店さんは「もう期待できない」というような食わず嫌い的な部分もあったり、お客様にもその価値を伝えるハードルがあったりしたんですが、ここまで来ますと、(『ガールズモード』の)価値を広めてくださるお客様の基盤ができましたので、今後の取り組み次第でもう一段高みに持っていけるかもしれないと思っています。ただ、こういうことだけではなくてもっと、世の中で本格的に話題になることを生み出せるかどうかということが、非常に重要なのかなと思っています。もちろん、ヨーロッパに関しては先ほどご指摘のあったマジコン等の海賊行為が問題になっていることも事実ですから、以前からお話ししているように、法的・技術的の両面で対策を進めていきたいと思います。 それからもう1つ、何度かお話ししているんですけど、「任天堂ハードはサードパーティーさんのソフトが売れない」という話はずっと出ているんですよね。以前、決算説明会の時にデータをお示しして「必ずしもそうじゃないんですよ」ということを申し上げたと思うんですが、それでもこういう思い込みというのは簡単にはなくならないようです。あるいは、任天堂のソフトが目立っているために、そういう意識をお持ちになってしまうということもあるかもしれません。 そこで、ちょっとある角度から分析をしてみたんですけど、これは先ほどお見せした累計のソフト販売数ですけれども、ここからサードパーティーさんだけを取り出したらどうなるか、なんですが、こうなります。当然、Wiiというのはこんなことが起こると発売前にソフトメーカーさんが信じておられたわけではないので、序盤は(サードパーティーさんのソフト販売の)出足が非常に悪いです。で、その途中から、ソフトメーカーさんも「これはWiiの市場でソフトを作らなきゃいけない」ということで出されるようになって、(2年目以降、サードパーティーさんの)ソフトの販売は伸びていて、実際こういう結果が出ているんですね。ところが、ソフトメーカーさんのいわゆる看板になっているソフトにおいて、代表的な大ヒットがWiiにはあまり出ていないので、イメージとしては売れている実感がないわけです。それは、ヒットチャートのランキングに載らないためです。ただ、全部(のソフト販売数を)かき集めて総数を出すと、これはNPDさんのデータですから、市場で売れたソフトすべて、というふうに見ると、実はこのような結果になっていたりするんです。 ちょっと違う角度からもお話しします。このグラフは、NPDのデータから3つの据置型のプラットフォームで1タイトル当たり平均何本のソフトが売れているか、というのを計算したものです。Wiiは10月から12月の間に3,719万3,384本売れて、12月には2,491万7,650本売れています。対象となるタイトル(NPDが1本でもこの期間に売れたとカウントしたものを全部合わせ790タイトル)で、割るとこうなります。同じようにソニーさんのプレイステーションは、10月から12月に1,509万380本、12月は728万1,459本売れて、対象となるタイトル数が413タイトル。360は同じく2,202万6,671本のソフト。12月には976万3,068本です。対象となるタイトルは601タイトルです。ただ、こういう話をしても、「いや、これは任天堂のタイトルが売れているから、任天堂は除外しないと比較にならない」という話が必ず出てくるわけです。そこで、これが(それぞれのプラットフォームの自社ソフトを)除外したものです。すると、「確かに他社さんのプラットフォームの方が、サードパーティーのソフトが売れていますよね」ということになるわけです。ですから、これだけを見ますと、「Wiiは任天堂ソフトを取り除くとサードパーティーソフトが売れにくい市場なんだ」ということに見えてしまうかもしれません。これ、Wii向けのタイトルは、タイトル総数が多いですから、1タイトルあたりの平均にすると、販売総本数は多かったとしても当然、(比較上は)不利になるわけです。 ただ、昨年の年末は特殊事情があったと思うんです。それは、11月にPS3とXbox360で880万本以上売れた、アクティビジョンさんの大ヒットソフト『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』というのがあって、この影響は任天堂の「1,000万本トリオ」(『Wii Sports Resort』『Wii Fit Plus』『New スーパーマリオブラザーズ Wii』)と同じぐらい大きいのではないかということです。そこで、このソフトを抜いてみるとこうなります。ちなみに、それぞれ3タイトルずつ減っているんですけど、これは通常版とプレステージ・エディションと缶ケースの特別パッケージがあるそうなんですが、そういう3つのバージョンをNPDさんは別タイトルとして勘定しているからだそうです。結局、ビッグタイトルの影響ってこういうことではないかと思います。今、ゲームマーケットというのは売れるタイトルとそうでないタイトルの差がすごく開いてしまっていて、これは私たちの業界が抱える問題で、Wiiのビジネスも任天堂の大ヒットタイトルが販売を押し上げているだけで、サードパーティービジネスにうまみがないというご批判がある一方で、任天堂のいないプラットフォームでも実は似たようなことが起きていて、1タイトルあたりで比べると実はこのような結果だったりするわけです。その上、ソフトメーカーさんの看板タイトルが、どちらのプラットフォームにより多く出ているかということを考えると、必ずしもそのご批判は事実に即したものではないと思うんですが、やはり人間はいったん思い込むと、そうじゃないことというのはなかなか目がいきにくいと思います。そこで、私どもは海外のソフトメーカーさんに、「この事実に着目してください」とお伝えし、そしてまた、「われわれのプラットフォームにはこんなビジネスチャンスがあると思いますよ」ということをお話しして、協力関係を作っていく必要があると思っています。私たちにも努力が足らないところがあって、ソフトメーカーさんがそういう誤解をされているのに、それを解くだけの努力が十分できていたのかというと、努力が足りない面があったと感じています。ですから、ソフトメーカーさんのビジネスチャンスが存在し、そこでいいものを作っていただけたらお互いにWin-Winになれるということをもっと訴えてご理解いただけるように努力しなければいけないと思っています。 |