Nintendo Nintendo GDC Game Developers Conference 岩田聡 GDC講演内容
2011年3月2日(現地時間)サンフランシスコで行われたGDC(ゲーム開発者会議)。
その中で、任天堂社長の岩田聡と米国任天堂社長のReggie Fils-Aimeがゲーム開発者向けに行った講演会の動画とその日本語訳をご紹介します。
※禁無断転載。一部を引用する場合は、引用元のURLを必ず併記してください。
岩田聡:

アメリカには「must have(マストハブ)」というこれに該当する表現があります。それは熱心なゲームプレイヤーの皆様が即座に欲しくなるような魅惑的なものを指します。手に入れなければ、取り残されたと感じさせられるものです。

「マストハブ」は新しい体験であると表現できます。そしてそれは、しばしば(次に挙げるような)3つの要素のうちの一つから発生します。

時に新しい体験は、 ハードウェア自体によりもたらされます。 例えば最初に発売されたゲームボーイは、その感覚を実現したと思います。なぜなら、初めて所有者がゲームを携帯でき、そしていつでもどこでも遊べることが可能になったからです。

しかし、「マストハブ」をテクノロジーのみで創造するのは簡単ではありません。

第2に、ゲーム自体が「マストハブ」になることがあります。ただし、ある特定のタイプやジャンルのゲームならば必ずそういった地位を確立できるかというと、そうではないことを我々は知っています。

『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』、『ゼルダの伝説』、『ギターヒーロー』、『グランド・セフト・オート』、『テトリス』、『Just Dance』、『アングリー・バーズ』といった多彩なゲームを見れば、それらのゲームの開発者たちの創造力に秘められた力を感じることができますし、彼らの創造力の発露の方向性はさまざまです。

「マストハブ」の3つ目の要素は、ハードウェアから生じるものでもなければソフトウェアからでもありません。ゲームプレイヤー自身がもたらすものです。

これこそが、私がつい先ほどお話ししたゲームの「ソーシャルな」魅力であり、遠く離れた人とにせよ目の前にいる人とにせよ、つながることをプレイヤー同士が楽しむということです。

登場から何年も経っていながら、世界中で1200万人以上の人が今も会員として『ワールド・オブ・ウォークラフト』を遊び続けていることは、特筆すべきことだと思います。

「マストハブ」から次の話題に移る前に、プレイヤーとしてではなく開発者の立場からも見解を述べさせていただきます。

なぜなら我々は、現実世界のことも考えねばならないからです。私が使った開発費を十分回収できるだけの販売を実現するにはどうすればよいのか?雇用継続やビジネス維持のためには何が必要か?

その答えを探る方法の一つは、過去25年間にゲーム産業で誕生した人気フランチャイズの最たるものを見て、それらがなぜプレイヤーの皆様に人気があるのかについて考えることでしょう。

まず『マリオ』です。
今となっては信じがたいことですが、ゲームセンターに登場した当時、マリオは完全な新参者でした。そして『マリオ』と『ドンキーコング』の興奮は口コミで広まっていきました。

マリオは変化を絶やさなかったからこそ、人気を保ち続けてきたのです。マリオのプロジェクトに参加した開発者たちは全員、新しいゲームプレイ要素を提供し、予想できない体験をお届けしなければならないことを理解しています。マリオは常に進化しています。

2番目は全く新しいものとして出現したフランチャイズ。『ポケモン』です。

ポケモンの基本的な魅力は、世界的に共通した魅力であると考えられる収集、育成、交換、競争にあります。

ポケモンは最初から複数のバージョンが発売されました。中には一つのバージョンにしか出現しないポケモンもいます。友人のバージョンからもらったポケモンの方が成長が早いことに気づくかもしれません。だからそんなポケモンが欲しくなります。

これらのユニークな特徴はプレイヤーの相互交流を促すためにデザインされたものです。ポケモンの人気はそのソーシャル性によって説明できるところが大きいのです。

次のフランチャイズは任天堂のプロパティーではありません。しかし、ゲーム業界の全員がその魅力を理解していると思います。

3番目は、先ほどお話しした、『テトリス』です。
テトリスは恐らく女性をひきつけた最初のビデオゲームだったと思います。

1989年に発売されたゲームボーイは、アメリカではその年の最後の5カ月間だけ売られましたが、しかしその年の12月末には既に40%のプレイヤーが女性という結果になったのです。それはテトリスゆえでした。

4番目はウィル・ライトの創作物である『ザ・シムズ』です。勝ち負けのないこのゲームはゲームではないとさえ批評されたことを憶えておられると思います。誰にも受け入れられないだろうと多くの人が予言しました。

しかしこのゲームは世界中で1億2500万本が売れました。

これらベストセラーからは重要なことが学べます。

  1. 人気フランチャイズであっても改善を続け、新しい驚きを与え続ける必要性
  2. プレイヤー同士をソーシャルにつなげる力
  3. ゲームプレイヤーの輪を新しい人たちへ広げる価値
  4. そしてビデオゲームとは何か、どうプレイされるべきかという既成概念に挑戦する勇気

もう一つ、これらフランチャイズのそれぞれに共通する点を挙げるとすれば、それはユニバーサルな、つまり世界中で受け入れられる魅力です。誰にでも、どこにおいても魅力を感じてもらえるようにするのは簡単ではありません。しかしもちろん、実現させたいことです。

当社の田邊とRetroの開発者による明日朝のパネルディスカッションにご来場いただけることを希望します。『ドンキーコング リターンズ』をどうやって世界的ヒットにしたか、彼らがそのステップをお話しします。

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任天堂ホームページ ※このページの内容は海外での講演内容のため、一部英語での表現が含まれています。