株主・投資家向け情報

2013年4月25日(木)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡

まず、その前提となるネットワーク接続率ですが、ニンテンドー3DSは、携帯ゲーム機としてこれまでにない高いネットワーク接続率になっています。とくにネットワーク接続率の高い日本では、接続率が87%に達し、アメリカでも約83%と、日米共にネットワーク接続率が80%を超え、上昇傾向にあります。ヨーロッパでは、まだ改善の余地がありますが、それでも、約57%と、以前よりも上昇しています。


また、Wii Uについては、現時点での世界全体でのインターネット接続率は80%に上昇しました。このデータは、これまでの任天堂ハードの中でも高い接続率とは言えますが、Wii Uはインターネットに接続してこそ真価を発揮できるゲーム機ですので、接続のメリットを積極的にお客様にお伝えしていき、これをもっと高めていくつもりです。


これは、前期までのダウンロード売上高の推移です。3年前まで右肩上がりで売上を伸ばしていましたが、一昨年、昨年と、ダウンロード売上は大きく伸ばせていませんでした。
ご覧のように、前期は過去最高であった3年前を大幅に超え、前の年の2倍以上に一気に伸び、過去最高のダウンロード売上高になりました。
過去最高だった2010年3月期の時点では、Wiiが本格的に普及した後で稼働率も高く、ニンテンドーDSiも稼働率が高いタイミングでしたが、前期は、その当時と比べても、デジタルビジネスに強い勢いが出てきたことがおわかりいただけると思います。
この伸びの要因には、昨年から本格的に始まった追加コンテンツや、昨年7月から開始した、パッケージソフトをダウンロード版でも販売することが大きく貢献しています。とくに、


昨年11月に日本で発売された『とびだせ どうぶつの森』というソフトは、そのソフトとの相性もあって、多くのみなさんにダウンロード版を選んでいただきました。また、特殊なメモリーチップを使って製造していたこともあり、供給量に制限が生じる中で想定以上の強い需要が発生したことから、パッケージソフトが品薄となり、長い間お客様に大変ご迷惑をおかけしましたが、品薄時のパッケージソフトの代替手段として、ダウンロード版をお選びいただいた方も少なからずいらっしゃったと思います。

『とびだせ どうぶつの森』を発売したのは日本版、韓国版のみで、まだアメリカやヨーロッパでは発売していませんが、前期の出荷数は386万本で、このうち、ソフト同梱本体である『とびだせ どうぶつの森 パック』において本体にダウンロード版があらかじめ書き込まれていた台数も合わせると、ダウンロード版の形式で販売された割合は、出荷本数全体のおおよそ1/4となっています。

このパッケージソフトのダウンロード版を、パッケージソフトと併売する取り組みは、昨年7月以来続けてきましたが、任天堂のデジタルビジネスの大きな特徴は、


ご覧のようなPOSA(Point of Sales Activation)形式のダウンロードカードを小売店さんの棚に並べていただき、小売店さん経由でも販売したことです。また、POSA方式の小売店さんに在庫を持っていただかなくても良い、という特長を活かして、セブン-イレブンさんをはじめとして、コンビニエンスストアさんの店頭でも展開いただきました。
さらには、小売店さんが展開されているeコマースサイトで、ダウンロード番号という、ソフトのダウンロードが可能になる16桁のコードを販売いただくことにも取り組みました。

一般的に、流通中抜きを志向することが一般的なデジタルビジネスにおいて、敢えてこのような方法を採ったのは、以前にお伝えしたように、デジタルビジネスを拡大していくための最大のハードルのひとつが、「デジタル商品を認知していただくための露出手段が、限定されていることにある」と考えていたからです。私たちが展開するデジタル商品の存在が、ニンテンドーeショップに能動的に足を運んでいただけるお客様にだけしか気付いていただけないのであれば、これからのデジタルビジネスが、飛躍的に拡大することはないと考えて、このような展開をしました。
「ダウンロード版の希望小売価格を値下げするわけでもないのに、本当に小売店さん経由でダウンロード版が売れるのか?」と疑問に思っておられた方もおられたかもしれませんが、実績として、『どうぶつの森』のダウンロード版は、


ご覧のように全体の2/3以上が、小売店さん経由で販売されています。
これをご覧いただくと、「デジタルビジネス=小売店さんの敵」というステレオタイプな見方が、必ずしも当てはまらないことがおわかりいただけると思います。

このダウンロード版を小売店さんで購入いただいた方の中には、おそらく、ニンテンドーeショップのことを事前にはご存じなかった方もいらっしゃったと思います。また、小売店さんでお金を支払うことには慣れておられても、電子的な決済には抵抗をお持ちの方にとっても、小売店さん経由でダウンロード版が購入できたことで、ダウンロード版を選んでいただくことができたという面もあるのではないかと考えています。

