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2010年10月29日(金)経営方針説明会/第2四半期(中間)決算説明会
質疑応答
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Q 1

 ソフトについて。今期の3DSのハードの予想400万台に対し、3DSソフトの予想は1,500万本で、割り算すると3DS 1台につき3.75本という計画になる。発売日から約1カ月の勝負になると思うが、この1台あたりのソフトの装着率の妥当性はどうか?少し多い気もするが、この辺りについて説明いただきたい。

 宮本さんの趣味について。以前、「庭いじりをされている」と言われた後『ピクミン』、「犬を飼っている」と言われてから『nintendogs』が出た。前回質問した時は「最近猫を飼っている」と言っていて『nintendogs+cats』が出てきた。現在はどんなことに一番ご執心なのか教えてほしい。個人的に気になるのは、先日の糸井重里さんとの対談の中で、「最近は町内会に熱心に参加されている」ということが書かれていたが、それも関係あるのか。

A 1

取締役社長 岩田 聡:

 まず、ソフトについて、今期の予想数の根拠ということですが、これは任天堂が出荷する本数ですから、この400万台と、1,500万本がすべてお客様の手に渡るということを前提には当然しておりません。新しいプラットフォームが出て、特にたくさん期待もしていただいて、たくさんのソフトメーカーさんが非常に開発意欲もお持ちで、「ぜひ(ハード)発売時期の近くにソフトを出したい」と熱心に開発していただいているということを総合的に考えますと、任天堂からはこれくらいの量が出て行くことになるのではないかと思いますし、そしてまた、小売店さんでも、期待していただいているこのプラットフォームへの新しい棚作りとして、最初に一定の品ぞろえをしていただくことが期待できますので、これぐらいの数字になるのではないかということです。
 「発売1カ月でタイレシオ(ハード1台に対するソフト販売本数)3.75は高すぎないか」というご質問かと思うのですが、それは(小売店からお客様の手に渡る)セルスルーレベルの話と、セルインレベルの話、つまり任天堂が出荷して小売店さんに出していく、あるいは私たちがソフトメーカーさんにソフトをお出しするというタイミングに少しずれがあり、今回の場合、発売前に非常に高い期待をしていただいているために、これくらいの数字(をセルインすること)が可能ではないかということで出している数字ですので、それをご了解いただければと思います。
 それから宮本の趣味についてのご質問がありましたけれども、いつも(任天堂ホームページ上で)「社長が訊く」という(インタビュー)企画をやっているのですが、スーパーマリオ25周年を記念して、私たちは今キャンペーンサイトを設置していまして、私は宮本から日頃からたくさんの話を訊いているので、たまには違う聞き手に訊いてもらった方がマリオについて面白い話が訊けるのではないかということで、「社長の代わりに糸井さんが訊く」という企画でお願いしたインタビューの中に、町内会の話が出ていたということなのですが。


取締役専務・情報開発本部長 宮本 茂:

 そうですね、毎回趣味の話を聞かれるんですけど、いつも「次の商品のヒントになるので言うな」と言われています。確かにこれまで趣味がゲームになった事例があるのですが、テレビで「成功した話をさかのぼってみるとこういう事実があったので、こういう事実があると成功する」という逆説的な番組をよく見るんですけれども、僕の商品の場合も、商品を作ろうと思って趣味を持つわけじゃないんですよね。
 最近いくつか趣味が結果的に商品になっているということを、自分で改めてそう思うのでそうしゃべっていると、「じゃあ次の趣味が商品になるんだろう」と決められるんですけど、そうでもないんです。皆さんそうですよね。気がついたら、「そうか、こういう商品になってしまうのか、自分の趣味は」ということが多くて、そういう意味では、商品ができてみないと実は分からないというのが本当なんです。
 例えば『Wii Music』はあまり話題に挙げていただけないんですけど(笑)、やっぱり作ってから、「これは自分が音楽が好きやから作ったんやな」と思いますし、そういう意味では最近、これももっと話題にしてほしいんですけれども、博物館などで利用していただきたい「音声ガイド」を作っています。DSだけを(美術館などに)持って行くと、ソフトは買わなくていいというもので、主催者側がDSを使って美術館などの音声ガイドを、簡単な絵と一緒に配信するんです。お客様は自分のDSを持ってきていただいたら無料でサービスが受けられます。これは実際に今、大阪の水族館「海遊館」や「新江ノ島水族館」などで使っていただいています。今第2期目に入ってリニューアルして、前よりサービス内容が豪華になっています。
 また、今度はこれを個人で作れるような、ちょっと町内会のお兄さんが「自分でDSの配信サービスをしてみよう」というようなこと(具体例として、例えば「町内のイベントでスタンプラリーを作ってみよう」というようなこと)を、自分で簡単に作れるソフトをつくりました。来月(11月)、DSiウェアで配信しようと思っています。DSiで(カメラとマイクを使って)自分で簡単な音と映像を入れて編集すると、それを子供たちやお客さんが持ってきたDSで受信して遊べるというものです。例えば、商店街の喫茶店のマスターがこういうものに興味がおありなら、各テーブルに座ってDSを見るとメニューが見られたり、お店の細かい紹介がされたり、音声番号を押すだけで、美術館と同じように音声のサービスが受けられる、みたいなものを作りました。これは間もなく出しますので、(直接)売り上げにはつながらないかもしれないですけれども、きっとそれがDSを実際に街に持ち出してみようとか、先ほど岩田も言っていました、日常で使われるものになっていくということに、かなり貢献できるんじゃないかと思っています。次の趣味の話はまだ分かりません。

