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2011年1月28日(金) 第3四半期決算説明会
質疑応答
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Q 1

 据置型ゲーム機について。従来は据置型ならではのリッチな体験というものがあったが、現在エンターテインメントは家庭内から外に持ち出されるようになり、ポータブルデバイス(携帯型ゲーム機)でも据置型と同じ、あるいはそれ以上の体験ができるようになっている。そういった中で、今後の新しい据置型について、ユーザーから求められる意義というものが数年前や10年前に比べて薄くなっているのではないかと考えるが、その点について社長のご意見を聞かせてほしい。

A 1

取締役社長 岩田 聡:

 「据置型だから実現できるリッチな体験」という(据置型独自の)価値が、変質してきていないだろうかというご質問です。確かに、消費電力の制約が比較的小さい、つまり常時バッテリーで動かすわけではなく、電源を接続できる、そして、大きく迫力のある画面が作り得る据置型というものについては、これまでのビデオゲームの歴史の中では“リッチな体験”というところにどうしてもフォーカスが当たっていたと思うんですね。ですが、そもそも本当にテレビゲームで、据置型だからできることというのは、リッチな体験ということだけなのでしょうか。
 もしリッチな体験ということだけであれば、電池で動く携帯型のデバイスでどんどんリッチな体験ができるようになれば、据置型は居場所がなくなっていくということになるかと思います。ですが一方で、まさに2006年にWiiが登場した時に言われたことでもあるわけですが、リビングルームに大画面テレビが入ってきたことによって、今までよりもリビングルームが広く使えるようになって、まさにその場所が体を動かす遊び場に変わった、というようなことが起こったわけで、これは携帯型ではなくて据置型だからできた遊びだと思うんです。
 ですから、単純に「据置型だからリッチだ、携帯型だからそうでない」、そういう区分けは時代とともに変わっていくものであって、据置型には据置型だからできることがあると思います。なので、われわれ自身も据置型だからできることを提案していかないといけないと思っています。据置型で遊ぶためにはテレビの前で遊ばなければいけない、みんなが集まらなければいけない、ほかにテレビを観ている人がいたら使えないなど、そういう意味で制約は山ほどあるわけですし、よく、いろいろなゲームを遊ばれる方も「昔は据置型のゲームを始めるのに別に気合いを入れなくてもすぐに始められたけれど、最近は携帯型ゲーム機の手軽さに慣れてしまったので、本当に気合いを入れないとゲームを始められないんですよね」ということをおっしゃる方が増えたりしていますので、そういう意味で環境が変わってきていることは間違いないと思うんですね。ですから、単純にリッチさだけで勝負するのではなくて、据置型だから実現できるリッチさに加えてプラスアルファ、テレビに映して、そのテレビに映ったものを共有できるという状況だからこそできる魅力的な遊びというものがどういうものかということに、据置型ゲーム機の使命はシフトしていくのではないか、というのが中長期的な展望かなと思います。

Q 2

 昨日(2011年1月27日)、ソニーさんが新型のPSPを発表された。ソニーさんは「究極のポータブルエンターテインメント」と名付けているが、岩田社長から見てどのようなインプレッションを受けたか。現時点で価格、発売日とも分からないが、3DSにとって強力なライバルになり得るのかどうかという点も含めて伺いたい。

A 2

岩田:

