Miiコンテストチャンネルの開発スタッフに制作にまつわる話を語ってもらいました。

※インタビュー内容は掲載日(2007年12月6日)時点のものです。

はじめに

 

情報開発本部の山下です。「Miiコンテストチャンネル」ではディレクションを担当しました。

 
 

同じく情報開発本部の中嶋です。ソフト側のプログラムを担当しました。

 
 

ネットワーク開発部の小山です。今回はサーバ関係を担当しました。

 
 

ネットワーク開発部の穐丸(あきまる)です。今回はサーバ側のプログラムを担当しました。

 

サーバは魔法の箱?

 

「インターネットチャンネル」正式版 「Miiコンテストチャンネル」はもともと、「Miiを使った新しいチャンネルを」という課題が出されたことがキッカケではじまった企画です。いろいろ企画を考えていたんですけど、なかなかアイデアをまとめることができませんでした。そんなとき、宮本(茂)さんから「コンテストを開くようなチャンネルはどう?」というヒントをもらいまして、そこからアイデアがまとまり、開発が本格的にスタートしました。

 
 

ちょうど1年前くらいのことでしたね。

 
 

わたしが所属するネットワーク開発部に話が来たのは、年が明けて、今年(2007年)の2月か3月くらいのことでした。

 
 

それまでは、少ないメンバーでやっていたんです。しかも、情報開発本部では、『おいでよ どうぶつの森』や『マリオカートDS』などで、ネットワークを使ったソフトをつくった実績はありましたけど、今回のようにサーバにデータを集めて処理をするような経験はなかったんです。

 
 

だから、みんなで「こんなことができたらいいよね」って、夢のようなことを言いたい放題でした(笑)。まるでサーバが、思い描いたことがすべて実現される魔法の箱のように考えていたようなところもあって・・・。

 
 

それでサーバのシステム構築を、ネットワーク開発部にお願いすることになって、こちらの要望を伝えたら、小山さんの表情が微妙に曇ったんです。「こういうことはできます、よね?」って聞くと、「できますけど・・・」という感じで(笑)。

 
 

Miiのコンテストをやるとは言っても、過去に経験がなかっただけに、世界中からどれくらいの数が投稿されるのか、想像できなかったんです。もし仮に、ものすごい数の人たちが参加したときは、一定のサービスレベルを保てないこともあり得ますし、そうは簡単にはできないな、と思いました。

 
 

しかも、お客さんがつくったMiiをお預かりしますので、データが消えてしまったり、壊れてしまうようなことはあってはなりませんし、そこはサーバでしっかり管理する必要がありました。ところが3月に話を聞いて、6月にはサービスを開始しようなんて話でした。

 
 

読みが甘かったです(苦笑)。そのころは「みんなで投票チャンネル」がはじまっていて、すでに実績もありますし、ネットワークの専門家もいることだし、大丈夫かなって。「Miiコンテストチャンネル」には、「投稿広場」と「コンテスト」の2つのコーナーがあるので、単純に考えると、「みんなで投票チャンネル」の2倍の労力ですむかなと思っていたんです。

 

不安の連続・・・

 

「みんなで投票チャンネル」は、投票内容を集計してその結果を配信していますが、サーバの負担はそれほど大きくはなく、処理もシンプルでした。でも「Miiコンテストチャンネル」では、お客さんがつくったMiiのデータをサーバ側に蓄えておいて、それを好きなときに、スムーズに呼び出せるようにするためのシステムが必要で、サーバの処理はより複雑になるんですね。

 
 

「投稿広場」はさほど問題がなかったんですけど、「コンテスト」に関しては、お客さんが応募してくださったMiiを、ほかのお客さんが審査をして、さらに結果を表示しなければなりません。それをどうやって管理していくかをまとめるために、ちょっと時間が必要になりました。

 
 

小山さんたちが根本のところで苦労しているのに、僕らは言いたい放題で・・・。たとえば、Wiiフレンド同士でコンテストが開催できるユーザーコンテストを開催したいとか、似顔絵のうまいMii職人に、ほかのお客さんからつくってほしいMiiをリクエストできるようにしたいとか・・・。

 
 