Q 2

 通信環境について。現在、携帯型Wi-Fiルーターの普及が進み始めていたり、今後LTE(次世代の携帯電話データ通信規格)のサービス開始が予定されているなど、通信環境は変化しているように思われる。今後御社を考える上で、こうした通信環境の変化が収益を上乗せできるようなビジネスモデルに変える可能性が高まっているのか。また、御社は今回ニンテンドー3DSで「いつの間に通信」など通信機能を強化しており、この機能を活用するにはニンテンドー3DSの普及ペースを速める必要があるのではないかと思われるが、戦略面についての考え方も併せて教えてほしい。

A 2

岩田:

 先日の「任天堂カンファレンス2010」でニンテンドー3DSのお話をした時にもお伝えしたつもりですが、私自身もニンテンドー3DSは「眼鏡がなくても立体に見える」という機能のほかに、もう一つ大きな柱があって、それが「通信関係」だと思っているんですね。
 以前から繰り返し申し上げていますが、娯楽というのは、特に(任天堂が目指している)年齢性別を問わずに選んでいただける娯楽というのは、「毎月お金がかかります」、「月額利用料を毎月これだけください」というものとは、私は相性があまり良くないと思っていまして、そういうビジネスモデルにしてしまいますと、お客様の層が狭まってしまうと考えていますので、「今、お客様に毎月利用料をご負担いただかなくてもできることは何か」ということを考えて、「いつの間に通信」という仕組みを作りました。10年前でいえば、この「いつの間に通信」のような仕組みも夢物語だったわけで、今のように人口の密集した場所であればたくさんのWi-Fiアクセスポイントが普及するような時代になり、また、それが一定レベルのリーズナブルなコスト負担で使えるような時代になったから実現できるようになったんだと思います。
 その意味では、先ほどお話をされていました携帯型Wi-Fiルーターなどのデバイスの普及や、あるいはLTEのような新しい通信関連の技術の普及がまた環境を変えると思います。その時に、「お客様が毎月通信料を負担し続ける」という構造でないビジネスの形がうまく見つかった時に、お客様にとってさらに便利な通信環境をご提供できるようになる日が来るかもしれません。もちろん現状でも、携帯型Wi-FiルーターとニンテンドーDSあるいはニンテンドー3DSは組み合わせて使えるわけですが、あくまでそれはお客様がご自身で契約をして、毎月何千円か料金を払われて使われるというモデルになりますから、それとはまた違うことができた時に、本当の意味でたくさんの人に使っていただけるようになるのかなと思います。
 また、「いつの間に通信」のようなインフラにしましても、あるいは「すれちがい通信」にしても共通ですが、ニンテンドー3DSのようなデバイスが短期間に一気に普及するのか、それともゆっくり普及するのかで、その新しい通信サービスが世の中に与えるインパクトというのは大きく変わってくると思っています。その意味では初動が非常に重要ですし、これは以前にも何度もお話ししていますが、ゲームプラットフォームというのはやはり勢いがないとうまくいい循環が作れないビジネスだと思っていますので、普及ペースを速めるというのは当然重要だと思っています。その意味では、自社でしっかり用意をし、普及させるためのソフトを用意する、サービスを用意するということのほかに、今回もう一つ、ソフトメーカーさんといかに共同歩調をとっていくかということを併せて考えていまして、その意味で今回のニンテンドー3DSには大変多くのソフトの作り手の皆さんが期待を寄せてくださっていますので、たくさんのソフトが早期に出ることによって、逆にいろいろなお客様が安心してニンテンドー3DSを選んでいただけるのではないかなと思っています。

Q 3

 先ほど、年末のWiiの商戦に向けて、定番タイトルに期待されているとのことで、その中で「スーパーマリオ25周年キャンペーン」などがあるのかと思うが、これだけで年末に「何かお得なことが起きる」と思って消費者が動くのか。何か特別なキャンペーン、販促を今後様子を見ながらやっていくのか。また、定番タイトルに頼るということは、裏返すと斬新なタイトルが出にくくなっているという印象を受け、バイタリティーセンサーも最近話が出てこなくなっているが、Wiiでまだ斬新なタイトルが出せるのか、アイデアが残っているのか。つまり、Wiiというハードから卒業することも考え始めているのか、それとも、Wiiの今後のタイトルで斬新なものをまだまだ残しているか。