 今日は必ず聞かれると思っていました(笑)。ただ、任天堂という会社は、これまでもそうだったのですが、「他社さんの製品とどう競争するのか」と考える会社ではなくて、「われわれがどんな提案をしたら、ゲームに無関心なお客さんにさえ振り向いていただけるのか」、あるいは「どんな提案をしたら、年齢も性別もゲーム経験の有無も関係なく、いろいろな人に受け入れていただける遊びが作れるのか」を考え、そして「どうしたらお客さんに驚いていただけるのか」を考えている会社です。
 もちろん、市場の中では同じ売り場で横に並んで売られるわけで、そこは任天堂の提案と他社さんの提案のどちらにお客様が魅力を感じられるか、ということによってどちらの製品がどのように普及していくかが決まるわけですから、どちらが正しいのかを決めるのはお客さんであって、私が他社さんの製品についてコメントすべきではないと思います。
 ただ、非常にはっきりしていることは、私たちとは異なる方向でお客さんにアピールされようとしているんだなと思います。これから複数のそういう製品が提案されることで、結果的に携帯型ゲーム機市場というものが盛り上がるきっかけになるんじゃないのかなと思います。
 そうはいっても「インプレッションだけでも」ということになると思うんですが、確か昨年のこの説明会開催の直前にiPadが発表された時にも、「感想を聞かせてください」と言われまして、私は「大きいiPod touchが出たと思いました」と言って会場の皆さんが笑ってくださったということがありました。私はまさに自分が感じた第一印象をポジティブもネガティブもなくお話ししたつもりだったんです。ところが、なぜかその後、報道に尾ひれがついてしまい、これは一度英語に翻訳されて、また日本語になって、その過程で誤訳が起きた、ニュアンスが付け加わってしまった、ということなのかもしれませんが、「任天堂の社長は、iPadはiPod touchがデカくなっただけだと切り捨てた」というようなことがどういうわけか広まったりしたんですね。すると、それを読んで「任天堂の社長はけしからん」と怒っておられる方がまたいらして、その方の発言を私はまたネットで読むという(笑)、かなりシュールな関係になっていまして。第一印象を言うことも良くないんだなと思いました。
 また、世の中の人の質問としては、「どう対抗するんですか」とも聞かれるんでしょうね。ただ、「対抗する」と言われましても、私たちは「他社さんがどんな製品を出されるから、私たちの作戦をこう変えよう」という会社ではないわけです。むしろ私たちが考えに考え、どれほどわれわれが3Dに長年チャレンジしてきたかということについては、「社長が訊く」というインタビューの中でずいぶんしゃべりましたし、それはホームページに詳しく載っていますので、ご存じの方も多いでしょうから今日ここで詳しくしゃべりませんけれども、非常に長い間チャレンジして、やっと時が来たと思って提案していますので、他社さんが何かを出すからわれわれのやることが変わる、ということはありません。われわれはニンテンドー3DSが作り出す新しい魅力をどうやったらたくさんの方に手に取って理解していただき、結果的に(どうやったらその魅力が)広まっていくか、ということに努力を集中したいと思います。

Q 3

 ニンテンドー3DS向けソフトの考え方について。今までのハードの発売時と比べて、任天堂タイトルの数が少ないのではないかという印象を持っているが、これに関して開発ができていないのか、それとも別の考えがあるのか、その点について教えてほしい。
 加えて、欧米のサードパーティーについて、ユービーアイソフト社に関してはかなり積極的になっているという印象だが、それ以外はE3の時に発表されている内容からは、あまり積極的ではないような印象も受けるが、その辺りの感触を教えてほしい。
 また、先ほどの説明にあった「『ポケモン』もいずれニンテンドー3DSで」というようなコメントについて、その方向でいいのか確認させてほしい。

A 3

岩田:

 任天堂が新しいハードを出すのに、同時発売する任天堂のソフトは1本だけか、というご指摘ですね。まず、先ほども少しお話ししたんですが、ニンテンドー3DSでは、内蔵のソフトを過去に比べて大幅に充実させました。これは、「ニンテンドー3DSというものの裸眼立体視は、実際に手に取っていただかないとその価値を実感できない」というハードルをどう乗り越えていくか、ということをわれわれがずっと考えていく中で、アメリカやヨーロッパでWiiを発売した時に『Wii Sports』を同梱したことの価値を十分に考えた上で、われわれのソフト開発リソースをある程度内蔵ソフトに振り向けようという判断をした、ということがあります。
 つまり、今振り返ってみますと、「『Wii Sports』こそがWiiを売ったんですよ」ということを誰もが認めてくださるわけですが、新しいハードを発売するその時に、まだ『Wii Sports』が人々の手に渡っていない段階で、「『Wii Sports』こそが世の中を変えるのだ」ということを事前にたくさんの方にご理解いただけていたかというと、必ずしもそうではなかったわけです。例えば、Wiiの発売の時には『ゼルダの伝説』が本体と同時発売されましたから、『ゼルダの伝説』を遊びたいからWiiを買ってくださる方に、絶対に『Wii Sports』を同時に買っていただけるとは限らないわけです。しかし、もしWiiという機械が普及していく時に『ゼルダの伝説』を遊びたい方が『Wii Sports』も一緒に楽しんでいただけると、そして、自分で『ゼルダの伝説』を遊ぶだけではなくて、家族の方と『Wii Sports』を遊んでいただいたら何が起こるかということが、実際にWiiがあのような売れ方をしていった非常に大きな原動力になったんじゃないかと思うんですね。もちろん、『Wii Sports』は日本ではそういう売り方をしませんでしたし、日本とアメリカ、ヨーロッパでどういう普及パターンを目指すべきかという点については、いろいろな議論があった上であのようにしたんですけれども、結論から言うと、海外で『Wii Sports』をハードに付けたことにはとても意義があったと、われわれは思っているんです。すなわち、多くの人に体験してほしい全く新しいソフトを、ハードをお買い求めいただいたお客様全員に体験していただけたら、それは(Wiiの普及に)非常に大きな勢いをつけるはずだということですね。
 ですから、(ニンテンドー3DSの)同発(自社)ソフトは見た目は1本なんですが、私たちとしては、そういうものを作るパワーをニンテンドー3DSの内蔵ソフトの中にある程度込めたということです。つまりニンテンドー3DSが1台あったら、まあそうであってはわれわれは困るんですが、極端な話、ソフトを1本も買わなくてもそれなりに楽しんでいただけて周りの人と話題にしていただけるという状況がまずあって、そこにいろいろな趣向のいろいろなソフトがそろっていくことで、3DSの発売そのものが世の中で話題になり、話題になっていろんな人に興味を持っていただいた時に誰でも触れる、誰にでも魅力を理解していただきやすいソフトがすべてのニンテンドー3DS本体に入っているということの意義が、ちょうどWiiの発売時にアメリカやヨーロッパで『Wii Sports』をバンドルしたことと非常に近い機能を果たすのではないかと考えまして、そのような(開発)リソースの配分をいたしました。
 また、ソフトメーカーさんがあまり3DSに乗り気でないという、われわれにとって好ましくない状況が発生していたとしたら、われわれはきっと同発ソフトをもっとたくさん出したと思います。当然、同発ソフトというのは、本体発売当初にどんなものがあるべきかということについて検討し、いくつかのソフトを発売同時期に向けて作り、そしてその中から仕上がりの状態やソフトを発売すべき順序を考えて発売日を決めますので、1本しか同時発売に間に合わなかったということではありません。例えば、後で発売するソフトなんですけど、マスターアップは『nintendogs + cats』より早く終わっていました、というソフトがあったりしますので。
 ただ、昨年9月の発表会の時に申し上げたことですが、3DSには二つの課題があります。一つは、「裸眼立体視は実際に体験しないと分からない」ということで、もう一つが「任天堂プラットフォームでは任天堂のソフトしか売れないじゃないか」ということでした。そういうご批判があった状況に対して、その環境を変えることによって本当の意味であらゆるお客様にご満足いただけるプラットフォームにしたい、そのためには、やはりプラットフォームの初期の段階で「こういうソフトメーカーさんのソフトがうまくいきました」という実例が複数出る必要があるんですね。ニンテンドーDSは序盤では苦労しましたけれども、あるところを境にソフトメーカーさんのソフトからもヒットが次々生まれるようになったこともあって、DSについて最初は「任天堂しか売れない」というご批判はあったんですが、途中からなくなっていきました。しかし、Wiiでは同じようなシナリオで進めることができませんでした。これはわれわれの反省点です。昨年末について言うと、海外のWiiのヒットソフトのあり方というのは、その前年までとはちょっと違う傾向が出ていて、ソフトメーカーさんのソフトの割合が高まったりしているんですけども、例えば日本だけを見ますと、やはり状況が変わったようには誰も思っておられないわけです。ですから、その状況を大きく変えたいと思いますし、変えるには、たくさんのソフトメーカーさんが本体と同時発売、または発売直後の注目が集まりやすい時期というのを狙ってソフトの開発を頑張っておられるわけですから、そことわれわれのソフトが食い合いを起こしてしまうことのないようにすべきであろうという判断もございます。
 また、発売時に任天堂が自社のソフトを出し尽くしてしまいますと、その後ソフトが充実してくるまでの空白期間に勢いを失ってしまう時期ができることがあるんですね。これは過去にも、DSの発売直後の年が明けてからしばらくの間、Wiiの発売直後のやはり年が明けてからしばらくの間は、任天堂が本体同時発売のソフトをたくさん出した後、タイムリーにソフトが出し続けられなくて、お客様に「新作がちょっと足りないぞ」と感じさせてしまった、という反省もあります。ですから、継続的に、ソフトがタイムリーに出せるように、ということも併せて考えた結果だということで、(ニンテンドー3DSと同時発売する自社ソフトのタイトル数が少ないのは)特に何かが難しいから開発が進んでいないということではございません。また、まだ世の中に発表していないソフトでも、今年中に発売できるだろうと思っている3DSのソフトはいくつもございます。