それこそ日替わりメニューのように、「これはできませんか? これならどうですか?」って、アイデアの相談があった時期もありましたよね。

 
 

アイデアを出さないと不安だったんです。実際に、30人くらいでテストプレイをやってみたのですが、参加人数もMiiの作品数も少なくて「投稿広場」が盛り上がりに欠けたんですね。

 
 

山下さんは「この企画、はずしたかも?」なんて言いながら、すごく沈み込んでいた時期もありましたよね(笑)。

 
 

だから、11月のサービス開始時は、はたしてどれくらいのお客さんに参加してもらえるんだろうって、すごく不安だったんです。

 
 

サーバを管理する側としては、別の意味で不安でしたね。そもそも、やってみるまでは、お客さんの数は読めませんし、世界中のWiiからアクセスが殺到してしまったらどうなるんだろうって、サービス開始前からビクビクしていました。

 

たくさんのMii職人が投稿

 

でも、いざサービスが開始されてみると、1人目、2人目・・・って、どんどん参加するお客さんが増えていって、一晩でものすごい数のお客さんに参加していただいて、これがネットの醍醐味だなあと思いました。

 
 

普通のゲームをつくっていてもそんな経験はできませんので、情報開発本部ではすごく盛り上がっていたんです。でも、小山さんたちは不安でしょうがなかったと思うんですけど(苦笑)。

 
 

そうですね。そちら側はすごく盛り上がっていたようですけど、こっちは本当にヒヤヒヤしながら見守っていました(笑)。

 
 

もともと、「Miiコンテストチャンネル」をダウンロードしたお客さんのうち、1~2パーセントのお客さんがMii職人として、自作のMiiを投稿してくださればいいほうだと思っていたんです。

 
 

ところが、ふたを開けてみると40パーセントくらいのお客さんが投稿してくださっていて、本当に驚きましたね。

 
 

そもそも、はじめる前は「トップ50」が埋まらなかったらどうしようという心配をしていたくらいですからね。「ランキングの100位とか埋まらないんじゃない?」って(笑)。

 
 

「インターネットチャンネル」正式版 「今日のオススメ」や「トップ50」は投稿されたMiiがいないと誰も呼び出されませんので、まずはスタッフがつくった数体のサンプルMiiを、サービスがスタートする前にアップしておいたんです。最初に参加した人たちが、そこにMiiがいなかったら、やっぱり寂しいですからね。で、僕はおばあちゃんのMiiをつくったんですけど・・・。

 
 

そしたら、そのおばあちゃん、すごい人気なんです(笑)。すぐに消えてしまうだろうと思っていたんですけど、サービスを開始して、けっこう長い期間「トップ50」に居続けていたんです。

 
 

自分でつくっていてこう言うのも変ですけど、しぶといおばあちゃんだなあって(笑)。自分としては、人気が出そうにないおばあちゃんのMiiをつくったつもりだったんですけど・・・。サンプルMiiが人気になっても困りますからね(笑)。

 

サービスが始まってからが本番

 

それにしても、皆さんの投稿されたMiiを見ていると、想像以上にクリエイティブな作品が多いですよね。「よくぞまあ、こんなMiiを!」って、感心することも多くて。

 
 

もともと「投稿広場」というのは、そこで気に入ったMiiを見つけて、「持ち帰り」していただくために用意したんですけど、あまりにすごいMiiばかりが出てくると、見物する人ばかりが増えて、自分でMiiを投稿しづらくなってしまうんじゃないかという不安もありました。でも、人の作品を見て、刺激を受けて、オリジナルのMiiづくりに挑戦してくださるお客さんが多いみたいですね。1人のMiiをつくるのに、早ければ5分くらいでできちゃいますし、そうやってお手軽に自作のMiiがつくれることもよかったんでしょうね。

 
 

だから「今日はどんなMiiが投稿されてるのかな?」って、「今日のオススメ」を毎日チェックするのが楽しいんですよね。もともと、企画段階では7日間で更新することにしていたんです。でも、それだとお待たせしすぎだということで、直前になって3日間で更新することにして・・・。

 
 

