一方で、自社タイトル以外に他社さんのタイトルの品揃えも重要です。
西洋のソフトメーカーさんは、近年、携帯型ソフトに自社の有力スタジオを充てる例が少なくなっていますが、今年は、いくつかの有力タイトルの発売がすでに発表されており、まだ未発表のタイトルも予定されていると聞いております。
また、先日もお話ししたように国内のソフトメーカーさんが制作される有力タイトルの海外展開を、今まで以上に積極的に推進する予定です。
具体的には、
現時点で、海外での展開が発表されている他社さんのタイトルにはこのようなものがありますが、ここには掲載されていない現時点では未発表のタイトルも展開予定とお聞きしておりますし、このようなタイトルが揃ってくることで、日本よりは遅くなりましたが、いよいよ海外でもニンテンドー3DSを本格的に普及の軌道に乗せるための環境が整ってきたのではないかと考えています。
その一方で、昨年『とびだせ どうぶつの森』が爆発的な販売になる前に日本で言われていたように、「スマートデバイスの普及で以前と環境も変わっているので、ニンテンドー3DSは大きな普及は望めないのではないか」ということについて、海外では今も継続的に語られていますし、今年頭の時点では、「昨年末に爆発的な販売にならなかったことで、西洋市場では3DSはすでにピークアウトしたようだ」という見解をお持ちの方がいらっしゃったと思います。
しかし、この間のNintendo Directで今年のラインナップが具体的に明らかになるにしたがい、メディアの論調にも少し変化が現れてきました。
ここでは、すべての例を挙げることはできませんが、まずアメリカ発の2つのメディア報道の例を挙げます。
ひとつは、2月のNintendo Directの直後に書かれたkotakuというゲームメディアの記事です。これは、2年前の発売時の躓きからの回復を振り返りながら、「最高のゲーム機というのは、最高のゲームがあるゲーム機のことで、2013年に関しては、それは3DSだ」という論調のことが書かれている記事で、ここしばらくはなかった論調の記事でした。このような論調は、この記事だけではなく、他の記事にも見られるようになってきました。
また、2つめの例は、USA Todayの記事で、先週末の3月のNPDデータが発表された後、業界全体で、1年前と比べて3月のハード販売台数が32%減少している中で、「ニンテンドー3DSは、スマートフォンやタブレットの市場とのより激しい競争にさらされているが、販売は前年対比9%上昇しており、勢いを得つつあるようだ」というものです。
また、ヨーロッパについてですが、ちょうど先週、『ファイアーエムブレム 覚醒』が発売され、先週のドイツ、フランスのチャートが届きましたので、ご紹介しますと、
こちらは、ドイツの今年第16週のヒットチャートですが、『ファイアーエムブレム』・『ルイージマンション』が1、2位を占めているほか、ほかに新旧合わせて4タイトル、合計6タイトルの3DSソフトがランクインしていますし、
こちらはフランスの今年第16週のチャートですが、同じく、『ファイアーエムブレム』、『ルイージマンション』が1〜2位のほか、同じくほかに4タイトル、合計6タイトルの3DSソフトがランクインしているなど、ニンテンドー3DSの有力ソフトの投入と共に、3DSに勢いが出てきているのがおわかりいただける状況になっています。
このような背景も踏まえて、
イギリスの業界誌CVGは、「任天堂は、懐疑的に見ている人たちよりもずっと自分自身のマーケットを理解していることを再び証明した。この3DSの成功は、任天堂が過去数年に制作してきた、歴史上最も充実したもののひとつと言えるソフトウェアラインナップによって牽引されている」というような論調の記事が、今週の頭に出ています。CVG誌の報道では、時には当社に対して厳しいご批判をいただく厳しい論調の記事も珍しくありませんが、論調の変化の兆しが現れている例ですので、ご興味をお持ちの方は、リンク先をご参照ください。(※このリンクは2015年3月に削除しました。)
このように、今は、まだ、市場に変化の兆しが出つつある段階に過ぎませんが、今年夏までには、海外市場のニンテンドー3DSの勢いを本物にしていくことを目指したいと思っています。
一方、Wii Uについては、1月の経営方針説明会でお話ししたときの見通し以上に、自社の有力ソフトの発売間隔が空いてしまいましたので、プラットフォームの勢いを維持することができていません。
それに加えて、現状ではまだWii Uの製品価値をしっかりとお伝えできていないということが大変大きな課題になっています。
Wii Uが、「単にGamePadが付いているWiiに過ぎない」との誤解があったり、さらには、「GamePadはWiiの周辺機器だ」と誤解されている方までおられたりして、私たちがお伝えしなければならないことをお伝えしきれていない状況で、私たち自身の努力不足を痛感しています。
Wiiが、『Wii Sports』というタイトルを通じて一瞬で価値をご理解いただけたのと比べると、まだ、お伝えする決め手となるタイトルがない、という状況でもあるわけですが、Wii Uは、購入いただいたお客様からご評価いただいている要素はいくつもありますので、その価値を広くご理解いただけるように努め、ソフトラインナップの充実と共に、じっくりと普及に取り組んでまいります。
また、自社タイトルのリリース間隔が大きく空いたことで、お客様のご期待に応えることができず、結果として、プラットフォームの勢いを大きく落としてしまいましたが、今年7月の『ピクミン3』以降、来年にかけては、自社の有力タイトルを集中的に展開し、ハードを牽引することを目指しています。
新しいハードを購入いただけるかどうかは、そのハードでしか遊べない有力タイトルがあるかどうかで決まるわけですから、今年の夏以降年末にかけては、「優れたゲームがたくさん揃ってきた」と実感いただけるように努めたいと思います。
現時点では、まだ、発売日をお知らせしていないソフトが多くありますが、E3を通じて、年内、あるいは、来年初頭のタイトルについて、より具体的にお知らせできるようにしてまいります。
また、Wii Uの大きな特徴として受け入れていただいたMiiverseについてですが、以前からお知らせしていたPCやスマートデバイスからの閲覧が、本日から可能になります。
これは、Miiverseをブラウザーで閲覧できるウェブサービスとして実現されており、最初は、閲覧のみが可能な、機能に制限のあるベータ版として公開します。
このウェブサービスとしてのMiiverseは、
という役割のほかに、
という重要な役割を担うサービスとして、これから段階的に発展させていくことを予定しています。
また、年内には、ニンテンドー3DSからも、Miiverseの閲覧や書き込みができるように、ニンテンドー3DSの本体更新によって対応することを計画しています。ニンテンドー3DSからもMiiverseへのアクセスが可能になることで、ニンテンドー3DSのゲームに関するお客様同士のやりとりの場が大幅に拡張され、ゲームをさらに深く楽しんでいただくことができますし、それと同時に、Miiverseを活用いただけるお客様は大きく増えることになり、その結果として、Wii Uという新しいプラットフォームの魅力を、より深く、より的確にご理解いただけることにもつながるのではないかと考えています。
さて、Miiverseの話題ともつながるのですが、任天堂がこれからの環境変化に対応するために、そして、今後の新たな収益機会を拡大するためにも、大変重要になるのが、デジタルビジネスの大幅な拡大です。