株主・投資家向け情報

2013年4月25日(木)決算説明会
質疑応答
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Q 1

 プレゼンテーションで説明があったデジタルビジネスに関して、以前岩田社長は、「デジタルビジネスは、パッケージソフトビジネスに加えてもう1本の柱になる」ということを言っていたが、今期・来期の具体的なダウンロード売上高の規模のイメージについて教えてほしい。また、デジタルビジネスで、ディストリビューションがパッケージからインターネットへ変わるという視点以外に、『Wii Street U powered by Google』のようなネットワークをベースにしたコンテンツでヒットを生み出して、社会的話題になるといったことが起きるのかどうか、もしくはそういう方向性を持っているのか、という点について教えてほしい。

A 1

取締役社長 岩田 聡:

 まず、ダウンロード売上高について、「1年後どうなって、2年後どうなっているか」ということを具体的な数字で発表していませんので、今具体的に申し上げられる数字はございません。一方で、『とびだせ どうぶつの森』は前期に出荷した本数のうち、4分の1がダウンロード版での販売となっており、『トモダチコレクション 新生活』も、発売したばかりですが、初週のダウンロード版比率は、だいたい10%になっています。ソフトとの相性もありますので一概には言えませんが、日本のマーケットではすでに1割の方にダウンロード版を選んでいただけるようになってきたということです。このように、ひと昔前であれば想像できないような変化がすでに起こり始めていると思います。(本日のプレゼンテーションでお知らせした「ダウンロード版を経験されると、次もダウンロード版を選択される方の割合が高い」ということも含めて考えますと、)これから2〜3年の間にデジタル比率がおそらく大きく変わるだろうという点では、私のイメージは以前お話ししたときと大きく変わっておりません。

 それから、今おっしゃっていたように、「パッケージソフトがデジタル配信になる」というのは、デジタルビジネス拡大の第一歩にすぎないと思っていまして、今あるパッケージソフトの販路がただ変わるだけでなく、パッケージという形態以外にいろいろな形のビジネスモデル、あるものはフリー・トゥ・プレイに近いものかもしれませんし、もっと単価が安いソフトや、逆に毎月月額でいくらかを支払っていただくというようなソフトなど、そういったパッケージソフトとは異なる形態のソフトが増えていくかもしれません。デジタル化によってお客様にどのようにお金を支払っていただくかについて柔軟性が高まることで、お客様の選択肢も増えますし、同時に、作り手の選択肢も増えるようになります。そして、どのような柔軟性にも対応できるように、3DSやWii Uではシステムの準備が整ったわけですから、それをこれから実践していくことになると思います。ですから、任天堂のデジタルビジネス推進とは「パッケージソフトをダウンロード版に置き換えるだけ」ということではなくて、「それ以外のいろいろな新しいことも、これから提案していくことになるだろう」ということは申し上げられると思います。

 ちなみに、先ほど例に出していただいた『Wii Street U powered by Google』は、先日GDC(Game Developers Conference)で発表いたしました「Nintendo Web Framework」というHTML5やJavaScriptなど、ウェブのオープンテクノロジーでつくられたソフトです。すでにリリース後、一度バージョンアップをしましたが、また近々バージョンアップを予定しています。従来の作り方だと、なかなかこういうペースでバージョンアップを繰り返しながらお客様にご提案するということはできなかったわけですが、『Wii Street U powered by Google』を触った社内のいろいろな人が「こんなことできないの?あんなことできないの?」というアイデアをいろいろ提案してくれていますので、そういうアイデアをどんどん実現しています。『Wii Street U powered by Google』は、今は無償でご提供していまして、一度無償でダウンロードいただいた方には、無償でそのままお使いいただけるようにするのですが、「一定期間後からは有償にさせていただきます」ということを申し上げていますので、そのタイミングでいろいろな機能を組み合わせながら、新たなご提案をしていきます。それは、単純な「ダウンロード時に売り切り」という形にとどまらないものになる可能性があると思っています。