ところがサービスを開始してみると、更新の単位が日にちではなく、時間単位で望んでいるお客さんが多いことがわかったんです。しかも投稿数がすごい量ですし、サービス開始直後に小山さんに時間単位で更新できるようにお願いしました。

 
 

サービス開始直後にサーバの負荷を増やすようなことはなるべく避けたかったのですが、お客さんの声が第一ですから(笑)。さらに、Miiの呼び出し方も変更しました。たとえば「今日のオススメ」では、サービスを開始した当初は、直近3日間のアクセスで、「持ち帰り」「気になる!」が選ばれたMiiのうち、上位50人を配置するようにしていました。ところが、こちらの予想を上回る投稿が寄せられて、見てもらうことができないMiiがかなりの数にのぼることがわかりましたので、そういったMiiにも登場のチャンスがあるようにサーバのプログラムに修正を加えました。

 
 

普通のゲームをつくるプロジェクトだと、発売してからプログラムを変更するなんて、絶対にないことですよね。でも今回は、サービスがはじまってから、小山さんに「これからが本番です」って言われて・・・。

 
 

まあ、サーバを触り続けるのはいつものことですので。この内容が掲載される頃にはさらに変わっているかもしれません(笑)。

 

お手軽にいろんなMiiが呼び出せる

 

Miiの呼び出し方ですが、おもしろいMiiが手軽に呼び出せるようになっています。「今日のオススメ」は、最近注目を集めているMii。「トップ50」は今までで人気の高いMiiを呼び出しています。「きまぐれ呼び出し」は、ランダムに呼び出しているように見えますが、実際はランダム+最近投稿されたMiiを混ぜて呼び出しています。開発初期は、「掘り出しもの」と「期待のMii」という2つの呼び出し方を別々に用意していたのですが、ボタンが多くなってしまうので「きまぐれ呼び出し」ひとつに整理しました。

 
 

「今日のオススメ」でお気に入りのMiiを見つけたら、まず「→仲間を呼ぶ」を使って、いろんなMiiを見比べてほしいですね。同じキャラクターでも、人によっては、表現の仕方がこんなに違うんだってビックリしますから。

 
 

Mii職人のプロフィールの覧に、→国旗を表示するようにしたのもよかったです。こんなに変わったMiiって、どんな人がつくってるんだろうと思ってチェックしてみると、ヨーロッパの普段なじみのない国の人がつくった作品だったりして。あれで、世界とつながった感じがグーンと強くなりました。

 
 

国旗のアイコンだけを見ても、どこの国かわからないこともありますよね。でも、ポインターでさすと国名が表示されるようになっていますので、国旗当てクイズもできます(笑)。でも、「仲間を呼ぶ」機能では、イニシャルしか出ていないのに、どうやって仲間を呼んでるんだろうって、不思議に感じてるお客さんも多いようです。

 
 

Mii職人の人たちが投稿してくださったMiiって、お客さんにはイニシャルしか見えないようになっていますけど、サーバのほうではニックネームの情報もありますので、実はそれを使って検索してるんです。

 
 

実際にスタートすると、「こんなに仲間が集まっちゃうんだ」って、自分たちでも驚いたくらいですし、「仲間を呼ぶ」機能を入れて本当によかったなあと思いました。

 
 

ときどき「どうしてこの人も仲間なの?」って思えるようなMiiも混じったりしてますけど(笑)。

 
 

でも、本当はイニシャルではなく、ニックネームでMiiを投稿できるようにしたかったんです。ニックネームを一言コメントとして使うと楽しくなりそうだったので。ですが、言葉が自由に書けてしまうと、勝手に友達の名前が使えたり、個人情報を書けたりといったいろんな問題が想定されますよね。そこで、イニシャルで表示するようにしたんですけど、これがなければ、「仲間を呼ぶ」というアイデアも生まれなかったと思います。

 

「コンテスト」の審査の仕組み

 

プログラムの話で言うと、Miiを呼び出すとき、Miiそのものの動きがテンポが速くて、キビキビしていますよね。

 
 

