1 | 据置型ゲーム機について。従来は据置型ならではのリッチな体験というものがあったが、現在エンターテインメントは家庭内から外に持ち出されるようになり、ポータブルデバイス(携帯型ゲーム機)でも据置型と同じ、あるいはそれ以上の体験ができるようになっている。そういった中で、今後の新しい据置型について、ユーザーから求められる意義というものが数年前や10年前に比べて薄くなっているのではないかと考えるが、その点について社長のご意見を聞かせてほしい。 |
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1 | 取締役社長 岩田 聡: 「据置型だから実現できるリッチな体験」という(据置型独自の)価値が、変質してきていないだろうかというご質問です。確かに、消費電力の制約が比較的小さい、つまり常時バッテリーで動かすわけではなく、電源を接続できる、そして、大きく迫力のある画面が作り得る据置型というものについては、これまでのビデオゲームの歴史の中では“リッチな体験”というところにどうしてもフォーカスが当たっていたと思うんですね。ですが、そもそも本当にテレビゲームで、据置型だからできることというのは、リッチな体験ということだけなのでしょうか。 |
2 | 昨日(2011年1月27日)、ソニーさんが新型のPSPを発表された。ソニーさんは「究極のポータブルエンターテインメント」と名付けているが、岩田社長から見てどのようなインプレッションを受けたか。現時点で価格、発売日とも分からないが、3DSにとって強力なライバルになり得るのかどうかという点も含めて伺いたい。 |
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2 | 岩田: 今日は必ず聞かれると思っていました(笑)。ただ、任天堂という会社は、これまでもそうだったのですが、「他社さんの製品とどう競争するのか」と考える会社ではなくて、「われわれがどんな提案をしたら、ゲームに無関心なお客さんにさえ振り向いていただけるのか」、あるいは「どんな提案をしたら、年齢も性別もゲーム経験の有無も関係なく、いろいろな人に受け入れていただける遊びが作れるのか」を考え、そして「どうしたらお客さんに驚いていただけるのか」を考えている会社です。 |
3 | ニンテンドー3DS向けソフトの考え方について。今までのハードの発売時と比べて、任天堂タイトルの数が少ないのではないかという印象を持っているが、これに関して開発ができていないのか、それとも別の考えがあるのか、その点について教えてほしい。 |
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3 | 岩田: 任天堂が新しいハードを出すのに、同時発売する任天堂のソフトは1本だけか、というご指摘ですね。まず、先ほども少しお話ししたんですが、ニンテンドー3DSでは、内蔵のソフトを過去に比べて大幅に充実させました。これは、「ニンテンドー3DSというものの裸眼立体視は、実際に手に取っていただかないとその価値を実感できない」というハードルをどう乗り越えていくか、ということをわれわれがずっと考えていく中で、アメリカやヨーロッパでWiiを発売した時に『Wii Sports』を同梱したことの価値を十分に考えた上で、われわれのソフト開発リソースをある程度内蔵ソフトに振り向けようという判断をした、ということがあります。 それから次に欧米のパブリッシャーさんのお考えですね。アメリカやヨーロッパのソフトメーカーさんが、なぜ日本のソフトメーカーさんのように、積極的に3DSに向かっておられないのかと。これは、これまでの歴史、すなわち日本の市場と海外の市場で据置型と携帯型の比率が全く違うためだと、私は思っています。こちらをご覧ください。これは、ピンク色と黒が携帯型なんですけれども、日本だと全体の6割以上が携帯型ソフトです。ところが、同じことを世界最大のソフトのマーケットのあるアメリカで見ると、携帯型のビジネスというのは全体の2割ぐらいなんですね。この差はいかにも大きいわけです。日本のソフトメーカーさんにとってみると、日本のお客さんのプレイスタイルは、テレビの前で座ってゲームをするんじゃなくて携帯型でゲームをする方向へシフトしていると。先ほどのご質問にも絡むところですね。ところが、アメリカやヨーロッパのお客さんは、まだまだゲームと言えばテレビの前で遊ぶものなわけです。これはどっちが進んでいるとか後れているとかの問題ではなくて、ライフスタイルの違いなんですね。 最後は『ポケモン』ですね。今のお話は恐らく、任天堂が「6歳以下の方には3Dの表示についてお勧めいたしません」と公表したことと、『ポケモン』をニンテンドー3DS用に出すということは自己矛盾していないか、というご指摘かと理解しますので、その前提でお話しいたします。私たちは、3DSは6歳以下のお子様に遊んでいただいてはいけませんと申し上げているわけではなくて、3DSの立体視の機能に関しては、これは目というよりも脳の機能なのだそうですが、脳の中の立体視機能がどれぐらいの時期に完成するかというのは個人差があって、そしてそれが未発達な段階で視差方式の3Dの表示を見続けることが影響を与えるのではないかという学説があるということを受けて、その注意喚起を能動的にするべきだろうと考えているのです。それは、ゲーム機というものは、親御さんがお子さんにお渡しになって、お子さんが非常に長い時間、熱中して遊ばれる可能性が高い製品ですので、われわれとしては「お子さんに3DSを遊ばせないでください」ではなくて、「ペアレンタルコントロール機能」というのがあって、「3Dの立体視の部分だけの機能は親御さんのコントロールの下で、お子さんが親御さんの知らない間に使ってしまうということがないようにできる機能を設けましたので、それを使って親御さんのコントロールの下で楽しんでください」というメッセージを出しているんですね。 |