 また、今日、交通系電子マネーの、JR東日本さんの「Suica」のお話をしましたが、あのような決済手段が可能になりますと、Wii Uで非常に少額の料金を支払っていただくという敷居が、現状に比べて劇的に下がると思っています。それができるようになると、例えば、今の『Wii Street U powered by Google』のようなケースもそうですし、ゲームにおける追加コンテンツのようなもの、あるいは、ビデオ・オン・デマンドサービスのようなものの中で、例えば「この動画を1回観ていただくための料金はいくらです」というようなサービスにおいて、お客様がお金を支払うことが、おそらく今までの方法に比べてずっとやりやすくなって、抵抗感の小さいものになっていくと思いますから、いろいろな形でその用途というのは広がっていくと思います。

 そういうことも含めてWii Uのメリット、すなわち「テレビに繋がっているゲーム機がインターネットにも繋がっていて、手元にタッチスクリーンで操作できるデバイスがあって、それがシステムとして統合されて一体の提案になっています」ということについて、すでに使われている方には、その片りんを少しずつ実感していただいているのではないかと思います。プラットフォームホルダーとしての任天堂は、それがより便利になっていくことで、そういう面でのビジネスの可能性というのも広がっていくのではないかと思っておりますので、単純に「デジタルビジネス=パッケージのデジタル化への置き換え」、すなわち「販路が変わる」だけではないというつもりでやっております。

Q 2

 私が勝手に考えている二つのシナリオがあり、一つはゲーム人口の拡大という旗を降ろして、御社が得意とするお子様、ファミリー層に特化したようなビジネスの展開を進めること。もう一つは、例えばクラウドゲームの運営会社などを買収し、完全にクラウドゲーム会社のような方向を目指すこと。こういう方向性もあるのかなと考えているが、岩田社長の感想を差し支えのない範囲で教えてほしい。

A 2

岩田:

 まず、ファミリー層やお子様は、「ゲーム人口の拡大」の中の一つの中核のお客様であって、任天堂はそこで強みを発揮してきましたし、これからも発揮していきたいと考えていますので、ファミリー層やお子様は任天堂にとって重要なお客様としてこれからもお付き合いしていきたいと思っています。これは、今もこれからも変わらないと思います。

 次にクラウドゲームのお話ですが、「クラウドゲームに向いているゲーム」と「向いていないゲーム」というのが明らかに存在していると思います。クラウドゲームの技術の進歩や変化、あるいはインターネットインフラの進歩や変化に関しては、その動向に目を向けてはいますが、任天堂が今ご提案している、特にリアルタイム性や応答性に対して非常にシビアな要求があるような種類のゲームにおいては、現状のクラウドゲームのテクノロジーというのは、(前回もお話ししたように、ネットワークの遅延を考慮する限り)現実問題としてお客様に高いレベルのサービスができるとは思っていません。これからも、「どう技術が変わっていくのか」というのは見つめてまいりますし、「クラウドゲームというものが、将来にわたって注目すべき技術であるかないか」ということについては、「これからの技術動向の変化、環境の変化をよく見つめて判断するべきではないか」と思っています。ただ、現時点で「クラウドゲームの会社を買収したら任天堂の経営が良くなる」とは考えていませんので、そのような形では進んでいません。

Q 3

 プレゼンテーションで岩田社長自身が海外事業を直轄するという話をされた。海外のパッケージソフト、特にホームコンソールゲーム機は非常に難しい状況になっていると思うが、この状況の変化をどう見ているか。また、直轄することによってどう変えていくのか、という点について、もう少し具体的な方針等があれば教えてほしい。

A 3

岩田:

 まず、直轄ということをこの場であえて言及しましたのは、「取締役の異動に関するお知らせ」をご覧いただくと、「海外本部長は退任するけれども、新任の海外本部長がいない」という点、あるいは、「米国任天堂のCEOとして米国事業を統轄している君島が、日本に帰任して本社の常務になり、森の後任を務めることになるが、アメリカの事業はどう見るのか」という点を疑問に思われるのではないかと考えたからです。