やっぱりたくさんのMiiが登場しますので、キビキビ動いたほうが気持ちがいいですよね。でも、「Miiコンテストチャンネル」は「似顔絵チャンネル」に連動していますので、操作性に関してはできるだけ近いものにしたかったんです。それで、→ABボタンの同時押しでMiiをつかめるようにしたんですけど、意外とそのことに気づいていない人も多いみたいですね。

 
 

たとえば「仲間を呼ぶ」を使ってMiiを集合させたとき、Miiをつかんで並び替えて、見比べたりするときに便利なんです。Miiをつかめることについては、ヘルプボタンでも説明しているので、こちらも読んでいただければと。

 
 

あと、ちょっと心配なのが、最初にMii職人の登録をするようになってますけど、そこで自分のニックネームとMiiが公開されると勘違いされて、参加することを躊躇してしまう人もいるんじゃないかと・・・。

 
 

でも安心してください。Mii職人の登録をしても、Miiを投稿しない限り自分のニックネームやMiiが公開されることはありません。それで気軽にはじめてもらって、おもしろいMiiを見つけたら持ち帰ってほしいですし、→プロフィールの覧にある12桁のエントリー番号をメモすれば、「こんなすごいMiiがいたよ」って、友達に教えてあげるといった楽しみ方もしてほしいですね。

 
 

ところで、「コンテスト」はもともと、任天堂のスタッフが審査するという考えもあったのですが、コンテストに応募されたMiiはお客さん同士で審査いただく方が、参加意識も出ておもしろいだろうということになりまして・・・。

 
 

とは言っても、お客さん1人1人がすべてのMiiを審査しようとしたら、おそらく何日もかかってしまうくらい、ものすごい数のMiiが投稿されていますので、それは不可能ですよね。そこで、1人が審査するのは、10人ずつにしました。

 
 

たとえて言うと、巨大な福引き機を用意しているようなものなんです。それでガラガラっと回したら、10個の玉・・・つまり10人のMiiが、審査をしようとしているお客さんのところに届くようになっています。ですから、確率的にどのMiiも人に見られる機会を公平にして、その中から集合知で選ばれたものが、優秀な作品という仕組みになっています。
※集合知=多くの人が参加して知識を出し合い、大量の蓄積が進むことによって構成される価値ある知識。

 
 

もともとの仕様は、10人の候補から3人を選ぶだけだったんです。でも、岩田さんから、「10人の候補の中に、選びたいものがなければパスできるような仕様にしてほしい」と要望があって、気に入ったMiiが見つかるまで、10人の候補をどんどんめくれるようにしました。その仕様変更が、サービス開始の直前でしたので、本当にヒヤヒヤでしたね。

 

これからも広がるMiiの世界

 

それにしても、「Miiコンテストチャンネル」のサービスがはじまったばかりなのに、個性豊かなMiiがたくさん投稿されて、ありがたいと思うと同時に、お客さんの創作力はホントにすごいと思っています。→Miiにポインターをあてて、Aボタンを押せば、くるっと回るようになっていますので、回しながら「こんなのができちゃうんだ」ってビックリしてます(笑)。

 
 

僕の場合、「投稿広場」から気に入ったMiiをどんどん持ち帰って、いまや自分の「似顔絵チャンネル」は、大変にぎやかなことになってますよ。たとえば、それで『Wii Sports』の「ベースボール」なんかすると、とても新鮮なんですよね。『はじめてのWii』や『Wii Fit』でも、Miiが増えるとにぎやかになって、おもしろいですよ。

 
 

投稿されるMiiがさらに増えれば、もっともっと楽しさは増えていくでしょうね。

 
 

ですから、自分たちでも、いろんなMiiが出てくる、新しいソフトをつくりたいよねという話も出てきていますよね。

 
 

サーバの中には、自分たちでつくろうとしても不可能なくらい、それこそ大都市の人口を上回るMiiが住んでいます。しかも、世界中で生まれたMiiがどんどん流れ込んできていて、その人口は日に日に増えていますよね。そういったMiiを、大量に流し込んで遊べるゲームをつくれたら・・・。とても個性豊かな、しかも毎回見たことのないMiiがたくさん登場してきて、きっとおもしろいものができるんじゃないかなって思います。

 
 

ぜひやってみたいですね(笑)。

 

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