直近では、パッケージソフトとしては発売していない、ダウンロード専売のソフトも、小売店さん経由での販売にチャレンジしています。何らかの前進がありましたら、このような場で、またご紹介してまいります。


ここで、一度ダウンロード版を経験されたお客様が、次にソフトを購入されるときに、ダウンロード版を選択される割合が変わるのか、言い替えれば、カードをなくす心配なく、いつも本体と一緒に持ち歩けるというダウンロード版のメリットをどのように評価していただいているのかを調べるため、クラブニンテンドーデータを使って分析をしましたので、この機会にご紹介したいと思います。

まず、『とびだせ どうぶつの森』を、パッケージ版を購入されて登録された方、ダウンロード版、これには、本体同梱パックを購入された方を含みますが、ダウンロード版を購入されて登録された方のうち、これまでの有料ダウンロードの経験の有無で、5つのグループに分類しました。クラブニンテンドーは、ゲーム関与度の高いお客様が多いので、ダウンロード版の割合が、実際の市場全体に比べてより高い傾向があり、登録されているお客様全体の3割強がダウンロード版を登録されています。
そして、『とびだせ どうぶつの森』と、先週発売されたばかりで初週40万本以上の販売と好調なスタートを切った『トモダチコレクション 新生活』を両方登録されている方の中で、それぞれのグループごとにダウンロード版を選択される割合を示したのが、このグラフです。
当たり前のことですが、『どうぶつの森』で、パッケージ版を選択された方より、ダウンロード版を選択された方のほうが、より高い割合で、『トモコレ』のダウンロード版を選択されています。また、有料のダウンロードの経験をされていた方のほうが、経験がない方よりもダウンロード版を選択しやすい傾向がある、ということも、自然にご理解いただけると思います。
ひとつご注目いただきたいのは、画面の黄色のグループ、すなわち、それまで有料ダウンロード経験をしていないにもかかわらず、『どうぶつの森』でダウンロード版を初めて経験された方が、『トモコレ』のダウンロード版を選択される割合は40%と、グラフの青い部分で示されている、『どうぶつの森』でパッケージ版を選択し、有料ダウンロード経験のないグループと比べて、5倍もダウンロード版を選択していただく方が多くなることです。
すなわち、「ダウンロード版を一度ご経験いただくと、その利便性から、次もダウンロード版を選択していただきやすくなる」という傾向が明らかに見られるということです。すなわち、ダウンロード版をご経験いただくことが、さらなるデジタルビジネスの拡大に大変重要な意味を持つということになります。


また、任天堂からお客様への直接の情報展開手段として確立しつつあるNintendo Directについてですが、その主要な視聴経路として、ニンテンドーeショップが大変重要な経路として確立している手応えが出てきました。
とくにご自身が専用のPCやスマートデバイスをお持ちではない世代のお客様にとっては、ニンテンドーeショップは、オンデマンドにさまざまなゲームの情報にアクセスする大変重要な存在になっているようです。

最近のNintendo Directでも、YouTube経由の視聴数はそれほど伸びていないのに、eショップ経由で放映直後のわずか10日間ほどの間に、50万とか60万回の視聴に達することも珍しくなくなり、eショップからの視聴はとてもアクティブです。今や、ほとんどの場合、最大の視聴経路はeショップであると申し上げても過言ではなく、視聴全体の6割〜7割がeショップからになるということも珍しくありません。
また、eショップからNintendo Directをご覧いただくことで、そのまま、ソフトの体験版や、3D映像をダウンロードしていただくことにもつながり、また、ゲームの新しい情報を得る場所として、ニンテンドーeショップを定期的に起動していただけるようになることは、これからのデジタルビジネスのために大きなプラスになると考えています。

また、デジタルビジネスにおいては、有料でソフトをダウンロードいただけるかどうか、ということにおいて、課金決済に大きなハードルがあります。このための新たな試みとして、この機会に、お知らせしておきたいことがあります。


すでにお知らせしていますように、Wii Uはスクリーンを搭載した新しいコントローラー、Wii U GamePadに、NFCという非接触の近距離無線通信機能を搭載しています。
昨日発売した『ポケモンスクランブル U』は、この機能を活用した初めてのソフトで、NFC対応のICカードをGamePadにかざすことでゲーム内に「お助けポケモン」が登場したり、別売のNFCフィギュアを使って、そのポケモンをゲーム内に登場させ、成長したデータをフィギュアに書き込むことができるような遊びが実現されています。

Wii Uが、NFC機能を搭載したのは、このような、ゲームにおける新しい遊びの拡張ができるようにすることとともに、少額課金の決済手段としても活用することを目指しているためです。


その中でも、日本で最も普及が進んでいる交通系電子マネーであるJR東日本様のSuicaを用いて、決済が実現できるように、検討を進めています。

これが可能になることにより、Wii Uは、家庭内ゲーム機として初めて、交通系電子マネーを活用した決済手段を持つ、インターネットに接続されたデバイスとなります。



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