 私は今でも海外の子会社の人たちと頻繁にやりとりをしていますけれども、その密度をより高めていくことによって、本社での意思決定と、海外子会社で実践される戦略・戦術の親和性をより高める努力をし、商品情報について、より早く必要な展開をすることによって、商品のポテンシャルをより引き出すといったことを目指していきたいと思っています。

 ちなみに、ゲーム市場全体がこの2年ほど下降傾向で来ておりますので、「ビデオゲームというもの自体が、成長が止まり、だんだん販売が減少しているので、非常に難しい局面を迎えているのではないか」ということを、特にアメリカでよく言われているわけですが、これには二つの側面があります。

 一つは環境の変化によって、「まとまった金額でソフトを買っていただくことのハードルがおそらく上がっている」ということです。これは、みなさんはよく「スマートデバイスの影響」とおっしゃるのですが、それだけではないと思います。結局、私たちは一つのゲーム機で手を替え品を替え、いろいろなソフトのご提案をするわけですが、「前の年に発売したソフトに比べて新しいソフトはだんだん良くはなっているけれども、その差がだんだん小さくなっていく」、いわば、そのハードでできることは飽和していくわけです。その飽和していく中で、以前ほどの刺激を感じていただきにくい、あるいは、あらゆるお客様はどんな娯楽も体験すると必ず飽きてしまいますので、それはもう味わったこととして、新しい刺激ではなくなるということがあります。任天堂だけではなく、業界全体のソフトの作り手の人が、前作と同じ、あるいはそれ以上にエネルギーをかけてつくったものでも、お客様に感動したり驚いたりしていただくハードルが徐々に上がっています。そこにゲームの低価格化の流れや、ゲームができるデバイスがゲーム専用機以外にいろいろ出てきたことなどが加わって、まとまった金額でソフトを買っていただくことのハードルが上がっているということです。

 もう一つは、「(他社さんのホームコンソール型ゲーム機が)プラットフォームサイクルの終盤に差し掛かって、市場全体の販売水準が下がっている」という環境になっているということがあります。このように、複数の要因が重なったことによって、今の状況が起きていると思います。ですから、結局これからのゲームビジネスは、「お客様に『お金を出して買う価値がある』という魅力を感じていただけるソフトをいくつ出せるか」ということがカギになってくると思います。

 任天堂は当初、Wii Uを発売した後、今年の前半のうちにいくつかの自社タイトルを発売するつもりで開発を進めていましたが、結果的に7月の『ピクミン3』まで大きなタイトルが出せない状況となった背景には、私たち自身、現状の進行状況を見て、「もうひと磨きして出さないとお客様に十分な価値を感じていただけないのではないか」と考えたからです。出す以上はお客様に満足していただかなければ、そのフランチャイズそのものの価値を殺してしまうことにもなりかねないので、そういう形で出そうということで、少し発売を後ろにずらしてしまったということもあります。

 しっかりと作り込んだ良いソフトが出れば、お客様は反応してくださるというのは、私たち自身、改めて実感しているところでして、例えば昨年発売した『とびだせ どうぶつの森』がその例でしょうし、『トモダチコレクション 新生活』が初週から良いスタートを切れたのも、『トモダチコレクション 新生活』自体が、「ゲームの構造はDS版の前作と共通していても、新たな面白さがいっぱいありそうだ」ということをお客様が感じとってくださったからであり、「カジュアル層はスマートフォンでゲームをしているから、もうこれからはカジュアル層に向けたゲーム専用機のゲームは売れない」という理屈では説明できないことが起きているわけです。また、アメリカ、ヨーロッパでいえば、『ファイアーエムブレム 覚醒』や『ルイージマンション2』に対する反応というのは、「しっかり作り込まれたソフトはやはり違う」として、その価値を受け入れていただいていると思いますので、決して過去2年間、海外のゲーム市場が下降トレンドにあるからといって、これからも下降トレンドが続くのではなくて、これはやりよう次第で挽回可能だと思っています。


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