株主・投資家向け情報

任天堂カンファレンス Q&A セッション
質疑応答
Q 4  御社の従来のゲームには「子供向けのゲーム」「ファミリー層向けのゲーム」という印象があるが、今回の通信機能の拡充という点は、今までとは違ってコアなユーザー層向けではないかという感じがする。これは御社の「ゲーム人口の拡大」という目標と一見反しているような印象を受ける。
A 4

岩田:

 今、(質問された方の)印象としておっしゃったことは、必ずしも私たちが考えていることではありません。私たちが申し上げている「ゲーム人口の拡大」では、私は毎回必ず「年齢、性別、ゲーム経験の有無を問わず」ということを添えているのですが、ゲーム経験が豊富で非常に熱心に遊ばれる方から、ゲームのことは全くこれまで考えてこなかった、興味もなかったという人まで、幅広く私たちのお客様であってほしいと思っています。
 また、もちろんお子さんが遊べること、ファミリーで楽しんでいただけることは、私たちの商品の大きな特徴だと思っていますし、そうやって受け入れていただけることを私たちは誇りにもしています。しかし一方で、子供専用、ファミリー専用と考えては作っておりません。すなわち、私たちの作ったものをあらゆる人たちに楽しんでいただきたいと強く思っております。ですから、今までと路線が変わったということは全くなくて、この通信機能が拡充することで、今まで全く通信には興味がなかったし、意識もしなかったという人も、「すれちがい通信」や「いつの間に通信」で新しい経験をしていただいて、「お、これ面白いじゃないか」と、新しい発見をしていただけることを期待しています。
 一方で、ゲームで熱心に遊んでおられるお客様は、これまでも通信機能があるようなゲームも楽しまれているわけですが、今回任天堂が提案する「スリープ時に(通信機能をきっかけに)いろいろなことが起こる」ということについては、まだあまり体験したことのない、ちょっと不思議な感覚を味わっていただけるものになると思います。例えば昨年『ドラゴンクエストIX』で「すれちがい通信」が社会現象になったと私は思っていますが、そういうことがもっといろいろなゲームで起こるようになり、いろいろな形で使っていただくことで、いろいろな方たちに任天堂のご提案が受け入れていただけるようになり、最終的にそれが任天堂のプラットフォームでゲームを楽しんでいただける方の増加ということにつながるのではないかと思っています。

Q 5  据置型とニンテンドー3DSとの連携という意味では、どんなことができるのか。どんな方向性に持っていきたいのか。
A 5

岩田:

 据置型には据置型のメリットが、携帯型には携帯型の利点がありますので、それぞれの利点を活かしたいと思っています。ニンテンドー3DSが自宅にある据置型のゲーム機といつの間にか通信をするということも、当然将来の課題の一つだとは思いますけれども、今日の時点で「ニンテンドー3DSが据置機と連携してこのようなことをします」ということで具体的にお話しできることはございません。ただ、私たちは「常にゲーム機を持って歩くことが遊びになる」ということについては貪欲に追求したいと思いますので、据置機との連携もきっと考えていくことになると思います。

Q 6  先ほどのプレゼンテーションの中でも、かなりネットワーク部分に注力していくと主張されていたが、海外でも似たようにニンテンドーゾーンをかなり作っていくのか。DSの「すれちがい通信」というのは海外でも日本のようにブームになったのか。
 また、収益について、今までネットワークにつないで、どちらかというとハードの稼働率を上げて最終的にはパッケージで収益化するという考え方だったと思うが、そこは根本的にネットワーク部分だけで何か収益を上げていくようになっていくのか。
A 6

岩田:

 まず、海外の「すれちがい通信」についてです。先ほども(プレゼンテーションで)申し上げたように、ニンテンドーDSでは、社会現象になるほど遊ばれる「すれちがい通信」対応ソフトがあった時に初めて多くの方が「すれちがい通信」を体験するということが起こせたわけです。社会現象になるほどみんなが同じものを遊んで、かつ持って歩こうという動機を持っているという条件がそろった上に、人々が至近距離ですれちがう、しかも割とゆっくり移動しているという点が重要になります。日本の社会と、例えばアメリカの社会を比べますと、アメリカの方々が個人で車に乗って移動している時に、車ですれちがうスピードで一体どれだけの情報のやり取りができるのかというような問題等もあり、今まで「すれちがい通信」が社会現象になったと言えるようなことは海外では起きていません。
 一方で、『ドラゴンクエストIX』は(既に)海外で発売されています。日本では『ドラゴンクエスト』は初週にドカンと売れて、非常に短期間の間にたくさんの数が売れるソフトという認識がありますので、海外の『ドラゴンクエスト』の売れ方は、日本ほどには評価していただけていないのではないかという印象があります。私がアメリカやヨーロッパの私たちの販売子会社の人間、具体的にはNOA(Nintendo of America)やNOE(Nintendo of Europe)の人間から話を聞いた印象で言いますと、着実に『ドラゴンクエスト』のお客様は少しずつ増えています。パリで実際に「すれちがい通信」のイベントをやると、その「すれちがい通信」自体を体験した方には、非常に新鮮に面白がっていただけているそうです。「インターネットを介してつながれば世界中どことでも通信ができる時代に、わざわざすれちがわなければ通信できないものが果たして面白いのか」という見方もあるかもしれませんが、偶然場を共有し、同じものに興味を持っていた人が至近距離に居合わせることでコミュニケーションが起こるというのは非常に新鮮な驚きと面白さがあるようで、現実にイベントをやるたびに少しずつ参加人数が増えてきたという話を聞いています。
 この夏に『ドラゴンクエストIX』のロングセラー化のためにいろいろなマーケティング活動をやっていましたが、そういうことで少しずつ広がりが出てきていることを感じます。また、はっきりと「すれちがい通信」が体験しやすい場所は、特殊なイベントの場です。ゲームファンやアニメーション文化のファンの方が集まるようなショーが海外でもございますが、そういうショーに行くと、現実に「すれちがい通信」が起こるそうです。
 ちなみに、今日の任天堂カンファレンスでも、『ポケットモンスターブラック・ホワイト』で100人以上すれちがいましたという方の話をさっき聞いたのですが、そういう人たちが多く集まる場に持って行っていただくと、そういうことが起こるわけです。それは海外でも起こっています。
 ですから、私たちは価値を理解していただけるように少しずつお伝えすること。それから、恐らく今日お話しした「いつの間に通信」の機能というのは、たぶん日本以上に海外でしっかりやることが非常に重要で、それはゲーム機を外に持ち出していただくことの意味というのをはっきりと作り出したいと私たちは思っているからです。そのためにニンテンドーゾーンという形を利用するのか、今日のNTT東西様との提携のように既存の無線アクセスインフラを使えるようなディールをするのか、どちらになるのかはまだ決まっていませんが、アメリカでもヨーロッパでも、そういう接続拠点の拡充に積極的に取り組むことで、「携帯ゲーム機は外に持って行った方が面白くていいよ」と多くの人が感じていただけるようにしたいと思っています。そうなれば、自然とすれちがいを体験される方も増えていきます。今度のニンテンドー3DSでは、そのチャンスは大きく増えますから、海外でもすれちがい文化を本格的に広めたいと思っています。

 また、収益についてですが、私たちは、ネットワークを通じた収益というものが長いレンジでは当然大きくなるということは想定していますが、何度もこういう場で申し上げていますように、人の行動というのは簡単には変わらないと思っています。新しいことにすぐに反応される、情報感度が非常に高くて行動の早い方、「アーリーアダプター」と言われる方ばかりであれば、世の中はもっと早く変わるのでしょうが、現実には大半の方はそうではありません。ですから、今しばらくはパッケージが主流だと私たちは思っています。ただ、パッケージの価値を高めたり、今までにない面白さが社会の話題になったりするという点でネットワークの要素は非常に重要だと思いますから、そういう使い方を積極的にしていきたいというのが現在の考えです。


このページの一番上へ