A 3

岩田:

 まず、年末のWiiについてですが、「(昨年以前に発売した)定番タイトルだけに頼る」というふうにご説明したように聞こえてしまったとすれば、それは私の説明が至らなかったということで、当然(今年発売の)新作はいくつもございますので、ただその新作が「去年に比べて(相対的に)弱いよね」ということを多くの方がおっしゃっているので、「いや、それに去年からの定番も足して考えてくださいね。そうしないと全体が見えないと思いますよ」という意味で、先ほど定番(ソフトが伸びる余地)を少し強調してお話し申し上げました。
 ちなみに、具体的にどのようなキャンペーンやプロモーションをするのかということを事前にお話しするものでは当然ないと思いますけれども、ただ、いろいろな大手の小売店さん、これは世界中の大手の小売店さんが、「やはり年末は家族で遊ぶWiiやDSのようなゲーム機の需要が大きく盛り上がるだろう」ということを期待してくださっているのは事実で、そういう上でいろいろなお話もいただいています。
 また、私たちが、現状足下が決して良くはないのに「年末これだけはいけるだろう」と判断している一つの根拠として、10月になりますと、特定の小売店さんが「今週限りの特別な、お得なオファー」を出されるプロモーションがアメリカでもヨーロッパでも始まっているんですね。そういうことが始まって、実際にそのお店で、例えば「今週はこれがお得です」というプロモーションが実行された時に、お客様が反応されているか、されていないかというのは、私たちにとってものすごく重要な指標なわけです。もし、反応されていなかったら、「WiiやDSの需要はもうあまりないのかもしれない」と考えなければなりませんし、そういうオファーが出た時に、「前週の3倍売れた」「5倍売れた」というようなことが起こると、「やっぱりお客様はきっかけを待っておられるんだ」ということが分かるわけです。
 現状では、これまでいくつかあったそういう小売店さんの特別なプロモーションでかなりの量がその前の週に比べて動くということが分かりました。逆に言えば、「(WiiやDSの)需要がなくなったのではなくて、今お客様は機会を待っておられるんだ」と私たちは解釈しています。今までの歴史的な流れから、「今の時点でこうだったら、11月はこうなって12月はこうなる」という過去の実績をもとにした推定と、私たちが予想している今の数字が恐らく食い違っている理由は、そこにあるのではないかと思います。
 それから、次にWiiでこれからも斬新なタイトルが出せるのかということです。もちろん私たちは斬新なタイトルを出したいですし、斬新なタイトルを出すべく開発も続けております。一方で、斬新なタイトルというのは、作ったら百発百中、それが必ず幅広いお客様の支持をいただけるようなクオリティーに簡単に仕上がるのかというと、必ずしもそうではありません。実際に作ってみるといろいろな問題がそこで出てきて、さらに仕上げに時間がかかるというようなことも生じる場合がありますし、また、斬新であるということは、逆に言えば、新しく認めていただくハードルは結構高い、あるいは、最初は「ほんとにそんなことが面白いの? すぐに分からない」ということが言われやすいわけで、上手にバランスをとらねばなりません。もちろん、『nintendogs』や『脳トレ』や『Wii Fit』、『Wii Sports』などは、そういうハードルを非常にうまく短期間に越えられた例だと思いますが、「その斬新なタイトルが一切作れなくなっているので、もうWiiは限界だということを社内で感じている」というわけではありません。

米国ユーザー数推移
日本ユーザー数推移

 先ほど、こんなグラフをお見せしました。
 これはアメリカでDSやWiiのお客様の数がどういうふうに推移しているのかということを示すグラフですが、ご覧いただいているように、DSのお客様はそんなに増えていません。むしろ「維持ができている」というぐらいの状況なんですけれども、Wiiのお客様は、まだまだ増えているんですね。これと同じグラフの日本版のものもあるので、それもお目にかけます。
 日本の方が調査期間が長いのでグラフがたくさんあるのですが、これを見ていただくと、日本はDSが爆発的なブームになった後、一回下がりかけたのを持ち直している、という状況であることが分かるんですね。ただ一方で、Wiiはお客様の数がコンスタントに増えていっているんです。「DSはそろそろ新しい機械を出す必要があるな」と判断している私たちの見方と、「Wiiはもう少しやれるんじゃないかな」と思っている私たちの見方というのは、こういう、お客様がどういうペースで増えていき、どういうペースで維持できていて、また逆に、いつかはお客様の数というのは減っていくわけですから、それが大きく減少しないうちに次へ繋いでいくということがきっと求められるわけです。ただそれは、「必ずしも何年と決まったサイクルではないんだろうな」と思います。こういう形で半年に一度見ていきますと、お客様のそのプラットフォームに対する興味の増減というのがはっきり見えてまいりますので、こういうことを見ながら判断していくのがいいのかなと思っています。

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