米国ユーザー数推移
日本ユーザー数推移
日本ユーザー数推移

 それから次に欧米のパブリッシャーさんのお考えですね。アメリカやヨーロッパのソフトメーカーさんが、なぜ日本のソフトメーカーさんのように、積極的に3DSに向かっておられないのかと。これは、これまでの歴史、すなわち日本の市場と海外の市場で据置型と携帯型の比率が全く違うためだと、私は思っています。こちらをご覧ください。これは、ピンク色と黒が携帯型なんですけれども、日本だと全体の6割以上が携帯型ソフトです。ところが、同じことを世界最大のソフトのマーケットのあるアメリカで見ると、携帯型のビジネスというのは全体の2割ぐらいなんですね。この差はいかにも大きいわけです。日本のソフトメーカーさんにとってみると、日本のお客さんのプレイスタイルは、テレビの前で座ってゲームをするんじゃなくて携帯型でゲームをする方向へシフトしていると。先ほどのご質問にも絡むところですね。ところが、アメリカやヨーロッパのお客さんは、まだまだゲームと言えばテレビの前で遊ぶものなわけです。これはどっちが進んでいるとか後れているとかの問題ではなくて、ライフスタイルの違いなんですね。
 ちなみにヨーロッパは、2008年ぐらいにはアメリカよりはかなり携帯型が大きかったんですが、このところ携帯型のビジネスが少し小さくなってしまいましたので、やはり今はアメリカにかなり近い比率になっています。すなわち、ソフトの主戦場は据置型(という認識)なわけです。すると、西洋のパブリッシャーさんは、基本的に携帯型ではなく据置型に自社内の一番いい開発チームを当てることになります。これが日本との非常に大きな差なんです。そういう意味で、西洋のパブリッシャーさんのマーケットに対する見方の違いがこのような状況を作っているのかなと思うんです。
 一方で私は、アメリカやヨーロッパでも、携帯型の比重は恐らく今より高まるだろうと思っています。これは、テレビの前でしか遊べない体験と、どこででも遊べる体験のリッチさの差がどんどん変わっていき、あるいは3Dのように、携帯型だから遊べる別の魅力が生まれてきた時に、そこに魅力を感じてくださるお客様は日本だけではなく世界中にいらっしゃるはずだと思っていますので、これは出足の力の入れ方が、各国の市場規模の中での携帯型の構成比によって起こっているものであると考えていただくと良いと思います。

 最後は『ポケモン』ですね。今のお話は恐らく、任天堂が「6歳以下の方には3Dの表示についてお勧めいたしません」と公表したことと、『ポケモン』をニンテンドー3DS用に出すということは自己矛盾していないか、というご指摘かと理解しますので、その前提でお話しいたします。私たちは、3DSは6歳以下のお子様に遊んでいただいてはいけませんと申し上げているわけではなくて、3DSの立体視の機能に関しては、これは目というよりも脳の機能なのだそうですが、脳の中の立体視機能がどれぐらいの時期に完成するかというのは個人差があって、そしてそれが未発達な段階で視差方式の3Dの表示を見続けることが影響を与えるのではないかという学説があるということを受けて、その注意喚起を能動的にするべきだろうと考えているのです。それは、ゲーム機というものは、親御さんがお子さんにお渡しになって、お子さんが非常に長い時間、熱中して遊ばれる可能性が高い製品ですので、われわれとしては「お子さんに3DSを遊ばせないでください」ではなくて、「ペアレンタルコントロール機能」というのがあって、「3Dの立体視の部分だけの機能は親御さんのコントロールの下で、お子さんが親御さんの知らない間に使ってしまうということがないようにできる機能を設けましたので、それを使って親御さんのコントロールの下で楽しんでください」というメッセージを出しているんですね。
 当然、『ポケモン』がニンテンドー3DS用になった時に、立体視も一つの魅力ですが、立体視以外にたくさんの新たな魅力が獲得できますので、私は将来『ポケモン』というプロパティがニンテンドー3DSになることについて何ら躊躇(ちゅうちょ)はしておりませんし、また、任天堂自身も、先ほどの立体視機能の成長への影響ということについては、より分かりやすい形でお客様にお伝えしていく努力をもっとする必要があると思っています。ただ、少なくとも「説明書に書いてあるからそれでいいじゃないですか」というだけではない対応が、特にわれわれの製品においては必要ではないのかなと私は考えています。なので、お知らせもしますし、箱の外にも大きく書きますし、その上で、それを説明してご理解いただいた上でお買い求めいただきたい、というのが私たちの立場です。

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